里芋は皮ごと食べられるということをご存知でしょうか。本記事では里芋を皮ごと食べるメリットや皮ごと食べるときの注意点、調理方法などを詳しく解説します。
大根や人参など野菜の中には皮ごと食べられる野菜も多くあります。里芋は表面に泥汚れがついていることもあるため、基本的には皮を剥いて調理をすることが多い野菜ですが、実は里芋も皮ごと食べることができます。
皮ごと食べることができない食材は皮付近にポリフェーノールなどの苦味を感じる成分が多く含まれていたり、緑色に変色したじゃがいものようにソラニンやチャコニンといった中毒症状を起こす天然毒素を含んでいるものがあります。
里芋の皮付近にはシュウ酸とよばれる苦味やえぐみを感じさせる「アク(灰汁)」となる成分が含まれているものの、しっかりと下処理をすれば取り除くことができます。また、じゃがいものように日光に当たることで葉緑体が生成され緑に変色することもありますが、天然毒素は含まれていません。そのため皮ごと食べても問題ないと言えます。
里芋には土垂(どたれ)や石川早生(いしかわわせ)、えび芋など様々な品種があります。
一般的にスーパーなどで販売されている里芋は、土垂や石川早生です。土垂や石川早生は小ぶりなので皮ごとでも食べやすいです。
里芋を皮ごと食べる場合は、旬の時期の新鮮なものを選ぶと良いでしょう。里芋の旬は秋〜冬です。里芋は貯蔵性が高いため収穫してから貯蔵して1年中出荷されています。鮮度が悪いものは皮にカビが生えていたり傷んでいたりといったこともあるので、旬な時期の新鮮な里芋の方が安心です。
里芋は皮の有無に関わらず、必ず加熱調理をして食べましょう。
里芋には上述したようにシュウ酸が含まれています。シュウ酸とはいわゆる「アク」と呼ばれる苦味やえぐみを感じさせる成分の一つで、栄養素というよりも老廃物です。そのため、里芋は生の状態では苦味やえぐみを感じるため美味しく食べることができません。
また、里芋などのイモ類にはでんぷんが大量に含まれています。でんぷんとは、植物が光合成によって実や根などに蓄積した炭水化物です。でんぷんは水に溶けない性質があり、水にさらすと水の中に沈みます。水に沈殿することから「殿粉(デンプン)」という名称がつきました。
水に溶けない生のでんぷんは人間にとって非常に消化しにくい状態であり、食べ過ぎるとお腹を壊してしまうことがあります。
でんぷんには水分を吸収する性質があり、水を加えて加熱すると50℃を過ぎたあたりから粘りがではじめ、70℃を超えると全体が軟らかくなります。これを「糊化(こか)」と言います。でんぷんは糊化するとようやく消化酵素で分解できるようになり消化することができます。そのためでんぷんを大量に含んでいる里芋は、加熱をしてでんぷんを消化しやすい状態にしておく必要があります。
里芋の皮付近にはぬめり成分である「ガラクタン」などが含まれています。ガラクタンには免疫力向上作用が期待できます。そのため、皮ごと食べた方が栄養価は高くなります。
里芋の皮を剥くときに手が痒くなるのが嫌だという方は多いのではないでしょうか。里芋を皮ごと調理をすれば皮を剥いて手が痒くなることもありません。
ちなみに、痒みのもとになっているのは、里芋のぬめりです。上述したように里芋のぬめりのもとである粘物質はガラクタン(ガラクトースの重合体)が主体であり、これ自体に痒み成分は含まれていません。このぬめりに、シュウ酸が混ざることで、痒みの原因になります。
シュウ酸は、ほうれん草などの場合、水に溶けるカリウム塩やナトリウム塩の形で液胞という袋の中に閉じ込められていますが、植物によってはシュウ酸カルシウムの結晶となって液胞の中に含まれています。里芋にはシュウ酸カルシウムが針状結晶となっています。里芋の皮を剥くと手がかゆくなるのはシュウ酸カルシウムの結晶が肌を刺激するためであると言われています。
普段私達が食べている部分は、里芋の「塊茎」(茎の地下部)です。土の中で成長したものを掘り出して出荷しています。また、里芋は乾燥に弱いため、乾燥させないためにあえて洗わずに土がついた状態で出荷されたり、土がついたまま保管されることもあります。
泥汚れがついている場合は、堆肥(たいひ)に含まれる細菌がついている恐れがあります。食中毒といえば生肉や生魚などを食べることによって起こることが多いですが、実は土や堆肥にもボツリヌス菌などの食中毒の原因となる細菌がいる可能性があります。加熱をすることで死滅する菌もありますが、加熱をしても死滅しにくい菌もいるため、調理をする際にはしっかりと土汚れを落としておくことが大切です。
また、日本で栽培されている野菜の多くは栽培中の害虫の被害や病気などを防止したり、スムーズに成長するために薬剤が使われているため皮には農薬がついていることがあります。
日本で使われている農薬は、国に認められたもののみです。残留性が高く人体影響を及ぼすものや環境に影響を与えるほど毒性が強い農薬は、販売が禁止されていますし、使用が認められている農薬に関しても使用できる作物や時期、量などの使用基準が定められています。農薬が使われているからといって神経質になる必要はありませんが、健康に良い影響を与えるかといえばそうではありませんので、できるだけ余計なものが口に入るのは避けたいですよね。残留農薬を落とすという意味でもしっかりと洗ってから調理をしましょう。
里芋の表面にはひげ根がついていることも多いです。皮を剥けばひげ根は一緒に取り除かれて口に入ることはありませんが、皮ごと調理をする場合はひげ根も口に入ることがあります。
ひげ根に天然毒素など体に悪い成分が含まれているわけではないので口に入れても問題ありませんが、ザラザラとして口当たりが悪くなります。
ひげ根はたわしなどでこすりながら流水で洗うと取れるので、泥汚れを落とす際にひげ根がついていないか確認すると良いでしょう。
里芋は、保存環境が悪いことなどが原因で白カビや黒カビが生えてしまうことがあります。
表面に白いふわふわとしたホコリのようなものがついている場合は白カビ、黒く変色している部分がある場合は黒カビが生えています。
カビの菌は熱湯をかけるなどの加熱処理をしても安全に食べられるということはないのでカビが生えてしまっている場合は、皮を剥いて調理をしましょう。
実際にはカビの菌も多くは熱に弱いと言われていますが、カビの種類によっては加熱をしても死滅しない場合があります。また、一旦カビが繁殖すると菌が死滅しても「カビ毒」を発生させることがあり、中毒症状を引き起こす可能性もあります。カビ毒は加熱で除去することはできません。
表面だけにカビが生えていて、中まで侵食していなければ皮をむきカビが生えている箇所を取り除けば食べることができます。しかし、カビの胞子は目に見えないほど小さいため、カビが生えていない部分にもすでに移ってしまっている可能性もあります。心配な方や小さなお子様、高齢者の方などは食べるのを避けた方が良いでしょう。
出典:カビとカビ毒についての基礎的な情報(農林水産省)
里芋を皮ごと調理する方法には、まず鍋を使って茹でるという方法があります。
里芋を皮ごと茹でる場合は、まずしっかりと洗って泥汚れなどを落とします。汚れを落としたら、鍋に入れて里芋がかぶるくらいの水を入れ、加熱します。加熱時間は大きさや個数にもよりますが、だいたい15分程です。竹串などがスっと刺さるようになるまで様子を見ながら調節して加熱しましょう。
茹でると水溶性のアクも落とすことができます。また、シュウ酸カルシウムは水に溶けにくい性質がありますが、熱に弱いという性質があるため、シュウ酸カルシウムも落とすことができます。
里芋を皮ごと調理するときに、上述した茹でるという方法では里芋に含まれるビタミンCやカリウムなどの水溶性の成分が流出してしまいますが、蒸せば水溶性の成分の流出を最小限に抑えることができます。
里芋を皮付きのまま蒸すときは、茹でるときと同じように表面の汚れをまず落とします。汚れを落としたら、蒸し器(セイロ)にいれて10分〜20分ほど里芋が柔らかくなるまで蒸します。
一口大の大きさにそろえてカットしてから蒸しても良いです。大きさを揃えてカットすることでムラなく火を通すことができます。
ちなみに、里芋を皮ごと蒸したり茹でたりする「きぬかずき」と呼ばれる料理があります。里芋の茶色い皮と間から見える白い実が衣を着た女性の姿に似ていることから、「きぬかずき(衣被)」と呼ばれるようになったと言われています。
里芋を皮ごとレンジで加熱するという調理方法もあります。
レンジで加熱する場合は泥汚れを落としたあとに耐熱皿の上に乗せて、ふんわりとラップをして加熱します。里芋の大きさやレンジのワット数にもよりますが、100gの里芋を600Wのレンジで加熱する場合は2分半程度を目安に、様子を見ながら竹串などがスッと入るまで加熱しましょう。
レンジの場合はどうしても加熱にムラが出るというデメリットがあるため、茹でたり蒸す方がおすすめです。
皮付きの里芋は、汚れを落とし茹でるか蒸した後に、食べやすい大きさにカットしてフライパンで焼いて調理をすることもできます。
バター醤油などで焼くと、食欲を誘う香ばしい香りでご飯が進むおかずになります。フライパンを使ってホイル焼きにしても美味しいです。
皮付きの里芋は、皮付きのフライドポテトのように揚げて食べても美味く食べることができます。
揚げる場合は、茹でるか蒸した後に片栗粉などの衣をつけて油で揚げます。表面はカリッとしていて中は芋らしいホクホクとした食感を楽しむことができる一品です。お子様のおやつにもおつまみにも最適ですので、ぜひ試してみてください。
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