お店で食べると柔らかくジューシーで美味しいとんかつですが、自宅で作ると固くなってしまいやすいですよね。本記事ではとんかつを柔らかく仕上げる方法を詳しく解説します。
とんかつを自宅で作ると固くなってしまうことが多いですよね。
とんかつに使われる豚肉に限らず、お肉は加熱により水分量が少なくなるとお肉の繊維がギュッと収縮されます。このお肉の繊維の収縮によってお肉は固くなります。特に厚みのあるとんかつの場合は、中まで火が通るのに時間がかかり、揚げている間に水分が蒸発し繊維が収縮するので固くなってしまうことが多いのです。
同じ理由で、牛ステーキもレアほど柔らかくしっかり火を通すウェルダンは固くなりやすいです。
安い肉だから固くなるのだろうと考える方が多いと思いますが、とんかつが固くなる原因は肉の良し悪しではありません。
どんなに高級な肉でも火が通るのに時間がかかってしまうのは同じであるため、固くなってしまうことはもちろんあります。高級な肉でも安い肉でも、とんかつを柔らかく作るコツは同じなので、ぜひコツを抑えて作ってみてください。
豚肉はまとめ買いして冷凍保存することも多いですが、冷凍した肉でも柔らかいとんかつを作ることは可能です。
冷凍した肉を使ってとんかつを作る場合は、冷蔵庫に移して自然解凍することもポイントになります。
湯煎解凍やレンジで温めたほうが時短になるのですが、急速に解凍してしまうと肉汁が一気に流れてしまってお肉の水分量が減ってしまい固くなってしまいます。
とんかつに使うお肉は分厚いので、解凍をするのに時間がかかりますが、柔らかさを重視するのであればゆっくり解凍することが重要です。ゆっくり解凍することで肉汁が一気に流れ出てしまうのを防ぐことができます。
肉の良し悪しによってとんかつを柔らかく作れないということはありませんが、柔らかく作ることができる部位はあります。とんかつを柔らかく作りたいのであれば、柔らかく作れる部位を選ぶことが大切です。
とんかつに使われることが多い豚肉の部位は、ロースまたはヒレです。ロースで作るとんかつとヒレで作るとんかつを比較すると、ロースで作ったとんかつのほうが柔らかく作りやすいです。
ロースは肩から腰にかけた背中全体のお肉です。赤身の部分に筋が少ないため柔らかいという特徴があり、脂身が多いためジューシーなお肉の旨味を出すことができます。
ヒレは背骨の両側に沿った部分で、棒状になっているお肉です。ロースと比較して肉のきめが細かく脂身がやや少ないため噛みごたえがあるという特徴があります。
したがって、柔らかさを重視するのであればロースで作るのがおすすめです。反対に、しっかりとした噛みごたえとあっさりとした味わいのとんかつのほうが好みの方はヒレで作ると良いでしょう。
出典:農林水産省
下ごしらえの際に、お肉が固くなる原因である繊維の収縮を防ぐために筋を断ち切ったりほぐしておくと、加熱をしても固くなりにくいです。
筋を断ち切る方法には、赤身と脂身の境目部分に包丁で垂直に切り込みを入れて筋を切る「筋切り」があります。筋切りをしておくと柔らかく仕上がるのはもちろんのこと、加熱をしたときのお肉の反り返りを防ぐことができますし、筋っぽさがなくなるので口当たりもよくなります。
筋をほぐす方法には、麺棒などを使ってお肉を叩く「肉たたき」があります。肉たたきをすることで筋がほぐれるので、繊維の収縮を抑えることができます。
お肉を叩くことができれば道具は麺棒でなくてもなんでも大丈夫です。最近では100均などで手軽にミートハンマーを購入することができるので、そちらの利用もおすすめです。
肉たたきをして筋をほぐす場合は、叩くことでお肉が薄くなってしまうので厚みが均一になるように全体を叩いていきましょう。
道具を使って筋を断ち切ったり、ほぐしておくだけでも十分柔らかいとんかつに仕上がりますが、さらに塩麹などの調味料や食材に漬けたり塗り込んでおくとより柔らかくなります。
お肉が固くなってしまうのを防ぐ効果がある成分の一つには「プロテアーゼ」があります。プロテアーゼはたんぱく質の分解を促す作用がある酵素です。お肉の繊維はたんぱく質でできているため、プロテアーゼが含まれている食材に漬け込むことで繊維が分解されて細くなり、柔らかくなるのです。さらに酵素がたんぱく質を分解する際に出るアミノ酸によって旨み成分が増すという利点もあります。
プロテアーゼを多く含む食材としては、塩麹(しおこうじ)があげられます。
塩麹は蒸した米や麦、大豆などに麹菌を付着させて培養した「麹」と塩、水を混ぜて発酵させた調味料です。プロテアーゼが含まれているのはもちろんのこと、塩麹に含まれている糖類の作用によりお肉の中の水分が保持されるため加熱をしたときの繊維収縮を抑えることができるという、お肉が固くなることを防ぐ要素が2つもあります。
上述したように塩麹には肉を柔らかくするプロテアーゼが含まれていますが、醤油などのよく使われる調味料とは異なり、塩麹を家に常備してない家庭も多いでしょう。
プロテアーゼが含まれている食材には、塩麹意外にも沢山あります。身近な食材でいえば、玉ねぎに含まれています。玉ねぎならよく使う食材なので、常備している方も多いかと思います。
玉ねぎにもプロテアーゼが含まれているので、すりおろして肉に塗るととんかつを柔らかく仕上げることができます。
ちなみに、玉ねぎ以外にも生姜などに含まれており、パイナップル、キウルなどのフルーツにも含まれています。
ヨーグルトに多く含まれている乳酸菌は、たんぱく質を分解するプロテアーゼを作り出す作用があるため、繊維が分解されお肉が固くなるのを防ぐことができます。さらにヨーグルトに含まれているたんぱく質は、お肉の保水性を高める働きがあるため、繊維収縮を抑えとんかつを柔らかく仕上げます。また、ヨーグルトにつけこんだお肉はやわらかくなるだけでなく全体の味がまろやかになります。
ヨーグルトだけではなく、乳酸菌が含まれている牛乳や味噌などでも同じ効果を得ることができます。
お肉をお酒に漬けると、お肉のpH値が変化し柔らかくなります。
pH値とは、その物体や液体のアルカリ性・中性・酸性を表す尺度で、お肉はもともとほぼ中性です。pH値が酸性またはアルカリ性のどちらかに傾くことによって、酸またはアルカリ由来のプラスイオンとマイナスイオンの反発が起こります。これにより繊維がほぐれるため、とんかつは柔らかく仕上がります。
中でも弱酸性の日本酒は、中性のお肉をpH値が変化させるのに適しています。料理酒でも問題ありませんが、料理酒には塩分が含まれていたり甘味料が含まれていることがあるので味に影響が出る可能性があります。そのため、純米酒がおすすめです。
家庭でよく使われる身近な調味料、マヨネーズを塗るのもとんかつを柔らかくするのに効果があります。
マヨネーズは卵を主原料で作られている調味料で、酢や油なども使われています。上述したように酸は肉の繊維をほぐす効果があり、さらに油でコーティングし水分を保持してくれるためマヨネーズを塗ることでとんかつが柔らかく仕上がります。
油は水分だけではなく肉の旨味も閉じ込めてくれます。マヨネーズを塗ったらマヨネーズ風味になるのではと心配になる方も多いと思いますが、マヨネーズの味は気になりません。しっかりと肉の旨味を楽しむことができます。
炭酸水もお酒に漬けるのと同じように、お肉のpHを変化させることができます。
炭酸水に漬けることで中性のお肉は酸性に傾き、繊維がほぐれ柔らかく仕上がります。また、保水性も高まりジューシーさを加えることができます。
炭酸水であれば無糖の炭酸水でなくてもコーラやビールなど何でも大丈夫です。コーラなどに含まれているショ糖(砂糖)には、タンパク質との水素結合により熱変性を遅延させるという効果があるため、お肉が固くなるのを防ぐ効果があります。味がコーラ味やビールの味になってしまうことはありません。炭酸が抜けていても効果を得ることができるので、炭酸が抜けてしまって飲みにくくなってしまった炭酸飲料があれば、ぜひ試してみてください。
ブライン液とは、水と塩、砂糖を混ぜ合わせた液体のことをいいます。語源は英語で「塩水・塩水に漬ける」という意味がある「brine」ですが、現代では塩水に砂糖を加えたものを指します。
ブライン液に肉を漬けることで、塩が肉のたんぱく質を分解し水分が肉の中に入り込みます。ブライン液には砂糖が含まれていて、砂糖は水分を保持する作用があるため保水力が高まりとんかつを柔らかく仕上げることができます。
ブライン液は200ccの水に対して塩と砂糖を1:1の割合で入れるだけで完成します。塩分濃度は5%を超えると浸透圧で反対に水分と旨味が流出してしまうので、塩は入れすぎないように注意してください。
はちみつに含まれるブドウ糖や果糖は、たんぱく質が変性してお肉が固くなるのを防ぐ効果があります。また、保湿性があるため、肉汁を蒸発させてしまうことなくジューシーに焼き上げることができます。
はちみつに漬け込んでも良いですし、はちみつを表面に塗るだけでも効果を得ることができます。
とんかつに衣をつける際は、基本的に小麦粉を豚肉にまぶしてから溶き卵をつけて、パン粉をつけます。この溶き卵に油を小さじ1程度の油を加えておくのが、とんかつを柔らかく揚げるポイントの一つです。
溶き卵に油を加えておくと豚肉の表面に皮膜ができるため、水分の蒸発を抑え繊維の収縮を抑えることができます。また旨味も閉じ込めてくれるため、美味しさもUPします。
美味しく綺麗に仕上げるためには、衣はむらなくお肉全体に均一につけるようにすることも大切です。
お肉は、加熱してある油に入れると急激な温度変化がおきて固くなってしまうことが多いです。そのため、熱した油ではなく、熱する前の冷たい油から揚げるのも柔らかく仕上げるコツです。
最初は弱火から中火で加熱し、10分ほどかけて油の温度を100度まで上げていきます。衣の色がきつね色になっていなくても、肉の表面が赤く変化し肉汁が出てきたら火が通っているサインです。火が通ったことを確認したら、裏返して3〜4分揚げます。
お肉が柔らかく仕上がっても、衣が白いままではサクサクとした食感がでません。一度全体に火が通ったらその後に高温の油で二度揚げしてサクサクの衣にしましょう。
二度揚げしたら火が通りすぎて固くなってしまうのでは?と思うかもしれませんが、一度火が通ったあとであれば再度高温で加熱しても固くなることはありません。
牛肉を使って作る牛カツや鶏肉を使って作る鶏カツの場合も、お肉が固くなってしまう原因は同じであるため、上述した下ごしらえや揚げ方で柔らかく仕上げることができます。
特に鶏むね肉を使って鶏カツを作る場合パサパサに仕上がってしまいがちですが、塩麹に漬けるなどひと手間かけることで柔らかくすることができるので、ぜひ試してみてください。
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