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上新粉と片栗粉の違いと使い分けを徹底解説

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上新粉と片栗粉の違いと使い分けを徹底解説

上新粉はうるち米を原料に作る米粉の一種で、片栗粉はじゃが芋のでんぷんを原料に作るでんぷん粉の一種です。本記事では、上新粉と片栗粉の違いを詳しく解説します。

上新粉と片栗粉の違い①原料

上新粉

上新粉(じょうしんこ)はうるち米を原料に作る米粉の一種です。

米粉とはうるち米やもち米を原料に作る粉の総称です。

うるち米は一般的に食べられている半透明のお米のことです。有名な品種にはコシヒカリやあきたこまちなどがあります。もち米は白く不透明で、お餅やお赤飯にする粘性のあるお米のことです。

うるち米を原料にして作る米粉には上新粉の他にも、上用粉などがあります。もち米を原料に作る米粉には白玉粉やもち粉などがあります。

片栗粉

片栗粉(かたくりこ)はじゃが芋のでんぷんを原料に作るでんぷん粉の一種です。

でんぷん粉とは「澱粉(でんぷん)」ともいわれ、でんぷんを乾燥させて作る粉の総称です。でんぷんは、さまざまな植物から生まれる天然の炭水化物で、ブドウ糖がたくさん集まってできています。

その昔、「カタクリ(片栗)」と呼ばれるユリ科植物の鱗茎(球根)からとれるデンプンを原料にして作られていたので「片栗粉」という名前がついています。「栗」がついていますが、栗を原材料としているわけではありません。

カタクリが減少し、明治以降にジャガイモが大量栽培されるようになると、原材料はじゃが芋のでんぷんに切り替わっていきました。片栗粉は馬鈴薯澱粉(ばれいしょでんぷん)ともいいます。馬鈴薯とは、じゃが芋の別名です。

上新粉と片栗粉の違い②製造方法

上新粉

上新粉は、うるち米を2ロール製法という製造方法で製粉します。さらに製粉したうるち米をふるいにかけて粒子の粗いものと細かいものとでわけ、目の細かいほうが上新粉になります。目の粗いほうは「並新粉(なみしんこ)」になります。上新粉と並新粉の総称を「新粉(しんこ)」といいます。

2ロール製法は、水洗いした米を乾燥させロール製粉機で製粉するという方法です。強い粘性を出すことができますが、水分量が少ないため硬化が早いという特徴があります。

ちなみに、うるち米を胴搗き製法(どうつきせいほう)で上新粉よりもさらに粒子を細かくしたものが「上用粉(じょうようこ)」です。

胴搗き製法は、精米後にお米の水分が多く保たれた状態で、杆搗き臼(きねつきうす)で徐々に細かくしていく製法です。ロール製法よりも時間はかかりますが、より良い粉が得られます。関西地方では古くよりこの製法が主流であり、関西では上用粉がよく使われます。

上新粉の見た目は白いです。粒子が細かくサラサラとしています。

片栗粉

片栗粉は、まず原料のじゃがいもを水でよく洗って汚れを落としたあと、洗ったじゃが芋をすりつぶして液体状にし、繊維質や不純物を取り除きます。その後洗浄し(~3回繰り返す)、しばらく寝かせて下に溜まった澱粉(でんぷん)を取り出し乾燥させるという方法で製造されています。

片栗粉の見た目も白いですが、でんぷんを乾燥させて粉状にしているためしっとりしていて握るとギュっとした感触があり指跡が残ります。

上新粉と片栗粉の違い③用途

上新粉

上新粉の原料であるうるち米のでんぷんは、約2割がアミロース、約8割が粘り気を出す働きのあるアミロペクチンでできています。そのため、上新粉にはほど良い粘りを出し、もっちりとした歯ごたえを出すという特徴があります。

和菓子

上新粉はまんじゅうの原料として使われる他、団子や柏餅、すあまなどの和菓子を作る際に使われることが多いです。上新粉を使うことで、しっかりとした歯ごたえがありながらも歯切れの良い食感に仕上げることができます。

焼き菓子

上新粉は原材料がうるち米なので、上新粉を使えば自宅で手軽にお煎餅を作ることができます。

また、上新粉は小麦粉の代用としてパンケーキやクッキーなどの焼き菓子を作ることもできます。グルテンが含まれていないのでふんわりとはしませんが、密度が高く歯ごたえのある仕上がりになります。

揚げ物の衣

上新粉は唐揚げや天ぷらなどの揚げ物の衣として使うこともできます。

上新粉は小麦粉などを比較して油の吸収率が低いためカラっと揚がりサクサクとした食感になります。また、時間が経ってもべちゃっとしにくく、カロリーも低くなります。

打ち粉

上新粉は、さらさらとしているので打ち粉にも適しています。

打ち粉とは、お餅をこねたり、そばやうどん、パイなどの生地を作る際に、生地が手や調理器具、作業台につかないように振りかける粉のことです。

打ち粉にもさまざまな種類があり、作るものによって使い分ける事が多いですが、上新粉はお餅をこねる際に使う餅とり粉の代用品として使われることが多いです。

片栗粉

片栗粉は、熱湯または水を加えて加熱する粘りがでるという特徴があります。片栗粉の糊化温度(こかおんど)は60度前後です。糊化温度とは、粘りが出る温度のことです。

とろみ付け

片栗粉は、水を加えて加熱すると粘りを出すという特徴を利用して料理のとろみ付けに使われることが多いです。

片栗粉のとろみは特に粘度が高いのが特徴で、食材に煮汁をよく絡ませるために使われることもあります。また、片栗粉でとろみをつけると料理の温度が下がるのが遅くなるため保温効果があります。

片栗粉はじゃが芋からとれるでんぷんを原料としているため、離乳食初期(生後5〜6ヶ月頃)に食べさせる離乳食にも片栗粉を使用することができます。例えば、ひき肉や魚などぱさついて飲み込みにくいものを与えるときに、片栗粉でとろみをつけてあげると食べやすくなります。

片栗粉をとろみ付けに使う場合は、予め片栗粉に2倍の水を入れて溶いて「水溶き片栗粉(みずときかたくりこ)」にしてから使います。例えば、小さじ一杯分の片栗粉に対して小さじ二杯の水を入れて溶かすと大さじ一杯分の水溶き片栗粉ができます。片栗粉を水で溶かずににそのまま投入してしまうと、片栗粉が固まってダマになったり、うまくとろみがつかなかったりしてしまうので、料理にとろみをつける場合は必ず水溶き片栗粉にしてから使いましょう。

揚げ物の衣

片栗粉も、揚げ物の衣として使えます。水気が多く、表面が柔らかい鶏肉などの動物性食品を揚げる場合は表面にでんぷん粉である片栗粉をまぶすことで、水分を吸収すると共にうまみ成分の損失を防ぐことができます。

片栗粉を衣に使った唐揚げは、小麦粉を衣にした唐揚げよりも厚く衣がつくため見た目が白っぽくなり、ザクっとしたワイルドな食感になります。唐揚げだけではなく、天ぷらの衣としても使うことができます。

片栗粉は油の吸収率が高く時間が経つとべちょっとしてしまいやすいです。

お肉を柔らかくする

でんぷんには高い水分保持力があります。そのため、生姜焼きなどを作る際に片栗粉を肉にまぶしておくことで焼いたりする過程で肉から水分が蒸発してしまうのを防ぐことができ、しっとりと柔らかく仕上げることができます。また、片栗粉をまぶしておくことで調味料がお肉にうまく絡むようにもなります。

打ち粉

片栗粉も、打ち粉として使うことができます。

片栗粉は和菓子や焼き菓子を作るときなどの打ち粉として使うのに適しています。うどんや中華麺などの麺類を作るときの打ち粉として使うことができますが、茹でたときにとろみが出てしまうので、麺類の打ち粉として使用するのであれば中力粉や強力粉などが適しています。

上新粉と片栗粉の違い④成分・カロリー

上新粉

上新粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。

  • たんぱく質…6.2g

  • 脂質…0.9g

  • 炭水化物…78.5g

  • カリウム…89mg

  • カルシウム…5mg

  • 鉄…0.8mg

  • ビタミンB1…0.09mg

  • 食物繊維…0.6mg

カロリーは362kcalで、これは、お茶碗大盛りのご飯を食べるよりも多いカロリーです。糖質量は(炭水化物から食物繊維を引いたもの)は、77.9gです。特段栄養に優れているわけではありません。ほぼ炭水化物(糖質)であるため、食べ過ぎると太ってしまう原因になるので注意しましょう。

上新粉には「グルテン」が含まれません。グルテンは小麦や大麦などに含まれるたんぱく質の一種です。グルテンは料理をおいしくしますが、アレルギーの原因になる他、消化されにくいという性質があり、肥満やむくみの原因になったり疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。そのため、近年ではグルテンフリーの生活をする人も増えています。

グルテンが含まれない上新粉は、小麦アレルギー対策やグルテンフリーの料理を作る際に小麦粉の代用として使うことができます。ただし、小麦不使用の製品でも同じ工場で小麦粉を使用している場合があるので、メーカーや販売代理店に確認するようにしましょう。

片栗粉

片栗粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。

  • たんぱく質…0.1g

  • 脂質…0.1g

  • 炭水化物…81.6g

  • カリウム…34㎎

  • カルシウム…10㎎

  • マグネシウム…6㎎

  • リン…40㎎

  • 鉄…0.6㎎

片栗粉100gあたりのカロリーは338kcalで、そうめんを1人前(二束)食べるのと同じぐらいのカロリーです。片栗粉は食物繊維をほとんど含まないので糖質量は81.6gとなり、カロリーも糖質も高めです。

片栗粉の成分はでんぷんによる炭水化物が多く、たんぱく質などの栄養素はほとんど含みません。そのため、お肉や野菜と一緒に調理をして栄養のバランスをとると良いでしょう。

片栗粉も上新粉と同じくグルテンを含みません。そのため、小麦アレルギーの方やグルテンフリーの生活を送っている方も口にすることができます。

上新粉と片栗粉はお互いに代用できる?

上新粉と片栗粉はお互いに代用することが可能です。

ただし、原料が異なるため食感などに違いがでます。例えば、片栗粉の代用品として上新粉を使って料理にとろみをつけることができます。ただし、片栗粉よりもサラっとしたとろみで白く濁ります。そのため上新粉はホワイトソースのとろみ付けに適していて、あんかけなどしっかりとしたとろみをつけたい場合は片栗粉が適しています。

上新粉の代用品として片栗粉を使ってクッキーなどの焼き菓子を作ることもできます。片栗粉で作る焼き菓子はサクサクホロホロとした食感になります。

また、上新粉と片栗粉のどちらも唐揚げなどの揚げ物の衣として使うことができますが、上述したように油の吸収率は上新粉のほうが低いため、お弁当に入れる場合やダイエット中で少しでも低カロリーにしたいという場合は上新粉を使うのが良いでしょう。上新粉と片栗粉を1︰1や1:4の割合で混ぜ合わせて衣を作ると、サクサクとしたした食感で冷めてもべちゃっとしにくくなります。