シャドークインというじゃがいもの品種をご存知でしょうか。シャドークイーンは一般的なじゃがいもとは異なり紫色をしているじゃがいもです。本記事ではシャドークイーンについて詳しく解説します。
シャドークイーンはじゃがいもの品種の一種です。
形は長い楕円形をしているため一般的に家庭で食べられることが多いメークインに似ていますが、皮は黒に近い濃い紫色をしていて、実はあざやかな紫色をしているという大きな特徴があります。
黒に近い紫の色合いがまるで影のようであること、メークイーンのような形をしているということに由来して「シャドークイーン」と名付けられました。
じゃがいもには多くのでん粉が含まれていますが、でんぷんの含有量は品種によって異なります。シャドークイーンのでん粉量はさほど多くないため粉っぽさがありません。実はメークインとさつまいもの中間くらいの粘性があり、加熱をするとねっとりとした食感になります。
シャドークイーンは、北海道農業研究センターが紫肉品種である「キタムラサキ」の開放受粉種子から選抜された物を育成して誕生しました。平成18年に登録された比較的新しい品種ですが、見た目の美しさや栄養価から知名度をあげ需要が高くなってきています。
シャドークイーンは、初夏の5月中旬から6月の下旬に収穫されます。
じゃがいもには品種によって春に植えるのが向いているものと、秋に植えるのが向いているものとがあります。シャドークイーンは春植えに向いている品種であるため、2月中旬から3月中旬に種芋を植えて育て初夏に収穫することが多いです。ただし、北海道や東北の一部地域などでは時期が気候の違いによりずれることもあります。
休眠期間とは、収穫してから芽が出るようになるまでの期間のことを言います。休眠期間を終えたじゃがいもは、芽が出るのに適した環境下(20℃前後)に置くと成長し始めます。シャドークイーンのように休眠期間が長い品種は、秋植えをしても休眠期間を終えていないためうまく芽が出ないことがあるため春植えが適しているとされています。
シャドークイーンの主な産地は北海道です。現在生産されているじゃがいもの品種のほとんどは北海道で生産されており、じゃがいもは生産量・収穫量とも全国1位を誇ります。
シャドークイーンの皮や実の鮮やかな色はアントシアニンと呼ばれる成分によるものです。紫色のじゃがいもの品種にはシャドークイーンの他にも、きたむらさきやインカパープルなどがありますが、シャドークイーンはきたむらさきやインカパープルと比較してアントシアニンの含有量が約3倍多いです。
アントシアニンはポリフェノールの一種で紫色の色素となり、ブルーベリーなどにも多く含まれていることで知られています。
ポリフェノールには抗酸化作用があり、動脈硬化や老化予防、生活習慣病予防にも効果が期待できます。さらにはコレステロール値を下げる働きもあると言われています。心臓を守る作用や、病気に伴う血管新生(新しく血管ができること)を抑える効果などの研究も進められており、一定の効果があると報告されています。
アントシアニンには、目の網膜にあるロドプシンの再結合の作用があるため、眼精疲労の回復効果があるといわれている他、肝臓の働きを活性化する効果があるといわれています。
男爵などの一般的なじゃがいもはビタミンCが豊富な野菜として知られており、シャドークイーンにも100g辺りに35mgものビタミンCが含まれていると言われています。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成するのに必要不可欠な栄養素です。身体を作っているたんぱく質の30%がコラーゲンで、細胞と細胞を繋ぐ接着剤のような役割を果たしており、皮膚や血管、筋肉、骨などを丈夫にします。また、ビタミンCはシミのもとになるメラニン色素の生成を抑えたり、肌に弾力やハリをもたらすため、美肌づくりにも重要な栄養素です。
さらに、ビタミンCの抗酸化力はトップクラスですので、細胞を酸化から守り老化や生活習慣病の予防にもなります。白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。
また抗ストレスビタミンと言われているように、ストレス時に副腎に働きかけてアドレナリンの分泌を促す作用もあり、ストレスを撃退します。
多くの動物が体内でビタミンCを合成することができますが、人間は合成に必要な酵素がないため食品から摂取するしかありません。ビタミンCは吸収率が高いですが、一定量を超えると吸収されないまま排出されてしまいます。1日100〜200mg程度摂取すると吸収率は80〜90%と高いですが、1g以上摂取すると50%以下に低下します。また喫煙者はビタミンCの消費が激しいので、一般成人の2倍は摂ることをおすすめします。
シャドークイーンには男爵などの一般的なじゃがいもと同じようビタミンB群も含まれています。
ビタミンB1は糖質がエネルギーに変換されるのをサポートする栄養素です。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があるといわれています。
昔、日本人の主食は精白米ではなく玄米で、その玄米にはビタミンB1が含まれていたために、意識していなくても摂取することができました。しかし、昨今ではビタミンB1が豊富に含まれている米ぬかの部分が、精白米にする段階でほとんど取り除かれてしまいます。他にもお菓子やジュースなどの過剰摂取でビタミンB1は不足するとも言われているため、積極的に摂取したい栄養素です。
ビタミンB6はたんぱく質の代謝や再合成に関わり、エネルギーや筋肉、血液などを作るときに必要な栄養素です。健康な皮膚や髪、爪、血液、粘膜を作っています。そのためたんぱく質を多く摂る人ほど必要な栄養素となっています。特に食事をしていないときや、運動していて肝臓や筋肉からエネルギー補給をするときに働きます。肝臓や筋肉でアミノ酸やグリコーゲンをエネルギーに変えるのですが、ここでビタミンB6がスイッチのような形で作用するため、ビタミンB6が不足すると運動時や睡眠中などにエネルギーが補充しづらくなります。
また、ビタミンB6はアミノ酸の代謝を促し、アドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質の合成を助け、血中のホモシステイン値を防ぎ、認知症のリスクを軽減するといわれています。その他にも、免疫機能を正常に保ちアレルギー症状を緩和する効果や月経前症候群を軽減する効果もあると言われています。
ビタミンB6はビタミンB2と一緒に摂取すると効果アップが期待できるといわれているためビタミンB2を多く含む卵や納豆や、肉や魚などの動物性の食品と一緒に摂ると良いでしょう。
ナイアシンは糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素を代謝する際に、補酵素として酵素の働きを助ける栄養素で、酵素の構成成分として体内に最も多く存在するビタミンです。さらに、すべての酵素の2割がナイアシンを使って働きます。そのため、ナイアシンが欠乏すると口角炎や食欲不振、倦怠感、さらには不安感などの精神的な症状も出てしまいます。
また、血行促進作用があるため、冷え性を改善したり、血行不良による頭痛にも効果的です。さらに、アルコールの分解にも働き、2日酔いにも効果があると言われています。ただその分大量にお酒を飲むとナイアシン不足になりやすいです。現在の日本の食生活でナイアシンが不足する心配はありませんが、お酒を飲む人は気をつけましょう。
じゃがいもはカリウムを多く含む食品としても知られており、シャドークイーンにもカリウムが含まれています。
カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など様々な効果があると言われている成分です。腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保つ効果が期待できます。また、心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあると言われています。
また、カリウムは水に溶けやすい性質があります。じゃがいもなどの根菜類に含まれるカリウムは比較的損失が少なくないといわれていますが、茹でると50%以上が失われてしまうので、スープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしナトリウムを摂りすぎないよう塩分を控えた薄味にしましょう。
シャドークイーンは、紫色のような見た目をしていることから「さつまいものような味がするのでは?」と想像する方も多いかと思いますが、味は一般的に食べられているじゃがいもと同じです。
特徴的なのは、やはり滑らかな口当たりです。上述したようにシャドークイーンのでん粉量はさほど多くないため粉っぽさがなく、加熱をするとねっとりとした食感になります。
シャドークイーンの実の鮮やかな色は加熱しても残ります。また、男爵やメークインなどの一般的なじゃがいもは皮を剥いて切ると、空気に触れることにより酸化されピンク→赤→茶→紫→黒と変色してしまいますが、シャドークイーンは酸化による変色が起こりにくいです。
そのため、シャドークイーンは鮮やかな紫色を活かした料理に使われることが多いです。
調理法としては、炒めものや揚げ物に向いています。
シャドークイーンの実はメークインのように粘性がありますが煮崩れはしやすいです。また、シャドークイーンの紫色の色素であるアントシアニンは水に溶けやすい成分なので煮物など水分の多い調理をすると、他の食材に色移りしてしまい見た目を損ねることがあります。
シャドークイーンを薄くスライスして揚げると、色鮮やかな紫チップスを作ることができます。一般的なクリーム色のじゃがいもと一緒に作れば見た目でも楽しめるカラフルチップスになり、お子様のおやつにもぴったりです。
カロリーが気になる方は、油で揚げずにレンジで温めて水分を飛ばしてチップスにすることでカロリーを抑えることができます。レンジで作る場合は、皮を剥き薄くスライスしたシャドークイーンを水にさらした後にキッチンペーパーで水気を拭き取り、クッキングシートを敷いた皿に並べて塩こしょうをし、500wで5分程加熱して完成です。
味は一般的なじゃがいもで作るポテトチップスと同じなので、コンソメ味にするなど様々なフレーバーを楽しむこともできます。
シャドークイーンはメークインのように粘性のあるタイプのじゃがいもなので、マッシュポテトにすると口当たり滑らかな仕上がりになります。
マッシュポテトを作る際は、シャドークイーンを茹でてからマッシュすると色があせやすいため蒸すかレンジで温めてからマッシュするのがおすすめです。
一般的なポテトサラダはにんじんなどのその他の野菜で彩りを加えることが多いかと思いますが、シャドークイーンを使えば、他の食材を使わずともインパクトのある一品に仕上がります。
もちろん味は一般的なじゃがいもと同じなので、にんじんや玉ねぎなどその他の食材を加えてもOKです。茹でたシャドークイーンをサラダに使うと他の食材に色移りしてしまうことがあるので、気になる場合は蒸すかレンジで温めたシャドークイーンを使うと良いです。
シャドークイーンを使ってコロッケなどの揚げ物を作ることもできます。男爵のようにでん粉量が多い品種ではないので、ホクホクのコロッケを楽しみたいという方には物足りなさを感じるかもしれませんが、口当たりの良いコロッケに仕上がります。
シャドークイーンで作ったコロッケは鮮やかなので、お弁当のおかずとして入れるのもおすすめです。
彩り鮮やかなシャドークイーンはポタージュやビシソワーズなどのスープを作るのにもぴったりです。
ポタージュを作るときは、皮を剥き薄切りにしたシャドークイーンと玉ねぎを炒めたものとコンソメを入れて柔らかくなるまで煮た後、ブレンダーやミキサーを使ってなめらかにし、生クリーム、牛乳または豆乳を加えて煮込んで完成です。ビシソワーズにしたいときは、ポタージュを冷蔵庫で冷やします。
上述したように他の具材に色移りしてしまうため、スープなどの汁物にしたいときはポタージュやビシソワーズがおすすめです。
加熱したシャドークイーンを潰して生地にまぜこめば、クッキーやパウンドケーキ、チーズケーキなどのスイーツを作ることもできます。
アントシアニンなどの栄養素が多く含まれていますので、栄養価が高まりお子様のおやつにもピッタリです。
シャドークイーンは、育てやすい品種のじゃがいもであるため家庭菜園でも栽培することが可能です。種芋は、園芸店やホームセンターやインターネット通販でも購入することができるので、手軽に栽培を始めることができます。
上述したように、シャドークイーンは春植え向きの品種ですので、1~3月に植えるのが良いです。シャドークイーンは日当たりの良い場所を好みますので、できるだけ日当たりの良い場所に植えましょう。
まず種イモの芽のあるところを均等に分けるように、1個を2~4個にカットします。カットした種芋は切り口を1日〜2日程日光に当てます。日光にあてておくことで芽が伸びやすくなります。
日光に当てた種芋を切り口を上にして植え穴に置き、上から5~6cm土をかけてたっぷり水をやります。伝統的な方法では切り口を下にしますが、切り口を上にすると発芽は遅れるものの、根がスムーズに生えて元気な強い芽だけが伸びてくるので病害虫に強い株になるので、家庭菜園の場合は切り口を下にするのがおすすめです。
水やりは土の様子を見て、表面が乾いていたらたっぷり水やりをします。
芽が伸びて草丈が10~15cmまで成長したら、元気の良い芽を1~2本残して他の芽ははさみで根元から切り取ります。根元に化成肥料を入れた土をかけて増し土をし、つぼみがつき始めたら2回目の増し土をします。成長してきた芋に日光が当たってしまうと天然毒素であるソラニンやチャコニンが生成されてしまうので、土から芋が出ないようにすることが大切です。
花が咲き終わり地上部が黄色くなってきたら、丁寧に掘り起こして収穫します。
インカパープルは1990年に北海道で誕生した品種です。赤色というよりは紫に近く、紫芋のような色をしていることから「インカパープル」と名付けられました。
形は楕円形で、シャドークイーンと同じく皮の方が実よりも濃い色をしています。アントシアニンを多く含んでいますが、シャドークイーンよりも含有量は少ないです。
でん粉量は一般的なじゃがいもである男爵よりも多いため、ほくほくとした食感をしていますが、比較的煮崩れしにくいので煮物料理などに使用されたり、ポテトチップスを作る際に使われたりもします。
きたむらさきも北海道で誕生した品種です。
卵をさかさにしたような形をしていて、大きめのサイズのものが多いです。シャドークイーンと同じように皮のほうが色が濃いですが、アントシアニンの含有量はシャドークイーンよりも少なく実は白みを帯びている部分もあり皮付近の色は薄いです。
でん粉量は男爵ほど多くなく、やや粘質で舌触りが良いのが特徴です。煮崩れしにくいという特徴をもつため、シチューなどの煮込み料理やサラダなどに使われることが多いです。
ノーザンルビーは2000年代に北海道で誕生した比較的新しい品種のじゃがいもです。
形や大きさはシャドークイーンと同じくメークインと似ていて、長細い楕円形です。皮も中身も鮮やかな色をしているのが特徴で、ピンクや赤紫にも見えます。
でん粉量は男爵などの一般的なじゃがいもよりも少ないため、さほどホクホクとした食感にはなりませんが煮崩れしにくいという特徴があります。見た目が美しいため、ポタージュやビシソワーズなどのスープに使われることも多いです。
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