ライ麦粉と全粒粉の違いをご存知でしょうか?どちらも栄養素が高く、カロリーや糖質量が少ないため小麦粉の代用品として使われることが多いです。本記事ではライ麦粉と全粒粉の違いについて詳しく解説します。
ライ麦粉の原料はライ麦です。
ライ麦とは、ヨーロッパや北アメリカを中心に広く栽培されているイネ科の植物です。日本では、主に日本海側の風の強い地方や砂丘地域で防風・防砂用植物として畑の周囲で栽培されています。北海道では食用のライ麦も栽培されていますが、ごくわずかであるため販売されているライ麦粉の原料のほとんどは外国産です。
ライ麦を構成している組織には外皮(がいひ)・胚芽(はいが)・胚乳(はいにゅう)があります。
ライ麦粉は、ライ麦の外皮を取り除いて粉砕しています。細挽きしたものを「アーレファイン」、中挽きしたものを「アーレミッテル」、粗挽きしたものを「アーレグローブ」といいます。
全粒粉(ぜんりゅうふん)の原料は小麦です。
小麦には、軟質小麦(なんしつこむぎ)中間質小麦(ちゅうかんしつ)硬質小麦(こうしつこむぎ)があり、軟質小麦は粒の柔らかい小麦で胚乳が薄力粉の原料になります。中間質小麦は粒がやや硬く、胚乳が中力粉の原料になります。硬質小麦は粒の硬い小麦で胚乳が強力粉の原料になります。
全粒粉は、軟質小麦または硬質小麦の粒を丸ごと製粉しています。硬質小麦を原料に作ったものは強力全粒粉、軟質小麦を原料に作ったものは薄力全粒粉といいます。
衝撃式挽砕機といわれる高速回転のハンマーで粒子に衝撃を与え粉砕、または数十本のピンを向かい合った2枚の円板表面につけて高速回転させることで粒を粉砕、または数十本のピンを向かい合った2枚の円板表面につけ、高速回転させることで粒を粉砕します。
ちなみに、ライ麦粉にも粒を丸ごと製粉したライ麦全粒粉があります。
ライ麦粉と全粒粉は、原料が異なるためグルテンの有無に違いがあります。
グルテンとは弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量で生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
ライ麦のたんぱく質には、グルテニンとグリアジンは含まれておらず水分を加えてもグルテンは形成されません。
しかし、ライ麦粉にはグルテンを形成するグリアジンに似た成分である「セカリン」が含まれています。そのためライ麦粉もグルテンを含む小麦粉と同じように粘り気を出す性質があります。
そのため、グルテンが含まれていないからといって必ずしも小麦アレルギー対策になるとはいえません。小麦アレルギーの方でもライ麦粉は食べることができるという方もいますが、グルテンを形成するたんぱく質と似た成分が含まれるライ麦粉を口にすることでアレルギー反応が起こる可能性は充分にあります。ライ麦を小麦アレルギー対策として使用する場合は注意が必要です。
全粒粉の原料は薄力粉や強力粉と同じ小麦であるため、グルテンを含みます。
栄養価が高いことや小麦粉とは異なる見た目であることから、グルテンフリーだと思っている方が多いようですが、グルテンを形成するグルテニンとグルアジンの両方が含まれているため小麦アレルギー対策として使うことはできません。
ただし、胚乳のみを原料として使っている薄力粉や強力粉とは異なり、全粒粉は外皮や胚芽がグルテニンとグルアジンの結びつくことを阻害してしまうためグルテンの含有量は少ないといえます。
ライ麦粉の見た目は灰色っぽく、サラサラとしています。そのため、ライ麦粉を使って調理をすると見た目が黒っぽくなります。
ライ麦パンに酸味があることから、ライ麦粉=酸味があると思っている方も多いかと思いますが、ライ麦粉自体に酸味があるわけではありません。ライ麦パンを作る場合は、サワードウとよばれる発酵種が使われることが多く、サワードウを使うと乳酸菌が発酵の過程で生産する乳酸により特有の強い酸味と風味が出るためです。
全粒粉は小麦を丸ごと製粉しているため、見た目は茶褐色です。比較的粒子が粗いものも含まれ、手触りはザラっとしています。
全粒粉は、表皮もすべて製粉しているため、香ばしい風味がします。
ライ麦粉100gに含まれている成分は下記の通りです。
たんぱく質…8.5g
脂質…1.6g
炭水化物…75.8g
食物繊維…12.9g
ビタミンE…0.7g
ビタミンB1…0.15g
ビタミンB2…0.07g
ナイアシン…0.9mg
ビタミンB6…0.1mg
葉酸…34μg
パントテン酸…0.63mg
ナトリウム…1mg
カリウム…140mg
カルシウム…25mg
マグネシウム…30mg
リン140mg
鉄…1.5mg
亜鉛…0.11mg
ライ麦粉100gのカロリーは351kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は約62gです。小麦粉と比較してカロリーが低く糖質量も少ない他、食物繊維を多く含みビタミンB群やカリウムなどの養素を豊富に含んでいます。
食物繊維には、整腸作用があります。腸内の環境を整えることで便秘を解消したり予防に繋がります。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができます。ただし、人によっては反対にお腹の調子が悪くなってしまう人もいるので注意しましょう。
ビタミンB群は、糖質を燃やしてエネルギーに変える働きがあります。特にビタミンB2は、脂質を分解してエネルギーに変換する働きがあり、効率よく摂取することでダイエット効果が期待できます。ビタミンB6は、アミノ酸の分解・吸収をサポートする他、女性ホルモンのバランスを整える作用もあります。カリウムには利尿作用があり、むくみを改善する効果も期待できます。
全粒粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。
たんぱく質…12.8g
脂質…2.9g
炭水化物…68.2g
食物繊維…11.2g
ビタミンE…1mg
ビタミンB1…0.43g
ビタミンB2…0.09g
ビタミンB6…0.33g
ナイアシン…5.7mg
ナトリウム…2mg
カリウム…330mg
カルシウム…26mg
マグネシウム…140mg
リン…310mg
鉄…3.1mg
亜鉛…3mg
銅…0.42g
マンガン…4.02mg
セレン…47μg
クロム…3μg
モリブデン…44μg
全粒粉100gのカロリーは328kcalで、糖質量は約57gです。ライ麦粉よりもカロリーが低く、糖質量も少ないです。
全粒粉は胚乳だけではなく栄養素を多く含む外皮や胚芽もまるごと製粉しているため、食物繊維が豊富に含まれている他、ビタミンB群やナイアシン、カリウムを多く含んでいます。
ナイアシンはたんぱく質・脂質・炭水化物の三大栄養素がエネルギー源に変わるのをサポートをする働きがあります。
ライ麦粉と全粒粉の用途はほぼ同じです。薄力粉や強力粉などの小麦粉の代用品としてパンやクッキーなどの焼き菓子を作ったり、揚げ物の衣として使うことが多いです。
ライ麦粉と全粒粉を比較すると全粒粉のほうがカロリーが低く糖質量も低いですが、どちらも食物繊維などの栄養素を多く含む他、薄力粉や強力粉などの小麦粉と比較してカロリーも低く、糖質量も低いためどちらもダイエットに利点があるといえます。
例えばライ麦粉で作るパンのGI値は55、全粒粉で作るパンのGI値は50です。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
ライ麦粉と全粒粉は、どちらも低GI値であるため脂肪として体内に蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができるといえます(ただし、空腹感には個人差があります)。
ただし、どちらもほぼ炭水化物(糖質)であるため食べ過ぎると太ってしまう原因になります。また、全粒粉には小麦粉よりも少ないとはいえグルテンが含まれています。グルテンには、たばこのニコチンやコーヒーのカフェインと同じように中毒性があり、食欲を増進させてしまうので食べすぎには注意しましょう。
ライ麦粉と全粒粉の用途はほぼ同じであるため、お互いに代用可能です。ただし、上述しているようにライ麦粉と全粒粉は原料や製法が異なるため風味や食感に違いがでます。
例えば、ライ麦粉を使ってパンを作るとグルテンが含まれていないため、ふんわりとは膨らまずずっしりと重たく噛みごたえのある食感に仕上がります。また、ライ麦にはペントザンという多糖類が含まれています。そのためライ麦粉は吸水性が高く、翌日までしっとりとしていて日持ちしします。
全粒粉で作るパンは、小麦の香ばしい風味がします。また、グルテンの含有量が少ないため強力粉や薄力粉を使うときほどモチモチとした食感にはなりません。粒子が大きいためザラっとしていてしっかりとした噛みごたえのある食感に仕上がります。
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