葛湯の原料や製法、歴史などを詳しく解説していきます。また、家庭での作り方も紹介します。
葛湯の原料は、葛粉(くずこ)です。
葛粉は、マメ科植物である葛の根から得られるでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。
葛の根っこの部分を掘り起こし、粉砕して水の中でもみだし根の中に含まれているでんぷんを沈殿させた後、水で晒してアク抜きし沈殿させる工程を何度も繰り返して不純物を取り除き、適当な大きさに砕いて乾燥させるという製造方法で作られています。
葛粉の生産量は少なく高価であるため、近年は葛粉にさつま芋のでんぷんを乾燥させて粉状にした甘藷澱粉(かんしょでんぷん)や、じゃが芋のでんぷんを乾燥させて粉状にした馬鈴薯澱粉(ばれいしょでんぷん)などを配合したものが販売されていることが多いです。また、100%甘藷澱粉のものもあります。
基本的に100%葛粉である場合は「本葛粉」、葛粉以外のでんぷん粉を配合している場合は「葛粉」と別にされています。
スーパーなどで一般的に「葛湯」と販売されているものは、葛粉と甘藷澱粉を合わせているものが多いです。
葛は、紀元前1世紀頃の中国の薬物書ですでに紹介されており、古くから薬用として使われていたことが知られています。
日本では平安時代の書物に「黒葛」という記述が見られ、当時は葛を精製せずにそのままお湯に溶かして飲んでいたのではないかといわれています。「黒葛」を飲む習慣のあった村は長寿だったという話が残っており、これは「葛湯」のはじまりだと考えられます。
江戸時代の頃から葛のでんぷんを取り出し粉末にした「葛粉」が作られるようになり、葛湯はもちろんのことくず餅などの和菓子が多くの人に親しまれるようになりました。
葛湯は昔から、体が温まり消化が良く満腹感があるといったことから、病人や子供の栄養食として重宝されてきました。
葛粉…10g
熱湯…100cc
水…少量
砂糖…適量
まず、茶碗に葛粉を入れたら、少量の水を入れて溶き混ぜます。熱湯を入れる前に、水で葛粉を溶かしておくと、熱湯を入れたときにダマになりにくいです。葛粉を水で溶くことができたら、お好みで砂糖を加えて沸騰しているお湯を少しずつ絶えずかき混ぜながら、手早く注ぎます。粘りが出て、透明になったら完成です。
葛湯は、レンジを使って作ることもできます。
レンジを使う場合は、まず耐熱容器に葛粉と水、砂糖を入れて電子レンジ(600w)で1分半ほど加熱します。加熱したら、取り出して透明になっていれば完成です。透明になっていなければ透明になるまで様子を見ながら加熱します。
葛湯が透明にならなかったり、固まらない場合は、お湯の温度が低すぎる可能性があります。透明にならない場合や固まらない場合は、鍋に入れて加熱し透明になるまでかき混ぜると良いです。耐熱容器に移し替えてレンジで温めても良いです。
葛粉を入れた茶碗にお湯を注いで作る場合は、予め茶碗にお湯を入れてしばらくしてから捨てるという方法でお茶碗を温めておくと温度低下を防げます。
葛湯は無味無臭です。本葛粉で作ると苦味やえぐみが出ることがあります。
そのままでは味がしないため、基本的には砂糖を加えて甘みを出したり、ショウガや抹茶などを加えて味付けをして飲まれることが多いです。
葛湯の原料である葛粉は、スーパーなどで売られています。スーパーなどでは、片栗粉などが置かれている粉物のコーナーか、製菓コーナーに置かれていることが多いです、130g180円〜200円程で購入することができます。
ただし、上述したようにスーパーで販売されている葛粉は、甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉など葛粉以外のでんぷん粉が配合されているものです。本葛粉を取り扱っているスーパーは少ないため、本葛粉を購入するのであればAmazonや楽天などの通販を利用すると良いでしょう。値段は130g900円〜1000円と高めです。
一杯分ずつ梱包された葛湯用の葛粉も販売されています。一袋(20g×6)でおよそ300円〜400円程で、予め抹茶やゆずなど味付けされているものもあります。しかし、こちらもほどんどが葛粉の他に甘藷澱粉などを配合したもので、中には葛粉よりもその他のでんぷん粉の配合量が多いものもあります。葛本来の効能を目的とするのであれば、本葛粉を購入して葛湯を作るのが良いでしょう。
本葛で作った場合の葛湯一杯(150ml)に含まれる成分は下記の通りです。
たんぱく質…0g
脂質…0g
炭水化物…約13g
カルシウム…約1mg
鉄…0.1mg
ショ糖10.8g
葛湯に含まれる成分は、炭水化物とショ糖(砂糖の主成分)がほとんどです。
カロリーは1杯(150ml)およそ53kcal、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は約13gです。カロリーも低く、糖質量も少ないためダイエット中の間食にぴったりです。
ただし、スーパーなどで販売されているあらかじめ抹茶などの味付をしている葛湯は、カロリーが高く糖質量も多くなります。ダイエット中の方は本葛粉で葛湯を作るのがおすすめです。砂糖の量を減らせば糖質量も少なくすることができます。
葛湯の原料である葛にはイソフラボンやサポニンが含まれているため、葛湯を飲むことで様々な効能が期待できます。
イソフラボンとは大豆胚芽に多く含まれるポリフェノールの一種です。イソフラボンには、赤血球の粘度を抑制する働きがあり、血液をサラサラにします。血流がよくなることで、
風邪のひきはじめの症状改善
冷え症の症状改善
肩こり解消
免疫力増加
などの効果が期待できます。
葛粉の原料である葛の根は、漢方薬「葛根湯(かっこんとう)」として使われ、発汗や解熱、鎮痙剤として効果があります。そのため、葛の根のでんぷんを粉状にしている葛粉にも、血行促進や発汗作用などがあり、風邪や発熱などの症状を和らげる効果があります。血流がよくなり身体が温まることで、気道が開きやすくなり咳や鼻づまりの症状の緩和する他、喉の痛みを和らげることができます。
また、葛湯はとろみがあるため熱が冷めにくいという特徴があり、冷え性の改善に効果があるだけではなく夏場にクーラーで身体が冷えてしまった身体をしっかりと温めることができます。
さらに血行がよくなることで肩こりが解消する他、基礎体温が上がり風邪などのウイルスに負けない身体作りをすることができます。
ちなみに、葛湯にしょうがを入れて「しょうが葛湯」にすると、しょうがにも身体を温める作用があるのでより高い効果が期待できるのでおすすめです。
イソフラボンは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンと同様の働きをするといわれています。そのため、イソフラボンが含まれている葛湯を飲むことで、
更年期や月経前のつらい症状の緩和
肌荒れ改善
イライラを抑える
バストアップ
骨粗鬆症予防
などの効果も期待できます。
エストロゲンは年齢を重ねると共に減っていってしまうものであり、エストロゲンの減少により更年期障害などの様々な症状がでたり、肌あれやイライラなどの症状がでることがあります。イソフラボンを含んだ葛湯を飲むことでエストロゲンの働きをサポートすることができるため辛い症状を緩和することができます。
また、エストロゲンには乳腺を増やす働きもあります。そのため、エストロゲンと同様の働きをする葛湯を飲むことはバストアップの効果が期待できます。ただし、葛湯を飲んでいるだけではバストアップは期待できません。大胸筋などの筋肉を鍛える筋トレも合わせて行う必要があります。
骨粗鬆症も実はエストロゲンが減少し、骨代謝のバランスが崩れてしまうことにより起こる症状です。イソフラボンには破骨細胞の働きを抑制し、骨芽細胞の働きを促進する作用があることが認められているため、イソフラボンが含まれた葛湯を飲むことで骨粗鬆症の予防にも繋がるといえます。
サポニンは、大豆や高麗人参などにも含まれている成分で、サポゲニンと糖から構成される配糖体の総称です。
サポニンには腸で吸収されたブドウ糖が脂肪酸と合わさるのを防ぐ作用があり、余分な脂肪の蓄積を予防してくれるため、肥満を防ぐ効果が期待できます。
また、葛湯は1杯飲むだけでも満足感が得ることができるので、ダイエットにぴったりです。
ダイエット中の場合、葛湯を飲むタイミングは食事をする前がおすすめです。食事の前に葛湯を飲むことで食べすぎを防ぐことができます。朝食などの置き換えとして飲んでも良いでしょう。白湯で置き換えをするよりも満腹感があり、腹持ちも良いです。
また、寝る前小腹が空いてしまったときに葛湯を飲むと、空腹感を抑えるだけではなく身体が温まるので、よく眠れるようになります。
上述したように、砂糖が多く含まれている葛湯はカロリーが高く糖質量も多いため注意が必要ですが、本葛粉で作る葛湯であればダイエットに効果があるといえるでしょう。
サポニンには動脈硬化などを引き起こす原因となる過酸化脂質の生成を抑制し、肝機能を高める効果があります。
過酸化脂質は、活性酸素により中性脂肪やコレステロールなどの脂質が酸化されたものです。例えば高脂肪な食生活を続けている場合、過酸化脂質が増加してしまい肝機能障害を起こしやすくなります。そのため過酸化脂質の生成を抑制する効果のある葛湯を飲むことで、肝硬変や肝臓がんなどの予防にも繋がります。
サポニンには、腸内の血流を促進し腸の調子を整える効果があります。そのため、葛湯は胃腸炎などで胃腸が弱っているときでも胃の不快な症状を自然に緩和しながら栄養補給をすることができます。
また腸壁にやさしく付着して宿便を剥がす効果があるため、便秘解消の効果も期待できます。
葛湯の原料である葛のでんぷんは、片栗粉などのでんぷん粉と比較して消化吸収が良いです。そのため、風邪などで胃腸が弱っているときはもちろんのこと、飲み込む力が弱っている方や赤ちゃんの栄養補給にもぴったりです。
離乳食や子供の風邪のひきはじめには、りんご葛湯がおすすめです。りんご葛湯にすると、りんごの甘さも加わり、赤ちゃんや子供でも飲みやすくなります。
「葛根湯(かっこんとう)」は、漢方薬の一種です。
葛根湯は葛の根の他に大棗(タイソウ)や麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)など、植物の葉や茎、根などのなかで薬効があるとされる一部分を加工した生薬を合わせています。
葛の根のでんぷんを乾燥させて粉状にした葛粉をお湯で飲む葛湯に対して、葛根湯は薬効を高め風邪のひきはじめの症状を緩和する薬として飲むものであるという違いがあります。
葛根湯の主な働きは、体温を上げる作用です。
風邪の原因となるウイルスが体内に入ってきて、まだ十分に増殖していない状態(ウイルスの力が弱い状態)の時に葛根湯を飲むことで、体温を上がりウイルスを退治することができます。葛根湯を飲むことで熱が上がるため元気な若者や体力のある人にとっては有効といえますが、体力がなく熱に絶えられない高齢者や冷え性の方にとっては逆に負担がかかってしまうことがあるので注意が必要です。
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