ミラクルフルーツは、果実を食べた後に酸味のあるものを食べると甘く感じるという不思議な果実です。本記事はミラクルフルーツについて詳しく解説します。
ミラクルフルーツは、アカテツ科フルクリコ属の植物です。
現地では6m以上もの高い木ですが、栽培されたものはだいたい1.5m程でそれほど大きくなりません。白い花を咲かせ、一度花が咲くと何ヶ月もの期間にわたり開花しています。
ミラクルフルーツは長さ2cm程の小さなコーヒー豆ほどの赤い果実がなり、この実を食べた後に酸味のある食べ物を食べると甘く感じるという不思議な効果があります。
ミラクルフルーツの学名は「synsepalum dulcificum 」で、和名では「ミラクルフルーツ」といわれていますが、和名はないという説もあります。中国語では「神秘果」です。
ミラクルフルーツには「ミラクルベリー」という別名もありますが、ミラクルフルーツと呼ばれることが多いです。
ちなみにミラクルフルーツの花言葉は、食べた後に酸味のある食べ物を食べると甘く感じるという特性にちなんだ「不思議」です。
ミラクルフルーツの原産国は西アフリカです。現地では古くからすっぱいものと一緒に食べられていました。生育適温は20℃~30℃で基本的に温かい地域で育てられています。日本では沖縄県で商業用に育てられていることが多いです。比較的育てやすく温かい季節にはたくさんの花を咲かせますが、ひと枝に1個程の実しかならない貴重な果実です。
ミラクルフルーツは725年に、探検家のシュヴァリエ・デ・マルシェが原産地の西アフリカで現地の人々が食事の前にミラクルフルーツを食べていたのを発見したことがきっかけで広まったといわれています。
ミラクルフルーツは寒さに弱い熱帯果樹で、だいたい6~12月頃に収穫することができます。
栽培するときの温度は25℃程度が適温といわれており、20℃以下で成長が止まり、7度以下になると枯れてしまいます。そのため冬には生長しません。家庭で栽培する場合は、冬場は10~15℃を最低温度として温度が下がらないようにすることで冬越しができ、無事に収穫することができます。
次に食べるものを甘く感じさせることから、「ミラクルフルーツは甘い」と思っている方も多いですが、ミラクルフルーツ自体に強い甘みがあるわけではありません。
そのためミラクルフルーツを甘いフルーツだと思って食べると、甘くないので驚くでしょう。なんとも言えない独特の味がしますが、実が小さいの一粒食べただけではほとんど味がしません。強いていえばライチの味に似ているといわれることが多いです。
ミラクルフルーツを食べた後に酸味のある食べ物を食べると甘くなるのには、ミラクルフルーツに含まれている糖タンパク質の「ミラクリン」が大きく関係しています。
ミラクリンは、味覚修飾物質の一種である甘味誘導物質です。
舌には味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じ取る部分があり、酸味は酸味の味蕾、甘みは甘みの味蕾でそれぞれ感じ取っています。ミラクルフルーツを食べた後の舌には甘味誘導物質のミラクリンが付着しており、酸味成分と結合することで甘みを感じる味蕾を刺激します。そのため、ミラクルフルーツを食べた後に酸味があるものを食べると甘く感じるのです。
ミラクルフルーツを食べた後に酸味があるものを食べても「甘くならない」という人もいます。
そもそもミラクルフルーツは舌を麻痺させたり食べ物の酸味成分を失くすわけではないので、厳密にいえば「酸味が弱まっている」と感じているだけです。
そもそもブラックコーヒーを苦くて飲めないという人もいれば、美味しいと感じる人もいるように味覚の感じ方にも個人差があるため「効かない」と感じる人もいるでしょう。
ミラクルフルーツの効果を体験するためには、食べ方も重要です。ミラクルフルーツの食べ方については後述しますので、そちらを参考にしてください。
ミラクリンが反応するのは酸味のみであるため、ミラクルフルーツを食べた後に苦いものや辛いものを食べても甘く感じることはありません。
ちなみに、食べ物を甘く感じさせる誘導物質をもつミラクルフルーツとは逆に、食べ物を苦く感じさせる誘導物質を持つ「ギムネマ」という植物もあります。ギムネマはインド原産のハーブの一種です。葉を噛むと甘味を感じにくくさせる作用があるのが特徴で、葉をそのまま食べられることはなくハーブティーやサプリメントとして利用されています。
出典:一般社団法人ミラクリン
ミラクルフルーツによるミラクリンの持続時間は、1~3時間程度といわれています。個人差があり多少前後することはありますが、ミラクルフルーツの効果は食べた後すぐに消えるわけではないので、食事をする直前などは避けたほうが無難です。
ミラクルフルーツの効果は時間が経てば自然となくなりますが、少しでも早く消したい場合は白湯やお茶など温かい飲みものを飲むのが良いとされています。これはミラクリンが熱に弱い成分であることがわかっているためです。
ミラクルフルーツは、外側の赤い皮を剥いてから食べます。
酸味を感じさせなくするミラクリンは、皮を剥いた白い実の中にあります。皮ごとたべても良いのですが、ミラクルフルーツの効果をより感じやすくするためには、皮は剥いたほうが良いです。
また、ミラクルフルーツには種があります。種の種は食べても無害ですが、噛んでしまうと苦味が出てしまいミラクルフルーツの効果が感じにくくなってしまうので食べも出しましょう。
皮を剥くと白い果肉が出てくるので、果肉を口に入れます。口の中に入れたら、舌全体に触れるように1〜2分転がします。ラクルフルーツの効果はミラクリンを舌全体に行き渡らせることによって効果がでます。
舌全体にミラクリンが付着していないと酸味があるものを食べても甘くならないので、しっかりと舌全体にいきわたるように転がしてから酸味のあるものを食べてください。
ミラクルフルーツの効果を実感しやすい酸味のある食べ物は、下記の通りです。
レモン
ライム
トマト
ヨーグルト
酢
ミラクルフルーツを食べた後に柑橘類や酸味の強い果物などを食べると甘く感じます。例えばレモンだと、酸味が消えてはちみつをかけたような甘さを感じます。元々酸味だけではなく甘みの強い食べ物だと、甘みがより一層増します。
ただし、梅干しのほうに酸味の他にしょっぱさがある場合などは、酸味だけが甘味に代わりしょっぱさなどはそのまま残るということもあります。組み合わせによっては「美味しくない」と感じることもあるので、注意しましょう。
ミラクルフルーツはミラクリンの味覚を変える作用から「副作用があるのでは」「人体に害があるのでは」と考える人も多いようですが、ミラクリンは厚生労働省にも安全な添加物として認可されている成分で、副作用や人体に害のある成分ではありません。
むしろ、ミラクルフルーツは、酸味のあるものを甘味に変えるという点で糖尿病やダイエット中の方の糖質制限には効果的な食べ物として注目されています。
しかし、食材の成分が変わる訳ではないため糖尿病などの症状を根本的に改善することはできません。過剰にミラクルフルーツを摂取したり、ミラクルフルーツを食べているからといって酸味の強いものを過剰摂取しないように注意しましょう。
グミの実は、グミ科グミ属の木に実る果実です。
漢字では「茱萸」または「胡頽子」と表記し、海外では「silverberry(シルバーベリー)」と呼ばれています。日本では「ごぶいちご」という別名で呼んでいる地域もあるようですが、一般的に「グミの実」と呼ばれることが多いです。
グミの実はさくらんぼを伸ばしたような楕円形のものが多く、熟すと赤くなる特徴があります。ミラクルフルーツと見た目は似ていますが、グミの実の大きさは品種によって差がありミラクルフルーツよりも大きなものもあります。
グミの実は味も品種によって差があり、苦味が強く生食にはむないものや、甘酸っぱく生のままでも食べられものがあり、共通してやわらかくとろみがあり独特の食感を楽しむことができます。
クコの実は、ナス科クコ属に属する植物の果実です。
漢字では「枸杞」と表記し、枸(カラタチ)のようなトゲをもち杞(コリヤナギ)のように枝がしなやかであることに由来して「枸」と「杞」を組み合わせ枸杞(クコ)と名付けられたといわれています。欧米では「ゴジベリー」や「ウルフベリー」と呼ばれることもあります。
クコの実は1cmほどの楕円形の赤い実です。見た目はミラクルフルーツと似ていますが、ミラクルフルーツよりも小さめです。また、クコの実は苦みや渋み、臭みがあるため生で食べられることはあまりありません。
基本的には乾燥させて食べます。これはクコの実の水分を抜くことで甘みを凝縮させほのかに甘酸っぱい味わいになり食べやすくなるためです。
乾燥させたクコの実には「枸杞子(クコシ)」という正式名称があります。例えば杏仁豆腐の上などに乗っているのは枸杞子です。ですが、一般的には乾燥させたものも「クコの実」と呼ばれています。
プルーンも「ミラクルフルーツ」と呼ばれることがあります。これは、人間に不足しがちな栄養素をたっぷり含んでいるためであり、チアシードなどが「スーパーフード」と呼ばれることがあるのと同じです。
プルーンはバラ科サクラ属の落葉高木で、セイヨウスモモの一種です。様々な種類がありあすが、特に赤紫色の実をつけ、主に種がついたまま乾燥させても発酵しないものが「プルーン」と呼ばれます。
ミラクルフルーツとは見た目も大きく異なり、プルーンを食べた後に次に食べるものを甘く感じさせるといった特徴はありません。全く別の植物です。
ミラクルフルーツに含まれている栄養成分は、文部科学省の食品成分データーベースなどにも記載がないため詳細は不明ですが、ミラクリンの他にもビタミンCが豊富に含まれているといわれています。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
ミラクルフルーツのカロリーや糖質量も文部科学省の食品成分データーベースなどに記載がないため、詳細は不明ですが、ミラクルフルーツのカロリーは低く、糖質量も少ないといわれています。
そもそもデザートなどに食べられるフルーツとは異なり、一度に大量に食べるものではないので、ダイエット中の方も神経質になる必要はないでしょう。
残念ながら、りんごなどの果物とは異なり一般的なスーパーや八百屋などで販売されていることはほどんどありません。これは一般的ないちごやバナナといった果物とは異なり、デザートなどとしてミラクルフルーツが食べられることが少なく、需要があまりないためであると考えられます。
まれに取り扱っている店舗もあるようですが、近くに購入できる店舗がない場合は、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。ネット通販でのミラクルフルーツの値段は販売元によって異なりますが、一袋(5粒)800円〜1200円程で販売されています。
ミラクルフルーツは一般的なスーパーでは販売されていないことがほとんどですが、ドン・キホーテや東急ハンズなどでは、味覚を変えるおもしろグッズとして販売されていることがあります。
ただし、ドンキホーテや東急ハンズで取り扱われているものの多くはタブレット状になっているものです。ダブレットではなくミラクルフルーツそのものを食べてみたいという方は、やはりネット通販の利用がおすすめです。
近年ではミラクルフルーツをラムネ化した「あまなーれ」というお菓子が販売されています。味はぶどう風味になっていますが、ミラクルフルーツと同じように酸っぱいものを甘くする効果があります。ミラクルフルーツの不思議な効果を手軽に体験できるようになるのもそう遠くはないでしょう。
ミラクルフルーツは自宅で栽培することも可能です。育てやすい植物ではありますが、成長スピードが遅く植えてから開花し実をつけるまで5年〜10年かかります。そのため、ミラクルフルーツを家庭菜園するのであれば、すでに実をつけた状態で販売されている苗木の購入をおすすめします。
ミラクルフルーツは温かい気候の場所で育つ植物ですので、15℃以下になる寒い季節は室内の日当たりの良い場所に置いて育てましょう。上述したようにミラクルフルーツは寒さに弱い植物です。15℃以上の温度を確保できれば、一年中開花と結実を繰り返します。
水やりは、温かい季節は朝晩多めに与え、寒い季節は根腐れを防ぐため土が乾いたら与えます。油粕などの有機肥料を適量与えると実付きが良くなります。
緑色の実がなり、熟して赤色になったら収穫して食べることができます。
販売されているフリーズドライ加工されたミラクルフルーツは、そのまま1年程保存しておくことができます。
フリーズドライ加工されていないミラクルフルーツは、時間が経つとミラクリンの効果が薄れてしまうため早めに食べたほうが良いです。
すぐに食べきれない場合は乾燥してしまわないようにラップで包み、密閉できる容器に移し替えて2〜3日冷蔵保存しておくことができます。
ちなみに、ミラクルフルーツは腐敗すると茶色っぽく変色したり、水気が出てぬるぬるしてきます。また、他の果物や野菜と同じように異臭がしたりカビが生えることもあります。こなってしまったら腐敗しているので食べることはできません。残念ですが、破棄しましょう。
Most Popular
舞茸の茹で時間は何分?正しい茹で方&下処理を解説
食品事典
エリンギが水っぽい...食べられる?濡れてる原因と対処法は?
食品事典
腐ったカブの見分け方|色や形、臭いは?原因と対処法も解説
食品事典
スカスカなかぶは食べてOK?スが入る原因は?
食品事典
里芋は生で食べられる?生食のメリットと注意点を解説。
食品事典
中が茶色いじゃがいもは食べられる?空洞や輪になってる場合は?
食品事典
ごぼうがふにゃふにゃ・しなしな!柔らかいごぼうを復活させる方法は?
食品事典
大根は中身が茶色に変色しても食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
麻婆豆腐が辛い時に甘くする方法。おすすめの調味料や食品は?
食品事典
冬におすすめの天ぷら具材36品。冬野菜や冬が旬の魚介類を紹介
食品事典