「飯盒炊爨」と「飯盒炊飯」どちらが正しいのか疑問に思ったことがある方は多いのではないでしょうか。本記事では「飯盒炊爨」と「飯盒炊飯」の違いについて解説します。飯盒の使い方なども合わせて紹介するのでぜひ参考にしてください。
「飯盒炊爨(はんごうすいさん)」と「飯盒炊飯(はんごうすいはん)」は、どちらも飯盒(はんごう)を使ってご飯を炊くなどの料理をすることを意味します。
「炊爨(すいさん)」には「飯を炊くこと。煮炊きをすること」という意味があり、「炊飯(すいはん)」には「飯を炊くこと」という意味があります。「炊爨」のほうが意味が広いため、飯盒を使ってご飯を炊く以外の調理をすることを「飯盒炊爨」、ご飯を炊くことを「飯盒炊飯」と使い分けている人もいるようですが、多くは同じ意味で使われています。
「飯盒(はんごう)」とは、野外で炊飯をするときに使われるアルミニウムで作られた蓋つきで底の深い容器です。
飯盒の「盒」には「蓋のついた容器」という意味があります。
19世紀後半にヨーロッパでアルミニウムが量産されるようになったことをきっかけに、それまで使われていた鉄製の調理器具にとって変わるように各国に軍の装備品として広がりました。
一口に「飯盒」といっても各国様々な形状のものがあり、お米を主食とする日本では屋外炊飯を行えるよう改良した「そら豆型」とよばれる曲がった扁平形の「兵式飯盒」が一般的に使われ、現在でもキャンプなどのアウトドアで使われています。
そら豆のような形が採用された理由については諸説ありますが、焚き火でも均一に熱を伝わりやすくして簡単にお米を炊けるようにしたという説や、腰につけて持ち運んでいたため腰にフィットするように真ん中をへこませたなどと言われています。
古くから飯盒を使って炊事をすることを「飯盒炊爨」といっていました。
「爨(さん)」には「飯を炊くこと。かまど。」という意味があり、「炊爨」で「飯を炊くこと。煮炊きをすること」という意味になります。
多くの辞書でも「飯盒炊爨」と記載されています。
新聞や公用文書でも「飯盒炊飯」ではなく「飯盒炊爨」を用いており、漢字では「飯ごう炊さん」と表記されます。これは、「盒」と「爨」が常用外漢字であるためです。常用外漢字とは、常外漢字といわれ一般的に日常で使われない漢字のことをいいます。読んだり書いたりできない人のほうが多いため新聞や公用文書では使われません。
よって本来は「飯盒炊爨」であり「飯盒炊飯」ではないということがわかります。現代でもご年配の方など「飯盒炊爨」といい「飯盒炊飯」は間違いだと認識している方が多くいます。
古くは「飯盒炊爨」と言われていましたが、ガスが普及し竈(かまど)が使われなくなり電気炊飯器を使ってお米を炊くことが一般的になると、「ご飯を炊くこと」という意味で「炊飯」という言葉が使われるようになり「飯盒炊爨」も「飯盒炊飯」といわれることが多くなりました。
本来は「飯盒炊爨」なのだから「飯盒炊飯」は間違いなのでは?と思う方も多いかと思いますが、意味は同じですし「飯盒炊飯」といっても通じるので間違いではありません。
時代が移り変わるにつれて同じ意味でも言い方が変化することはよくあり、辞書でも飯盒炊爨と飯盒炊飯を一緒に記載している辞書も少数ですがあります。
現在でもキャンプや山登りなどのアウトドアに使われることが多い飯盒は、様々な用途があります。
基本的には飯盒本体に中蓋、外蓋がついています。飯盒本体はもちろんのこと、中蓋と外蓋もフライパンとしてベーコンやウインナーなどを炒めるのに使ったり、材料を温めるなどの調理器具として使うことができます。
飯盒の基本的な用途といえば、やはり炊飯です。
日本で一般的に使われることが多いそら豆形をした「兵式飯盒」は、上述したように炊飯用に特化しており、古くから米4合炊きで設計され、本体に2合・4合分の水量の目安が刻印されていて蓋は米の計量にも使うことができるようになっています。その名残りで現代で販売されている飯盒の多くは4合炊きであることが多いです。
飯盒は均一に火が通りやすく、外蓋と中蓋の二重構造になっているためほどよい圧力がかかり、水分量や火加減を気をつければふっくらと美味しいご飯を炊くことができます。飯盒を使った基本的なご飯の炊き方や美味しく炊くポイントは後述するのでそちらを参考にしてください。
飯盒は底が深いため煮込み料理を作ることもできます。
例えばキャンプなどのアウトドアの定番カレーは、自宅で作るのと同じように野菜や肉などの材料を炒めて、水を加えて煮込み、カレー粉やルウを入れて煮込みます。中蓋を使えば、ご飯を炊くのと同時にカレーを作ることも可能です。
その他にもおでんなどの煮込み料理を作ることができます。
飯盒の中蓋を使えば、ご飯を炊くのと同時にシュウマイなどを蒸すこともできます。蒸し器を使って作るように本格的で、ジューシーな味わいを楽しめます。
容器の底の深さを利用して、中に拾った石を底にならべてジャガイモを入れて少量の水を加え、蓋をして火にかければ20分ほどでジャガイモやさつまいもを蒸す(ふかす)こともできます。蒸したジャガイモにバターを乗せればじゃがバターにもなります。ジャガイモ以外の野菜を使って蒸し野菜にしても良いでしょう。
飯盒を使った主食といえばやはりご飯だと思いますが、近年では麺類を作るという方も多くいます。
底が深いのでお鍋として水を入れて沸騰させ、麺を煮込んでスープの元を加えれば簡単にラーメンやうどんなどの麺類を作ることができます。インスタントラーメンでも外で飯盒を使って作る美味しさは格別!と人気があります。
お味噌汁などの汁物を作ることもできます。
例えば外蓋を使って野菜や豚肉などの材料を炒めてから、飯盒本体にいれて水をいれて煮込み、和風出汁を加えて味噌を溶かせば本格的な豚汁の完成です。
中蓋を使えばご飯を炊きながら汁物を同時に作ることも可能です。秋や冬などの寒い季節のアウトドアにはかかせない一品です。
近年ではキャンプなどのアウトドアにはご飯とカレーといった認識を覆すようにプリンなどのスイーツを作る方も多くいます。
飯盒を使ってプリンを作る場合は、まず卵や砂糖、牛乳を加えたプリン液を作り飯盒本体に流し入れて蓋をします。別の鍋に湯を沸かしておき、その中に飯盒を入れて蒸します。出来上がったぷりんの上に砂糖をかけてバーナーで炙りブリュレ風にしても良いでしょう。
ホットケーキミックスを使ってケーキを作るのも人気があるようです。
飯盒は調理器具としてだけではなく、調理をした後そのまま料理を食べたり、外蓋や中蓋を器にして取り分けて食べることができます。
飯盒は元々、調理器具というよりは食料を入れて持ち運んだり食事の配給を受け取るための容器というのが主な用途であり、非常時にはバケツなどとしても用いられていました。そのため、食器としても使いやすくなっています。
まず、お米を計量します。上述したように飯盒の蓋は計量カップとしても使うことができます。目安は外蓋で3合分、中蓋で2合分です。4合の場合は、中蓋すり切り2杯分で4合分になります。
計量をしたら、水が白く濁らなくなるまでお米を研ぎます。別の容器にうつして研いだ後に飯盒に入れても良いですし、飯盒本体を使って研いでも良いです。ただし、飯盒本体を使って研ぐ場合は研ぎ汁が残ってしまわないように注意してください。無洗米の場合はお米を研ぐ工程は省いて大丈夫です。
お米を溶いだら飯盒本体に入れて、炊飯器で炊くのと同じように水を注ぎます。
水の量の目安はお米1合あたり200gです。兵式飯盒の多くは本体の内側に水を注ぐ目安となる線が引かれています。下の線が2合分、上の線が4合分となっているので線まで水を入れます。
線が引かれていない場合は水を計量して入れるか、2合分の場合は人差し指の第一関節を目安に水を入れます。人指し指の第一関節の高さがだいたい2合分になります。
お米を入れて適量の水を入れたら蓋をして、弱火にかけます。初めから強火にかけてしまうとお米の芯まで火が通る前にあっという間に焦げてしまいます。沸騰するまで弱火で熱していきましょう。
焚き火などで炊く場合の火加減の目安は下記の通りです。
弱火は、火が飯盒の底に届かない程度。
中火は、火が飯盒の底に触れる程度。
強火は、火が飯盒全体を包む程度。
火の強さを調節するのは非常に難しいため、飯盒と火の距離を変えても良いです。例えば弱火にしたい場合は飯盒と火の距離を遠くします。
ガスコンロを使う場合は、つまみなどで火を調節しましょう。
沸騰して中の水が吹きこぼれたら、強火にします。焦って蓋をとってしまったり火から離してしまわないようにしましょう。吹きこぼれる力で蓋が取れてしまいそうな場合は、石など重しになるような物を蓋の上に置きます。
吹きこぼれが落ち着いてきたら再び弱火に戻します。かすかに焦げる匂いがして、チリチリと音がしてきたら中の水分が蒸発したサインなので火から下ろします。
火から下ろしたら、すぐに蓋を開けず10分〜15分蒸らして完成です。
火から下ろしてすぐでは、ご飯に芯が残っている状態です。予熱で米の芯まで火を通すため、しっかりと蒸らしてから食べましょう。
細かく刻んだごぼうやにんじんなどお好みの具材と、醤油やみりんなどの調味料を飯盒に入れて炊けば、炊き込みご飯にすることもでききます。
ご飯の美味しさはお米の香りも大切ですよね。飯盒はアルミ製であるため、特に購入したばかりの飯盒だとご飯にアルミ臭さが移ってしまうことがあります。
そのため、予めアルミ臭さをとっておくことをおすすめします。お米の研ぎ汁を飯盒本体に入れて10分〜15分ほど火にかけるとアルミ臭さをとることができます。
お米を研いだ後そのまま火にかけて炊くこともできますが、水に漬けてから火にかけると芯が残りにくくふっくらとしたご飯が炊きあがります。
浸水する時間は夏は30分、冬は60分が目安です。
春から秋にかけての暖かい季節はクーラーバッグなどに入れて浸水しておくと、雑菌の繁殖を抑え炊きあがりをよくすることができます。
火から下ろして蒸らす際に、ひっくり返した状態にします。火からおろす時点ですでにおこげはできていますので、そのままの状態で蒸らしてしまうと底のほうがどんどん焦げてしまいます。
また、ひっくり返した際に薪などで底をトントン叩いてから時間を置いて蒸らすと飯盒の内部に残っている水分がお米全体になじみ、柔らかく仕上げることができるのでおすすめです。
寒い季節など蒸らしている際に熱が逃げてしまうのを防ぎたい場合は、新聞紙で包んでから蒸らすと良いです。
上述したように、一般的には少し焦げた匂いがしてチリチリとした音をサインに火から下ろします。この状態ではすでに多少のおこげができている状態なので、おこげを作りたくないという場合はおこげができる前に火から降ろす必要があります。
おこげを作りたくない場合は、沸騰し始めたら蓋に割り箸をあてて音を確認しましょう。割り箸に振動が伝わらなくなったら炊きあがりのサインです。この状態であればまだおこげはできていないので、火からおろしてひっくり返して蒸せばおこげなしのご飯になります。
飯盒は直火で使用することが多いため、使用した後はすすだらけになっています。飯盒のすすは油汚れではないので、一般的な食器用洗剤を使っても落ちないことが多いです。すす汚れはクエン酸を使用することで落とすことができます。
中の底についてしまった焦げもこすって落ちない場合はクエン酸を使用するとよく落ちます。特にご飯を炊いた後はご飯がこびりついてしまうことが多いため、使用後はそのままにせず水に浸けて残ったご飯粒をふやかして置くことが大切です。中の汚れはそのままにしておくと、どんどん落ちにくくなってしまいカビが生えて異臭がするなど次に使うときに影響が出てしまうことがあるので注意しましょう。
濡れたまま蓋をしてしまうと雑菌の繁殖やカビの発生に繋がってしまうため、綺麗に洗ったら水気を拭き取り風通しのよい場所できちんと乾かすことが大切です。
Most Popular
中が茶色いじゃがいもは食べられる?空洞や輪になってる場合は?
食品事典
麻婆豆腐が辛い時に甘くする方法。おすすめの調味料や食品は?
食品事典
ハンバーグが固くなる原因と柔らかく作るコツを徹底解説
食品事典
大根は中身が茶色に変色しても食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
トマト缶は一缶でトマト何個分?サイズ別に解説
食品事典
スカスカなかぶは食べてOK?スが入る原因は?
食品事典
トマトの中が黒い!腐ってる?食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
里芋は生で食べられる?生食のメリットと注意点を解説。
食品事典
なすを切ったら種だらけ...食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
冷凍したじゃがいもが黒っぽく変色...食べてOK?原因と対処法を解説
食品事典