片栗粉と浮き粉の違いをご存知でしょうか?どちらもでんぷん粉ですが、原料が異なります。本記事では片栗粉と浮き粉の違いを詳しく解説します。
片栗粉(かたくりこ)と浮き粉(うきこ)は、どちらもでんぷん粉の一種です。
でんぷん粉とは「澱粉(でんぷん)」ともいわれ、でんぷんを乾燥させ粉状にしているものの総称です。でんぷんは、さまざまな植物から生まれる天然の炭水化物で、ブドウ糖がたくさん集まってできています。
片栗粉の原料はじゃが芋のでんぷんです。
その昔、「カタクリ(片栗)」と呼ばれるユリ科植物の鱗茎(球根)からとれるデンプンを原料にして作られていたので「片栗粉」という名前がついています。「栗」がついていますが、栗を原材料としているわけではありません。
カタクリが減少し、明治以降にじゃが芋が大量栽培されるようになると、原材料はじゃが芋のでんぷんに切り替わっていきました。そのため「馬鈴薯澱粉(ばれいしょでんぷん)」ともいわれます。馬鈴薯とは、じゃが芋の別名です。ちなみに英語では「potato starch(ポテトスターチ)」といいます。
片栗粉は、まず原料のじゃがいもを水でよく洗って汚れを落としたあと、洗ったじゃが芋をすりつぶして液体状にし、繊維質や不純物を取り除きます。その後洗浄し(~3回繰り返す)、しばらく寝かせて下に溜まった澱粉(でんぷん)を取り出し乾燥させるという方法で製造されています。
浮き粉の原料は小麦のでんぷんです。
「本浮き粉(ほんうきこ)」や「じん粉」、「フラワースターチ」、「貫雪粉(かんせつこ)」ともいわれます。中国語では「貫雪粉」と書いて「クゥアンシュェフェン」と読みます。
浮き粉は小麦粉からグルテン(麩質)を取り除いた後、残ったでんぷんをさらに精製してできています。
まず、小麦粉に水を加えて機械でよく捏ねてゴム状にした後、洗出機を用いて小麦粉からでんぷんを洗い流してグルテンとでんぷんにそれぞれ分離します。このときに分離したでんぷんを乾燥させて精製するという非発酵法とよばれる製法で製造されています。
ちなみに、小麦粉から取り除かれたグルテンは「生麩(なまふ)」、それを焼いたものが「焼き麩(やきふ)」となります。
グルテンは主に小麦に含まれる弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量で生地の硬さが決まり、パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
グルテンは料理を美味しくしますが、アレルギーの原因となる他、消化されにくいという性質があり肥満やむくみの原因になったり、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。そのため近年グルテンを摂取しないグルテンフリーの生活をしている人も多いです。
片栗粉にグルテンは含まれません。
片栗粉の原料であるじゃが芋にはグリアジンとグルテニンが含まれていないため、水を加えてもグルテンが形成されることはありません。
そのため、小麦粉アレルギー対策やグルテンフリーの食品を作るときに小麦粉の代用品として使うことができます。ただし、小麦不使用の製品でも同じ工場で小麦を使用している場合があるので、メーカーや販売代理店に確認するようにしましょう。
浮き粉は、上述したように製造の過程でグルテンを取り除いてありますが、完全にグルテンが除去されているわけではありません。
そもそも原料が小麦なので、小麦アレルギー対策としては使うことができないので注意しましょう。
小麦粉アレルギーの方やグルテンフリーの生活を送っている方は、浮き粉ではなく上新粉や製菓用米粉など「米粉」に分類されるものを使用することをおすすめします。
片栗粉は、熱湯または水を加えて加熱すると糊化(粘りが出る)するという性質があります。糊化温度は60度前後です。
片栗粉は、糊化する性質を活かしてあんかけ料理やスープにとろみを付けるときに使われる事が多いです。
片栗粉のとろみは特に粘度が高いのが特徴で、食材に煮汁をよく絡ませるために使われることもあります。また、片栗粉でとろみをつけると料理の温度が下がるのが遅くなるため保温効果があります。
片栗粉はじゃが芋からとれるデンプンを原料としているため、離乳食初期(生後5〜6ヶ月頃)に食べさせる離乳食にも片栗粉を使用することができます。例えば、ひき肉や魚などぱさついて飲み込みにくいものを与えるときに、片栗粉でとろみをつけてあげると食べやすくなります。ただし、どんな食べ物でも食物アレルギーを発症する可能性は0ではありませんので、初めて食べさせる時は必ず少量から初めましょう。
片栗粉は、揚げ物の衣として使えます。水気が多く、表面が柔らかい鶏肉などの動物性食品を揚げる場合は表面にでんぷん粉である片栗粉をまぶすことで、水分を吸収すると共にうまみ成分の損失を防ぐことができます。
片栗粉を衣に使った唐揚げは小麦粉で唐揚げよりも見た目が白っぽくなり、ザックっとワイルドな食感になります。醤油やみりんなどで味付けをしたお肉に片栗粉をまぶして揚げると「竜田揚げ」になります。
唐揚げだけではなく、天ぷらの衣としても使うことも可能です。
生姜焼きなどを作るときにお肉に片栗粉をまぶしてから焼くと、お肉が柔らかくなります。
じゃが芋のでんぷんには高い水分保持力があるため、片栗粉を肉にまぶすことによって焼いたりする過程で肉から水分が蒸発してしまうのを防ぐことができ、しっとりと柔らかく仕上げることができます。また、片栗粉をまぶしておくことで調味料がお肉にうまく絡むようにもなります。
片栗粉は、肉団子を作るときなどのつなぎとしても使うことができます。片栗粉をつなぎとして入れると、お肉をまとめることができるだけではなく、加熱した後もしっかり水分を保持してくれるのでふっくらとした仕上がりになります。
例えば、ハンバーグを作るときのつなぎにはパン粉を使うことが多いですが片栗粉で代用することが可能です。
片栗粉を使って、求肥やわらび餅などの和菓子も作ることもできます。白玉粉やもち粉で作った場合とは食感などが異なりますが、片栗粉が余っているときなどに手軽に作れるおやつとしておすすめです。
和菓子だけではなく、クッキーなどの焼き菓子を作ることもできます。グルテンが含まれていないため、小麦粉を使ったときのようにふんわりとはしませんがサクサクとした食感に仕上げることができます。
片栗粉は、打ち粉にも適しています。
打ち粉とは、お餅をこねたり、そばやうどん、パイなどの生地を作る際に、生地が手や調理器具、作業台につかないように振りかける粉のことです。
打ち粉にもさまざまな種類がありますが、片栗粉は和菓子や焼き菓子を作るときなどの打ち粉として使うのに適しています。うどんや中華麺などの麺類を作るときの打ち粉として使うことができますが、茹でたときにとろみが出てしまうので、麺類の打ち粉として使用するのであれば中力粉や強力粉などが適しています。
浮き粉は小麦粉からグルテンを取り除いているので、小麦粉よりも軽い食感を出すことができます。また、熱を加えると半透明になるという特徴があり、中華料理などに使われることが多いです。
浮き粉は、餃子の皮にして海老蒸し餃子や焼き餃子、点心、ニラ饅頭(まんじゅう)、ごま団子などの中華料理に使われることが多いです。
浮き粉を使って餃子の皮や点心を作ると、透明でぷるぷるとした食感になります。また、浮き粉で作った団子は高温で加熱しても破裂することなく形状を保つことができるため、油であげて作るごま団子を作るのにも適しています。
浮き粉は、明石焼きを作るときに使う欠かせない材料の一つでもあります。
明石焼きとは、小麦粉とじん粉、卵を使った生地にタコを入れて焼くたこ焼きです。一般的な丸いたこ焼きとは異なり、明石焼きは平たくふわっとし食感が特徴で、出汁につけて食べます。
その他にもお好み焼きやチヂミ、卵焼き、だし巻き卵を作るときに使うこともできます。浮き粉を使うことで、ふわっとさせることができます。
浮き粉は、和菓子の原料にもなります。浮き粉を使って作る代表的な和菓子には、久寿餅(くずもち)があります。久寿餅は、浮き粉を発酵させた和菓子で、きな粉や黒蜜をかけて食べます。
くず粉を使って作るくず餅もありますが、浮き粉を使って作る久寿餅とは別物です。久寿餅は原材料に葛粉は含まれません。くず粉を使って作るくず餅は透明でぷるぷるとしていますが、久寿餅の見た目は白く、食感もくず餅と比較して硬く、独特の風味があるのが特徴です。
その他にも、水まんじゅうや団子、ういろうなどの和菓子を作ることができます。
浮き粉も打ち粉としても使うことができます。
浮き粉など粘度が低く、茹でても片栗粉ほどとろみが出ないため麺を作るときなどに適しています。
片栗粉と浮き粉は原料が異なるため、栄養素やカロリーも異なります。
片栗粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。
たんぱく質…0.1g
脂質…0.1g
炭水化物…81.6g
カリウム…34㎎
カルシウム…10㎎
マグネシウム…6㎎
リン…40㎎
鉄…0.6㎎
片栗粉の成分はでんぷんによる炭水化物が多く、たんぱく質などの栄養素はほとんど含みません。そのため、お肉や野菜と一緒に調理をして栄養のバランスをとると良いでしょう。
片栗粉100gあたりのカロリーは338kcalで、そうめんを1人前(二束)食べるのと同じぐらいのカロリーです。糖質量は炭水化物から食物繊維を引いたものですが、片栗粉は食物繊維をほとんど含まないので糖質量は81.6gです。カロリーも糖質も高めであることがわかります。
浮き粉100gに含まれている成分は、下記の通りです。
たんぱく質…0.2g
脂質…0.5g
炭水化物.86.06g
食物繊維…0g
カリウム…8mg
カルシウム…14mg
マグネシウム…5mg
リン…33mg
鉄…0.6g
亜鉛0.6g
胴…0.02g
マンガン…0.066
浮き粉の成分もでんぷんによる炭水化物が多く、たんぱく質などの栄養素はほとんど含みません。
浮き粉100gのカロリーは、360kcalです。これは、お茶碗大盛りのご飯(200g)のカロリーよりも高いです。浮き粉にも食物繊維が含まれていないので、浮き粉の糖質量も約86gと多めです。これは、うどん1玉(230g)の糖質量の約2倍です。
ちなみに浮き粉を使用して作る久寿餅は、一人前(100g)88kcalで糖質量は19gほどです。低カロリーで低糖質のように思えますが、きな粉や黒蜜をかけるとカロリーは200kcal前後となり、糖質量は20gほどです。
浮き粉は、原料が小麦であるため片栗粉と比較してカロリーが高く、糖質量も多いです。
片栗粉と浮き粉は、どちらもでんぷん粉の一種であるためお互いに代用可能です。ただし、原料が異なるため食感などに違いがでます。
例えば、料理にとろみをつけるときに浮き粉ですると、粘度は片栗粉よりも低いものの、離水率が低いためしっかりとしたとろみがつきます。しかし、片栗粉ほど透明度は高くないため、白っぽくなってしまうことがあります。
餃子の皮や海老蒸し餃子、焼き餃子、点心などを作るときに片栗粉で代用すると浮き粉ほどもちもちにはなりませんが、ぷるぷるとした食感に仕上がります。
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