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トマトの鉄分の含有量は多い?少ない?他の野菜と比較して解説

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トマトの鉄分の含有量は多い?少ない?他の野菜と比較して解説

トマトの栄養素・成分といえばリコピンですが、鉄分はどのくらい含まれているのでしょうか?本記事では他の野菜や食品と比較しながら、トマトに含まれる鉄分の量が多いのか少ないのか解説していきます。

鉄分とは

鉄分の働き

鉄分はミネラル成分のひとつです。体に必要な栄養素で、成人のからだには約3〜5gの鉄が存在しています。

鉄は大きく分けて2種類あります。ひとつは機能鉄といって赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。

もうひとつは貯蔵鉄といって肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられており、機能鉄が不足すると体内に放出されます。また、酵素の構成成分で、エネルギー代謝を助ける働きがあります。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

鉄には2種類ある

鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。肉類や魚介類に多く含まれるのがヘム鉄で、小松菜やほうれん草などの野菜に多く含まれるのが非ヘム鉄です。

ヘム鉄の吸収率は10~20%、非ヘム鉄は2~5%とかなり差があります。非ヘム鉄が吸収されにくいのは、鉄分子がたんぱく質に覆われているためです。鉄分の吸収を促進するビタミンCと一緒に摂取するのがよいでしょう。

鉄分の1日の摂取目安量

鉄分の1日の摂取目安量(推奨量)は、月経ありの15〜49歳の女性は10.5mg、50〜64歳だと11.0mgです。月経なしの女性は15〜29歳が8.5mg、30〜64歳は6.5mg、65歳以上は6.0mgです。男性の場合、15〜17歳は10.0mg、18〜74歳は7.5mg、75歳以上は7.0mgです。

また、鉄分は摂取しすぎると亜鉛の吸収を抑制します。ちなみにその亜鉛を摂りすぎると、今度は銅の吸収を抑制してしまいます。通常の食生活では、過剰摂取の心配はそこまでありませんが、慢性的に摂取しすぎると便秘や吐き気などといった症状を引き起こします。そのため、鉄の1日あたりの耐用上限量は、成人女性で40mg、成人男性で50mgとされています。

出典:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)

貧血は特に女性に多い

貧血は、血液中の赤血球の中のヘモグロビンが減少した状態のことです。ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ働きがあるため、貧血になると酸素が行き渡らなくなり、めまいや立ちくらみ、動悸、だるさなどの症状が起こります。

女性がなりやすい原因のひとつは月経です。経血と一緒に鉄分が流出するため、鉄分不足になりヘモグロビンが作られにくくなります。また、妊娠中や授乳中も、胎児の成長や母乳の生成に鉄分が多く必要になり、鉄分の消費量が増えるので貧血になりやすくなります。他にも更年期やストレスなども貧血の原因となります。

トマトの鉄分の含有量

カットしたトマト

トマトは鉄分が豊富な食品とは言えない

トマト100gあたりの鉄分の含有量は0.2mgです。

トマトにも鉄分は含まれていますが、豊富だとは言えないでしょう。

例えば、1日の鉄の摂取目安量をトマトだけで摂取しようとすると、成人男性なら3,750gもトマトを食べなくてはいけない計算になります。鉄分をしっかり摂取しようと考えるならば、トマトだけでは不可能ということになります。

他の野菜と比べると

トマトと主要野菜の鉄分の含有量を比較した表

100gあたり

  • 小松菜:2.8mg

  • ほうれん草:2.0mg

  • ブロッコリー:1.3mg

  • なす:0.3mg

  • トマト:0.2mg

野菜の中だと、ほうれん草や小松菜などが鉄分が豊富です。

鉄分が豊富な食品

鉄分が豊富な食品には、ひじきがあります。その他にも、レバーや牛もも肉などの赤みの肉、しじみや赤貝、ホタテなどの魚介類などがあります。

それぞれ100gあたり

  • 豚レバー:13mg

  • しじみ:8.3mg

  • 赤貝:5.0mg

  • 牛もも肉:2.8mg

  • ひじき:2.7mg

  • ホタテ:2.2mg

  • かつお:1.9mg

です。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

鉄分をもっと摂りたい方へ

日常的に鉄分をもっと摂取したい方は、鉄玉を鍋ややかんに入れたり、鉄製のフライパンや鍋を使うのがおすすめです。

鉄玉

南部鉄でできた鉄玉で、気軽に手軽に鉄分を摂取することが可能です。料理を作る時にフライパンや鍋に入れたり、お湯を沸かす時にやかんや電子ケトルに入れることで鉄が溶け出します。鉄は錆びやすいので、使用後はキッチンペーパーなどでしっかりと水けを拭き取るようにしましょう(とても熱くなっているのでやけどに注意してください)。

鉄フライパン

ホーローと鋳鉄を組み合わせることで、素材本来の旨みを凝縮させるフライパンです。ホーローコーティング済みなので、取り扱いが楽なのも◎。IH対応。鉄フライパンに初めて挑戦する方に特におすすめの商品です。

トマトに豊富に含まれる栄養素

白いボウルに入った複数のトマト

最後にトマトに豊富に含まれる栄養素・成分を解説します。トマトの詳しい栄養素に関してはこちらの記事を参考にしてください。

リコピン

トマトの栄養素の中でも注目してもらいたいのは「リコピン」という栄養素。多くの人が耳にしたことであろうリコピンですが、実はトマトの赤色の成分なのです。トマトのほかにもスイカや金時人参、柿にも含まれています。

リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上といわれています。肌や血管の老化を防いだり動脈硬化などを予防する効果が高いことがわかっています。

また熟すにつれてリコピン(と、カロテン)が増加し、緑色素のクロロフィルが消失するため赤色になります。

GABA(ギャバ)

GABA(ギャバ)はアミノ酸の一種です。野菜や果物に多く、その中でもトマトは含有量が高くなっています。ただし、明確な含有量は分かっていません。

GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けるとされています。

また、GABAはコレステロールと中性脂肪の増加の抑制する働きもあります。

グルタミン酸

トマトはグルタミン酸が豊富に含まれており、熟すにつれて量が増えます。ビタミンB2と合わせると吸収率が上がります。

グルタミン酸は体内で合成することが出来る非必須アミノ酸の一種で日本で最初に発見されたうま味物質です。

興奮系の神経伝達物質として働き脳機能を活性化させるので記憶力や学習能力、そして集中力を高める効果があります。また、脳の機能にダメージを与えるアンモニアを解毒・排出を促進する効果があります。さらに、血圧を下がります。

グルタチオン

グルタチオンは3つのアミノ酸が連なって出来たトリペプチドです。レバーや魚などに多く含まれる成分ですが、野菜の中だとトマトは比較的多く含まれています。

グルタチオンは肝臓の解毒作用に必要となるため、肝機能を強化する効果があります。また、抗酸化作用による生活習慣病予防の効果が期待できます。

さらに、今注目されているのがグルタチオンの美白効果です。シミの原因を予防し、美白のための治療薬としても使われています。

クエン酸

トマトの酸味はクエン酸によるものです。梅干しや柑橘系などに多く含まれている成分です。

クエン酸は食べた物を体内でエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。そのため疲労回復に効果的と言われています。筋肉痛の予防にも役立ちます。さらに代謝アップにもつながるので、ダイエット効果も期待できます。

また、カルシウムや鉄、マグネシウムなどの吸収しにくいミネラルを吸収しやすくする働きもあるので、吸収されにくいと言われるミネラルと一緒に摂取するといいでしょう。この効果をキレート効果と呼びます。

β-カロテン

「トマトの赤色はカロテンではなくリコピンです」と言われることがあり、間違いではありませんが、トマトにはβ-カロテンも豊富に含まれています。

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス