「もやしは栄養がない」とよく言われますが、それは誤り(嘘)です。もやしにはエネルギー代謝に大切なビタミンB群や、美肌効果のあるビタミンC、むくみ対策に役に立つカリウムなど、量はそれほど多くありませんが、ビタミン・ミネラル類がバランスよく含まれています。本記事ではもやしに栄養がないといわれてしまう理由と、実際に含まれている栄養と効能について解説していきます。
もやしには栄養がないと言われてしまう理由を解説します。実際にはもやしには多くの栄養が含まれています。
もやしには栄養がないといわれる理由の一つは、水分量が多いことです。大豆もやしの場合、92%が水分です。9割以上が水分だとほとんど水分のような気がしてしまいますが、多くの野菜が9割程度を水分が占めます。例えば、トマトは94%、ゴーヤも94%、きゅうりは95%、さやいんげんは92%、キャベツも92%、にらも92%が水分です。
水分量が多い=栄養がない、と解釈してしまうと、ほとんどの野菜に栄養がないことになってしまいます。もやしは確かに9割以上が水分ですが、その残りの1割に様々な栄養素が含まれています。そのため、もやしには栄養がないというのは誤りといって差し支えないでしょう。
もやしは白色です。色が薄いと、なんとなく栄養がないと感じる方が多いかと思います。一般的に色が濃い野菜の方が栄養価が高いといえますが、必ずしもそうではありません。すべての栄養素に色素があるわけではないからです。
もやしは淡色野菜に分類されます。
緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。
もやしは確かにβ-カロテンの量は少ないですが、栄養がないわけではなく、ビタミンCなどは比較的豊富に含まれています。
野菜は品種改良が繰り返され、特有の香りやクセをなくし食べやすくした結果、栄養価が大幅に減少しているのは事実です。例えば、1950年と2005年で比較すると、人参はβ-カロテン(ビタミンA)は8割減、ほうれんの鉄分も8割減、アスパラガスのビタミンB2は半減、キャベツのビタミンCも半減しています。
しかし、味が薄い=栄養がない、とは一概にいえません。無味無臭な栄養素の方が多いです。ピーマンの香り成分であるピラジンや、ゴーヤの苦み成分であるモモルデシンのように強い風味がある栄養素はむしろ稀です。
もやしに栄養がないというのは誤りですが、確かにもやしにあまり含まれない、または全く含まれない栄養素というのは存在します。もやしばかりを食べていると栄養が偏ってしまうので注意しましょう。
前述した通り、もやしは淡色野菜なので、β-カロテン(ビタミンA)は微量しか含まれません。
β-カロテンは体内で必要量だけビタミンAに変換され、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きをします。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。また、皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。
β-カロテンを特に豊富に含む野菜は人参です。
人参…8600μg
ほうれん草…5400μg
赤色パプリカ…1100μg
かぼちゃ…730μg
トマト…540μg
ピーマン…400μg
もやしにはビタミンDが一切含まれていません。もやしに限らずほとんどの野菜にはビタミンDがありません。
ビタミンDの働きには正常な骨格と歯の発育促進があります。また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きもあります。
ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、干し椎茸、サケ、イワシ、サンマなどが挙げられます。
もやしにはビタミンKもあまり含まれていません。
ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。ただ、血液は出血している箇所以外(血管内など)は正常に流れていなければなりませんが、ビタミンKは血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけています。
さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。そしてカルシウムの合成に必要なたんぱく質を生み出し、腸内でカルシウムが吸収されるのを助けます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。
ビタミンKが豊富な食品を比較すると、
モロヘイヤ…640μg
ほうれん草…270μg
ブロッコリー...210μg
もやし...57μg
です。
もやしは安価で手に入り、たくさん食べられる点も栄養学的に大切なポイントです。100gあたりに含まれる栄養の量は多くなくてもたくさん食べれば、その分栄養をたっぷり摂ることができます。調理が簡単なのも嬉しい点です。
日本人が不足しがちなビタミンB1がもやしには含まれています。
ビタミンB1は糖質をエネルギーにする(体を元気にする)ために欠かせないビタミンです。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があるといわれています。
昔、日本人の主食は精白米ではなく玄米で、その玄米にはビタミンB1が含まれていたために、意識していなくても摂取することができました。しかし、昨今ではビタミンB1が豊富に含まれている米ぬかの部分が、精白米にする段階でほとんど取り除かれてしまいます。他にもお菓子やジュースなどの過剰摂取でビタミンB1は不足するとも言われているため、積極的に摂取したい栄養素です。
もやしは発芽するときに豆にはもともと含まれていないビタミンCを生成します。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成するのに必要不可欠な栄養素です。身体を作っているたんぱく質の30%がコラーゲンで、細胞と細胞を繋ぐ接着剤のような役割を果たしており、皮膚や血管、筋肉、骨などを丈夫にします。また、ビタミンCはシミのもとになるメラニン色素の生成を抑えたり、肌に弾力やハリをもたらすため、美肌づくりにも重要な栄養素です。
さらにビタミンCの抗酸化力はトップクラスですので、細胞を酸化から守り老化や生活習慣病の予防にもなります。白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。
さらには抗ストレスビタミンと言われているように、ストレス時に副腎に働きかけてアドレナリンの分泌を促す作用もあり、ストレスを撃退します。
多くの動物が体内でビタミンCを合成することができますが、人間は合成に必要な酵素がないため食品から摂取するしかありません。ビタミンCは吸収率が高いですが、一定量を超えると吸収されないまま排出されてしまいます。1日100〜200mg程度摂取すると吸収率は80〜90%と高いですが、1g以上摂取すると50%以下に低下します。また喫煙者はビタミンCの消費が激しいので、一般成人の2倍は摂ることをおすすめします。
カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など、様々な効果があります。腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保ちます。また、心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあります。
カリウムは水に溶けやすい性質がありますが、根菜類は比較的損失が少なくなっています。ただ葉菜類は茹でると50%以上が失われてしまうのでスープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしナトリウムを摂りすぎないよう薄味にしましょう。
体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨も新陳代謝を繰り返しており、古い骨を壊しては新しい骨をつくり、なんと1年間で20〜30%が新しい骨に生まれ変わっています。この骨の代謝にカルシウムは深く関わり骨の健康を保っています。
そのためカルシウムが不足すると、骨が弱くなり、やがて骨粗鬆症を招きます。ビタミンKがカルシウムの吸収を助けるので、一緒に摂取することで骨粗しょう症の予防も期待できます。
残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉などに広く存在し大切な情報の伝達を行っています。それによって血液中のカルシウム濃度が常に一定に保たれています。機能カルシウムはこの細胞内外の濃度の差を利用して、血液の凝固や酵素の活性化、ホルモンや神経伝達物質の放出をしています。さらには神経の興奮を抑え精神を安定させたり、筋肉を収縮させたりする働きもあり、筋肉のなめらかな動きをサポートしています。そのため、カルシウム不足でこむら返りを起こすことがあります。
鉄は赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。このヘモグロビンですが、ヘムという赤い色素とグロビンというたんぱく質から成っており、赤血球が赤い色をしているのはこのヘモグロビンの色です。肺に取り込まれた酸素は、このヘモグロビンと結合して心臓に送られ、そこから全身へと運ばれていきます。そして、ヘモグロビンは酸素が届け終わると二酸化炭素と結びつき、また心臓を経て肺に戻っていきます。鉄を材料としたヘモグロビンは、体内でとても重要な役割をしているのです。
そのため、鉄が不足するといわゆる「貧血」になってしまうことがあります。また、鉄が不足するとヘモグロビンが作れなくなるため、体内が酸欠状態になってしまいます。そうすると様々な不調が出てきてしまいます。特に脳は多くの酸素が必要で酸欠に弱いため自律神経のバランスが乱れたり、代謝が悪くなったりします。
鉄は吸収率が低いと言われていますが、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率をアップできます。もやしにはそもそもビタミンCが含まれていますので、鉄を摂取するうえでとても効率の良い野菜となります。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられますが、もやしの食物繊維はほとんどが不溶性食物繊維です。水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。腸内環境を整えることは痩せやすい身体づくりに大切だといわれています。
食物繊維は便秘の予防・改善はコレステロールのコントロールにもつながります。さらに血糖値の急激な上昇を抑えてくれる効果もあるため、ダイエットや糖尿病の予防にもつながります。
もやしの栄養を少しでも無駄にしない調理法や食べ方を最後に紹介します。
ビタミンCは熱に弱いので加熱料理をする際は手早くするようにしましょう。ただし、加熱するとかさが小さくなりたくさん食べられるメリットもあります。加熱方法としては、炒める・蒸す・レンジがおすすめです。
茹でる場合は、茹で時間を短くしましょう。水溶性の栄養素が水に溶け出してしまいます。もし茹でる場合はスープにして、流失したビタミンCも一緒に摂取できるようにするのがおすすめです。
価格が安くてたくさん食べられるのも嬉しい点ですので、栄養素をなるべく失わないように調理をしましょう。
ビタミンCはたんぱく質がコラーゲンになるのに必要不可欠な栄養素です。コラーゲンには肌に潤いをもたらす、丈夫な骨を形成する、丈夫な筋肉を形成する、関節の働きをよくするなど様々な効能があります。たんぱく質が豊富な食材には肉類や魚介類、卵、大豆などがあります。
ビタミンEはビタミンCと一緒に摂取すると、相加効果が得られます。ビタミンEには体内の脂質部分を活性酸素から守る抗酸化作用があります。このときにビタミンCがいることで、サビ取りをして疲れたビタミンEをもう一度復活させる効果があります。
また、もやしにはないβ-カロテンの野菜と組み合わせるのもよいでしょう。β-カロテンは必要な分だけ体内でビタミンAに変換されます。ビタミンA・C・Eはどれも抗酸化作用が強く、ビタミンエースといわれます。例えば、中華料理のレバニラ炒めなどは、栄養素の組み合わせがとても良い料理です。ニラにはβ-カロテン、もやしのビタミンC、レバーのビタミンEが一緒に摂取できます。
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