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キャノーラ油と米油の違いと使い分け|代用可?混ぜてもOK?

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キャノーラ油と米油の違いと使い分け|代用可?混ぜてもOK?

キャノーラ油と米油の違いをご存知でしょうか。本記事ではキャノーラ油と米油の違いを詳しく解説します。

キャノーラ油と米油の違い①原料

キャノーラ油

キャノーラ油は、菜種油の原料であるセイヨウアブラナを品種改良したキャノーラ種を原料に作る植物油の一種です。

キャノーラ種は、セイヨウアブラに含まれている不飽和脂肪酸の一種「エルカ酸」や病害虫を寄せ付けない働きをしている「グルコシノレート」という成分を長期間摂取することが心臓疾患の要因になる可能性があるという研究結果が発表されて以降、主要生産国であるカナダで品種改良されエルカ酸を含まずグルコシノレート含量も削減された品種として開発されました。

「キャノーラ」は開発国である「canada(カナダ)」と「oil(オイル)」を組み合わせた造語です。

米油

米油は、米糠(こめぬか)を原料に作る植物油の一種です。

「米糠油(こめぬかゆ・こめぬかあぶら)」ともいわれます。

米糠とは玄米を精白したときに出る果皮や種皮、胚芽などの部分で、約18%〜20%の油分が含まれています。米油は米糠に含まれている油分を抽出し精製したものです。

玄米から出る米糠はわずかであり、含まれている油分も18〜20%と少ないため例えば米油1本分(600g)作るには約43kgもの玄米が必要になります。

キャノーラ油と米油の違い②製造方法

キャノーラ油

キャノーラ油などの植物油は、まず原料に含まれている茎や葉を取り除き精製した後に油分をとりやすくするために加熱したり、破砕、平たく潰すなどの前処理をして、圧搾式製法または抽出法で原料から油を抽出します。

抽出した油は、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質を取り除きます。リン脂質の性状からガム質と呼ばれこの製造工程を「脱ゴム」といいます。脱ゴムを行ったら、遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をします。菜種油などの植物は脱臭を行った後ろ過し、容器に充填して完成します。

圧搾式製法は、化学溶剤を使わずに圧力だけで油を抽出します。中でも「玉締め圧搾法」と呼ばれる圧搾式製法は、機械でゆっくりと手間をかけ自然に近いかたちで抽出するため栄養価が非常に高くなります。


抽出製法は、ヘキサンなどの溶剤を溶かして油を抽出します。


菜種やキャノーラのように油分が多い植物は、圧搾式製法では原料残油が10~20%あるためこの残りを採油するために抽出法を併用する圧抽法を使うこともあります。

米油

米油の製造方法もメーカーによって異なりますが、米油と同じように原料である米糠から圧搾製法または抽出法で油脂を抽出します。

キャノーラ油と比較して溶剤を使わない圧搾製法で抽出されている製品が多いです。

米油も油脂を抽出したら、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質や遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。

キャノーラ油と米油の違い③特徴

キャノーラ油

キャノーラ油は米油と比較して色が濃く、黄色っぽい色をしています。

原料特有の香りもなく、味も淡白でクセがありません。

またキャノーラ油は強い抗酸化作用をもつオレイン酸が豊富に含まれており、熱に強く酸化しにくいという特徴があります。

米油

米油はキャノーラ油と比較すると色は薄く、サラサラとしています。

キャノーラ油と同じく原料特有の香りもなく、味そのものにクセはありません。

特に米油は揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いが出ません。油を加熱したときの匂いはアクロレインと呼ばれる成分の発生によるものですが、米油は、加熱をしてもアクロレインの発生量がキャノーラ油などと比較して少ないため、揚げ物の匂いで油酔いをして食欲が減退してしまうことを防ぎ、部屋中に油の匂いが残ってしまうということもありません。

米油もトリエノールなど抗酸化作用がある成分が多く含まれるため、酸化しにくいという特徴があります。

キャノーラ油と米油の違い④値段

キャノーラ油

キャノーラ油はイオンや業務スーパーなどの一般的なスーパーで購入することができます。

キャノーラ油の値段は製造メーカーによっても異なりますが、例えば日清が製造・販売している「日清キャノーラ油」は400g286円で、味の素が製造・販売している「さらさら®キャノーラ油」は1kg495円です。

米油

米油はイオンや業務スーパーなど一般的なスーパーで購入することができます。ただし、近年では米油を取り扱う店舗が増えてきていますが、サラダ油などと比較すると必ずあるというわけではありません。店舗に確認してみてください。

近くに購入できる店舗がない場合は、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。

米油の値段はメーカーによっても異なりますが、900gで700〜800円、1kgだと1000円以上で販売されていることが多いです。

玄米から出る米糠はわずかであり、さらに抽出できる油量も少ないことからキャノーラ油などその他の植物油と比較して値段が高くなります。

キャノーラ油と米油の違い⑤栄養素

キャノーラ油

キャノーラ油に含まれている栄養成分は食品データーベースなどにも記載がないため詳細は不明ですが、菜種油の原料であるセイヨウアブラナを品種改良した植物を原料に作られる植物油であるため、菜種油に含まれている栄養素とほぼ同じであるといわれています。

菜種油100gに含まれている栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…48.3g

  • ビタミンK…120μg

キャノーラ油は菜種油と比較して不飽和脂肪酸の一種でオメガ9(n-9)系脂肪酸に属するオレイン酸と、オメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸、ビタミンE(α−トコフェノール・β−トコフェノールなど)が豊富に含まれているといわれています。

キャノーラ油100gあたりのカロリーは887kcalで、糖質量は0gです。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

米油

米油100gに含まれる栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…25.5g

  • ビタミンK…36μg

  • カリウム…Trmg

  • カルシウム…Trmg

  • リン…Trmg

  • クロム…1μg

米油にもキャノーラ油と同じく不飽和脂肪酸の一種でオメガ9(n-9)系脂肪酸に属するオレイン酸、オメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸、ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)、ビタミンKが豊富に含まれている他、こめ油特有の栄養素γ―オリザノール(ガンマオリザノール)も含まれています。

元々玄米はビタミンB群などのビタミン類、カルシウムなどのミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んでおり、白米より栄養価が高いことで知られています。これは栄養素の多くは糠層(ぬかそう)や胚芽(はいが)に含まれているからです。米油は栄養素を多く含んでいる糠層や胚芽から抽出した油であるため、栄養価が高くなります。

米油100gあたりのカロリーは約921kcal、糖質量は0gです。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

コレステロール

米油100gあたりのコレステロール含有量は0g、キャノーラ油100gあたりのコレステロール含有量も0mgです。

コレステロールとは、脂質の一種です。コレステロールには善玉コレステロールといわれる「HDLコレステロール」と、悪玉コレステロールのLDLコレステロールとがあります。善玉コレステロールは、臓器で使いきれずに余ったコレステロールを回収し肝臓に戻す働きがあるため動脈硬化を予防することができます。対して悪玉コレステロールは、血管の壁にたまり、動脈硬化を進行させる要因となります。そのため、多量に摂取するのは良くありませんが、体にとって不要な成分というわけではありません。

元々コレステロールは動物の細胞に含まれている成分であり、植物油には含まれていたとしても微量です。表示の基準として、100gのコレステロール含有量が5mg未満である場合はコレステロール0と表記してよいことになっています。

出典:厚生労働省e-ヘルスネット

トランス脂肪酸

米油100gあたりのトランス脂肪酸含有量は0.3g、キャノーラ油100gあたりのトランス脂肪酸含有量は0.8g程といわれています。

トランス脂肪酸は脂質の一種である脂肪酸を構成している成分の一つです。トランス脂肪酸は牛肉や羊肉など動物そのものが持っている場合と食品の製造過程で生成する場合があります。植物油は、原料の独特の匂いや不純物を取り除くために、200度以上の高温で処理されます。高温で処理をする際にトランス脂肪酸が生成されます。また、油剤を使う抽出法でトランス脂肪酸が生成されやすいといわれています。

トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させる働きがあるため、大量に摂取することにより動脈硬化などによる心臓病のリスクを高めるといわれ、WHOのトランス脂肪酸の一日の上限値は約2g未満としています。これはトンカツを揚げた場合、約10枚分に相当します。キャノーラ油と米油のどちらも過剰摂取しない限りは問題ないといえますが、油に限らずトランス脂肪酸が含まれている食べ物は沢山あり、知らず知らずのうちに摂取していることもありますので揚げ物を大量に食べるなど過剰摂取は避けたほうが良いでしょう。

出典:農林水産省トランス脂肪酸に関する情報

キャノーラ油と米油どちらが健康的?

キャノーラ油と米油は、どちらもオレイン酸やビタミンEやビタミンKなどの栄養素が含まれています。

オレイン酸は、血液中の悪玉コレステロールと善玉コレステロールを適正に保つ働きもあり、動脈硬化防止や心臓障害の予防に繋がるといわれています。

また、どちらにも抗酸化作用のあるビタミンEが含まれており、ストレスなどにより体内に発生した活性酸素が細胞へダメージを与えることを防ぎ、生活習慣病などの予防に繋がります。また、しみやしわを予防するなどのエイジングケア効果も期待できます。

キャノーラ油と米油を比較すると米油のほうが健康的だというイメージがある方も多いかと思いますが、これはキャノーラ油の原料であるキャノーラ種が遺伝子組換え食品であるためです。また、キャノーラ油の多くは輸入されているものです。対して米油は国産の原料を使った国産の製品が多いため、米油のほうが安全だという認識の方が多いようです。日本でも菜種に含まれている「エルカ酸」や「グルコシード」を含まない品種が開発されており国内で栽培される菜種は遺伝子組換え技術は使用されていませんので、遺伝子組み換え食品を避けている方は、日本産の菜種を使ったキャノーラ油を選ぶと良いでしょう。

また、キャノーラ油は油溶剤を使って油脂を抽出する「抽出法」で製造されていることが多いです。油溶剤として使われるヘキサンは石油にも含まれている成分であるため「体に悪い」と言われています。商品として販売する際にはもちろん化学溶剤は除かれ、安全性をチェックしたものが販売されていますが、心配な方は「圧搾式製法」で抽出しているメーカーのキャノーラ油の購入がおすすめです。

キャノーラ油と米油の用途はほぼ同じ

キャノーラ油と米油は、どちらも炒め油や揚げ油として使うことができる他、バターの代用品としてクッキーなどの焼き菓子を作ることができます。

揚げ油には米油がおすすめ

米油には上述したように揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いがなく、酸化しにくい他、サラっとしていてベタベタとしないため揚げ油に適しています。また、米油は揚げ物をする際に気泡ができにくいという特徴があります。この気泡は、加熱することにより食材や衣から水分が蒸発することによってできます。特に油が酸化している場合などは大きな気泡がぶくぶくと出てしまいやすいです。気泡がでていると揚げむらや油っぽさの原因となります。そのため、米油を使うことで揚げむらもなく均一にカラッと揚げることができます。

米油は米と相性が良い

米油は原料が米糠ということもあり、お米との相性が非常に良いです。そのため、ご飯を炊く際に米油を入れて炊飯するというキャノーラ油にはない使い方をすることもできます。米油を入れることで、米粒がコーティングされふっくらと粒感のよいご飯が炊きあがる他、米粒がお釜にこびりついてしまうのを防ぐことができます。また、米油によってお米本来の甘味や旨味を引き出すことができ普段より美味しい白米になります。

キャノーラ油と米油はお互いに代用可能?

代用可能

キャノーラ油と米油の用途は同じであるため、お互いに代用することが可能です。どちらも香りや風味にクセがありませんので、どちらを使っても料理の味を変えてしまうこともありません。

ただし、原料が異なるため性質には違いがあります。例えば上述したように米油は高温で熱しても匂いが出ず油酔いしにくいですが、キャノーラ油は高温で熱するとアクロレインが発生するため油酔いをしてしまうことがあります。キャノーラ油も米油と同じように揚げ物をサクっと揚げることができますが、油酔いしてしまいやすい方や部屋に匂いがつくのが嫌だという方は米油がおすすめです。

混ぜて使うこともできる

キャノーラ油と米油は、どちらも植物油の一種ですので混ぜて使っても問題ありません。どちらも特に強い香りや風味があるわけではないので、味にも影響は出ません。

例えば揚げ油として使う際に高価な米油を大量に使うのは躊躇するといった場合は、キャノーラ油と米油を混ぜて使うと良いでしょう。