ライ麦粉と小麦粉の違いをご存知でしょうか。ライ麦粉はライ麦を原料に作られた粉で、小麦粉は小麦を原料に作られた粉です。本記事ではライ麦粉と小麦粉の違いを詳しく解説します。
ライ麦粉の原料はライ麦です。英語で「rye flour(ライフラワー)」といいます。
ライ麦はイネ科の植物で、ヨーロッパや北アメリカを中心に広く栽培されています。日本では、主に日本海側の風の強い地方や砂丘地域で防風・防砂用植物として畑の周囲で栽培されています。北海道でわずかながら食用のライ麦も栽培されていますが、販売されているライ麦粉の原料のほとんどは外国産です。
ライ麦を構成している組織には外皮(がいひ)・胚芽(はいが)・胚乳(はいにゅう)があります。
ライ麦粉は、ライ麦の外皮を取り除いて粉砕しています。細挽きしたものを「アーレファイン」、中挽きしたものを「アーレミッテル」、粗挽きしたものを「アーレグローブ」といいます。
また、外皮を取り除かずにライ麦をまるごと粉砕したライ麦粉の全粒粉もあります。
小麦粉の原料は小麦です。
小麦もイネ科の植物です。軟質小麦(なんしつこむぎ)中間質小麦(ちゅうかんしつ)硬質小麦(こうしつこむぎ)があり、原料に使われる小麦の品種によって薄力粉・中力粉・強力粉と分類されます。
軟質小麦は粒の柔らかい小麦で胚乳が薄力粉の原料になります。中間質小麦は粒がやや硬く、胚乳が中力粉の原料になります。硬質小麦は粒の硬い小麦で胚乳が強力粉の原料になります。
小麦粉は、多数のロール製粉機とふるいの組み合わせにより小麦の胚乳組織を粗く砕いて分離し、これを粉砕するという方法で作られています。粉砕する際に数十種類の粉が得られますが、最終的には2〜4種類に仕分けされて、その性状により希望する等級になるようにそれぞれの粉を組み合わせるという製造方法で作られています。
小麦粉は、胚乳部分にある灰分の含有量によって特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末分にわけられ、これを等級といいます。灰分含有量が0.3~0.35%のものは特等粉、0.35~0.45%のものが1等粉、0.45~0.65%のものが2等粉、0.7~1.0%のものが3等粉、1.2~2.0%のものが末粉となります。
灰分の含有量が少ない方が白くなり(その分栄養価は少ないですが…)上級粉となります。灰分の含有量が多いと茶褐色になり、下級粉となります。例えば、強力粉の1等粉は高級食パンに、強力粉の3等粉は通常の食パンなどと使い分けされます。
灰分は外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラルや食物繊維のことです。小麦粉は調理過程で加熱されると、たんぱく質や脂質は燃えてなくなってしまうのですが、一部のミネラルや食物繊維が灰として残ります。
また、仕分けせずに全部を混合したものがあり、これを「ストレート粉」といいます。
ライ麦粉と小麦粉は原料に使われている小麦の種類が異なるため、見た目が異なります。
ライ麦粉の見た目は灰色っぽく、サラサラとしています。そのため、ライ麦粉を使って調理をすると見た目が黒っぽくなります。
ライ麦パンに酸味があることから、ライ麦粉=酸味があると思っている方も多いかと思いますが、ライ麦粉自体に酸味があるわけではありません。ライ麦パンを作る場合は、サワードウとよばれる発酵種が使われることが多く、サワードウを使うと乳酸菌が発酵の過程で生産する乳酸により特有の強い酸味と風味が出るためです。
小麦粉の見た目は白色です。見た目だけでは薄力粉・中力粉・強力粉を判別することはできませんが、それぞれ感触が異なります。
薄力粉の原料である軟質小麦の粒は柔らかいため、製粉すると粒子が細かくなります。触るとしっとりしていて、手でぎゅっと握るとある程度固まります。
強力粉と中力粉の原料である中間質小麦と硬質小麦の粒は硬いため、製粉すると粒子が粗くなります。そのため、サラサラとしていて手でギュッと握っても固まりません。
ライ麦粉と小麦粉は、原料が異なるためグルテンの有無にも違いがあります。
グルテンとは弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量で生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
ライ麦のたんぱく質には、グルテニンとグリアジンは含まれておらず水分を加えてもグルテンは形成されません。
しかし、ライ麦粉にはグルテンを形成するグリアジンに似た成分である「セカリン」が含まれています。そのためライ麦粉もグルテンを含む小麦粉と同じように粘り気を出す性質があります。
そのため、グルテンが含まれていないからといって必ずしも小麦アレルギー対策になるとはいえません。小麦アレルギーの方でもライ麦粉は食べることができるという方もいますが、グルテンを形成するたんぱく質と似た成分が含まれるライ麦粉を口にすることでアレルギー反応が起こる可能性は充分にあります。ライ麦を小麦アレルギー対策として使用する場合は注意が必要です。
小麦のたんぱく質にはグルテニンとグルアジンが含まれているため、水分を加えるとグルテンが形成されます。
小麦粉のグルテンの含有量は小麦の品種によって異なります。
薄力粉のグルテンの含有量は6.5~8%(原料小麦によって違いがあります)で小麦粉の中で最も少なく、強力粉のグルテン含有量は11.5~13.5%と最も多いです。中力粉のグルテン含有量は8~9%で薄力粉と強力粉の中間です。
ライ麦粉100gに含まれている成分は下記の通りです。
たんぱく質…8.5g
脂質…1.6g
炭水化物…75.8g
食物繊維…12.9g
ビタミンE…0.7g
ビタミンB1…0.15g
ビタミンB2…0.07g
ナイアシン…0.9mg
ビタミンB6…0.1mg
葉酸…34μg
パントテン酸…0.63mg
ナトリウム…1mg
カリウム…140mg
カルシウム…25mg
マグネシウム…30mg
りん140mg
鉄…1.5mg
亜鉛…0.11mg
ライ麦粉100gのカロリーは351kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は約62gです。小麦粉と比較してカロリーが低く糖質量も少ない他、食物繊維を多く含みビタミンB群やミネラルなどの栄養素を豊富に含んでいます。
小麦粉100g当たりの成分は一般に、
水分...14~15g
たんぱく質...6~17g
脂質...2g
炭水化物...65~78g
灰分...1g以下
小麦粉のたんぱく質の量は、強力粉>中力粉>薄力粉の順で少なくなります。小麦粉に含まれるたんぱく質はグリアジンが約33%、グルテニンが約14%という割合で、その他の不溶性のたんぱく質とあわせて、約85%がグルテンを形成します。
小麦粉の食物繊維は灰分の中に含まれるので、小麦粉は重さに対して6~7割は糖質ということになります。かつ、野菜などとは違い一度に量を多く摂るので、食べ過ぎるとカロリー過多になり、運動不足の方は肥満の原因になります。
小麦粉にはビタミンB群とEが少量含まれていますが、1%以下です。ライ麦粉と比較して栄養価が低いといえます。
ライ麦粉と小麦粉の用途はほぼ同じです。パンや焼き菓子を作ったり、唐揚げなど揚げ物の衣として使います。
上述したようにライ麦粉は小麦粉として栄養価が高いため、基本的に小麦粉の代用品としてライ麦粉を使ってパンやクッキーなどの焼き菓子を作ったり、揚げ物の衣として使うことが多いです。
ライ麦粉と小麦粉を比較すると、ライ麦粉のほうがダイエットに効果があるといえます。なぜなら、ライ麦粉は小麦粉よりもカロリーが低く糖質量が少ないだけではなく、GI値も低いためです。
GI値とは、炭水化物を摂取した際の血糖値の上昇度を表す値です。GI値が高ければ高いほど食後に高血糖になりやすく身体に負担をかけてしまう他、脂肪が体内に蓄積されやすいといわれています。さらに、血糖値の急上昇は血糖値の急降下にも繋がるため、空腹を感じやすくなってしまいます。
そのため、ライ麦粉の方が小麦粉よりも脂肪として蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができます(ただし、空腹感には個人差があります)。
また、グルテンにはタバコに含まれるニコチンやコーヒーなどに含まれるカフェインと同じように「もっと食べたい」「食べないと気が済まない」思わせる依存性があります。そのため、グルテンが形成されないライ麦粉は、小麦粉と比較して食欲の増進を防ぐことができるといえます。
ライ麦粉と小麦粉はお互いに代用することが可能です。
ただし、原料に使われている小麦の種類が異なるため風味や食感に違いがでます。ライ麦粉を使って作るパンは独特の風味がします。また、ライ麦粉はグルテンを形成しないため、ふんわりとは膨らまずずっしりと重たく噛みごたえのある食感に仕上がります。小麦粉と比較して強い粘りが出るため生地がとても扱いにくく自宅でライ麦パンを作るのは難度が高いです。
でんぷんには水と一緒に加熱することでアルファー化(粘りがでる)し、もちもちとした食感を出すという性質があるのですが、ライ麦粉にはでんぷん分解酵素であるアミラーゼが多く含まれており、でんぷんのアルファーかを阻害してしまいます。そのため、ライ麦粉でパンを作るときはアミラーゼの働きを抑えることができる発酵種を使って製パンすることが多いです。発酵種とはパンを作る時に生地を発酵させるために用いる酵母のことで、様々な種類があります。ライ麦粉を使ってパンを作るときには、上述したようにサワードウと呼ばれる発酵種を使う事が多いです。
また、ライ麦粉のみではなく強力粉(小麦粉)と合わせて作ることが多いです。小麦粉で作るパンのレシピで10~20%程度の小麦をライ麦に置き換えるのがおすすめです。スーパーなどで販売されているライ麦パンの多くはライ麦粉を強力粉を合わせて作っています。ライ麦粉の比率が高ければ重たい食感になり、ライ麦の比率が低ければ比較的ふわっと軽い食感の生地になります。
ライ麦粉を使って作るクッキーやスコーン、パンケーキはライ麦粉の素朴な味わいとザクザクとした食感を楽しむことができます。小麦粉(薄力粉)を使って作ると、サクサクとした食感に仕上げることができます。中力粉や強力粉を使って作るとグルテンの含有量が多すぎて固くなってしまいやすいため、コーンスターチなどと一緒に使ってグルテンの量を調節することが多いです。
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