里芋を調理するときに黒い斑点がでてきたり筋が黒く変色してしまって驚いた経験がある方は多いのではないでしょうか。本記事では里芋が黒く変色する原因や対処法などを詳しく解説します。
里芋に黒い斑点や黒い筋が入ったり、加熱したら黒く変色して驚いたことがある方は多いのではないでしょうか。里芋が黒くなる原因は腐敗だけではありません。
里芋の皮を剥きカットしたときに黒くなるのは、里芋に含まれているアントシアニンが空気に触れることで酸化することが原因の一つであると考えられます。
アントシアニンはポリフェノールの一種です。ポリフェノールは主に植物の葉や花、果実などに含まれている渋みや苦味の成分になる化合物の総称です。構造の違いによって様々な種類があり、里芋に含まれているアントシアニンは紫色の色素です。例えば、なすや紫キャベツ、紫玉ねぎ、ブルーベリーなどが紫色をしているのはアントシアニンが多く含まれているためです。
アントシアニンは酸性の状態だと赤くなる性質があります。そのため空気に触れて酸化すると赤くなり、さらに酸化が進むと茶色、黒と変色していきます。里芋が黒く変色しているということは、酸化がかなり進んでいる状態です。
ちなみにアントシアニンは、アルカリ性の状態だと青くなり、緑、黄色と変色していきます。
生育中に病気にかかったことが原因で、里芋の断面に黒い斑点ができたり中心が黒く変色することもあります。里芋の断面を変色させる病気には「乾腐病」があります。
乾腐病は土壌から感染する病気で、生育中だけではなく貯蔵中にも発病することがあります。
乾腐病に感染すると、断面に赤い小斑点ができはじめ症状がひどい場合には一面に赤点が見られることがあります。病状が進行すると腐敗していき黒く見えたり中心が空洞化します。
出典:サトイモ乾腐病
里芋を茹でたときに黒く変色するのは、里芋に含まれているタンニンが化学反応を起こすことが原因であると言われています。
タンニンはアントシアニンと同じくポリフェノールの一種ではありますが、構造上の名称ではなく強い結合能力をもつ一部の物質に対する名称です。タンニンは鉄と結びつくと化学反応が起こり黒っぽく変色する性質があります。そのため、アルミ製や鉄製の鍋で里芋を茹でると化学反応が起こり、変色することがあります。これは「水煮黒変」といって、れんこんなどの野菜にも起こる現象です。
里芋の表面が黒く変色している場合は、黒カビが生えている可能性があります。里芋は泥がついた状態で保存することも多いため、見分けがつきにくいですが洗ったりこすったりしても落ちない場合は黒カビが生えている可能性が高いです。
黒カビは、クラドスポリウム属の病原菌で、170種以上いると言われています。その中でも代表的なクロカビは、クラドスポリウム・クラドスポリオイデスとクラドスポリウム・スフェロスパーマムです。黒カビは空気中に舞っていて、繁殖できる場所を見つけると一気に増えていきます。多湿の場所を好み、食べ物以外でもお風呂のサッシやエアコンの内部などに多く見られます。
ちなみに、里芋には黒カビだけではなく白カビが生えることもあります。里芋の表面に白いふわふわとした綿のようなものがついている場合は白カビが生えています。
里芋が黒く変色する理由としてシュウ酸の含有量が多いことが挙げられることがあります。シュウ酸は栄養素というよりも老廃物で、苦味やエグみの正体です。
ほうれん草やたけのこなどにも多く含まれている成分で、シュウ酸が多く含まれている野菜はシュウ酸を落とすために下茹でが必須となります。
里芋にもシュウ酸が含まれていることは確かなのですが、シュウ酸は無色ですのでシュウ酸が原因となって黒く変色するとは考えにくいと言えます。
出典:農林水産省
アントシアニンが酸化して変色している場合は腐敗しているわけではないので食べることができますが、酸化が進んでいるということは鮮度が落ちているということですので、早めに食べきるようにしましょう。
タンニンが化学反応を起こすことによって変色している場合も人体に害はありませんので、問題なく食べることができます。
乾腐病などの病気にかかってしまったことが原因で腐敗が進み黒く変色してしまっている場合は、残念ですが破棄しましょう。
黒カビが生えてしまった場合は、表面だけであれば皮を厚く剥いて取り除けば食べることができます。一度カビの生えた食品は、カビを除いてもカビの菌などが内部に入り込んでいる可能性があるため基本的には破棄する必要がありますが、里芋のように固い野菜は密度が高いため表面にカビが生えただけであれば中まで侵食している可能性が低いため食べることができます。ただし、皮だけではなく中までカビが侵食してしまっている場合は食べることはできませんので破棄してください。カビの胞子は目に見えないほど小さいため、カビが生えていない部分にもすでに移ってしまっている可能性もあります。カビは、カビ毒を発生させ、中毒症状を起こすこともありますので心配な方や小さなお子様、高齢者の方などは表面にカビが生えているだけであっても食べるのを避けた方が良いでしょう。
病気やカビでなければ変色していてもそのまま食べることができますが、気になる場合はカットして食べると良いでしょう。
特にアントシアニンが酸化してしまったことによって変色している場合は、食感が悪くなっていたり味が落ちているため変色している部分はカットした方が美味しく食べることができます。
里芋はカットしていない状態でも、収穫してから時間が経つと酸化が進みカットするとすでに赤い斑点や赤い筋が入っていることがあります。赤い斑点や筋が入ってしまっている里芋はカットするとさらに酸化が進み、すぐに黒くなってしまいます。
そのため、購入するときはできるだけ新鮮なものを選ぶのが良いです。新鮮な里芋には下記のような特徴がありますので、スーパーなどで購入する際にぜひ参考にしてください。
ふっくらと丸みをおびている
押した時に実が固くずっしりと重い
表面に泥が付いていて湿っている
はっきりとしたしま模様が均等に入っている
皮の表面が乾燥していたり、傷やひび割れがある里芋は傷んでしまっている可能性があるので、避けるか購入した場合は傷んでいる部分を切り落としてなるべく早く食べるようにしましょう。
上述したようにアントシアニンは空気に触れることで酸化が進むので、切った里芋は酸化が進んで変色する前にすぐに調理しましょう。
すぐに調理できない場合は、水につけておくと良いです。水につけておくことで空気に触れなくなるため、酸化による変色を防ぐことができます。また苦味やえぐみの原因となるシュウ酸は水溶性であるため、水につけておくことでシュウ酸を落とすこともできます。
タンニンの化学反応は鉄に反応して起こるため、茹でるときは銅またはテフロン加工の鍋を使うようにすると変色を防ぐことができます。
水にも微量の鉄が含まれているので、アルミ・鉄製以外の鍋を使えば必ずしも変色を防ぐことができるというわけではありませんが、アルミ・鉄製以外の鍋を使った方が変色する可能性は低くなります。
里芋は暖かい場所で育つ野菜で寒さに弱いという特徴があり、5℃以下の環境では低温障害を起こしやすくなり、傷んでしまいます。暑い環境に適応している野菜であるため、低温に耐えうる能力が備わっていないのです。
そのため、生の状態で冷蔵庫に入れて保存をするなど低温の環境に置かれていると、ストレスにより変色の原因となるアントシアニンの含有量が増加してしまいます。
里芋を保存するときは低温にならないように注意することも大切です。里芋の詳しい保存方法は下記で紹介します。
正しい保存方法は低温障害を防ぐだけでなく、カビの繁殖なども予防することもできます。
里芋は常温での保存が可能です。直射日光が当たらない風通しのよい場所(玄関、廊下など)で保存しましょう。里芋を常温保存した場合は約1ヶ月ほど保存することができます。
泥がついた状態で(泥が洗い流されている場合はしっかり乾燥させてから)1個ずつ新聞紙で包みます。新聞紙がない場合はキッチンペーパーでもOKです。新聞紙やキッチンペーパーが里芋を乾燥から守り、かつ湿気を吸収する役割を果たしてくれます。
里芋を紙袋に入れ、口を軽く折って常温で保存します。紙袋の方が風通しがよく、湿度を吸収するため常温での保存には◎。ポリ袋などは風を通しにくいので、水分が溜まって傷みの原因になりかねませんので避けましょう。
旬の時期に里芋をまとめて購入した場合は、ダンボールに入れて常温保存します。ダンボールの底に新聞紙を敷き、その上に里芋を並べ、里芋の上から新聞紙を被せます。新聞紙で里芋を挟むことで乾燥を防ぎ、湿度を吸収することが期待できます。
ダンボールの蓋は完全に閉じる必要はありません。通気性が悪くなってしまいます。また、ダンボールの代わりに発泡スチロールに入れて保存するのもOKです。
里芋を常温で保存する際、土に埋めておくという方法もあります。土に埋めて保存する方が、より長く保存することができ、約2ヶ月ほど日持ちします。
30〜40cmほどの深さの穴を掘り、そこに里芋を入れ土を被せて保存します。土の中では温度や湿度が一定に保たれるので◎。プランターでも保存可能なので、ベランダなどでも保存が可能です。
気温が高い時期は冷蔵保存がおすすめです。泥付きの里芋は2〜3週間、泥が洗い流されている里芋は1週間ほど保存が可能です。
冷蔵温度が高めに設定されている野菜室での保存が◎。
冷蔵保存時は、低温障害を防ぐために里芋を1個ずつ新聞紙もしくはキッチンペーパーに包みます。ポリ袋に入れて口を軽く閉じ、野菜室で保存します。
泥が洗い流されている里芋を冷蔵保存する際は、水分が残っていることで里芋が傷みやすくなるため、天日干しなどをして表面をよく乾かしてから保存するようにしましょう。
新聞紙やキッチンペーパーが湿ったら取り替えるようにしましょう。
料理で使いきれなかった里芋は、水に浸して冷蔵保存します。
皮を剥いた里芋を3〜5分ほど酢水につけ変色を防ぎます。密封保存容器に里芋を入れ、かぶるくらいの水を加えて蓋をして冷蔵保存します。
皮を剥いた里芋は傷みが早いので、2〜3日を目安に食べきるようにしましょう。
火を通した里芋も冷蔵保存することができます。予め茹でておくとすぐに調理に使えて便利です。
冷蔵保存する際は茹でた里芋を冷ましてから保存容器に入れ、蓋をして保存します。皮を剥いた里芋と同様に2〜3日以内に食べきるようにしましょう。
里芋をより長く(冷蔵と比べて)したい場合は、冷凍保存がおすすめです。里芋を冷凍保存する場合の保存期間目安は約1ヶ月です。
一番手軽な冷凍保存の方法は、皮付きのまま丸ごと冷凍する方法です。泥を洗い流し、キッチンペーパーで水けをしっかりと拭き取ります。1個ずつ(小さい里芋は2〜3個ずつ)ラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で保存します。ラップで包むことで霜がつくのを防ぎ、また解凍時にそのまま電子レンジで加熱することが可能です。
丸ごと冷凍する際は、凍るまでに時間がかかってしまうので、冷蔵庫の急速冷凍機能を使ったり、金属トレイにのせて冷凍することをおすすめします。
実は里芋は皮ごと食べることができるのです!素揚げしたり、グリルやオーブンでじっくり焼いて食べると美味しいですよ。
丸ごと冷凍した里芋の解凍方法は主に2つです。ラップに包んだまま電子レンジで2分(600W)加熱します。皮を剥く場合は、ラップから取り出し水に2〜3分ほど浸け、皮が柔らかくなったら手で剥きます。流水に当てながらだと、簡単に皮を剥くことができます。
冷凍する前に皮を剥いておけば、調理時の下ごしらえの時間が省けて◎。
皮を剥いた里芋を軽く塩もみしてぬめりを取ります。水洗いをしてキッチンペーパーで水けを拭き取り、冷凍用保存袋に入れて保存します。
冷凍室の急速冷凍機能を使う+金属トレイにのせて冷凍させることで、より短時間で冷凍できます。
皮を剥いて丸ごと冷凍した里芋は、凍ったまま調理に使用してOKです。
皮を剥いた里芋をカットしてから冷凍保存する方法もあります。料理に合わせてお好みの大きさにカットして保存します。
皮を剥いた里芋を軽く塩もみし水洗いをします。キッチンペーパーで水けを拭き取り、輪切りなど料理に合わせてカットし、冷凍用保存袋に並べて保存します。輪切り以外には乱切りや半月切り、六方むきなどがあります。
カットして冷凍したのを煮物などに使う場合は、解凍せず凍ったまま使用します。急ぎの場合は電子レンジを使って解凍してもOKです。
下処理に時間は要しますが、調理時の時間が短縮されるので◎。煮たり、味付けをしてから冷凍する方法をご紹介します。
里芋をかために茹でて(基本の茹で方は下記参照)粗熱を取り、冷めたら冷凍用保存袋に入れて密封し冷凍室へ。
しっかりと冷めたことを確認してから冷凍するようにしましょう。解凍方法は、煮物などに使う場合は解凍不要で凍ったまま使用します。電子レンジで解凍してもOKです。
また、茹でる以外には電子レンジを使って火を通す方法もあります。
里芋の茹で方【基本】
1.里芋を水でよく洗い土をしっかり落とす
2.里芋の皮を厚めに剥く
3.ボウルに里芋と塩(適量)を入れ揉み込み、ぬめりを取る
4.大きい里芋は一口大にカットする
5.沸騰した湯(お米のとぎ汁ならさらに◎)で竹串がさっと通るまで茹でる
6.火が通ったら水で洗い流してぬめりを取る
里芋10個(約500g)の皮を剥き、だし汁1カップとめんつゆ大さじ2で竹串が通るまで煮ます。煮終わったら粗熱を取り、冷めたら煮汁ごと冷凍用保存袋に入れて冷凍保存します。
味を付けて冷凍した里芋は、煮物や炒め物などに使用すると◎。凍ったまま使用してOKです。
里芋を潰してから冷凍する方法も。
茹でた里芋を熱いうちに潰し、冷めたら冷凍用保存袋に平らになるように入れ冷凍室で保存します。
マッシュした里芋は、コロッケやグラタンなどに使用できます。解凍方法は、前日に冷蔵庫に移して自然解凍するか、電子レンジで2〜3分(600W)で加熱して解凍します。
その他にも、里芋を天日干ししたりレンジやオーブンで加熱して水分を飛ばし、乾燥させて保存する方法もあります。乾燥させた里芋は約1ヶ月ほど保存することができます。
一般的にスーパーなどで販売されている里芋は通常、皮は茶色く中は白色をしています。カットしたときに全体的に黒色や茶色など通常の色ではない色に変色してしまっている場合は、腐敗している可能性が高いです。
里芋は生理障害などが原因で茶色など様々な色に変色してしまうこともあり、必ずしも変色=腐敗というわけではありませんが、全体的に変色してしまっている場合はアクが強かったりなど味も食感も悪くなってしまっていることが多いので、美味しく食べるのは難しいです。
生の状態の里芋は、生の状態のじゃがいもが固いのと同じように固いです。触ってみてすぐにヘコんでしまうなどぶよぶよとした感触がある場合は、中が腐敗してしまっている可能性が高いです。
表面には何の異変も見られなくても触ってみると妙に柔らかかったりすることがあるので、見た目だけではなく触って確認することも大切です。
里芋が溶け出して水っぽくべちゃべちゃしている場合は、かなり腐敗が進んでいる状態です。
里芋に限らず食材の多くは腐敗が進むと柔らかくなり、次第に溶け出していきます。溶け出すぐらいまで腐敗が進んでいると、異臭がしていることも多いです。
里芋は多少土臭いことはありますが、そこまで臭いのきつい野菜ではありません。普段とは異なる酸っぱい臭いがする場合は、腐敗している可能性が高いです。
食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がしたりします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象があるときに「腐敗」と呼ばれます。
腐敗が進むと生ゴミのような臭いがすることもあります。臭いや味に異変を感じたら直ちに食べるのを止め、すべて廃棄するようにしましょう。
里芋に限ったことではありませんが、表面や内部など特にカビが生えているように見えなくても、カビの臭いがすることがあります。この場合はカビが目に見えない状態でも胞子が入り込み生育している可能性が高いです。この場合は早めに食べきるか、心配な方は破棄するのが無難です。
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