さやいんげんは食べ過ぎには注意が必要です。さやいんげんを食べ過ぎた場合の身体への影響について解説します。また、1日の摂取目安量も紹介します。
さやいんげんには「レクチン」というタンパク質があります。いんげん豆の仲間はこのレクチンを多く含んでおり、生のまま食べると「レクチン」が体内に入り、下痢、嘔吐といった消化器症状を引き起こし、食中毒になる恐れがあります。大量に食べればそのリスクが上がります。
茹でたり炒めたりする調理法でしっかり火を通すと、レクチンが体内に影響することはないとされています。
出典:厚生労働省|白インゲン豆の摂取による健康被害事例について
さやいんげんには食物繊維が含まれています。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類がありますが、さやいんげんはほとんどが不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になる場合があります。
ちなみに、水溶性食物繊維は摂りすぎるとお腹がゆるくなってしまう可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収を妨げる場合もあります。
どのくらい摂取すると過剰摂取になるかの明確な数値はありませんが、摂取目標量については後述しています。
出典:
栄養学博士 新出真理 監修(2014)『第2版 くらしに役立つ栄養学』ナツメ社
さやいんげんばかり食べていると、栄養が偏ってしまいます。さやいんげんにあまり含まれない、または全く含まれない栄養素には、ビタミンB1・C・Dなどがあります。
ビタミンB1は糖質がエネルギーになるのを助ける大切な栄養素で、日本人に不足していることが特徴です。ビタミンCは強い抗酸化作用があり、たんぱく質がコラーゲンを合成するのに必要不可欠な栄養素です。ビタミンDは野菜には全く含まれませんが、正常な骨格と歯の発育促進に大切な栄養素です。
さやいんげんに不足する栄養素を他の食材で補うのはもちろんですが、同じ栄養素であっても複数の食材から摂取した方がよいので、バランスのよい食事を心がけましょう。
出典:農林水産省「食事バランスガイド」
さやいんげん可食部100gあたりのエネルギー量(カロリー)は23kcalで、糖質2.7gです。
豆類は栄養価が高いので、若干カロリーや糖質は高いですが、芋類に比べると低くなっています。一度に食べる量を考えても、太る心配はないでしょう。ただし、味付けなどによってカロリーが高くなることがありますので、調理法には注意しましょう。
ちなみにごはん(白米)100gあたりの糖質は35.6gで、156kcalとなっています。チョコレートの糖質は、ミルクチョコレートの場合100gあたり糖質51.9gで550kcalにもなります。
出典:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)
さやいんげんはカリウムが含まれています。
カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。
塩や醤油、味噌を多く使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
さやいんげんにはβ-カロテン(ビタミンA)やビタミンC・Kが含まれています。
ビタミンAは過剰摂取によって頭痛や筋肉痛、皮膚の乾燥や脱毛などの症状が現れます。また、妊婦さんは特に気にかけた方がよく、妊娠初期に過剰摂取すると胎児に悪影響を及ぼす可能性が高くなることが報告されています。しかし、野菜に含まれるβ-カロテンは必要量のみビタミンAに変換されるので心配いりません。
ビタミンCは大量摂取すると、吐き気、下痢、腹痛などが生じることがありますが、通常の食事でビタミンC過剰症になることは基本的にありません。ビタミン過剰症はサプリメントの過剰摂取などから引き起こることが多いです。
ビタミンKに関してはどのくらいの量で過剰症を発症するか、という研究報告は十分にされていないのが現状で、耐用上限量は設定されていません。しかし、食物からの摂取では尋常ではない量を食べない限り過剰症にはならないので、心配ありません。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
さやいんげんの1日の摂取目安量は明確に定まっていませんが、厚生労働省が発表している各栄養素などの摂取目標量などを基準に目安を把握することはできます。
さやいんげんはマメ科ですが緑黄色野菜に分類されます。
緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。
大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。
他の緑黄色野菜も食べるので、1日あたり50gくらいが目安といえるでしょう。
出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)
さやいんげんはβ-カロテンの量が多い野菜のひとつです。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。
変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。
さやいんげんはカリウムが豊富に含まれています。
カリウムはミネラルの一種です。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。
さやいんげんはカルシウムも比較的豊富に含まれています。
体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨の代謝に関わり骨の健康を保っています。
残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉、細胞内などに存在し、大切な情報の伝達を行っています。それによって筋肉のなめらかな動きをサポートしたり、精神を安定させたりします。
カルシウムが不足すると、骨が弱くなったりこむら返りを起こすことがあります。特に野菜などのカルシウムは吸収率が低いため、ビタミンKなどカルシウムの吸収を助ける栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられますが、さやいんげんはほとんどが不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。腸内環境を整えることは痩せやすい身体づくりに大切だといわれています。
また、食物繊維はお腹の中で膨らむため満足感が高く、先に食べることで他の食事の食べ過ぎを抑えることができます。
なんとさやいんげんには、体内で合成することのできない必須アミノ酸が、9種類すべて含まれています。
メチオニン:アレルギーを引き起こすヒスタミンの働きを抑えます。セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなど、うつ病を改善させる作用を持つ脳内物質の材料となるため、記憶力の向上や、認知症の予防・改善といった脳の活性のサポートをします。また老化防止、髪の毛の健康(薄毛、抜け毛の予防)にも良いといわれています。過剰摂取は動脈硬化を促進するため注意が必要です。
スレオニン:成長促進、肝臓の脂肪蓄積を抑制する働きがあります。また胃酸分泌のバランス調整により胃炎予防、食欲増進、肌の潤いを保つ天然保湿成分(NMF)にも存在するため美肌にも欠かせないアミノ酸。
バリン:BCAA(分岐鎖アミノ酸)のうちのひとつで、筋肉修復や筋肉合成の働きがあるアミノ酸。また、エラスチンの材料にもなるため、肌のハリを保つ働きがあります。更には肝硬変の症状を緩和させるために用いられることもあります。
トリプトファン:脳に運ばれると、神経伝達物質であるセロトニンをつくる原料になり、ビタミンB6やナイアシン、マグネシウムと一緒に合成されます。セロトニンには寝つきを改善する効果や、興奮を抑えて精神を安定させる働きがあり、不足すると睡眠障害や不安感が現れます。やる気やホルモン調整にかかわるドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質をつくるための「スイッチ」としてチロシンというアミノ酸と一緒に働きます。
フェニルアラニン:チロシンを経て脳内神経伝達物質ドーパミンやノルアドレナリンの材料になります。また紫外線から肌を守る「メラニン」の材料にもなる必須アミノ酸です。
ロイシン:BCAAのうちのひとつで、筋肉疲労や筋肉グリコーゲンの合成の働きがあるアミノ酸。また、肝臓の機能の向上、血糖コントロール、酵素活性の働きもあります。
イソロイシン:BCAAのうちのひとつで、疲労回復や筋肉合成の働きがあるアミノ酸。また、甲状腺ホルモンの分泌も促すため成長促進作用があるといわれています。また興奮系の神経伝達物質の材料となるため、集中力を高めます。また神経の働きをサポートする役割を持つため、脳から出された指令を素早く末端組織に伝達し、判断力や反射速度を上げる働きもあります。さらに糖尿病に効果があることもわかっており、摂取した糖質が吸収された後に筋肉へ取り込まれることを促進することで、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。
リジン(リシン):脂肪をエネルギーに変換することを促進する「カルニチン」の材料になりますので、ダイエットには欠かせないアミノ酸です。また、リジンは糖質をエネルギーに変換することもをスムーズにする働きがあるので、集中力向上をサポートします。
ヒスチジン:アレルギーに関わる「ヒスタミン」の材料になります。また幼児が不足すると湿疹ができやすくなります。ヘモグロビンに多く含まれているので、不足すると貧血になる可能性があります。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
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