キヌアは、ヒユ科アカザ亜科アカザ属の植物の種子です。栄養価が高くスーパーフードとして知られています。本記事では、キヌアの原料や食べ方、栄養素などを詳しく解説します。
キヌアの原料は、ヒユ科アカザ亜科アカザ属の植物「キヌア」の種子です。
キヌアは普段口にしているほうれん草やビートと同科の植物で、直径約2mmの種子を一つの房に250〜500個程度つけます。日本雑穀協会ではキヌアを穀物の一種としていますが、イネ科でもマメ科でもないので厳密には穀物ではありません。キヌアはヒエやアワと同じ雑穀です。しかし、イネ科の種子とそっくりで古くから食用に利用されてきたため擬穀類(ぎこくるい)と呼ばれています。
キヌアの穂は品種により赤・黄・紫・白など様々な色をしていて、種皮を脱穀した後は、扁平な円形となり食用として食されます。
キヌアは冷涼少雨の高山地でも育ちやすいという特徴があります。ペルー南部とボリビア成分を中心としたアンデス地方のすべての国で古くから生息しており、栄養科が高いことから飢餓問題を救う食物「チソヤ・ママ(母なる穀物)」といわれインカ帝国の重要な食料でした。
現在ではスーパーフードの一つとして注目され世界100カ国以上に栽培が広がっている他、少量ではありますが日本でも(北海道、静岡県)栽培されています。
現在のキヌアの栽培種には栽培地に応じて下記の4つの品種に分類されます。
高原型はアンデス山脈の標高3000メートル以上のアルティプラノで栽培されている品種で、日本にも輸入されています。
塩地型は、ボリビア南西部のウユニ塩原周辺で栽培されている品種です。
谷型はクスコより北の谷間で栽培されている品種です。
海岸型は、チリの中部(中緯度)海岸地帯で栽培されている品種です。
さらに地域ごとにさまざまなキヌアが存在し、3000種を超えるといわれています。日本で販売されているのは、主に白キヌア・赤キヌア・黒キヌアです。
白キヌア・赤キヌア・黒キヌアは色が異なるだけで、含まれている栄養素に大きな違いはありません。販売されている製品には白キヌア・赤キヌア・黒キヌア全てを混ぜたものもあります。
日本でもっともメジャーなのは白キヌアです。白キヌアは、赤キヌアや黒キヌアよりも形が崩れやすいですが、ふっくらと仕上がるという特徴があります。
赤キヌアは、穂先が赤やオレンジなどに色づくことから「穀物界のルビー」ともいわれ、赤キヌアを使うことで彩りがよくなります。赤キヌアで有名なのは「台湾赤キヌア」です。
白キヌアと比較して弾力が強く歯ごたえがあります。
黒キヌアは、野生で見つける事が非常に難しく農園での栽培量も少ないためとても希少価値が高いです。白キヌアよりも甘く歯ごたえがあります。
キヌアは無味無臭です。そのため、他の食材と一緒に使っても味に大きな影響を与えることはありません。「苦い」という印象がある方もいるかと思いますが、キヌアが苦いのはサポニンという苦味成分がキヌアの表面を覆っているためです。調理する前にキヌアを洗ってサポニンを洗い流すことで苦味を解消することができます。
キヌアは口に入れるとぷちぷちした舌触があり、口の中でぷちっとはじけるような食感があります。
キヌアにグルテンは含まれません。
グルテンとは弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量で生地の硬さが決まります。例えば、パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
グルテンは料理を美味しくしますが、アレルギーの原因となる他、消化されにくいという性質があり肥満やむくみの原因になったり、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。そのため近年グルテンを摂取しないグルテンフリーの生活をしている人も多いです。
キヌアに含まれるたんぱく質にはグルテニンとグリアジンは含まれていないため、水を加えてもグルテンは形成されません。そのため、小麦アレルギー対策やグルテンフリーの食品として使うことができます。ただし、小麦不使用の製品でも同じ製造会社で小麦製品を取り扱っている場合もあるので、必ず確認してから購入するようにしましょう。
キヌアは生で食べることはできません。そのため、サラダなど熱を通さない料理に使う場合は、基本的にはよく洗った後、鍋や炊飯器を使って炊く、またはローストして挽くなどの下処理をします。製品によってはそのまま食べられるように加工処理してあるものもあるので、購入する際に確認してください。
キヌアの基本的な下ごしらえの方法を紹介します。
キヌアは、水分を吸収すると5倍に膨らむという性質があります。
そのため、雑穀米や白米と同じ容量で用意してしまうと量が多くなりすぎて大変なことになってしまいます。分量の目安は、お米やパスタの代わりに食べる場合は半合(約60〜70g)で、一人前の分量になります。パッケージに目安の分量が記載されている場合は、そちらに従ってください。
キヌアを美味しく食べるためには、まずよく洗うことが大切です。キヌアの表面はサポニンで覆われているため、洗わずに食べてしまうと苦味を感じることがあります。このサポニンと呼ばれる成分は、虫が苦手な成分であり天然の防虫剤の役割を果たしているのではないかと推測されています。大量に摂取しなければ人害はないといわれていますが、キヌアを美味しく食べるためには、やはりきちんと洗い流したほうが良いでしょう。
製品によっては予め洗浄済のもあるので、パッケージを確認してください。
キヌアの洗い方は下記の通りです。
キヌアをザルに入れたら、お米を研ぐときの容量で水を変えながら洗います。サポニンには泡立つ性質があるため、泡立たなくなるまで洗いましょう。
ちなみに、キヌアの粒はお米よりも細かいため茶漉し(ちゃこし)など目の細かいものを選んでください。目の粗いザルしかない場合は、排水溝ネットなどに入れて洗っても良いでしょう。
キヌアを鍋を使って炊く方法は、下記の通りです。
まず、洗ったキヌアの水気を切ったら鍋にキヌアと水を入れて10分〜15分茹でます。この時、塩を一緒に入れておくとキヌア特有の香りが気にならなくなります。キヌアに火が通る前に水が蒸発して無くなってしまった場合は差し水で調整してください。水分がなくなり、キヌアが半透明になったら鍋の蓋をします。キヌアが半透明になり、白いひげがでてきたらキヌアに火が通ったサインです。茹で汁の水分がなくなり蒸しあがったら火を止めます。茹で汁が多すぎる場合は、蒸らす前にざるに通して水分の量を調節しましょう。
電子レンジで加熱することもできます。
電子レンジを使用する場合は洗ったキヌアと3倍量の水を耐熱ボウルに入れ、ラップをして600Wで7~8分加熱した後に15分ほど蒸らします。電子レンジで加熱することで、完全にぱらぱらな状態にすることもできます。
炊飯器を使って炊く場合も、よく洗ったキヌア1合(約180g)に対して水1合(180㏄)を入れて炊飯器のスイッチを入れてお米と同じように炊きます。炊けたら軽くかき混ぜて完成です。
フライパンを使ってキヌアをローストする方法は、下記の通りです。
キヌアをローストする場合は、フライパンにキヌアを広げ弱めの中火で混ぜながらじっくりと火を通します。ローストすることで、香ばしい風味がします。
ローストしたキヌアは、煎り胡麻と同じ要領で使うことができます。また、ローストした後にブレンダーなどで細かく粉状に挽けば、小麦粉の代用品として使うことが可能です。
炊いたり炒ったりして下ごしらえをしたキヌアは、様々な方法で美味しく食べることができます。
最も一般的なのが、野菜の上に炊いたりローストしたキヌアをふりかけてサラダとして食べる方法です。
キヌアを振りかけることでぷちぷちとした食感を楽しむことができる他、栄養価を高めることができます。葉物野菜だけではなく、ツナやジャガイモなどのまとまりやすい食材と組み合わせると、キヌアが絡んでより食べやすくなるのでおすすめです。
キヌアを野菜と一緒に似てスープにすることもできます。キヌアを生産しているペルーでは「ソパ・デ・キヌア」というスープ料理があります。レストランなどでは定番料理としてメニューにあるそうです。
普段のスープにキヌアを加えるだけで、つぶつぶの食感を楽しめる「食べるスープ」になります。満腹感を高めることができるので、ダイエット中の方にもおすすめです。
サバの味噌煮などの煮物を作るときに一緒に使うこともできます。キヌアを加えて一緒に煮込むことでプルんとした食感に仕上げることができます。
キヌアを、唐揚げなどの揚げ物の衣として使うこともできます。
キヌアを揚げ物の衣にすると栄養価が高くなるだけではなく、小麦粉を衣にしたときと比較してカリッとした食感に仕上がる他、カロリーが低くなり糖質量も少なくなるため「ダイエット中だけど揚げ物が食べたい」という方にピッタリです。
唐揚げだけではなく、エビフライやコロッケの衣としてもおすすめです。
白米と一緒に炊いて食べることもできます。
ご飯と一緒に炊く場合は、お米1合に対して洗ったキヌア大さじ1程度を入れて通常通り炊くだけでOKです。パエリアやピラフ、炊き込みご飯、雑炊、焼きおにぎりなどにしても美味しく食べることができます。
キヌアを白米と一緒に炊くことでかさ増しすることができるので、カロリーや糖質量を抑えることができます。
キヌアは、クッキーなどの焼き菓子を作ることができます。
薄力粉などの小麦粉と一緒に使うことで、いつものクッキーにぷちぷちとした食感をプラスすることができます。キヌアのみで作ると、ザクザクとした食感に仕上がります。
キヌア100gに含まれる成分は下記の通りです。
たんぱく質…14.12g
脂質…6.07g
炭水化物…64.16g
食物繊維…7.0g
カルシウム…47mg
鉄…4.57g
マグネシウム…197mg
リン…457mg
カリウム…5mg
亜鉛…3.10mg
ビタミンB1…0.36mg
ビタミンB2…0.18mg
ナイアシン…1.520mg
ビタミンB6…0.487mg
葉酸…184μg
キヌアには、100g中14.12gと白米の2倍以上のたんぱく質が含まれています。 キヌアのタンパク質には、必須アミノ酸がバランス良く含まれているという大きな特徴があります。必須アミノ酸は、神経伝達物質を生成する重要な役割を果たしますが、人体で作ることができないため食物などから摂取しなければなりません。
脂質も6.07gと白米などと比較して多く含まれていますが、キヌアに含まれている脂質はオリーブオイルなどと同じ一価不飽和脂肪であるため心臓に良いといわれています。
また、キヌアには三大栄養素といわれるたんぱく質・脂質・炭水化物の他に、食物繊維やカルシウムや鉄分、葉酸などの栄養素が豊富に含まれています。
キヌア100gのカロリーは368Kcal、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は57gです。
上述したようにキヌアは栄養価が高い食べ物であるということがおわかりいただけたかと思います。では実際にどのような効果があるのでしょうか。
キヌアに豊富に含まれている食物繊維には、腸内の環境を整えることで便秘を解消したり予防に繋がります。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができます。
鉄分とカルシウム、亜鉛は、人体に必要なミネラルの一つです。
鉄分は全身に酸素を運ぶヘモグロビンとして不可欠な栄養素であり、集中力の低下や、頭痛、食欲不振、筋力低下や疲労感、貧血を防ぐことができます。
カルシウムは健康な骨や歯を保つのに大切な役割を果たしており、骨粗しょう症予防などに効果があります。
亜鉛は、主に骨格筋や骨、皮膚、肝臓などにある成分です。亜鉛も必須アミノ酸と同じく体内で作り出すことができないため、食事で摂取する必要があります。亜鉛は、体内にあるビタミンAの代謝を促して抗酸化作用を活性化させる働きがあるため、アンチエイジングや生活習慣病の予防になります。
ビタミンB群は、糖質を燃やしてエネルギーに変える働きがあります。特にビタミンB2は、脂質を分解してエネルギーに変換する働きがあり、効率よく摂取することでダイエット効果が期待できます。ビタミンB6は、アミノ酸の分解・吸収をサポートする他、女性ホルモンのバランスを整える作用もあります。
その他、ビタミン類には皮膚をすこやかに保つのを助けるため美肌効果が期待できます。
葉酸は、水溶性ビタミンで赤血球を作るのを手助けする働きがあり貧血を予防することができます。また、代謝に関与している成分でもあり、たんぱく質の生合成を促進したり細胞の生産や再生を助けることから、体の発育にも重要なビタミンです。さらに葉酸は細胞の分裂や成熟を大きく左右する重要な栄養成分です。妊娠中の方が積極的に摂取したほうが良いといわれるのは、このためです。
キヌアのGI値は白米のGI値88の半分程度と、低GI値であることも大きな特徴です。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
キヌアを食事に取り入れることは、食物繊維などの栄養素を多く含むことやGI値が低いという点でダイエットに利点があるといえます。
GI値が低いキヌアは脂肪として体内に蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができます(ただし、空腹感には個人差があります)。また、食事制限をすることで不足してしまいがちなカルシウムなどの栄養素を摂取できることができるため、健康的です。
ただし、ダイエットに良いからといってキヌアを大量に摂取してしまうと、食物繊維を多く含むため反対にお腹を壊してしまったり便秘になってしまうことがあるので1日の摂取量は守りましょう。キヌアの摂取量は、1食あたり20グラム程です。パッケージに記載がある場合は、そちらに従ってください。
キヌアは、カルディやコストコ、成城石井など輸入商品を多く取り扱うお店で購入することができます。
業務スーパーやイオンなどのスーパーでは取り扱っていないことが多いです。
近くに購入できる店舗がないという方は、Amazonや楽天などの通販の利用がおすすめです。
値段は製造メーカーによって異なりますが、カルディでは150g480円で販売されています。キヌアの収穫量は主要穀物であるトウモロコシや米などと比較して1万分の1以下であるため、スーパーフードとして需要が高まる一方で供給が追いつかず、高値になっています。
キヌアの賞味期限は製造メーカーによって異なりますが、製造日からおよそ1年です。下処理をする前のキヌアは比較的長持ちします。ただし、正しく保存しないと劣化してしまうので注意しましょう。
キヌアは未開封の状態であれば、直射日光が当たる場所や高温多湿の場所を避けた冷暗所で常温保存することができます。開封をした場合も密閉できる容器に移し替えて常温保存することができますが、カビが生えたり虫の発生を防ぐため冷蔵庫に保管しておくと安心です。
炊くなどの下処理を済ませた状態の場合は、密閉容器に入れて冷蔵庫で2~3日保存することができます。冷凍庫なら2~3週間保存可です。ただし、下処理をしたキヌアは乾燥した状態と比較して痛みやすいです。できるだけ早めに使い切り、変色していたり異臭がする場合は使用を中断してください。
アマランサスもキヌアと同じくヒユ科ヒユ属の植物です。アマランサスの種子も粒状になっていて、食用になることから疑穀物に分類されます。
「アマランサス」にはギリシャ語で「しおれない花」という意味があります。
アマランサスも栄養価が高いことで知られ、「スーパーグレイン(驚異の穀物)」とも呼ばれています。
アマランサスもキヌアと同じくつぶつぶとしていて、ぷちぷちとした食感を楽しむことができますが、キヌアよりも粒が小さいという特徴があります。粒が小さい分、キヌアと比較すると水分の吸収量が少ないためキヌアのほうが腹持ちは良いですが、栄養価はアマランサスのほうが高いといわれています。
また、アマランサスは種子だけではなく葉も食べることができます。
チアシードの原料はシソ科サルビア属の「チア」という植物です。
チアシードは1ミリ程度のゴマのような形状をしており、水分を含むとゼリー状になって10倍以上に膨らむという性質があります。このゼリー状になっている部分は水溶性植物繊維のグルコマンナンです。少量でも満腹感を得ることができます。
キヌアは雑穀、チアシードは種子という点で分類は異なりますが、どちらも栄養素が高くダイエットにぴったりです。キヌアは白米と一緒に炊いたりサラダにして食べることが多く、チアシードは水に浸し、とろとろの状態になったものをヨーグルトに入れたりやスムージーなど飲み物に入れることが多いです。
オートミールの原料は、脱穀したオーツ麦です。
オートミールには麦の形が残った状態のロールドオーツや、細かく砕いているクイックオーツなど様々な種類があり、キヌアとは形が全くことなります。キヌアのようにプチプチとした食感はありません。
オートミールも食物繊維やカルシウム、ビタミンB1などの栄養素を含み、小麦やお米などの穀物より栄養価が高いことで知られており、キヌアと比較して特にカリウムやマグネシウムなどのミネラル類を多く含みます。
オートミールは、下処理をしなくてもスナック感覚でそのまま食べることもできますし、ヨーグルトなどに入れたりお粥にして食べることができます。
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