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馬刺しの美味しい食べ方|タレやアレンジ方法も解説

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馬刺しの美味しい食べ方|タレやアレンジ方法も解説

馬刺しとは、馬の肉を薄切りにして刺し身にしたものです。近年では馬肉の無人販売所なども増えて手軽に購入できるようになりましたが、みなさんは馬刺しの食べ方をご存知でしょうか。本記事では馬刺しの食べ方を詳しく解説します。

馬刺しとは

馬刺しとは、馬の肉を薄切りにして刺し身にしたものです。

刺し身は、魚介類を薄そぎ切りにするなど食べやすい大きさに切り醤油やわさび醤油をつけて食べる日本料理の一つです。馬刺しは魚介類ではなく馬肉で作る料理で、「馬肉の刺し身」を略称して「馬刺し」ということが多いです。

馬刺しの発祥には諸説ありますが、熊本藩の初代藩主であった加藤清正が朝鮮出兵し食料が底をついた際に軍馬を食べたところ、味を気に入り帰国後も食べていたことから熊本全土に広まり、全国で食べられるようになったといわれています。現在でも熊本県は、馬肉生産量日本一として知られています。

馬刺しに使われる部位

豚肉や牛肉にロースやモモなど様々な部位があるのと同じように、馬肉にも様々な部位がありそれぞれ異なる食感や味わいをもちます。馬刺しに使われることが多い部位は、ロースやモモ、ハラミ、レバー、フタエゴ、コウネなどです。

ロースは、馬の背中にあたる部位で、馬刺しとして最も一般的に食べられている部位です。脂身が少なくさっぱりとした味わいが特徴で、霜降りになることも多く馬肉の味を堪能することができます。

モモは、馬の太ももにあたる部位です。スジがないきれいな赤身で、脂身も少ないためあっさりとした味わいが特徴です。馬刺しにして食べる他、ユッケにして食べられることも多いです。

ハラミは、馬の横隔膜の部分に当たる部位です。一頭からほんのわずかしか得ることのできない希少部位で、美しい霜降りとなっています。

レバーは、馬の肝臓にあたる部位です。他の部位にはないツルンとした口当たりが特徴です。牛肉のレバーなどは臭みがありクセがありますが、馬肉のレバーは臭みが少ないため、牛肉レバーなどが食べられなくても馬肉のレバーは比較的食べやすい方が多いです。

フタエゴとコウネは、豚肉と牛肉にはない部位です。フタエゴは、馬の腹のあばら部分にあたる部位で、赤身と脂身が交互に重なっています。しっかりとした歯ごたえがあり独特の食感を楽しむことができます。コウネは、首のタテガミが生えている部分の皮下脂肪です。「タテガミ」ともいわれます。真っ白な見た目が特徴で 、脂肪分にもかかわらずあっさりとしていて甘味があり、コリコリとした食感を楽しむことができます。

馬刺しの基本的な作り方

解凍方法

生食用の馬肉は、安全に食べるため厚生労働省の「生食用食肉の衛生基準」において、マイナス20度で48時間以上の冷凍処理をすることが義務付けられ、冷凍された馬肉のみが流通しています。そのため馬刺しを作るときは、まず馬肉を解凍する必要があります。

肉の解凍といえば常温解凍や流水解凍、レンジで温めるなど様々な方法がありますが、馬肉は真空パックのまま氷水につけて解凍します。これは、急激な温度差で解凍をすると馬肉の形が崩れてしまったり、色や味が悪くなってしまうためです。特にレンジでの解凍は旨味成分や油が流れ出てしまいますので避けましょう。

解凍するスピードは季節や室温によって異なりますが、ロースやモモの場合は10分程、レバーやコウネ(タテガミ)は5分程が目安です。解凍しすぎてしまうとスライスしにくくなってしまうので様子を見て馬肉の中心に芯が残っている程度になったら、氷水から取り出します。

スライス方法

馬肉を、繊維に逆らうようにして2〜3mmくらいの厚さでスライスしていきます。

繊維に逆らうようにスライスすることで、繊維が断ち切られ食感を柔らかくすることができます。反対に繊維に沿って切ってしまうと硬いと感じる原因になりますので、注意しましょう。レバーとコウネ(タテガミ)など繊維がない部位もあります。

解凍した馬肉をスライスして、お皿に盛り付けたら馬刺しの完成です。

馬刺しの食べ方

馬刺しは魚介類で作る刺し身と同じように、醤油をつけて食べるのが基本的な食べ方です。

甘口醤油がおすすめ

馬刺しで有名な熊本では、一般的に九州の甘口醤油をつけて食べます。甘口醤油とは、濃口醤油に砂糖などの甘味料が加えられた醤油です。関東では一般的に醤油といえば濃口醤油を使うことが多いですが、九州や北陸地方では甘口醤油を使います。

甘味のある甘口醤油は、馬肉の旨味をより引き立ててくれます。濃口醤油でも美味しく食べることができますが、馬刺しを食べる際は甘口醤油で名産地熊本の味を堪能してみると良いでしょう。

甘口醤油が家にないという場合は、濃口醤油に砂糖とみりんを鍋に入れて砂糖が溶けるまで加熱することで甘口醤油に似た甘みのあるタレを作ることができます。単に醤油に砂糖を加えるだけでは甘口醤油にはならないので注意してください。

醤油以外でも

刺し身といえば醤油をつけて食べるのが基本的な食べ方ですが、醤油以外のタレをつけても美味しく食べることができます。

例えば福島県の会津地方では「辛味噌」をつけて食べるのが一般的です。辛味噌は、味噌に唐辛子とおろしにんにくを混ぜて作ります。

また、レバーはごま油と塩を合わせたタレにつけて食べるのが一般的です。塩には食塩よりも岩塩がおすすめです。岩塩は自然塩や天然塩と呼ばれ、食塩にはないまろやかさがあり馬刺しの旨味を引き立てます。

薬味をプラスする

馬刺しは醤油に、すりおろしたにんにくや生姜などの薬味を合わせて食べることが多いです。

醤油ににんにくを合わせると、たんぱくな馬肉にパンチを与えお酒のおつまみとしてもよく合います。生姜を合わせると、生肉の臭みを軽減し爽やかな味わいを楽しむことができます。また、東洋では馬肉は体を冷やす食べ物とされていますが、にんにくと生姜は馬肉の冷やす力を抑える働きがあるとされています。さらに、にんにくには抗菌作用もあることから、食中毒予防にも繋がります。

また、馬刺しはオニオンスライスと一緒に食べることも多いです。玉ねぎと一緒に食べることでシャキシャキとした食感と辛みがプラスされます。魚介類の刺し身でいうところのツマ(大根)の役割を果たします。

その他、大葉や万能ネギとの相性も抜群です。馬刺しに万能ネギを巻いて食べるという通な食べ方もおすすめです。

馬刺しのアレンジ方法

馬刺しは刺し身として食べても美味しいですが、調理をしてアレンジをしても美味しく食べることができます。

ユッケ

馬肉を細切りにすれば、簡単にユッケを作ることができます。

ユッケは生食用の牛肉を細切りにしたものに醤油やごま油、にんにくなどを合わせた調味料で味付けをし、上に卵黄を乗せて食べる韓国料理の一種です。「肉の刺し身」という意味で、韓国語で「肉」という意味がある「ユック」と「刺身」という意味がある「フェ」を合わせて「ユッケ」と呼ばれるようになったといわれています。

基本的には生食用の牛肉が使われますが馬肉を使っても作ることができ、馬肉を使ったユッケは「桜ユッケ」と呼ばれます。牛肉と比較してクセがなく食べやすいと人気のある一品です。

カルパッチョ

馬刺しを使ってカルパッチョを作ることもできます。

日本でいうカルパッチョとは、白身魚の刺し身にオリーブオイルなどの調味料をかけて食べる料理として知られていますが、実はカルパッチョは生食用の肉にチーズやソースをかけて食べるイタリア発祥の料理です。そのため、馬肉を使ってカルパッチョを作れば本場イタリアの味を楽しむことができます。

馬刺しを使ってカルパッチョを作る場合は、スライスした馬肉をお皿に盛り付け、オリーブオイルやバルサミコ酢、醤油、コショウ、すりおろしニンニクなどを合わせた調味料をかけて、仕上げに粉チーズをふりかけます。さっぱりと食べたいという方におすすめです。

しゃぶしゃぶ・鍋

馬肉は加熱をして食べることも可能です。特に解凍した当日に食べきれなかった場合などは、加熱をして食べるのが良いでしょう。

スライスしていない状態の馬肉であれば表面を軽く焼きタタキにしたり、ステーキにしても美味しく食べることができますが、刺身用にスライスしてある場合にはしゃぶしゃぶがおすすめです。しゃぶしゃぶにするときは、スライスした馬肉をお湯にサッとくぐらすだけで大丈夫です。ポン酢などの柑橘系のさっぱりしたタレと相性がよいです。お好みでネギなどの薬味と一緒に食べても美味しいです。

馬刺しを野菜などを甘めの味噌と割り下で煮込んで、鍋にするという食べ方もあります。馬肉を使って作る鍋は「桜鍋」といわれ、古くからある伝統的な調理法です。

煮込み料理

馬刺しを使ってしぐれ煮などの煮込み料理を作ることもできます。ただし、馬肉は筋が多く加熱すると硬くなりやすいので、柔らかくなるまで長時間かけてじっくり煮込むのが美味しく作るポイントです。

牛肉や豚肉、鶏肉を使って煮込み料理を作るよりも、低カロリーで低糖質なのでダイエット中の方にもおすすめです。

馬刺しの栄養素・カロリー

馬刺し100gあたりに含まれている栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…20.1g

  • 脂質…2.5g

  • 炭水化物…0.3g

  • 食物繊維…0g

  • ビタミンA…9μg

  • ビタミンE…0.9mg

  • ビタミンK…2μg

  • ビタミンB1…0.10mg

  • ビタミンB2…0.24mg

  • ナイアシン…5.8mg

  • ビタミンB6…0.02mg

  • ビタミンB12…7.1μg

  • 葉酸…4μg

  • パントテン酸…1.01mg

  • ビオチン…1.1μg

  • ビタミンC…1mg

  • ナトリウム…50mg

  • カリウム…300mg

  • カルシウム…11mg

  • マグネシウム…18mg

  • リン…170mg

  • 鉄…4.3mg

  • 亜鉛…2.8mg

  • 銅…0.11mg

  • セレン…17μg

  • モリブデン…1μg

馬刺しは、三大栄養素とよばれるたんぱく質・脂質・炭水化物の他に、ビタミンAやビタミンB群といったビタミン類や、カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル類も豊富に含まれています。

特に骨や筋肉、細胞を作る重要な働きをもつたんぱく質が豊富に含まれていて、保温効果や血管を強くする作用があるといわれているペプチドが多く含まれています。血管を拡張する働きがあるため、血圧を下げる効果も期待できます。牛肉100gあたりに含まれているたんぱく質は19.0g、豚肉100gあたりに含まれているたんぱく質は17.0gですので、たんぱく質を摂取したいアスリートの方にもおすすめです。

また、馬刺しにはリノール酸やα-リノレン酸、オレイン酸などの必須脂肪酸も豊富に含まれており、悪玉コレステロールの働きの抑制や、過酸化脂質の発生予防の効果が期待できます。

馬肉100gあたりのカロリーは102kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は0.3gです。牛肉100gあたりのカロリーが300kcal、豚肉100gあたりのカロリーは267kcalですので、馬刺しのカロリーは牛肉や豚肉の半分以下ということになります。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

馬刺しを購入できる場所

馬刺しは、イオンや業務スーパーなどの一般的なスーパーで購入することができます。ただし、牛肉や豚肉のようにどの店舗でも取り扱いがあるというわけではないので、店舗に確認してみてください。

近年では馬肉を専門に取り扱う無人販売所も増えて来ており、手軽に美味しい馬刺しを購入することができます。近隣に購入できる店舗がない場合は、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。

馬刺しの値段は店舗や部位によっても異なりますが、赤身一人前(50g程)は1,000円程度、霜降りは値段が高くなり1人前1,500円程度で販売されています。

馬刺しの保存方法

上述したように馬刺しは冷凍された状態で販売されていますので、購入した際は冷凍庫で保管します。保存期間は馬肉の部位によっても異なりますので、きちんと確認し表記されている期限内に食べきるようにしよう。

一般的な家庭の冷凍庫では扉の開け締めによる温度変化で傷みやすくなってしまうので、扉付近は避けて温度変化の少ない場所に入れてください。

一度解凍したものは、その日のうちに食べきります。食べきれない場合は、空気に触れることがないようラップに包んでから密閉できる容器に入れて冷蔵庫で保存し、次の日には食べ切るようにしましょう。空気に触れてしまうと劣化して色が悪くなったり味が落ちてしまうので注意してください。