いんげん豆を食べ過ぎた場合のリスクについて解説します。1日の摂取目安量も紹介します。
いんげん豆には「レクチン」というタンパク質があります。いんげん豆の仲間はこのレクチンを多く含んでおり、生のまま食べるとレクチンが体内に入り下痢や嘔吐といった消化器症状を引き起こし、食中毒になります。茹でたり炒めたりするなどの調理法でしっかり火を通しておくと、レクチンが体内に影響することはないといわれています。
いんげん豆には食物繊維が含まれています。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、便秘・下痢の改善や腸内環境を整える際に、この2つのバランスが重要となります。
いんげん豆はほとんどが不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維を摂りすぎると便秘を促し、水溶性食物繊維は摂りすぎると軟便や下痢症状を引き起こします。不溶性食物繊維は体内でほとんど分解されず、腸内で水分を吸収して膨張し腸管壁を刺激するので、便秘改善が期待できます。しかし、摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になります。
ちなみに、水溶性食物繊維は小腸で栄養素の吸収を緩やかにする作用があるため、糖質や脂質の吸収を抑え血糖値やコレステロール値の上昇を抑える効果が期待できます。一方で、摂りすぎるとビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまうことになりますので注意しましょう。
どのくらい摂取すると過剰摂取になるかという明確な数値はありませんが、摂取目標量については後述しています。食物繊維に摂取上限量ではなく摂取目標量が設定されているのは、現代人の食物繊維の摂取が足りていないためです。食物繊維の不足の大きな原因は食生活の欧米化により、食物繊維を豊富に含む穀類や豆類、野菜などの摂取が減ったことが挙げられます。
茹でたいんげん豆の可食部100gあたりのエネルギー量(カロリー)は127kcalで、糖質は12.5gです。
豆類は栄養価が高いのでカロリーや糖質が高いですが、いんげん豆はその中でも比較的カロリーが高くなっています。一度に食べる量には気をつけましょう。
ちなみにごはん(白米)100gあたりの糖質は35.6gで、156kcalとなっています。チョコレートの糖質は、ミルクチョコレートの場合100gあたり糖質59.3gで550kcalにもなります。ごはんやお菓子に比べるといんげん豆の方が低いです。
細胞内液に存在するカリウムは、細胞外液にあるナトリウム(塩分)とお互いに作用しながら細胞の浸透圧を維持し、どちらかの水分量が多くならないように、適正な水分を保っています。つまり、カリウムには、余分なナトリウム(塩分)を体外へ排出を促す作用があります。
カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。高カリウム血症の症状は、軽度ならば筋力低下がみられる程度ですが、重度の場合は不整脈や心停止することがあります。
日本人は塩や醤油、味噌を使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。
ビタミンAは過剰摂取によって頭痛や筋肉痛、皮膚の乾燥や脱毛などの症状が現れます。また、妊婦さんは特に気にかけた方がよく、妊娠初期に過剰摂取すると胎児に器官形成異常が起こってしまう可能性が高くなることが報告されています。しかし、野菜に含まれるβ-カロテンは必要量のみビタミンAに変換されるので心配いりません。
ビタミンCは大量摂取すると、吐き気、下痢、腹痛などが生じることがありますが、通常の食事でビタミンC過剰症になることは基本的にありません。ビタミン過剰症はサプリメントの過剰摂取などから引き起こることが多いです。
また、ビタミンKがどのくらいの量で過剰症を発症するか、という研究報告は十分にされていないのが現状で、耐用上限量は設定されていません。ただ、骨粗しょう症の治療薬で1日に45mgを処方しても問題ないことは証明されています。いんげん豆100gに含まれるビタミンKは3μg(マイクログラム)ですので、45mgに達するには1日に1500kgものいんげん豆を食べなくてはならない計算になります。
いんげん豆の1日の摂取目安量は明確に定まっていませんが、厚生労働省が発表している各栄養素などの摂取目標量などを基準に目安を把握することはできます。
豆類には、たんぱく質が豊富です。たんぱく質は健康な体を作るうえでとても大切な栄養素になります。
このたんぱく質の1日あたりの摂取目安量は、食事摂取基準によると体重1キロあたり0.8gに設定されています。たとえば体重55キロの人は、1日あたり44gになります。
いんげん豆は100gあたり9.3gのたんぱく質が含まれているので、470g程度食べると摂取目安量になります。ただ、いんげん豆だけでたんぱく質を摂取することはほとんどなく、さらに栄養は様々な食材から摂取することが望ましいので、食事全体のバランスを考えるようにしましょう。
食物繊維は不足している人が多いことから、摂取目標量が設定されています。厚生労働省が発表してる日本人の食事摂取基準(2020年版)における、18〜64歳の食物繊維の1日あたりの摂取目標量は女性が18g以上、男性が21g以上です。キャベツなら2玉以上分の食物繊維です。
いんげん豆100gに含まれる食物繊維は19.5gですので、女性の場合は100gで目標量を超えます。ただ先程も言ったとおり、さまざまな食材から栄養を摂取したほうがいいので、他の食材も合わせて食物繊維の摂取量を考えるようにしましょう。
食物繊維を多く含む食材には、玄米やとうもろこしなどの穀類、グリーンピースをはじめとした豆類、モロヘイヤなどがあります。
体内のカリウム平衡を維持するために適正と考えられている1日の摂取目安量は、日本人の食事摂取基準(2020年版)によると18歳以上の女性が2,000mg、男性が2,500mgです。生活習慣病予防を目的とした場合は、18歳以上の女性が2,600mg、男性が3,000mgです。
いんげん豆100gに含まれているカリウムは410mgで、体内のカリウム平衡を維持するためにさやいんげんだけでカリウムを摂取する場合480〜600g程度食べなければいけないので、食べ過ぎる心配はありません。
カリウムも1つの食材だけで栄養素を補うのは難しく、また様々な食材から摂取することを推奨しています。カリウムを多く含む食材には、アボカドや枝豆、またバナナやメロンなど果物があります。
成人女性の1日のエネルギー量の摂取目安は1400〜2000kcalです。男性では2000〜2400kcalです。
いんげん豆は100gあたり127kcalなので、1kg以上食べても問題ない計算になりますが、いんげん豆だけで1日分のカロリーを摂取するのは現実的ではありませんし、そもそも栄養が偏るので推奨されません。
何度も伝えていますが、様々な食材を摂取するよう心がけ、食事全体のカロリーや栄養素を考えるようにしましょう。
いんげん豆はミネラルが豊富な食材です。
いんげん豆はカリウムが豊富に含まれています。カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など、様々な効果があります。腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保ちます。心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあります。
また、カリウムは水に溶けやすい性質がありますが、いんげんは比較的損失が少なくなっています。ただ葉菜類は茹でると50%以上が失われてしまうのでスープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしナトリウムを摂りすぎないよう薄味にしましょう。
体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨も新陳代謝を繰り返しており、古い骨を壊しては新しい骨をつくり、なんと1年間で20〜30%が新しい骨に生まれ変わっています。この骨の代謝にカルシウムは深く関わり骨の健康を保っています。
そのためカルシウムが不足すると、骨が弱くなり、やがて骨粗鬆症を招きます。ビタミンKがカルシウムの吸収を助けるので、一緒に摂取することで骨粗しょう症の予防も期待できます。
残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉などに広く存在し大切な情報の伝達を行っています。それによって血液中のカルシウム濃度が常に一定に保たれています。機能カルシウムはこの細胞内外の濃度の差を利用して、血液の凝固や酵素の活性化、ホルモンや神経伝達物質の放出をしています。さらには神経の興奮を抑え精神を安定させたり、筋肉を収縮させたりする働きもあり、筋肉のなめらかな動きをサポートしています。そのため、カルシウム不足でこむら返りを起こすことがあります。
マグネシウムはカルシウムの量を調整し、筋肉の収縮を促します。摂り過ぎたカルシウムが血管壁に貯まるのを防ぎ、動脈硬化を予防する働きもあります。そしてカルシムやリンとともに働き、丈夫な骨や歯をつくります。血液中のマグネシウムが不足すると骨から溶け出して補充されますが、このときカルシウムも一緒に放出されてしまうため骨がもろくなります。
また、ストレスが生じると、マグネシウムの消費量が増えます。そのため疲れているときやイライラしているときはマグネシウムを積極的に摂取しましょう。マグネシウムは過剰に摂取しても腸管からの吸収は抑えられ、余分なものは速やかに排泄されるので食事で摂取している限りは過剰症の恐れはありません。
鉄は赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。このヘモグロビンですが、ヘムという赤い色素とグロビンというたんぱく質から成っており、赤血球が赤い色をしているのはこのヘモグロビンの色です。肺に取り込まれた酸素は、このヘモグロビンと結合して心臓に送られ、そこから全身へと運ばれていきます。そして、ヘモグロビンは酸素が届け終わると二酸化炭素と結びつき、また心臓を経て肺に戻っていきます。鉄を材料としたヘモグロビンは、体内でとても重要な役割をしているのです。
そのため、鉄が不足するといわゆる「貧血」になってしまうことがあります。また、鉄が不足するとヘモグロビンが作れなくなるため、体内が酸欠状態になってしまいます。そうすると様々な不調が出てきしまいます。特に脳は多くの酸素が必要で酸欠に弱いため自律神経のバランスが乱れたり、代謝が悪くなったりします。
鉄は吸収率が低いと言われていますが、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率をアップできます。小松菜にはそもそもビタミンCが含まれていますので、鉄を摂取するうえでとても効率の良い野菜となります。
亜鉛は主に皮膚や骨、肝臓、筋肉、眼球などに含まれています。亜鉛はほとんどがたんぱく質と結合した形で存在しており、酵素の構成成分として重要な役割を果たしています。たとえばたんぱく質やホルモンの合成、さらにはDNAの複製などにも深く関与し、細胞が新しくつくり替えられるときに不可欠のミネラルです。傷の治りを早くしたり、血糖値を下げるインスリンの材料になるなどの働きがあります。亜鉛が不足すると細胞の生成が滞るので、皮膚や骨の発育が遅れ、子供では成長障害を起こすこともあります。
さらに、味覚や嗅覚を正常に保つ役割もあります。さらには生殖機能にも深く関与し、男性ホルモンや女性ホルモンの生成に関わっていて、亜鉛が不足すると妊娠しにくくなると言われています。
また、加工食品には亜鉛の吸収を妨げる添加物が多く含まれているので、気をつけましょう。さらに亜鉛には毒性があり1日2g以上の大量摂取をすると急性中毒を起こすことがあります。
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