コシアブラはタラの芽のように山菜として食用になる植物です。市場に出回ることはほとんどありませんが、うまみや香りが強く美味しいと人気がある山菜の一つです。本記事ではコシアブラの特徴や選び方、食べ方、栄養素・カロリーなどを詳しく解説します。
コシアブラは、ウコギ科コシアブラ属の落葉高木です。
枝分かれが少なく横に広がらず上に伸びる傾向があり、成長すると高さ7m〜20mにまでなります。枝の先から出た芽の部分が山菜として食用になります。
原産国は中国です。
冷温帯林で育ち、日本では沖縄を除く全国各地の山や丘、林道脇、日当たりの良い斜面などで自生しています。秋に葉の色が黄色く染まり、秋の終わり頃に葉を全て落として枝だけになると春に枝の先から芽が出て収穫されます。
「コシアブラ」は和名です。古くは木の樹脂を絞り、こしたものを塗料として使われていたため「コシアブラ」といわれるようになったといわれています。
コシアブラは別名「イリコシアブラ」「金漆(ごんぜつ)」といいます。ウサギが好んで食べることから「ウサギカジリ」などと呼ばれたり、その他にも「トウフキノ」「ソラッポ」など地域によって様々な呼び方があります。
コシアブラの味は、ウコギ科特有の香りと苦味が特徴です。苦味の中に甘みがあり食感は軽めでクセになる味わいで「山菜の女王」なんていわれるほどです。
アク(料理の味を落とす原因となる苦味やエグみの総称)があるため食べにくいという方も多いですが、山菜の中では比較的アクが少ないほうで、天ぷらなど揚げ物にする場合はアク抜きが必要ないほどです。
苦味が苦手な場合でもアク抜きをすれば食べやすくなるので、アク抜きをしてから食べると良いでしょう。コシアブラのアク抜き方法やおすすめの調理方法は後述しますので、そちらを参考にしてください。
コシアブラに毒性はありませんので、食べても人体に害はありません。
ただし、コシアブラに似た山菜の中には毒性があるものもあり、コシアブラと間違えて誤食し食中毒になってしまう方は多くいます。山菜採りをする際は毒性のある植物を間違えて採って食べてしまうことがないよう注意してください。
タラの芽はウコギ科のタラノキの新芽の事です。古くから高級な山菜として知られており、「山菜の女王」と呼ばれるコシアブラに対して、タラの芽は「山菜の王様」といわれます。
タラの芽とコシアブラの見た目は非常によく似ていますが、タラの芽が出るタラノキは、4~5メートル程度の高さなのでコシアブラと比較して小さいです。また、タラノキには幹と芽に棘があるのが特徴で、コシアブラの幹には棘がなくツルツルしています。
味はタラの芽もコシアブラと同じくウコギ科の植物なのでウコギ科特有の風味があります。アクはコシアブラよりも強く苦味があります。
ハリギリもウコギ科の落葉高木です。「センノキ(栓の木)」や「ミヤコダラ」、「テングウチワ」、「ヤマギリ」と呼ばれることもあります。タラの芽と同じく新芽を山菜として食べることができます。
ハリギリの新芽はコシアブラと似ていますが、ハリギリの幹にはタラノキの幹よりも大きな棘がついているのが特徴です。
ハリギリもウコギ科特有の香りがあり、苦味があるのが特徴です。タラの芽よりはアクは少なくコシアブラと同じように天ぷらなどの揚げ物にするときはアク抜きをしなくても食べることができます。
ふきのとうは、キク科フキ属の多年草です。日本原産の山菜の一つで、全国の山野に自生しています。
ふきのとうの茎は地上には伸びず、土の中で地下茎となり横に長く増殖していきます。葉が地表に出ないうちに花茎が伸び出し、この地上から伸びだした花茎が「ふきのとう」と呼ばれ山菜として食べられています。
ふきのとうは苦味やえぐみが強いので、食べる前にはアク抜きをするのが基本です。
また、ふきのとうにはピロリジジンアルカロイドとよばれる天然毒素が含まれています。ピロリジジンアルカロイドは、肝臓で代謝されると活性本体へと変換され、肝毒性を引き起こすといわれています。ピロリジジンアルカロイドは水溶性であるため、水にさらしたりアク抜きをすることで取り除くことができます。
タカノツメもウコギ科の落葉高木です。タカノツメも新芽を食べることができます。
見た目はコシアブラに非常によく似ていますが、タカノツメはの樹皮はコシアブラと比較して緑色です。タカノツメの葉は基本的に3枚1組になっているのが特徴で、コシアブラは5枚ほどついています。
タカノツメといえば唐辛子の「鷹の爪」を思い浮かべる方も多いと思いますが、山菜のタカノツメには辛みはありません。コシアブラよりも香りが弱く、独特のほろ苦さがあるのが特徴です。
山菜採りをするときにコシアブラの見つけ方を紹介します。
コシアブラや里山や雑木林の日当たりの良い場所に育ちやすく、ブナの木などが生い茂る雑木林で生えていることが多いようです。登山道や林道の脇など、ある程度木が伐採されいて日当たりが良くなっている場所は特に見つけやすいといわれています。
コシアブラの採取に限らず、山菜採りをするときはあまり奥まで入り込みすぎないように注意しましょう。
コシアブラを見つけたら、枝の先に葉を付け柄がまっすぐ上に伸びている状態の物を収穫します。葉が完全に開いてしまっているものは食べごろの時期を過ぎているので、必ず新芽が出始めた頃の状態のものを収穫しましょう。
収穫できそうなコシアブラを見つけたら、付け根から優しく折り曲げて採取します。ちなみに芽は全部採らずにいくつか残しておくのが山菜採りのマナーです。すべて採ってしまわないように注意してください。
コシアブラの旬の時期は一般的には4月〜5月です。ただし、育っている地域や標高など環境によってずれます。
例えば、九州から中部地方あたりの比較的気温が高い平地では4月上旬に旬を迎えますが、気温が低い東北地方の平地では、5月初旬から下旬ごろにかけて旬となります。標高の高い場所では、6月頃まで収穫することができます。
コシアブラに上記で紹介した「ハリギリ」や「タカノツメ」などの他にも「ヤマウルシ」など、よく似た樹木が沢山存在します。特にヤマウルシには、食べることができないだけではなく樹液に「ウルシオール」といわれる成分を含んでおり、肌がかぶれる原因となるため山菜とりをする際はしっかりと見分けることが大切です。
コシアブラの木肌は白くすべすべとして白いという特徴があります。
ヤマウルシはコシアブラと比較して色は灰色っぽくザラザラとしていて、縦に波打っています。この特徴を覚えておけば、しっかりと見分けることができるでしょう。
コシアブラとヤマウルシは、葉でも区別することができます。コシアブラは明るい緑色の葉を5枚ほどつけていて、茎の部分は白い産毛に覆われているのが特徴です。
ヤマウルシの葉は赤みがかった色をしていて10枚ほどで、コシアブラとは色も形も異なります。
コシアブラは、芽が出始めると葉と共に紫がかった柄が数本まとまってまっすぐ上に伸び、成長が進むと次第に葉が広がっていくのですが、葉の部分が大きくなっていくとだんだんと固くなってしまうため、食感が悪くなってしまいます。
そのため、芽が出始め葉の柄が広がる前ものが美味しいとされています。
芽が出始めたばかりで葉が閉じた状態のコシアブラの姿は、筆を空に向けて立てた様子と似ているため「筆葉」と呼ばれ、希少価値が高いです。
芽が出た後に少し成長して、まっすぐに柄が伸びた状態のコシアブラも食べることができます。この場合は、柄が広がる手前のものを選ぶようにしましょう。柄が広がっているものはえぐみがでてしまうことがあります。
コシアブラは、まずハカマ(根元にある逆三角形の固い葉)を取り除く必要があります。包丁を使って取り除いても良いですが、手でも簡単にちぎることができます。
ハカマを取り除いたら、流水で表面についている汚れをしっかりと落とします。洗い終わったらキッチンペーパーなどで水気をしっかり切りましょう。
コシアブラは、上述したようにタラの芽と比較してアクが少ないため揚げ物や炒めものにする場合は、アク抜きをしなくても食べることができますが、茹でて食べる場合はアク抜きをします。
鍋にたっぷりの水を入れて沸騰させた後、コシアブラと塩を少々いれて2〜3分茹でます。2〜3分経ったら火から下ろし、10分ほど水にさらせばアク抜き完了です。
筆葉状態のコシアブラの場合は、柔らかくアクも少ないため熱湯にさっとくぐらせる程度でも大丈夫です。
コシアブラは、ハカマをとって洗ったらアク抜きせずにそのまま調理をすることができる天ぷらが最もポピュラーな食べ方です。
濃いめに作った衣にくぐらせてカラリと揚げます。根元付近のオクラのようなしっかりとした食感が残り、ほどよい苦味がクセになります。天つゆをつけて食べるよりも塩を添えていただくのがおすすめです。
コシアブラは、沸騰した鍋に塩とコシアブラを入れて茹でてアク抜きをした後、水気を切って醤油などで味付けをするだけで簡単におひたしを作ることができます。
すりごまを加えて胡麻和えにしても、香ばしいごまの風味とコシアブラの苦味がよく合い美味しく食べることができます。一口に「おひたし」といっても、様々なバリエーションがあるので、ぜひお好みの味を見つけてみてください。
コシアブラは炒めものの具材にもなります。甘辛い和風の味付けはもちろんのこと、洋風の味付けにも合うので、ベーコンやにんにくと一緒にオリーブオイルで炒めてペペロンチーノ風にしたり、バター醤油で味付けをしても美味しく食べることができます。
たけのこご飯のように、お米と一緒に炊いて炊き込みご飯にすることもできます。
炊き込みご飯にする場合は、適当な長さに刻で入れるとご飯にコシアブラの香りがほんの移って美味しくなります。味付けは醤油は控えめにし、塩で加減する方が美味しくなります。
コシアブラ100gに含まれている成分は、下記の通りです。
たんぱく質…4.2g
脂質…0.2g
炭水化物…4.3g
食物繊維…4.2g
コシアブラ100gあたりのカロリーは27kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は0.1gです。低カロリー・低糖質であるためコシアブラはダイエット中の方にもぴったりです。ただし天ぷらなど料理によってはカロリーが高くなるので、食べすぎないように注意しましょう。
三大栄養素といわれるたんぱく質・脂質・炭水化物以外の栄養成分に関しては、文部科学省の食品成分データベースなどにも記載がないため含有量など詳細は不明ですが、ポリフェノールの一種であるケンフェロールやイソクエルチトリン、ケルセチンなどの成分も含まれているといわれています。
コシアブラの若葉にはポリフェノールの一種であるケンフェロールやケルセチン、イソクエルチトリンなどが豊富に含まれています。
イソクエルチトリンは、薬用として古くから使われていたドクダミにも多く含まれている成分です。血圧降下作用が認められており、コシアブラは健康食として良いともいわれています。
ケルセチンは、玉ねぎの皮やエシャロットにも多く含まれている成分です。すぐれた抗酸化作用があり、老化防止に有効です。また、脂肪分解にかかわる酵素を活性化させるため、肥満の予防・防止にも役立つと考えられます。他にも、血行改善や抗アレルギー効果なども期待できます。
ケンフェロールは、ニラやブロッコリーに多く含まれている成分です。ケンフェロールにはイソクエルチトリンと同様に血圧効果作用がある他、優れた抗酸化作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用がありアレルギー疾患に有効であるといわれています。
食物繊維には、整腸作用があります。腸内の環境を整えることで便秘を解消したり予防に繋がります。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができます。
ただし、人によっては食物繊維が体に合わず反対にお腹の調子が悪くなることがあります。また、大量に食べてしまうと腹痛を起こす原因となるので、食べすぎないように注意しましょう。
コシアブラは、コシアブラを収穫することができる地域の道の駅などで販売されていることがあります。
残念ながらタラの芽ほど知名度は低く栽培が普及していないため、イオンなどの一般的なスーパーや八百屋などに出回ることはありません。
近くに購入できる場所がない場合は自力で採取しにいくか、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。ただし、ネット通販でも出回る数に限りがあるため予約が必要な場合があります。旬の季節を迎える前の2月頃に予約を開始することが多いので、確認してみてください。
コシアブラの値段は販売元によっても異なりますが、ネット通販で購入する場合200g2400円〜3000円程です。
乾燥を防ぐため新聞紙などに包んでから、穴をあけたポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存することができます。ただし、コシアブラは基本的に日持ちする食べ物ではありません。
香りや風味が落ちてしまうため、2日〜3日を目安に早めに食べきるようにしましょう。特に山菜採りでGETしたコシアブラは採ったその日に食べるのがベストです。
すぐに食べきれない場合は、アク抜きをした後水気を拭き取り小分けにしてラップなどで包み、保存袋などに入れて冷凍すれば2〜3週間ほど保存することが可能です。
アク抜きをしてから冷凍保存すれば、すぐに調理をして食べることができるので便利です。
コシアブラは市場には中々出回っていませんが、苗木はAmazonや楽天などのネット通販で手軽に購入することができるため、自宅で栽培し収穫を楽しんでいるという方も多くいます。
本来は大きく成長する高木ですが、成長スピードは早くないので数年は小さな株を鉢植えで育てることも可能です。元々全国各地で自生している植物ですので、肥料を沢山与える必要もなく比較的育てやすいといえるでしょう。
植えつけ時期は、11月~3月頃が適しています。
鉢またはプランターに1/3ほど樹木の培養土を入れて、苗木の根鉢をほぐしてからを中心に置きます。このとき細い根が残っていたほうがよく育つので、ちぎってしまわないように注意してください。
苗木を置いたら、根元が縁から下2〜3cmになるように高さを調節し、苗木の周りに土を入れていきます。土の表面を割り箸などでつつき、苗木の根の間にも土が入るようにしましょう。苗がおちついたらたっぷりと水やりをします。
ある程度成長するまでは、強い日差しにあたると葉っぱが焼け落ちて枯れてしまいます。一度焼けてしまった葉は元に戻らないので、鉢の置き場所をどこにするかが重要です。半日陰で風通しのよい場所に置きましょう。しっかり成長してくれば、日向でも管理することができます。
コシアブラの水やりのタイミングは、土の表面が乾いたときです。置いている場所などによって乾く頻度が異なるので、土の様子を見て判断することが大切です。土が乾いていたら、たっぷり水を与えます。土は乾いていないけれど葉は乾燥しているという場合は、霧吹きで葉水をかけましょう。
剪定は、新芽収穫後の5月下旬頃に行います。枝を1/5程の長さで水平に切り戻します。翌年も同様に新しくのびた枝を切り戻し新芽をつける枝を増やしましょう。
コシアブラは放っておくと高さ10m程まで成長しますが、剪定することである程度高さもおさえられます。また、枝の数が増えることで新芽をたくさん収穫できるようになります。
コシアブラは数年に一度、植え替えを行う必要があります。鉢の底から根が出ていたり、土が水を吸い込まなかったりといった根が大きくなりすぎて根詰まりを起こしてしまっている状態です。根詰まりの兆候が見られたら、植つけと同じ要領でひと回り大きな鉢に植え替えましょう。
庭などにスペースがあれば植え替えのタイミングで地植えにすることもできます。
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