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海塩(シーソルト)と岩塩(ピンクソルト)の違いを分かりやすく解説

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海塩(シーソルト)と岩塩(ピンクソルト)の違いを分かりやすく解説

海塩と岩塩の違いをご存知でしょうか。本記事では海塩と岩塩の違いを詳しく解説します。

海塩と岩塩の違い①原料

海塩

海塩とは海水を原料に作られます。

製造方法によって精製塩または天然塩(自然塩)に分類されます。

周りを海に囲まれている日本では塩といえば海塩を指すことが多く、調理をするときにも一般的に使われています。

岩塩

岩塩とは、元々海底だった場所が地殻変動で隆起し、海水を閉じ込めた状態の陸になった場所や、砂漠地帯にある塩分を多く含む湖などの水分が長い年月をかけて蒸発し、塩が結晶化することでできる天然塩の一種です。

世界一標高の高い山々であるヒマラヤ山脈から取れる岩塩をヒマラヤ岩塩、アンデス山中標高3,700mにあるウユニ湖周辺から切り出した岩塩をアンデス岩塩といいます。

岩塩は含まれている成分や含有量によって淡紅色(たんこうしょく)といわれるうす紅色をしたものや、深い赤色、黒色などの様々な色があります。中でもピンク色のピンクソルトの採取量が多く、市場に最も出回っています。

海塩と同じく海水が原料となっていますが、岩塩の発生源は地下鉱山であるという点が異なります。世界各国に岩塩が採掘できる山脈がありますが、日本にはありませんので販売されている岩塩は輸入品になります。海塩を使うことが多い日本とは反対に、海外では一般的に岩塩が使われます。

海塩と岩塩の違い②製造方法

海塩

海塩は、古くから海水の水分を飛ばし「かん水」と呼ばれる濃い塩水をつくる「採かん」という工程とかん水を煮詰め、塩分のみを取り出すとして取り出す「煎ごう」と呼ばれる二段階を踏んで製造されます。

現在では日本の海塩の90%以上が、「イオン交換膜製塩法」と呼ばれるイオン交換膜と電気エネルギーを利用して塩の主成分を集めてかん水を作り製造する精製塩です。従来は、水が染み込まないように固めた「塩浜」と呼ばれる地層に人力で海水を運び繰り返しまいて天日乾燥させ、砂についた塩分を海水で洗い流してかん水を作っていましたが、雨が多い日本では天候に左右されるという難点があり、イオン交換膜製塩法が誕生してからは効率よく質の良い塩を作れるようになりました。

雨が少なく乾燥した気候のオーストラリア、ヨーロッパ、メキシコなどでは「天日製塩法」とよばれる製法で作られる天然塩が一般的です。

イオン交換膜製塩法は、まず汲み上げられた海水をろ過水道水の10分の1になるまで濁りを抑えた後、イオン交換膜透析槽で濃縮されます。その後、真空式蒸発缶や平釜を使って塩を煮詰めで煎ごうの工程を行い、加熱濃縮した後塩の結晶となります。


天日製塩法は、日光と風の力によって自然に海水から水分を蒸発させ塩を取り出します。天日塩に向かない気候の日本では手間がかかるためイオン交換膜製塩法で作られた塩と比較して値段が高いですが、海水に含まれているミネラルなどの栄養素がそのまま残っているという利点があります。

岩塩

岩塩は、溶解採掘法(ようかいさいこうほう)または乾式採掘法(かんしきさいこうほう)で製造されています。

溶解採掘法は、岩塩層に水を注入して岩塩溶かし塩水として抽出して不純物を取り除き、煮詰めて塩を取り出します。不純物をしっかりと取り除くことができるため、食用として利用する岩塩は溶解採掘法によって製造されていることが多いですが、人工的に手が加えられているため栄養価が落ちるという欠点があります。


乾式採掘法は、岩塩層から直接塊の状態で岩塩を採掘します。溶解採掘法とは異なり人工的に手が加えられていないため栄養素をそのまま残すことができますが、不純物が多いという欠点があります。料理の風味づけ程度に使われることはありますが、食用というよりはバスソルトやルームランプといった非食用として使われることが多いです。

海塩と岩塩の違い③見た目・味

海塩

海塩の見た目は白いです。

海水を原料に作られる海塩は、塩味を感じさせるナトリウムが80%以上含まれ、その他に甘味を感じさせるカルシウム、苦味を感じさせるマグネシウム、酸味を感じさせるカリウムなどのミネラル成分が含まれています。

イオン交換膜製塩法で作られる精製塩は、塩化ナトリウムを取り出すことを目的としているため、その他のミネラル類の含有量が減り、塩味を強く感じます。

天日製塩法などで作られる天然塩は、塩化ナトリウム以外のミネラル類もバランスよく残っているためまろやかな塩味を感じ、ほんのり甘味があります。

海塩は水に溶けやすく食材に味がなじみやすいです。

岩塩

岩塩(ピンクソルト)の見た目はピンク色です。

ピンクソルトは鉄分の多い土壌で結晶化したものであり、この鉄分が色素となっています。鉄分の含有量によって薄いピンクから深い赤色のものまで様々な色味があり、深い赤色のものは「レッドソルト」として販売されていることもあります。

ピンクソルトはまろやかで、甘みがあります。塩特有の塩辛さはありません。これは、ピンクソルトに塩辛さの元になる塩化ナトリウム以外のミネラル成分が多く含まれているためです。

色が赤いほど塩化ナトリウム以外の含有量が多くなり塩辛さが軽減されますが、塩化ナトリウム以外のミネラル成分の含有量が多くなるぶん雑味が出てしまうため、程よい色味のピンクソルトを選ぶと良いでしょう。

岩塩の粒子の大きさは様々ですが、直径3cm~5cmの塊状のものや直径3~5mmの粒状の粗いものが多く、ミルなどで砕いて使うことが多いです。粒子が粗く溶けにくいため塩粒の食感と味がそのまま残ります。

海塩と岩塩の違い④栄養素

海塩

海塩に含まれている栄養素は製造メーカーによって異なります。

イオン交換膜製塩法で作られている海塩(精製塩)100gあたりに含まれている栄養素は下記の通りです。

  • ナトリウム…39000mg

  • カルシウム…0g

  • マグネシウム…87mg

  • 鉄…0g

  • マンガン…0g

  • 銅…Trmg

天日製塩法などで作られる天然塩もメーカーによって異なりますが、イオン交換膜製塩法で作られている精製塩と比較してナトリウムの含有量が少なくなり、ナトリウムやマグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄などのミネラルを豊富に含みます。

例えば、宮古島の地下海水を汲み上げて作られる天然塩「雪の精」という製品100gに含まれている栄養素は下記の通りです。

  • ナトリウム…30.3g

  • カルシウム…625mg

  • マグネシウム…2810mg

  • 鉄…1.61mg

  • マンガン…0.273mg

  • 銅…0.015mg

  • 亜鉛…0.185mg

ミネラルバランスが気になる方は、海水のミネラルバランスに近い天然塩を選ぶとよいでしょう。

岩塩

岩塩(ピンクソルト)は天然岩塩であるため含まれている成分や含有量には変動がありますが、ピンクソルト(ヒマラヤ岩塩)100gあたりに含まれている目安は下記の通りです。

  • 塩化ナトリウム…39.1g

  • カルシウム…274mg

  • マグネシウム…211mg

  • 鉄…8.83mg

  • マンガン…0.19mg

  • 銅…0.02mg

日本で一般的に使われるイオン交換膜製塩法で作られている海塩と比較して、岩塩にはおよそ1.5倍の成分が含まれているといわれています。

海塩と岩塩どちらが健康的?

ミネラルの含有量で見ると、海塩(精製塩)<岩塩(ピンクソルト)<海塩(天然塩)となります。

精製塩と比較すると岩塩のほうが栄養素を多く含みますが、海水を蒸発させて作られている天然塩のほうが海水に含まれている栄養素をそのまま含んでいるため栄養価が高いといえます。

ただし、どちらも塩分であるため過剰摂取しないよう注意が必要です。

海塩と岩塩の用途はほぼ同じ

海塩と岩塩は、どちらも調理で塩味を加えたいときに使うことができます。

海塩は料理になじみやすい

上述したように海塩は粒子が細かく溶けやすいため、料理になじみやすいです。例えばお肉を焼く前に下味をつけたいときなどに適しています。また、スープなどの味付けに使っても中々溶けなくて困るということがありません。

岩塩は食感も楽しめる

岩塩は海塩と比較して粒子が粗いため、調理の最後や食べる直前の味付けとして使うのに適しています。例えばお肉を食べるときに、直前にミルなどで細かくした岩塩をかけて食べるとほどよい塩味が食材の旨味を引き出すとともに、岩塩のカリっとした食感も楽しむことができます。

岩塩はバスソルトとしても

岩塩はバスソルトや浄化用として部屋に置くなど非食用としての用途も広いです。

水道水に含まれているカルキはたんぱく質を破壊する作用があり、髪や皮膚に悪影響を及ぼすともいわれています。岩塩にはカルキを除く働きがあるため、カルキによる髪や皮膚へのダメージを低減する効果が期待できます。特にピンクソルトは匂いがほとんどしないため匂いがきついものが苦手という方にもおすすめです。

海塩と岩塩はお互いに代用可能?

料理に塩味を加えるという点では海塩と岩塩はお互いに代用することが可能です。ただし、海塩のほうが塩味が強いことが多く、岩塩(ピンクソルト)は比較的塩味が弱くまろやかであるため、全く同じ味に仕上がるというわけではありません。

また、上述したように岩塩は粒子が粗く溶けにくいという点にも注意が必要です。