里芋は一年中スーパーなどで購入できる野菜ですが、里芋にも美味しく食べられる旬の時期があります。本記事では里芋の旬について詳しく解説します。
一般的に言われる「旬」とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。
里芋には初夏から秋が旬となる品種と冬から初春が旬となる品種があります。品種によって旬がずれ、一般的には秋から冬が里芋の旬の時期とされています。
一般的にスーパーなどで販売されている里芋の品種は、どの品種も11月から収穫量が多くなり、4月頃まで貯蔵されるため秋から春にかけてが最も里芋を安価で購入できる時期になります。
里芋は貯蔵性が高く、収穫を終えてから貯蔵されたものが順次出回っているためほぼ通年流通しています。そのため、一般的に旬と言われている秋から冬以外の季節でも購入することができますし、美味しく食べることができます。
購入した後も正しく保存できていれば常温で約1ヶ月ほど日持ちします。里芋の正しい保存方法については後述しますのでそちらを参考にしてください。
里芋の主な生産地は埼玉県、千葉県、愛媛県などです。令和3年度の収穫量は全国で142,700トンでした。
令和3年度の主な地域別の取扱量は下記の通りです。
埼玉県…約3,318トン
千葉県…約1,319トン
愛媛県…約834トン
出典:
上述したように里芋は品種によって旬が異なります。ここでは品種ごとの旬を紹介します。
土垂(どたれ)は、一般的にスーパーで売られていることが最も多い品種です。「里芋」といえばだいたいは土垂を指します。
土垂の収穫時期は早いところでは9月頃から始まり、10月〜11月にピークを迎えます。旬は10月〜12月にかけてですが、貯蔵性が高いため収穫してから貯蔵され1年中市場に流通しています。
土垂は主に子いもを食用とする品種で、サイズは小ぶりです。里芋特有のぬめりがあり、肉質もねばりがあり煮崩れしにくいという特徴があります。サイズが小ぶりであることから煮ころがしに使われることが多いです。
石川早生(いしかわわせ)も土垂と並んでスーパーなどで販売されていることが多い品種です。阪府南河内郡の石川村(現河南町)が原産地とされています。
石川早生の収穫時期は土垂よりも早く、宮崎県などの暖かい地域では7月頃から始まり、9月にピークを迎えます。収穫前線が関東へ移ると関東でも9月には収穫がはじまり、旬は8月〜9月と言われています。
石川早生も土垂と同じように、他の品種に比べ小ぶりです。蒸したり茹でると手で簡単につるっと皮が剥けるという特徴があります。肉質に粘りがあり、煮物やきぬかづきに使われることが多いです。きぬかづきとは、里芋を皮のまま蒸し、その皮を剥いて食べる料理です。
セレベスは、インドネシアのセレベス島(現スラウェシ島)から伝わったとされる里芋です。表面は土垂や石川早生と同じく茶色をしているものの、頭やお尻など赤い部分があるのが特徴で、「赤芽芋」や「赤目芋(アカメイモ)」、「大吉芋」とも呼ばれます。
セレベスは、早いところでは9月中旬頃から始まり、年明け1月頃まで出荷されます。旬は11月から12月頃となります。
セレベスは土垂や石川早生などと比較してぬめりが少ないのが特徴で、加熱するとホクホクとした芋らしい食感を楽しむことができます。含め煮にするのに適しています。
えび芋は元々は唐芋(とうのいも)という品種で、土寄せして曲がったものが反り返ったエビのように見えることから「えび芋」と呼ばれるようになりました。
えび芋は9月中旬頃から収穫されはじめます。11月から12月にかけてピークとなり、3月頃まで続きます。もっとも美味しい旬の時期は11月から1月頃と言われています。
えび芋は肉質がキメが細かく、煮込んでも煮崩れしにくいという特徴があるため、煮物やおでんなどに使われることが多いです。また、古くから京都を中心に作られていたことから京料理の食材として用いられ、「京芋(きょういも)」と呼ばれることもあります。
八頭は、土垂や石川早生などと比較して流通している量が少なく、末広がりの「八」と、子孫繁栄や人の「頭」になるようにという願いを込めた縁起物としておせち料理によく使われる高価な里芋です。
八頭はおせち料理向けに収穫され、年末一気に出荷されます。旬の時期は12月中旬からはじまり、寒い春前までです。お正月をすぎると価格が下がる傾向にあります。
八頭は土垂や石川早生よりも肉質がしっかりしているのが特徴で、加熱すると粘りが少なくほくほくした食感を楽しむことができます。
里芋の形は品種によって球形や楕円形など様々ですが、どの品種においてもふっくらとして丸みをおびているものを選ぶのが良いです。
ふっくらと丸みをおびているのは、生育環境が良かった印です。生育環境が悪いと形がいびつになるだけではなく、中身が変色している可能性も高いです。
生の状態の里芋はじゃがいものように固いです。柔らかくなってしまっているものは、傷んでいる可能性が高いので、触ってみて柔らかいものは避けた方が良いです。
また、手に持ったときにずっしりとした重みがあるものを選ぶことも大切です。軽いものは傷んでいて中がふかふかになってしまっていることがあります。
里芋は乾燥に弱い野菜です。そのため、あえて洗わずに泥付きのまま出荷・販売をして里芋を乾燥から守り鮮度を保っていることが多いです。洗浄しきれいな状態で販売されていることもありますが、泥付きの里芋の方が鮮度が高いので、泥付きで湿り気のある里芋を購入するのが良いです。泥付きのままであれば、購入後も鮮度を保った状態で保存することができます。
表面が乾燥していたり、ひびが入っているものは鮮度が落ちていますので選ばないようにしましょう。
里芋の皮は、よく見るとしま模様が入っているのがわかります。このしま模様が均等に入っている里芋は生育環境がよく、すくすくと順調に育った証拠です。泥付きのまま販売されている里芋は、しま模様が見えにくいこともありますが、しま模様をチェックして購入することも大切です。
里芋の可食部100gあたりに含まれる三大栄養素は下記の通りです。
エネルギー...53kcal
水分...84.1g
たんぱく質...1.5g
炭水化物...13.1g
脂質...0.1g
食物繊維...2.3g
糖質は10.8gです(炭水化物から食物繊維を引いた値)。
出典:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省)
里芋にはカリウムが豊富に含まれています。
カリウムはミネラルの一種です。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
その他、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きがあると言われています。
里芋はぬめりがあるのが特徴ですよね。里芋のぬめりは調味料の浸透率を下げたり、吹きこぼれの原因となるため下処理をしてぬめりを取ることが多いですが、里芋のぬめりにも体に良い成分が含まれています。
里芋のぬめりは「ガラクタン」などの成分によるものです。ガラクタンには免疫力向上作用が期待できます。
ぬめり成分は体に良いものですが、ぬめりにはシュウ酸も含まれています。シュウ酸は苦味やえぐみを感じさせるアクの原因物質で、結石を作る原因となったりカルシウムの吸収を阻害すると言われています。そのため、ぬめりにシュウ酸が含まれている以上、ぬめり取りは基本的に実施すべしということになりますが、皮つきのままぬめりとりを実施することでシュウ酸を落としながらも、ある程度のぬめりを残すことができます。
里芋は常温での保存が可能です。直射日光が当たらない風通しのよい場所(玄関、廊下など)で保存しましょう。里芋を常温保存した場合は約1ヶ月ほど保存することができます。
泥がついた状態で(泥が洗い流されている場合はしっかり乾燥させてから)1個ずつ新聞紙で包みます。新聞紙がない場合はキッチンペーパーでもOKです。新聞紙やキッチンペーパーが里芋を乾燥から守り、かつ湿気を吸収する役割を果たしてくれます。
里芋を紙袋に入れ、口を軽く折って常温で保存します。紙袋の方が風通しがよく、湿度を吸収するため常温での保存には◎。ポリ袋などは風を通しにくいので、水分が溜まって傷みの原因になりかねませんので避けましょう。
旬の時期に里芋をまとめて購入した場合は、ダンボールに入れて常温保存します。ダンボールの底に新聞紙を敷き、その上に里芋を並べ、里芋の上から新聞紙を被せます。新聞紙で里芋を挟むことで乾燥を防ぎ、湿度を吸収することが期待できます。
ダンボールの蓋は完全に閉じる必要はありません。通気性が悪くなってしまいます。また、ダンボールの代わりに発泡スチロールに入れて保存するのもOKです。
気温が高い時期は冷蔵保存がおすすめです。泥付きの里芋は2〜3週間、泥が洗い流されている里芋は1週間ほど保存が可能です。
冷蔵温度が高めに設定されている野菜室での保存が◎。
冷蔵保存時は、低温障害を防ぐために里芋を1個ずつ新聞紙もしくはキッチンペーパーに包みます。ポリ袋に入れて口を軽く閉じ、野菜室で保存します。
泥が洗い流されている里芋を冷蔵保存する際は、水分が残っていることで里芋が傷みやすくなるため、天日干しなどをして表面をよく乾かしてから保存するようにしましょう。
新聞紙やキッチンペーパーが湿ったら取り替えるようにしましょう。
料理で使いきれなかった里芋は、水に浸して冷蔵保存します。
皮を剥いた里芋を3〜5分ほど酢水につけ変色を防ぎます。密封保存容器に里芋を入れ、かぶるくらいの水を加えて蓋をして冷蔵保存します。
皮を剥いた里芋は傷みが早いので、2〜3日を目安に食べきるようにしましょう。
火を通した里芋も冷蔵保存することができます。予め茹でておくとすぐに調理に使えて便利です。
冷蔵保存する際は茹でた里芋を冷ましてから保存容器に入れ、蓋をして保存します。皮を剥いた里芋と同様に2〜3日以内に食べきるようにしましょう。
里芋をより長く(冷蔵と比べて)したい場合は、冷凍保存がおすすめです。里芋を冷凍保存する場合の保存期間目安は約1ヶ月です。
一番手軽な冷凍保存の方法は、皮付きのまま丸ごと冷凍する方法です。泥を洗い流し、キッチンペーパーで水けをしっかりと拭き取ります。1個ずつ(小さい里芋は2〜3個ずつ)ラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で保存します。ラップで包むことで霜がつくのを防ぎ、また解凍時にそのまま電子レンジで加熱することが可能です。
丸ごと冷凍する際は、凍るまでに時間がかかってしまうので、冷蔵庫の急速冷凍機能を使ったり、金属トレイにのせて冷凍することをおすすめします。
実は里芋は皮ごと食べることができるのです!素揚げしたり、グリルやオーブンでじっくり焼いて食べると美味しいですよ。
丸ごと冷凍した里芋の解凍方法は主に2つです。ラップに包んだまま電子レンジで2分(600W)加熱します。皮を剥く場合は、ラップから取り出し水に2〜3分ほど浸け、皮が柔らかくなったら手で剥きます。流水にあてながらだと、簡単に皮を剥くことができます。
冷凍する前に皮を剥いておけば、調理時の下ごしらえの時間が省けて◎。
皮を剥いた里芋を軽く塩もみして、ぬめりを取ります。
水洗いをしてキッチンペーパーで水けを拭き取り、冷凍用保存袋に入れて保存します。 冷凍室の急速冷凍機能を使う+金属トレイにのせて冷凍させることで、より短時間で冷凍できます。
皮を剥いて丸ごと冷凍した里芋は、凍ったまま調理に使用してOKです。
皮を剥いた里芋をカットしてから冷凍保存する方法もあります。料理に合わせてお好みの大きさにカットして保存します。
皮を剥いた里芋を軽く塩もみし、水洗いをします。キッチンペーパーで水けを拭き取り、輪切りなど料理に合わせてカットし、冷凍用保存袋に並べて保存します。輪切り以外には乱切りや半月切り、六方むきなどがあります。
カットして冷凍したのを煮物などに使う場合は、解凍せず凍ったまま使用します。急ぎの場合は電子レンジを使って解凍してもOKです。
下処理に時間は要しますが、調理時の時間が短縮されるので◎。煮たり、味付けをしてから冷凍する方法をご紹介します。
里芋をかために茹でて(基本の茹で方は下記参照)粗熱を取り、冷めたら冷凍用保存袋に入れて密封し冷凍室へ。
しっかりと冷めたことを確認してから冷凍するようにしましょう。解凍方法は、煮物などに使う場合は解凍不要で凍ったまま使用します。電子レンジで解凍してもOKです。
また、茹でる以外には電子レンジを使って火を通す方法もあります。
里芋の茹で方【基本】
1.里芋を水でよく洗い土をしっかり落とす
2.里芋の皮を厚めに剥く
3.ボウルに里芋と塩(適量)を入れ揉み込み、ぬめりを取る
4.大きい里芋は一口大にカットする
5.沸騰した湯(お米のとぎ汁ならさらに◎)で竹串がさっと通るまで茹でる
6.火が通ったら水で洗い流してぬめりを取る
里芋10個(約500g)の皮を剥き、だし汁1カップとめんつゆ大さじ2で竹串が通るまで煮ます。煮終わったら粗熱を取り、冷めたら煮汁ごと冷凍用保存袋に入れて冷凍保存します。
味を付けて冷凍した里芋は、煮物や炒め物などに使用すると◎。凍ったまま使用してOKです。
里芋を潰してから冷凍する方法も。
茹でた里芋を熱いうちに潰し、冷めたら冷凍用保存袋に平らになるように入れ冷凍室で保存します。
マッシュした里芋は、コロッケやグラタンなどに使用できます。解凍方法は、前日に冷蔵庫に移して自然解凍するか、電子レンジで2〜3分(600W)で加熱して解凍します。
その他にも、里芋を天日干ししたりレンジやオーブンで加熱して水分を飛ばし、乾燥させて保存する方法もあります。乾燥させた里芋は約1ヶ月ほど保存することができます。
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