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ほうれん草の食べ過ぎはNG?摂取目安量はどのくらい?シュウ酸は危険?

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ほうれん草の食べ過ぎはNG?摂取目安量はどのくらい?シュウ酸は危険?

ほうれん草を食べ過ぎた場合のリスクについて解説します。ほうれん草のアクの原因であるシュウ酸ですが、どのくらい食べると危険なのでしょうか。1日の摂取目安量も紹介します。

ほうれん草は食べ過ぎ注意な理由

シュウ酸

ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれています。

このシュウ酸は人間にとって栄養素というよりも老廃物です。シュウ酸は、摂取しすぎると尿路結石症を引き起こす原因になるため摂りすぎには注意が必要です。

シュウ酸は茹でることで減らせます。3分茹でると3分の1〜2分の1消失します。茹でることで水溶性の栄養素は損失してしまいますが、シュウ酸はなるべく摂取しないほうがいいです。シュウ酸の摂取規定量は決められていないため、どの程度までなら摂取しても大丈夫なのか、という判断ができません。

他にシュウ酸が含まれる食材は、たけのこや小松菜、チョコレート、バナナなどがあります。

出典:日本医師会|尿路結石

硝酸塩(しょうさんえん)

ほうれん草は窒素肥料がよく使われますが、与えすぎると植物体内に硝酸塩が蓄積し、苦み・えぐみの原因になります。硝酸塩の含有量は光合成と関係があることから、日射量や日照時間、収穫時期(時間帯)、土地の水分量などによっても苦みは変化します。ちなみに、硝酸は葉より茎の部分に多いといわれています。

硝酸塩は通常の食事で摂取する場合、人体に有害ではありませんが、亜硝酸塩に変化すると有害になる場合があると指摘されています。

出典:農林水産省|食品中の硝酸塩に関する基本情報

栄養が偏る

ほうれん草ばかり食べ過ぎていると、栄養が偏ってしまいます。

例えば、ほうれん草はビタミンDやB12の含有量が0です。ビタミンDは骨の形成を助け、ビタミンB12は赤血球の中のヘモグロビンの生成を助ける働きがあります。ビタミンDは肉類や卵に、ビタミンB12はレバーや牡蠣、あさりやしじみなどの魚介類、海苔をはじめとする藻類に多く含まれています。

同じ栄養素でも複数の食品から摂取した方がよいので、バランスのよい食事を心がけましょう。

出典:農林水産省|食事バランスガイド

食物繊維

ほうれん草には食物繊維が含まれています。食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類がありますが、ほうれん草には両方が含まれています。

不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になります。

水溶性食物繊維は摂りすぎると軟便や下痢に可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまうことになりますので注意しましょう。

どのくらい摂取すると過剰摂取になるかの明確な数値はありません。

出典:

カリウム

ほうれん草はカリウムを多く含む野菜の一つです。

カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。

塩や醤油、味噌を日常的に使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

カロリー・糖質

ほうれん草と主要野菜のカロリー・糖質を比較した表

ほうれん草100gあたりのカロリーは18kcalで糖質は0.3gです。他の野菜と比べても、カロリーや糖質が低い野菜なので、食べ過ぎによって太ってしまうという心配はあまりありません。

ほうれん草に限らず野菜は基本的にカロリーや糖質が低いのでたくさん食べて太ることはありません。ただし、味付けには注意が必要です。砂糖や油、塩分を多く使って調理するとその分カロリーは上がってしまいます。

ちなみに、ごはん100gあたりカロリー156kcal、糖質35.6gです。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ほうれん草の摂取目安量

ザルにのったほうれん草

緑黄色野菜を基準に

大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

ほうれん草は緑黄色野菜に分類されるので、他の緑黄色野菜と合わせて120g以上を目安にするということになります。多くても1日あたり100gほど(1/2束)を目安にするとよいでしょう。

ほうれん草以外の緑黄色野菜には、人参やかぼちゃ、ブロッコリー、トマト、ピーマンなどがあります。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

ほうれん草の栄養と効能

ビタミンA・C・Eはその文字から「ビタミンエース」と呼ばれ、抗酸化3大ビタミンです。そのビタミンエースすべてがほうれん草には含まれています。

イソチオシアネート

ほうれん草にはイソチオシアネートという辛み成分が含まれています。イソチオシアネートは大根やキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれています。イソチオシアネートは大根などのツンとする風味の正体です。通常辛み成分といわれますが、含有量が多いと人によっては苦く感じます。

イソチオシアネートは強い抗酸化作用があり、シュウ酸や硝酸とは違い、積極的に摂取したい栄養素です。

β-カロテン(ビタミンA)

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。

ビタミンC

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。

そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。

ビタミンE

通常、野菜からはなかなか摂れないと言われているビタミンEが、ほうれん草には含まれています。

ビタミンEは強力な抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。

さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。また副腎や卵巣の性ホルモンの分泌の調整にもビタミンEは関与しているので、生殖機能の維持にも役立ちます。

ビタミンK

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経過多の症状を軽減する効果も期待できます。また、出血を止めるだけでなく、血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけます。

さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

ほうれん草には、鉄が多く含まれています。

鉄分はミネラル成分のひとつです。体に必要な栄養素で、成人のからだには約3〜5gの鉄が存在しています。

鉄は大きく分けて2種類あります。ひとつは機能鉄といって赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。

もうひとつは貯蔵鉄といって肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられており、機能鉄が不足すると体内に放出されます。また、酵素の構成成分で、エネルギー代謝を助ける働きがあります。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス