ひよこ豆はその名の通りひよこの頭の形に似た豆です。インド料理で使われる事が多く、ホクホクとした食感を楽しめるだけではなく栄養価が高いことでも注目されています。本記事ではひよこ豆の原料や使い方、栄養素、カロリーなどを詳しく解説します。
ひよこ豆はマメ科ヒヨコマメ属の植物です。
原産国はアジア西方で、そこからインドやヨーロッパに広がったといわれています。現在の主生産国のインドであり、インドでは皮をむき挽き割りに加工してスープやカレーの具材として使われることが多いです。
インドの他にも西アジアや中南米などでも栽培されていますが、日本ではほとんど栽培されていないため販売されているひよこ豆の多くはメキシコやアメリカからの輸入したものです。
ひよこ豆は日本でよく見られる大豆とは異なり、ゴツゴツとした形をしています。豆のちょうど真ん中の部分に鳥のくちばしのような突起があり、ひよこの頭に見えることから「ひよこ豆」という名前がついています。
英語では「chickpea(チックピー)」といい、「chic」は「ひよこ」、「pea」は「丸い豆」を意味します。スペイン語では「garbanzo(ガルバンソ)」といい、日本でも「garbanzo」を英語読みにして「ガルバンゾー」と呼ばれることも多くなってきました。インドでは「chana dal(チャナダル)」、中国語では「鶏児豆」といいます。
「エジプト豆」と呼ばれることもありますが、エジプト豆はひよこ豆だけではなくそら豆、ふじ豆、えんどう豆など、他の種類の豆を指すこともあります。
また、ひよこ豆の学名「arietinum」には、「角のある」「雄羊のような」という意味があり、豆の形が羊の頭に似ていることに由来しているといわれています。
ひよこ豆には甘みがあり、ホクホクとした食感を楽しむことができます。食感が栗と似ていることから「栗豆」と呼ばれることもあります。大きさは大豆と似ていますが、大豆のような青臭さはないため「大豆が苦手」という方でも比較的食べやすいです。
ひよこ豆には大別して大粒種(kaburi)と小粒種(desi)の2種あります。粒の大きさや表皮の色が異なるだけで味や栄養素に大きな違いはありません。
大粒種の粒の大きさは10〜13mmで、表皮の色は薄橙色です。
小粒種の粒の大きさは7〜10mmで、表皮の色は濃褐色です。
ひよこ豆の主生産国であるインドでは小粒種が主流ですが、日本に輸入されているものの多くはメキシコやアメリカ産の大粒種が主流です。
ひよこ豆は基本的に湿度に弱いため、多湿の日本の気候はひよこ豆の生産に適していません。そのため上述したように日本産のひよこ豆はあまり販売されていないのですが、ひよこ豆を自宅で栽培して食べているという方は意外と多くいます。
ひよこ豆の種まきの時期は、春播き(はるまき)の場合は2月~5月、秋播き(あきまき)の場合は9月~12月です。比較的湿度の低い秋に種まきをするのが良いでしょう。
培養土を入れたプランターに約2センチ程の穴を3〜4箇所あけて、一粒ずつ種をいれていきます。種をいれたら隠れるくらいの土をかぶせて水やりをします。
ひよこ豆の発芽率は高いのですが鳥などに食べられてしまうことが多いので、ネットをかけておくと安心です。また、育つと草丈が50~60センチほどになるのですが、自分でつるを巻くことができないため茎が地面を這(は)うように伸びてしまいます。そのため朝顔を育てるときなどに使用する支柱を使って上に伸びるように誘引しましょう。
植えてから1ヶ月程で白い花が咲き、花が枯れると緑色の小さなサヤがつきます。サヤの中に豆が入っているので、サヤがパンパンに膨らんできた頃が収穫時期となります。
販売されているひよこ豆には、乾燥タイプと缶詰やレトルトパックに入っている水煮タイプがあります。
乾燥タイプのひよこ豆は、大豆などの豆類と同じように水に浸して戻した後に茹でるなどの下ごしらえをする必要があります。スープに入れたり煮物にする場合は水に浸して戻した状態で使うことができますが、火が通るのに時間がかかるため下茹でしたほうが時短になります。
缶詰やレトルトパックのひよこ豆は水戻し不要です。
ひよこ豆は、水戻しすると乾燥した状態の約2.2倍、茹でると約2.6倍の重量になります。そのためひよこ豆を使用する際は、重量が多くなることを念頭に入れておきましょう。
例えば400gの乾燥ひよこ豆を水戻しすると約430g、さらに茹でると約520gになります。
乾燥タイプのひよこ豆は、茹でる前に水に浸して戻します。
まず、ひよこ豆をボウルにいれたら、たっぷりと水をいれます。ひよこ豆は水分の吸収率が高いため、ひよこ豆に対して4〜5倍の水を入れる必要があります。次に、ひよこ豆と水を入れたボウルにラップをして冷蔵庫で一晩おきます。最低でも6時間の浸水時間が必要です。豆の表面のシワがなくなり、ふっくらと膨らんでいればOK。戻したときに使った水は茹でる際に使うことができます。
水ではなく、熱湯を使うと2時間程で戻るので時短になります。熱湯を使う場合は、熱湯を注いだ後にふたをして温度が下がらないようにするのがポイントです。
戻したひよこ豆の茹で方は下記の通りです。
ひよこ豆を茹でる際は、水戻ししたときの水をそのまま使うことができます。まず、鍋に水ごとひよこ豆をいれたら火にかけて沸騰させます。沸騰したら浮いてきている白いアクをおたまで綺麗にすくい取ります。アクが綺麗にとれたら、蓋をして好みの硬さになるまで30分〜40分茹でます。蓋はしなくても大丈夫ですが、蓋をしたほうが早く火が通ります。
ひよこ豆の茹で汁は、保存の際やスープなどを作るときに使うことができます。
圧力鍋を使えば、茹で時間を短縮することができます。
圧力鍋を使う場合は、ひよこ豆と水を入れたあと強火にかけます。最高圧力になったら火を止めて、圧力が下がるまでしばらく置きます。圧力が下がったら水気を切って完成です。(加熱時間が圧力鍋によって異なりますので、お手持ちの圧力鍋の使用方法に従ってください。)
炊飯器を使って茹でることもできます。
炊飯器を使う場合は、ひよこ豆1:水3の割合でセットし白米を炊くのと同じように炊きます。炊きあがったあと硬ければ、保温状態でしばらく置いて調節してください。
ひよこ豆は、スープやカレーなど様々な料理に使われます。ひよこ豆にはたんぱく質が豊富に含まれているためヴィーガンやベジタリアン向けの料理にも多く使われます。
ひよこ豆は野菜などと一緒にスープの具材として使うことができます。ひよこ豆を入れることで食べごたえが増すので、ダイエット中の朝食や夕食におすすめです。
ひよこ豆を下ごしらえ下際にでた茹で汁には豆の旨味が凝縮されているため、茹で汁をベースに作ると、より美味しくなります。
ひよこ豆はフムスの原材料としても使われます。
フムスとは中東や地中海地域で食べられている伝統的な家庭料理で、ひよこ豆にタニヒ*やオリーブオイル、にんにく、レモン汁、塩などの調味料を加えてペースト状にしたものです。
*胡麻をペースト状にしたもの
クリームチーズのような濃厚な味わいで、野菜やピタパンなどにつけて食べることが多いです。
ひよこ豆の主生産国であるインドでは、一般的にカレーにひよこ豆を使います。
現地では「チャナマサラ」といわれ、「チャナ」はひよこ豆、「マサラ」は香辛料を意味します。見た目は日本でいうところの肉じゃがに似ています。
ひよこ豆とひき肉を使ってキーマカレーにすることもできます。
茹でたひよこ豆は野菜と一緒にサラダにすることもできます。
ひよこ豆をサラダに加えることで栄養価が高くなるだけではなく、食べごたえが出て満足度がUPします。
ひよこ豆を使ってチリコンカンなどの煮物を作ることもできます。
チリコンカンは、牛ひき肉と豆、玉ねぎなどの野菜チリパウダーやパプリカパウダーで味付けをして煮込んだメキシコ料理です。学校給食で食べたことがあるという方が多いのではないでしょうか。チリコンカンに入れる豆に決まりはないので好みの豆を使うことができますが、主にレンズ豆やひよこ豆を使うことが多いです。
また、大豆の代用品としてひじきの煮物などに入れることもできます。
ひよこ豆に片栗粉をまぶし、カラッと揚げて食べることもできます。青のりなどで味付けをしてもおいしく食べることができ、子供のおやつやお酒のおつまみにもぴったりです。
また、トルコなどの中東諸国には、「ファラフェル」と呼ばれるゆでたひよこ豆をつぶして丸く形を整えて揚げた揚げ物料理があります。
日本ではあまり見かけませんが、ひよこ豆を粉末状にした「ベサン」と呼ばれる加工品もあります。インドでは「パコラ」といわれる天ぷらの衣として使われます。
ひよこ豆を使って、クッキーなどの焼き菓子を作ることもできます。
下ごしらえした乾燥タイプのひよこ豆、または水煮タイプのひよこ豆とメープルシロップなどの材料をフードプロセッサーに入れて混ぜてた後にクッキーの形に成形してオーブンで焼きます。
上述した「ベサン」を小麦粉の代用品にすると、より手軽にクッキーやパンケーキなどを作ることができます。ちなみにインドでは、ベサンを「ナムキーン」と呼ばれるスナック菓子や、ロティと呼ばれるパン、甘いお団子を作るのにも使います。
ひよこ豆を使って甘納豆(あまなっとう)を作ることもできます。
甘納豆とは豆などの素材を砂糖漬けした和菓子で、名前に「納豆」とついていますが発酵食品の「納豆」とは別物です。
また、小豆の代用品として餡(あん)を作ることもできます。ひよこ豆で代用すると、白色〜黄色っぽい見た目になります。例えばひよこ豆を使って作った餡を使って大福などを作ると、高カロリーになりがちな和菓子のカロリーを低くすることができます。
ひよこ豆100g(乾燥タイプ)に含まれる栄養素は下記の通りです。
たんぱく質…20.0g
脂質…5.2g
炭水化物…61.5g
食物繊維…16.3g
ビタミンE…2.5mg
ビタミンB1…0.37g
ビタミンB6…0.64mg
カリウム…1200mg
カルシウム…100mg
マグネシウム…140mg
リン…270mg
鉄…2.6mg
葉酸…350μg
パントテン酸…1.77mg
ひよこ豆にはたんぱく質が多く含まれており、たんぱく質の量は豚肉や鶏肉と同等です。その他に、食物繊維やイソフラボン、ビタミン類、ミネラル、葉酸などが豊富に含まれていて非常に栄養価の高い食べ物です。
ひよこ豆100gのカロリーは374kcal、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は45gです。
上述したようにひよこ豆には栄養価が高い食べ物であるということがおわかりいただけたかと思います。では実際にどのような効果があるのでしょうか。
ひよこ豆に豊富に含まれている食物繊維には、腸内の環境を整えることで便秘を解消したり予防に繋がります。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができる他、代謝がよくなります。
イソフラボンは、ポリフェノールの一種です。大豆に多く含まれることで知られていますが、ひよこ豆にもイソフラボンが含まれています。
イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、更年期や月経前のつらい症状を和らげたり 肌荒れを改善するなどの美容効果や肩こり改善、イライラを抑えるなど精神を安定させるなどの効果が期待できます。
ビタミンEは体内の脂質の酸化を防ぐ働きがあり、動脈硬化やがん、老化などを引き起こす原因になるといわれている「活性酸素」を取り除くことができます。
ビタミンB群(B1・B6)には、糖質を燃やしてエネルギーに変える働きがあります。ビタミンB6には、アミノ酸の分解・吸収をサポートする他、女性ホルモンのバランスを整える作用もあります。
その他、ビタミン類には皮膚をすこやかに保つのを助けるため美肌効果が期待できます。
カリウムとカルシウム、鉄分は人体に必要なミネラルの一つです。
カリウムは、体内のナトリウムを排出し摂り過ぎた塩分の調整する働きがあり塩分の摂り過ぎによる むくみを解消する効果が期待できます。
カルシウムは健康な骨や歯を保つのに大切役割を果たしており、骨粗しょう症予防などに効果があります。
鉄分は全身に酸素を運ぶヘモグロビンとして不可欠な栄養素であり、集中力の低下や、頭痛、食欲不振、筋力低下や疲労感、貧血を防ぐことができます。
葉酸は、水溶性ビタミンで赤血球を作るのを手助けする働きがあり貧血を予防することができます。また、代謝に関与している成分でもあり、たんぱく質の生合成を促進したり細胞の生産や再生を助けることから、体の発育にも重要なビタミンです。さらに葉酸は細胞の分裂や成熟を大きく左右する重要な栄養成分です。妊娠中の方が積極的に摂取したほうが良いといわれるのは、このためです。
ひよこ豆のGI値は33と低GI値の食べ物です。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
GI値が低いひよこ豆は脂肪として体内に蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができる(ただし、空腹感には個人差があります)。また、食事制限をすることで不足してしまいがちなたんぱく質をしっかり摂取することができるため、代謝があがりダイエットに効果的です。
ただし、食物繊維が多く含まれているためダイエットに良いからといって大量に摂取してしまうと、消化不良を起こしてお腹を壊してしまったり便秘になってしまうことがあります。また、ひよこ豆は糖質量が多い食べ物なので、食べすぎてしまうとやはり太る原因になります。食べすぎには注意しましょう。
ひよこ豆は業務スーパーやイオン、成城石井などのスーパーや輸入商品を多く取り扱うカルディなどで購入することができます。乾燥タイプのひよこ豆は乾物コーナー、水煮タイプは缶詰のコーナーに置かれていることが多いです。
Amazonや楽天などの通販を利用するのもおすすめです。
ひよこ豆の値段は製造メーカーによって異なりますが、乾燥タイプは500g300円〜500円、水煮タイプは100g125円〜160円程です。乾燥タイプは下ごしらえが必要であるため手間はかかりますが、水煮タイプと比較して安く容量が多く値段が安いです。
乾燥タイプのひよこ豆の賞味期限は製造メーカーによって異なりますが製造日から1年〜3年程です。乾物なので比較的長く設定されています。缶詰に入っている水煮タイプも数ヶ月と長めに設定されますが、劣化してしまうので開封後は密閉できる容器に移して冷蔵庫で保管し、2日〜3日を目安に使いきりましょう。
乾燥タイプのひよこ豆は、未開封の状態であれば直射日光のあたる場所や高温多湿の場所を避けた冷暗所で常温保存することができます。開封後は密閉できる容器に移して冷蔵庫の野菜室で保存すると虫の発生やカビを防ぐことができるので安心です。
水に浸して戻し、茹でた状態で保存しておくことも可能です。茹でた状態で保存する場合は、茹で汁ごと容器に入れて冷蔵で2〜3日、冷凍で1ヶ月程保存することができます。茹で汁を入れないで保存することもできますが、豆が乾燥して歯ごたえが悪くなることがあります。上述したように茹で汁はスープのベースとしても使えるので、茹で汁ごと保存しておくのが良いでしょう。
表面がぬるぬるしていたり、腐敗臭がする場合は傷んでしまっているので使用を中止してください。
レンズ豆は、マメ科ヒラマメ属の植物です。
原産国はメソポタミアやシリア付近で、そこから地中海沿岸の地域やアジア西南部に伝わり世界中で栽培されるようになったといわれています。しかし、日本ではほとんど栽培されていないため日本で販売されているレンズ豆の多くはカナダやアメリカ産から輸入したものです。
レンズ豆は地域によって大きさや色は異なりますが、一般的には直径4 〜8mm程度で、厚さは2~3mm程度の平たく丸い形をしているという特徴があります。そのため、日本では扁豆(ひらまめ)ともいわれます。ちなみに英語だと「レンティル」といいます。
レンズ豆もひよこ豆と同じく栄養価が高い食べ物で、スープやカレー、煮物、サラダに使うことができるためレンズ豆の代用品になります。
レンズ豆はひよこ豆とは異なり調理をする前に水戻しする必要がありません。そのため、より手軽に使用することができます。ただし、イオンなどのスーパーでは取り扱っていないことが多いのでひよこ豆よりも入手するのが難しいです。
ムング豆はマメ亜科ヤエナリの種子です。
緑色をしているので日本では「緑豆(りょくとう)」や「青小豆(あおあずき)」ともいわれますが、英名が「ムング」であるため「ムング豆」といわれることが多いです。
原産国はインドで、現在はおもに東アジアから南アジア、アフリカ 、南アメリカ、オーストラリアなどで栽培されています。
ムング豆もひよこ豆と同じく多くの栄養素を含み、スープにしたり、カレー、サラダの具材として使うことができるためひよこ豆の代用品として使うことができます。
日本ではあまり見かけることのないムング豆ですが、日本ではもやしの原料として使われていることが多いです。
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