鶏のキンカンは、卵として形成されて産み落とされる前の卵黄です。スーパーなどで見かけることはあっても、どこの部位かわからなかったり、調理法がわからず購入したことはないという方が多いのではないでしょうか。本記事では鶏のキンカンについて詳しく解説します。
鶏のキンカンは、殻や卵殻膜がついていない卵黄だけの状態の卵です。
通常、卵は卵巣で作られ卵管(輸卵管)を通る間に卵白や卵殻膜、卵殻が形成されて産み落とされます。これがゆで卵などにして一般的に食べている卵です。
鶏のキンカンは成熟した雌鶏の卵巣にある卵として完全に形成される前の状態です。厳密にいえば卵黄ですが内臓として扱われます。
成熟した雌鶏からしかとることができない希少部位です。
一般的に鶏もも肉や鶏胸にくなどとしてスーパーなどで販売される食用の雌鶏は、成熟する前に出荷されています。そのため鶏のキンカンをとることはできません。
販売されている鶏キンカンは採卵用の雌鶏から取り出したものなのですが、採卵用の雌鶏を食肉とするために加工することはほとんどないため、鶏のキンカンは希少価値が高い部位として扱われています。
キンカンの大きさは直径3cm程で玉のような形状です。
一般的に食べられている卵黄よりも鮮やかなオレンジ色をしていて、見た目が金柑(きんかん)に似ていることから「キンカン」と呼ばれるようになったといわれています。
ちなみに金柑とは、ミカン科キンカン属の木になる果実のことです。見た目はみかんに似ていますが、みかんよりも小さく皮ごと食べることができます。皮のほろ苦さと果肉の甘酸っぱさの絶妙なバランスを楽しむことができる果物です。
鶏のキンカンは、上述したように見た目が金柑と似ているだけで味は全く異なります。
鶏のキンカンは卵黄ですが、卵として産み落とされた卵黄とは異なる濃厚で独特の味を楽しむことができます。
また、卵の卵黄は柔らかくつつくとすぐに割れてしまいますが、キンカンは半熟卵ぐらいの固さがあり、つついてもすぐに潰れないという特徴があり、口にいれて一口噛むととろっとした濃厚な卵黄が口いっぱいに広がります。
玉ひもとは、キンカンと卵管の部分が繋がった状態のことをいいます。キンカンはもちろんのこと、卵管(ひも)も美味しく食べることができるため、スーパーなどでもキンカンだけではなく卵管が繋がった状態の「玉ひも」として販売されていることも多いです。
「キンカン」と「玉ひも」は別の部位ですが、一緒に調理をして美味しく食べることができるので、玉ひもを購入して食べてみるのもおすすめです。
玉ひを串に刺して焼き鳥にしたものを「ちょうちん」といいます。見た目が提灯(ちょうちん)に似ていることに由来しているといわれています。焼き鳥屋さんのメニューなどで「ちょうちん」とあったら、キンカンと卵管のことです。
白子とは、鶏の精巣のことをいいます。「白子」といえば鱈(たら)の精巣を思い浮かべる方も多いかと思いますが、鶏の白子も食べることができます。
当然ながらオスだけが持つ部位であり、キンカンと同じように成熟したオス鶏からしかそれなりの大きさの精巣をとることができないので、希少部位として扱われています。
鱈の白子は脳みそのような見た目をしていますが、鶏の白子はつるんとしています。
軽く焼いて塩を振って食べるのが定番で、鱈の白子と同じようにクリーミーで濃厚な味わいを楽しむことができます。
ベラは、鶏の砂肝(砂嚢(さのう)と呼ばれる胃の一部)の下にある弁の部分のことをいいます。
ベラも希少部位として扱われており、販売している店舗が少ないためなかなか出会える部位ではありません。そのため、「食べたことがある」という人のほうが少ないでしょう。
ベラは砂肝に似た風味とコリコリとした食感があり、砂肝よりも弾力があるのが特徴です。
さえずりは鶏の首皮の内側にある気道です。
この部位を空気が通り、鶏が鳴き声を発するため「さえずり」と呼ばれるようになったといわれています。
鶏の気道ももも肉などとは異なり、一羽からわずかにしかとれないため大変希少な部位です。
弾力がある食感が特徴で、脂もたっぷりのっているため旨味があります。
一般的に食べられている卵は生で食べることができるので、「鶏のキンカンも卵黄なのだから生で食べられるのでは」と思う方も多いかと思いますが、鶏のキンカンは生で食べることはできません。醤油漬けなどにする場合も必ず下処理として火を通してから調理をする必要があります。
鶏のキンカンはわかりやすくいえば「卵黄」ですので、一般的に食べられている卵と同じようにサルモネラ菌などによる食中毒になる可能性はあります。しかし、サルモネラ菌は加熱に弱い細菌ですので加熱すれば問題なく食べることができます。
キンカンは加熱をして食べるのが基本ですが、加熱しすぎると破裂してしまったりパサパサしてしまうことがあります。そのため、半熟の状態が美味しいとされています。
加減が難しいのですが、煮物にするときなどはとくに加熱のしすぎでパサパサになってしまうことがあるので注意が必要です。
鶏のキンカンは下処理なしでも調理をすることができますが、下処理をしたほうが臭みを抑えることができますし、煮物などにする場合下茹でしておいたほうが煮込む時間を減らすことができるので、火が通り過ぎてパサパサになってしまうのを防ぐことができます。
下処理の仕方は下記の通りです。
まず、さっと水洗いして鶏のキンカンの汚れを落とします。その間に鍋に水を入れて火にかけておき、沸騰したら洗った鶏のキンカンを投入して茹でます。このとき火を通しすぎてしまうと黄身が固くなって破裂してしまうことがあるので注意してください。鶏のキンカンの薄皮が白く濁ってきたらザルにあけて、冷やしながら楊枝などで薄皮を剥いて下処理完了です。
キンカンと一緒に卵管(ひも)がついている「玉ひも」を購入した場合の、下処理方法を紹介します。
玉ひもを購入した場合も、鶏のキンカンと同じようにざっと水洗いしてから茹でます。茹でた後ザルにあげてキンカンを上記で紹介したように下処理をします。
ひもは、食べやすい大きさにカットします。カットしたら流水をかけながら、指の腹で揉んで中に詰まっている白い部分を出します。ひもについている白い部分が臭みの原因になるので、綺麗に洗い流しましょう。
ひもの表面に薄皮がついている場合は、薄皮もとって下処理完了です。
鶏のキンカンは甘辛煮にして食べられることが多いです。
キンカンを醤油や砂糖、みりんで味付けして煮込むだけなので家庭でも簡単に作ることができ、おつまみにもぴったりです。キンカンの独特な味が気になるという方は、酒や生姜を入れると食べやすくなります。
甲府には、鶏のきんかんと一緒に砂肝やレバー、ハツをタレに付け込み火が通るまで煮た「鶏モツ煮込み」がB級グルメとして人気です。
煮込むことでパサパサしてしまうのが苦手という方は、醤油や砂糖、みりんを合わせた調味料を鍋で熱したものを下処理した鶏のキンカンを入れた容器に入れて漬け込んでおくと、パサパサせずに温泉卵のようなトロトロとした口当たりを楽しむことができるのでおすすめです。
鶏のキンカンは、焼いて塩のみで味付けするとキンカン本来の旨みを感じることができます。
鶏キンカンのみでは串に刺すことが難しいのですが、焼き鳥屋さんでは「ひも」と呼ばれる産み落とされるときに卵が通る輸卵管と合わせて串にさして焼いたメニューもあります。鶏のキンカンを焼き鳥にする際は焼くときにアルミホイルを敷いて半熟状態に仕上げるのがおすすめです。
北海道では鶏のキンカンの他に、レバーやハツ、砂ズリと玉ねぎを使った焼き鳥がご当地グルメとして有名です。
鶏のキンカンは鍋にしても美味しく食べることができます。おすすめはすき焼きです。
すき焼きは元々卵の黄身にお肉などの材料をつけて食べることが多いですよね。すき焼きの甘辛い味とキンカンの濃厚な味わいがベストマッチします。
モツ鍋に鶏のキンカンを入れるという方も多いようです。様々なバリエーションを楽しむことができるので、ぜひ試してみてください。
鶏のキンカンは醤油漬けにするとご飯のお供やおつまみにぴったりの一品になります。
しつこいようですが醤油漬けにするときも、下処理はきちんとしてから行いましょう。そのままでは臭みが気になりますし、食中毒の危険性があります。
醤油漬けにするときは、下処理した鶏のキンカンをみりんや水、醤油などの調味料を混ぜ合わせたものに1日程漬け込みます。次の日にはしっかりと味濃んだ美味しい鶏のキンカンの醤油漬けが完成します。
鶏のキンカンに含まれている栄養素は文部科学省の食品データーベースなどにも記載がないため不明なのですが、一般的に食べられている卵黄がもつ栄養素とほぼ同じであると考えられます。
卵黄100gに含まれている栄養成分は下記の通りです。
たんぱく質…16.5g
脂質…33.5g
炭水化物…0.1g
三大栄養素と呼ばれるたんぱく質・脂質・炭水化物の他にも、ビオチンやビタミンA、ビタミンK、ビタミンD、ビタミンB群などのビタミン類やパントテン酸、葉酸、リン、さらに鉄やカルシウム、亜鉛などのミネラル類も多く含まれています。
出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
鶏のキンカン100gのカロリーは336kcalです。これは鶏ムネ肉100gあたりの3倍以上のカロリーです。鶏のキンカンは栄養素を多く含む食材ではありますが、高カロリーでコレステロールも多く含まれているため食べすぎには注意が必要です。
鶏のキンカンは精肉店やイオンやマックスバリュー、業務スーパーなどの一般的なスーパーで購入することができます。スーパーでは鶏もも肉などの近くにパックに入って置かれていることが多いです。ただし、希少部位であるためか、必ず取り扱っているというわけではありません。取り扱っている店舗でもあるときとないときがあります。
キンカンだけではなく、輸卵管(ひも)を組み合わせた「ちょうちん」や「玉ひも」として販売されていることもあります。
値段は販売場所によっても異なります。例えば業務スーパーでは2kg1172円で購入することができます。
近くに取り扱っている店舗がない場合は、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。
上述したように鶏のキンカンは焼き鳥屋さんでも食べることができます。鶏のキンカンは下処理にも手間がかかりますし、加熱加減なども難しいため、お店で食べるのがおすすめです。焼き鳥屋さんや居酒屋などのメニューで見つけた場合は、ぜひチャレンジしてみてください。
鶏のキンカンの賞味期限は販売元によっても異なりますが、製造日から2日程です。早めに調理をして食べきるようにしましょう。
基本的には冷蔵保存です。冷凍だと2〜3週間程保存することができます。冷凍保存したものを使う場合は、冷蔵庫に移すか常温において自然解凍します。ただし、冷凍をすると解凍する際に薄皮が破れて中身が出てきてしまいやすいので、甘辛煮にする場合などは解凍せずにそのまま調理をすると良いでしょう。
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