全粒粉と強力粉の違いをご存知でしょうか?どちらも小麦を原料に作られていますが、製造方法などが異なります。本記事では、全粒粉と強力粉の違いを詳しく解説します。
全粒粉(ぜんりゅうふん)と強力粉(きょうりきこ)の原料は、どちらも小麦です。
小麦は15%が外皮、2%が胚芽、83%が胚乳で構成されており、全粒粉と強力粉は原料となる小麦の部位や製造方法が異なります。
全粒粉は、粒が硬い硬質小麦(こうしつこむぎ)または粒の柔らかい軟質小麦(なんしつこむぎ)の粒を丸ごと製粉したものです。
硬質小麦を原料に作ったものは強力全粒粉、軟質小麦を原料に作ったものは薄力全粒粉といいます。
全粒粉は、衝撃式挽砕機といわれる高速回転のハンマーで粒子に衝撃を与え粉砕、または数十本のピンを向かい合った2枚の円板表面につけて高速回転させて粒を粉砕しています。
強力粉は、硬質小麦の胚乳を製粉した小麦粉の一種です。
小麦粉とは小麦の胚乳を製粉したもので、原料となる小麦の品種によって薄力粉・中力粉・強力粉に分類されます。ちなみに軟質小麦の胚乳を製粉したものは薄力粉、中間質小麦の胚乳を製粉したものは中力粉となります。
強力粉などの小麦粉は、多数のロール製粉機とふるいの組み合わせにより小麦の胚乳組織を粗く砕いて分離し、これを粉砕するという方法で作られています。粉砕する際に数十種類の粉が得られますが、最終的には2〜4種類に仕分けされて、その性状により希望する等級になるようにそれぞれの粉を組み合わせるという製造方法で作られています。
小麦粉は、胚乳部分にある灰分の含有量によって特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末分にわけられ、これを等級といいます。灰分含有量が0.3~0.35%のものは特等粉、0.35~0.45%のものが1等粉、0.45~0.65%のものが2等粉、0.7~1.0%のものが3等粉、1.2~2.0%のものが末粉となります。
灰分の含有量が少ない方が白くなり(その分栄養価は少ないですが…)上級粉となります。灰分の含有量が多いと茶褐色になり、下級粉となります。例えば、強力粉の1等粉は高級食パンに、強力粉の3等粉は通常の食パンなどと使い分けされます。
灰分は外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラルや食物繊維のことです。小麦粉は調理過程で加熱されると、たんぱく質や脂質は燃えてなくなってしまうのですが、一部のミネラルや食物繊維が灰として残ります。
また、仕分けせずに全部を混合したものがあり、これを「ストレート粉」といいます。
全粒粉と強力粉は、原料となる小麦の部位や製造方法が異なるため、見た目や粒子の大きさも異なります。
全粒粉は小麦を丸ごと製粉しているため、見た目は茶褐色です。比較的粒子が粗いものも含まれ、手触りはザラっとしています。
強力粉は小麦の胚乳のみを製粉をしているため、見た目は白色です。小麦粉の中で最も粒子が粗いため手で触るとサラサラしています。
全粒粉と比較すると、強力粉のほうが粒子が細かいです。
全粒粉と強力粉はどちらも小麦を原料に作られているため、グルテンが含まれます。
グルテンとは、弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量によって生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
全粒粉には外皮や胚芽が含まれているため、グルテニンとグリアジンの結びつくことを阻害してしまいます。そのため全粒粉も水を加えてこねることでグルテンを形成しますが、強力粉などの小麦粉と比較すると形成されるグルテンの量は少なくなります。
強力粉はグルテン含有量11.5~13.5%と最も多い小麦粉です。
全粒粉とは異なりグルテニンとグリアジンが結びつくのを阻害する外皮や胚芽が含まれていないため、形成されるグルテンの量は全粒粉よりも多くなります。
全粒粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。
たんぱく質…12.8g
脂質…2.9g
炭水化物…68.2g
食物繊維…11.2g
ビタミンE…1mg
ビタミンB1…0.43g
ビタミンB2…0.09g
ビタミンB6…0.33g
ナイアシン…5.7mg
ナトリウム…2mg
カリウム…330mg
カルシウム…26mg
マグネシウム…140mg
リン…310mg
鉄…3.1mg
亜鉛…3mg
銅…0.42g
マンガン…4.02mg
セレン…47μg
クロム…3μg
モリブデン…44μg
全粒粉は胚乳だけではなく栄養素を多く含む外皮や胚芽もまるごと製粉しているため、食物繊維が豊富に含まれている他、ビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6)やビタミンE、ミネラルも含まれています。
食物繊維には整腸作用があり、腸内の環境を整えることで便秘の解消や予防に繋がります。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができます。ただし、人によっては反対にお腹の調子が悪くなってしまう人もいるので注意しましょう。
全粒粉100gのカロリーは328kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は、約57gです。
強力粉(1等粉)100gあたりに含まれる成分は下記の通りです。
水分...14.5g
たんぱく質...11.8g
脂質...1.5g
炭水化物..71.7g
灰分...1g以下
強力粉は小麦の胚乳のみを製粉しているため全粒粉の比較して栄養価は低く、ほぼ炭水化物です。
強力粉(1等級)100gあたりのカロリーは337kcalです。糖質量は、およそ71gです。全粒粉と比較してカロリーが高く、糖質量も多いです。
全粒粉と強力粉の用途はほぼ同じです。ただし、原料になっている小麦の部位や粒子の大きさが異なるため風味や食感に違いがあります。
例えば全粒粉を使って作るパンは、小麦独自の強い風味があります。またグルテンの含有量が少ないため、ふんわりとはせずしっかりとした噛みごたえのある食感に仕上がり、バゲットやカンパーニュなどのあまり膨らませないハードパンを作るのに適しています。グルテンの含有量が少ないため生地がまとまりにくく、小麦粉と比較して扱いにくいという難点があります。
強力粉を使って作るパンはグルテンの含有量が多いため、ふんわりと膨らみもっちりとした食感に仕上がり、ロールパンなどの柔らかいパンを作るのに適しています。
全粒粉でクッキーなどの焼き菓子を作る場合も固く噛みごたえのある食感に仕上がります。グルテンの含有量が少ないためスポンジケーキなどのふわふわ感とした食感を出したい場合には不向きです。
反対に強力粉はグルテンの含有量が多いため、スポンジケーキなどふわふわの食感を出したいときに使うのに適しています。クッキーなどの焼き菓子を作ることもできますが、強力粉のみで作ったクッキーは硬くカチコチになってしまいます。そのため強力粉を使ってクッキーを作る場合は薄力粉やコーンスターチなどと一緒に使うことが多いです。強力粉を使うことで硬めの生地に出来上がるため、例えばアイスボックスクッキーを作るときなどに適しています。
全粒粉と強力粉は、唐揚げなどの揚げ物の衣として使うこともできます。
全粒粉を揚げ物の衣にすると、サクサクの食感になり小麦の香ばしい風味がします。
強力粉を揚げ物の衣にすると、カリっとした食感に仕上がります。ただし、衣を厚く付けすぎてしまうと硬くなってしまうので注意が必要です。強力粉を揚げ物の衣にする場合は、薄くつけるのがポイントです。
全粒粉と強力粉を比較すると、全粒粉のほうがダイエットに効果があるといえます。なぜなら、全粒粉は強力粉よりもカロリーが低く糖質量が少ないだけではなく、GI値も低いためです。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
そのため、GI値の低い全粒粉の方が強力粉よりも脂肪として蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができます(ただし、空腹感には個人差があります)。
しかし、全粒粉もほぼ炭水化物であるため食べすぎると小麦粉と同じように太る原因になります。
また、全粒粉にもグルテンが含まれています。グルテンには脳内の中枢神経を刺激して食欲を増進させる働きがあり、タバコに含まれるニコチンやコーヒーなどに含まれるカフェインと同じように「もっと食べたい」「食べないと気が済まない」思わせる依存性があります。そのため、全粒粉も食べ過ぎればどんどん食欲が増進してしまうので、食べすぎてしまわないように注意しましょう。
全粒粉と強力粉は、用途がほぼ同じであるためお互いに代用することが可能です。ただし、上述したように原料となる小麦の部位や粒子の大きさが異なるため風味や食感に違いがでます。必ずしも同じように出来上がるわけではないので注意しましょう。
また、強力粉のすべてを全粒粉で代用すると小麦製品に慣れている人にとっては「美味しくない」「食感が苦手」と感じることが多いです。そのため、強力粉の一部を全粒粉に置き換えて使う人が多いです。
強力粉の一部を全粒粉に置き換えるだけで、香ばしい風味を出すことができる他、栄養価が高くなり、カロリーや糖質量も抑えることができます。
Most Popular
麻婆豆腐が辛い時に甘くする方法。おすすめの調味料や食品は?
食品事典
スナップエンドウは食べ過ぎNG?太る?1日の摂取目安量は?
食品事典
うるいの保存方法と期間。常温・冷蔵・冷凍で長持ちするのは?
食品事典
変色した長ネギは食べられる?原因と対処法を色別に解説
食品事典
ふきの下ごしらえ(茹で方・皮の剥き方・アク抜き)の方法を解説
食品事典
エリンギが水っぽい...食べられる?濡れてる原因と対処法は?
食品事典
ほうれん草から黒い汁が出る原因と対処法。食べても大丈夫?
食品事典
玉ねぎにカビが!食べて大丈夫?色別の種類と対処法も解説
食品事典
ハンバーグの温め直し。固くならない方法はレンジ・フライパンどっちがおすすめ?
食品事典
こごみの保存方法と期限。冷蔵・冷凍で長持ちするのは?
食品事典