男爵とメークインはじゃがいもの中でもスーパーなどで見かけることが多い品種です。料理をするときにどちらを使うべきか迷ったことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では男爵とメークインの違いを詳しく解説します。
メークインと男爵は形や触ったときの感触が異なるため、特徴を抑えておけば目視で判別することができます。
男爵の見た目は、球形で表面は芽のくぼみが深く凹凸が多いのが特徴です。
手で持つとくぼみが多く、ゴツゴツとしているのがわかります。
メークインと比較して丸くゴツゴツしているのが男爵と覚えておくと良いでしょう。
メークインの見た目は、俵(たわら)のような楕円形で少し曲がり気味であることが多いです。表面は芽のくぼみが浅く凹凸が少ないためつるつるとしています。
男爵は、高知県出身の川田龍吉男爵が1908年に海外から取り寄せたアメリカ原産の「アイリッシュ・コブラー(Irish Cobbler)」という品種を試験栽培し、これを普及させたものです。
男爵が広めたじゃがいもということに由来して「男爵薯(だんしゃくいも)」と呼ばれるようになったと言われています。現在日本では最も生産量の多いじゃがいもの品種が男爵です。
メークインは元々イギリスが原産の品種で、大正時代にアメリカを経由して日本にやってきたと言われています。
メークインは英語で「5月の女王(May queen)」を意味します。なぜメークインと名付けられたのかは諸説あり、中性時代に行われていた春の祭り(メーデー)で、村娘の中から選ばれる女王にちなんでいるという説や、男爵いもよりも形やスマートで春に美味しくなることにちなんでいるという説があります。
ちなみに、メークインは「メイクイーン」や「メイクイン」と表記されることもありますが、正式名称は「メークイン」です。
男爵は、日本国内で最も生産量が多い品種です。
男爵の取り扱い量(令和4年度)は約2万7,885トンです。
生産地別だと、最も多いのは北海道産(約2万4,836トン)、続いて静岡県産(約2,264トン)、茨城県産(約350トン)となります。男爵が最も多く出回るのは10月頃です。
出典:市場統計情報(東京都中央卸売市場)
メークインは男爵の次に生産量が多い品種です。
メークインの取り扱い量(令和4年度)は約9,714トンです。
生産地別とは、北海道産(約6,908トン)、続いて熊本県産(約935トン)、鹿児島県産(約536トン)となります。
じゃがいもには個体差があり大きさによって重さが異なるのですが、最も出荷量が多いのは中サイズの縦は6.5cm、横6cmの男爵の重さは104gです。
メークインは、縦9.2cm、横5.7cmのもので約150gです。
男爵と比較すると、メークインのほうが縦幅があるので、同等程度の大きさのものでも、男爵よりも重くなります。
男爵はメークインと比較してでん粉量が多いため粉質で、ザラっとした口当たりです。加熱するとホクホクした食感が楽しむことができます。メークインとは異なり糖分が少なくたんぱくな味ですが、どんな味付けにもよく合いその他の食材とも相性が良いです。
男爵のホクホクとした食感を活かすなら、蒸して食べたり揚げ物にして食べるのがおすすめです。メークインとは異なり煮崩れしやすいため、煮込み料理には向いていません。メークインと同じようにマッシュにして食べることもできますが、メークインとは異なり固くしっかりとした食感のある仕上がりになります。
メークインは、粘質で口当たり滑らかなのが特徴です。また、糖分が収穫直後から男爵などその他の品種より多いためほんのりとした甘味が感じられ、この甘味は低温で貯蔵することで更に増します。
口当たり滑らかな特徴を活かすなら、マッシュにするのがおすすめです。また、しっかりとしていて長時間加熱をしても煮崩れしないため煮込み料理に適しています。
でんぷん量が男爵などと比較して少なく、糖質量が多いためコロッケなどの揚げ物には適さないとされていますが、作れないというわけではありません。
男爵とメークインは、上記で紹介したようにそれぞれ異なる口当たりや食感をもちます。そのため、料理によって使い分けられる事が多いです。ただし、好みにもよるので基本的にはどちらを使っても問題はありません。
男爵はでん粉量が多く煮崩れしやすいため、カレーに入れると角がどれも丸みを帯びた状態になり、ほろほろっとした食感です。カレーのルーに男爵が溶け込んでいる分カレーのルーにじゃがいもの甘みがプラスされていますが、でんぷん量が多いためややザラザラっとした口当たりになってしまいます。
一方メークインは、煮崩れしにくいのでじゃがいもの形がしっかり残ります。カレーのルーに溶け込んだりしないので、口当たりがよくカレーのルーそのものの味わいを楽しむことができます。
カレーを作るときには、一般的には煮崩れしにくいメークインが人気です。
男爵は肉じゃがやおでんにすると、しっかりと味が染み込みホクホクとした食感を楽しむことができます。ただし、上述したように煮崩れしやすいので形が崩れてしまうことがあるのが難点です。
一方メークインは形はしっかり残り、口当たり滑らかでしっとりとしたじゃがいもの食感を楽しむことができます。
肉じゃがやおでんでは煮崩れはしやすいものの、じゃがいものホクホクとした食感を楽しめる男爵が人気ですが、煮崩れを防ぎたいという方はメークインを選ぶと良いでしょう。
男爵を使ってフライドポテトを作ると、やはりホクホクとした食感を楽しむことができます。ファーストフード店などで販売されているフライドポテトもでんぷんの含有量が多い品種を使っていることが多いので、お店で食べるフライドポテトに近づけるのであれば、男爵を使うのが良いでしょう。
メークインを使ってフライドポテトを作る場合は、男爵よりも粘質なので中はもっちり外はカリっとした食感を楽しむことができます。ただし、粘りが出るが故にじゃがいも同士がひっついて上手く揚がらないことがあるので注意が必要です。
出典:フライドポテトについて(日本フライドポテト協会)
男爵は粘り気が少ないので、ポテトサラダやコロッケなどのじゃがいもを潰して使う料理にも適しています。男爵を使うことでホクホクとした食感を楽しむことができます。
メークインもポテサラやコロッケなどの潰して使う料理に使えないわけではありませんが、粘り気が出てしまい潰しにくいことがあります。メークインを使うと口当たり滑らかに仕上がるので、より滑らかな口当たり・食感が好みの方はメークインを使うと良いでしょう。
粉ふき芋やじゃがバターには、じゃがいも特有のホクホク感を楽しむことができる男爵が使われることが圧倒的に多いと家ます。特に粉ふき芋の場合は、でんぷんの含有量が多い男爵でないと、粉が吹いたようにはなかなかなりません。
しかし、メークインで作れないというわけではもちろんありません。しっとりとした滑らかな口当たりを楽しみたい方は、メークインを使うと良いでしょう。
ポトフなどのスープを作るときには、ホクホクとした食感の男爵が使われる事が多いです。煮物ほど長時間加熱するわけではないので、男爵を使ってもそこまで煮崩れせずに作ることができます。
それでも煮崩れを防ぎたいという方は、やはりメークインを使うと良いでしょう。メークインを使っても、もちろん美味しく作ることができます。
ちなみにじゃがいもを茹でるときは水からじっくり加熱していくのがポイントです。
ガレットを作るときは、メークインを使いましょう。ガレットのように細かくカットしたじゃがいもをまとめて焼いたり揚げたりする料理の場合は、じゃがいもに粘りがないと上手くくっつかず、バラバラになってしまいます。
男爵でも作られないことはありませんが、やはり作りにくいのでメークインを使うことをおすすめします。
ジャーマンポテトなどのじゃがいもを炒める料理には、小さくカットして加熱しても崩れにくいメークインを使うのがおすすめです。
男爵を使ってもジャーマンポテトを作ることはできますが、やはり形が崩れてしまいやすいです。男爵のホクホクとした食感が楽しめるジャーマンポテトを作りたい場合は、強火で一気に加熱してしまうと崩れてしまうので注意しましょう。
ポタージュにしたい場合はメークインを使いましょう。ポテトをカットしてスープにするのではなく、潰してスープにするので、口当たりの良さが求められます。そのため、粘質でしっとりとしたメークインを使うのが適しています。
ただし、上述したように粘りが出るメークインは潰しにくいので注意が必要です。冷めると固くなって潰しにくいので、必ず熱いうちに潰しましょう。
男爵でもポタージュを作ることはできますが、でん粉の含有量が多いためザラザラとした口当たりになってしまいます。形が残るわけではないので、最大の特徴「ホクホクとした食感」も活かせません。
ポタージュを作る場合はメークインを使いましょう。
男爵の値段も販売店舗や時期、サイズによっても異なりますが、イオンなどの一般的なスーパーではMサイズ5個入りで270円〜300円、10kgあたり1800円〜2000円程です。男爵は最も生産されているじゃがいもの品種ということもあり、メークインよりも比較的値段が安いです。
男爵もAmazonなどのネット通販などでも手軽に購入することができます。
じゃがいもの値段は販売店舗や時期、サイズによっても異なりますが、イオンなどの一般的なスーパーではMサイズ5個入りで320円〜400円、10kgあたり2900円〜3000円程です。
Amazonなどのネット通販などでも手軽に購入することができます。
メークインと男爵のそれぞれに含まれている栄養素は文部科学省の食品成分データベースなどにも記載がないため不明ですが、どちらもじゃがいもなので栄養素に大きな違いはないと考えられます。
一般的なじゃがいもの可食部100gあたりに含まれている成分は下記の通りです。
たんぱく質…1.8g
脂質…0.1g
炭水化物…17.3g
食物繊維総量…8.9g
カリウム…410mg
マグネシウム…19mg
リン…47mg
鉄…0.4mg
亜鉛…0.2mg
ビタミンB…0.09mg
ビタミンB2…0.03mg
ビタミンB6…0.2mg
ビタミンC…28mg
特に大きく異なる点としては、でん粉の含有量が挙げられます。メークインのでん粉の含有量は一般的に16%以下で男爵のでん粉の含有量は16%以上あります。男爵はでん粉を多く含むことから、元々澱粉(でんぷん)の原料として使われていました。
また、メークインは男爵などその他のじゃがいもの比較して天然毒素であるソラニンやチャコニンなどを多く含む傾向にあり、日光や蛍光灯などの光に当たると緑化しやすいため冷暗所で保存するなど注意が必要です。「緑化」とは、ソラニンやチャコニンが生成されることにより皮の色が緑(青)に変色する現象のことをいいます。緑化した場合は皮を厚く剥き変色した部分を取り除けば食べることができますが、中身全体が変色している場合はソラニンやチャコニンによる中毒症状を起こす可能性があるので処分しましょう。
出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
キタアカリは、男爵とツニカを交配させて誕生した品種です。
外見は男爵薯に似て丸く、芽が深く凹凸が多いため男爵との判別が難しいですが、キタアカリは芽の部分がやや赤いという特徴があります。
また、男爵よりも甘味があり、栗のような甘味と実が黄色い身の特徴から「栗じゃが」や「黄金男爵」とも呼ばれています。
男爵よりもさらにでん粉量が多くホクホクとした食感が楽しめるため、じゃがバターや粉吹き芋などを作るのに適しています。煮崩れしやすいのでシチューなどの煮込み料理には不向きです。
とうやは、ジャガイモシストセンチュウを呼ばれる線虫に強い品種のじゃがいもとYウイルスに強いじゃがいもの品種を交配して生まれた品種です。
病原体に非常に強く大きく育つのが特徴で、男爵やメークインと比較して大きいものが販売されています。形は男爵と同じく球体ですが、芽が浅く凹凸は少ないです。
とうやはメークインと同じくでん粉量は多くなく、しっとりとしているため煮くずれしにくいです。そのためシチューなどの煮物料理に適しています。
はるかは、長野県で誕生した品種です。
卵を倒したような形をしていて、芽が浅く凹凸が少ないため男爵よりもメークインに近いです。
でん粉量が少なく粉っぽさがないため、生のまま千切りにしてサラダにすることもできます。またメークインと同じく粘質で煮崩れしにくいため煮物料理にも適しています。茹で上がりの食味もよく、マッシュにしたりコロッケにしても美味しいので様々な料理に使うことができます。
インカのめざめは、北海道で誕生した比較的新しい品種です。
インカのめざめはやや長い楕円形です。重さが平均50g前後と比較的小ぶりであることと、中身が綺麗な黄色をしているのが特徴です。
メークインよりも劣りますが、やや粘質できめが細かく舌ざわりがとても良いです。皮を剥いた後や加熱調理した後も変色しにくいという特徴があり、ポテトチップスの原料として使われることも多いです。
アンデスレッドは「ソラナム・フレハ」という南米アンデスが原産のじゃがいもと、表皮が紅い「アーリーローズ」というじゃがいもの交配から生まれた品種です。
元々は「ネオデリシャス」という名前でしたが産地である岡山県で「アンデス赤」という名前で販売していたことから、「アンデスレッド」と呼ばれるようになりました。「レッドアンデス」とも言われます。
アンデスレッドは表面が赤い色をしていて、中の果肉は粉質で明るい黄色をしていますが、ものによっては果肉まで赤色が混ざっているようになっていることもあります。
加熱するとほくほくした食感が楽しめるため、マッシュポテトやコロッケに最適です。
デストロイヤーという赤い色をしたじゃがいもの品種もあります。
ノーザンルビーも2000年代に北海道で誕生した比較的新しい品種のじゃがいもです。
形や大きさはメークインと似ていて、長細い楕円形です。皮も中身もきれいなピンク色をしていてアントシアニンを多く含み、調理後も綺麗なピンク色が残ります。
でん粉量は男爵などの一般的なじゃがいもよりも少ないため、さほどホクホクとした食感にはなりませんが煮崩れしにくいという特徴があります。見た目が美しいため、ポタージュやビシソワーズなどのスープに使われることも多いです。
きたむらさきも北海道で誕生した品種で、紫に近い色をしています。
卵をさかさにしたような形をしていて、大きめのサイズのものが多いです。皮のほうが色が濃く、果肉は白身を帯びている部分もあり皮付近の色は薄いです。
でん粉量は男爵ほど多くなく、やや粘質で舌触りが良いのが特徴です。煮崩れしにくいという特徴をもつため、シチューなどの煮込み料理やサラダなどに使われることが多いです。
コナフブキは、実はじゃがいもの名産地である北海道で最も生産量が多い品種です。
その名の通りでん粉を多く含むのが特徴で、男爵よりもはるかに煮崩れしやすいため調理には向いていないためスーパーなどで販売されることはほとんどありませんが、澱粉の原料として使われることが多いです。
品種によって、美味しいじゃがいものサイズは違います。
男爵いもやキタアカリ、とうやなどの品種を選ぶ際は、大きいものは避けましょう。元々、サイズが小さい品種なので、大きく育ちすぎているものは、スが入ってしまっていたり、中心部が空洞化している可能性があります。
メークインやホッカイコガネなどの品種は、大きいものでも美味しく食べることができます。
じゃがいもの表面にも注目しましょう。
男爵いもやキタアカリなどは、元々表面がゴツゴツした品種なので、表面のなめらかさにはそこまでこだわらなくても問題ないでしょう。
一方、メークインやホッカイコガネなどは表面の凸凹が少なくてなめらかなものを選ぶとよいです。
じゃがいもの皮が薄いものを選ぶとよいです。皮に厚みがあったりかたくなっているものは、収穫から時間が経過している可能性が高いです。
じゃがいもの形がふっくらとしていて丸みのあるものは美味しいじゃがいもです。手に持った時にずっしりと重みがあるものを選びましょう。
じゃがいもの表面に傷があると、そこから菌が入り込んだりする可能性があります。そのため、じゃがいもの表面に傷が少ないものを選ぶと、美味しさが長持ちします。
じゃがいもに芽が生えてしまっているものは、収穫からしばらく時間が経っている可能性が高いです。芽が出ておらず表面がなめらかなものを選びましょう。
じゃがいもの皮が緑色になってしまっているものは、有毒物質であるソラニンやチャコニンが多く含まれています。皮が茶色っぽいものを選ぶようにしましょう。一部のみが緑色になってしまっているものも、皮を厚めにカットすれば問題なく食べることができます。
見た目だけでは判断できませんが、水分量が多いじゃがいもは美味しくいただけます。切った時に断面がみずみずしいものです。手に持ったときに全体的にブヨブヨしているようなものは、逆にじゃがいもの水分が抜けてしまっている証拠です。これはじゃがいもが腐り始めているサインなので、あまりにも柔らかいじゃがいもは食べないようにしましょう。
Most Popular
中が茶色いじゃがいもは食べられる?空洞や輪になってる場合は?
食品事典
大根は中身が茶色に変色しても食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
スカスカなかぶは食べてOK?スが入る原因は?
食品事典
ハンバーグが固くなる原因と柔らかく作るコツを徹底解説
食品事典
麻婆豆腐が辛い時に甘くする方法。おすすめの調味料や食品は?
食品事典
トマト缶は一缶でトマト何個分?サイズ別に解説
食品事典
冬におすすめの天ぷら具材36品。冬野菜や冬が旬の魚介類を紹介
食品事典
エリンギが水っぽい...食べられる?濡れてる原因と対処法は?
食品事典
冷凍したじゃがいもが黒っぽく変色...食べてOK?原因と対処法を解説
食品事典
里芋は生で食べられる?生食のメリットと注意点を解説。
食品事典