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ピータンとは?作り方や食べ方、味、見た目、成分などを解説

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ピータンとは?作り方や食べ方、味、見た目、成分などを解説

ピータンという中華料理の食材をご存知ですか?見た目は黒い卵ですが、どんな成分が含まれているのでしょうか?作り方や食べ方などを徹底解説します。

ピータンとは

ピータンとは、アヒルの卵に木炭や灰、塩などをこねたものを塗り、発酵させた食べ物です。発祥は中国で、中華料理では冷菜(前菜)としてピータン豆腐などに使われることが多い食材です。粥料理やお菓子などにも使われます。

アヒルの卵以外にも鶏卵やうずらの卵、がちょうの卵でも作ることもできます。アヒルの卵以外で作るピータンは、それぞれ栄養素や味が微妙に異なります。特にうずらの卵で作るピータンは大きさが小さいため比較的食べやすく日本人にも人気があります。

黒いのはなぜ?

ピータンの白身の部分は黒色でゼリー状、黄身の部分は灰色〜黒色をしています。その強烈な見た目から「腐っているのではないか?」と不安になる方も多いと思いますが、ピータンが黒いのは、発酵する過程で「メライード反応」が起こっているからです。メライード反応とは、食べ物に含まれる糖とアミノ酸(タンパク質)が結合することによって、褐色の物質を作ることをいいます。わかりやすくいうと、生肉を加熱すると茶色になるのと同じ現象です。形はゆで卵と似ていますが、茹でているのではなく発酵する過程でアルカリ成分が卵内に浸透し、タンパク質が変性してゼラチン状になり硬くなります。また、ゆで卵は鶏卵ですが、ピータンはアヒルの卵なので、ゆで卵と比べると一回り大きいというのも特徴の一つです。

ピータンの種類

ピータンは大別して、「硬心皮蛋(コウシンピータン)」と、「溏心皮蛋(トウシンピータン)」があります。

硬心皮蛋は黄身が硬く保存性が高いのが特徴で、においが強く味のくせも強いです。くし切りで提供される事が多いです。

溏心皮蛋は黄身が半熟状よりやや固めで、芯がとろけている状態であることが特徴です。切り分けにくいという難点がありますが、アンモニア臭が弱いため比較的食べやすいです。中国大陸・香港・台湾をはじめ日本でも多く食べられているピータンです。

上質なピータンとは

卵白が透き通り、表面に細かな松葉形の雪の結晶のような模様が浮き出しているものは「松花蛋(ソォンホアダン)」といわれ、上質なピータンとされています。ただし、鶏卵やうずらのたまごで作られたピータンには松葉形の模様が出ることはありません。

ピータンは農産加工品であるため卵黄の固まり具合にバラツキがありますが、卵白が黒く透き通っていないものや黄身が凝固しているものは製造されてから月日が経っていることが考えられ、レストランで食べるときは卵黄が硬く凝固していないもの(長期保存用ではない種類)がよいピータンとされます。

由来・歴史

ピータンは中国の明が王朝だった時代(1368年〜644年)から食べられていたといわれる歴史ある食べ物です。古くから珍味としてだけではなく薬としての価値があるとされ、王朝38年間の歴史が書かれている「随所」には、解熱作用や下痢、赤痢を治し、散寒、収斂することができるという記載があります。食べられるようになったきっかけは諸説ありますが、「ある家で飼っていたアヒルがたまたま石灰の中に卵を産み、2か月後に灰の中から熟成された状態で発見された」や、「母親を棺桶に入れようと蓋をあけたら、灰に埋もれ熟成された卵が見つかった」など、どれも偶然発見され食べられるようになったというものです。

ちなみに、男子の尿で煮て作るゆで卵「童子蛋(どうじたん)」とは別物です。こちらも中国の伝統的な食べ物ですが、日本では好んで食べる人は少ないでしょう。

ピータンの味はまずい?美味しい?

ピータンの味は、コクがあり、まろやかさに加えて塩気と独特の酸味があります。「クセのあるゆで卵」と表現する人が多いです。白身がゼラチン状になっていて黄身がねっとりしているため、食感も独特です。例えるとするなら、「温泉たまご」に近いです。

また、ピータンにはアンモニアの刺激臭があり、腐敗臭のようなきつい匂いが苦手という人も多いです。これは、発酵する過程で卵のたんぱく質からアンモニアや硫化水素が発生するからであり、決して腐っているからではありません。

きつい匂いや独特の食感、味から「まずい」「苦手」という方も多いですが、「クセのある味がお酒に合う」など好んで食べる方もいます。ピータンの匂いは、調理法などにより軽減することができますので、後ほど紹介します。

ピータンの値段は?どこに売ってる?

中国大陸や台湾では、スーパーやコンビニをはじめ、屋台でも売られています。価格は、購入する場所やピータンの品質によって異なりますが、現地で購入すると日本円で約16円~24円くらいです。

日本では、中華食材を扱う専門店などで購入することができます。最近では、業務スーパーなどで売られていることもあります。Amazonなどで購入することもできるので、近くに売っている場所がないという方は、ネット販売を利用するのも良いでしょう。価格は6個入りでおおよそ500円〜1000円程度で購入することができます。

ピータンの成分・栄養

ピータンに含まれる成分は、下記の通りです。

  • タンパク質

  • 脂質

  • ナトリウム

  • カリウム

  • カルシウム

  • リン

  • 飽和脂肪酸

  • コレステロール

  • レシチン

  • ルティン

  • ビタミンA

  • DHA

ピータンは殻にアルカリ成分を塗って発酵させるため、アルカリ成分が卵中に浸透し原料卵に含まれるリシンやアルギニン、シスチン、セリンなどのアミノ酸が減少してしまう他、ビタミンB1がほとんど分解されてしまいますが、カルシウムやナトリウムなど増加する成分もあり、非常に栄養価の高い食べ物です。漢方的にも解熱作用や胃腸炎、歯痛、耳鳴り、めまい、高血圧等に効くと言われています。

しかし、ゆで卵同様にコレステロールの高い食べ物ですので、食べ過ぎはよくありません。また、ピータンは製造の過程で鉛が含まれ、鉛は体内に蓄積されると鉛中毒を引き起こし、手足のしびれや頭痛、貧血などの症状が出る可能性があります。そのため「体に悪い」という認識がある人も多いですが、卵製品遠征基準法によって鉛の含有量は制限されています。しかし、食べすぎてしまうと過剰摂取してしまうことになってしまうので1日1個程度に留めましょう。特に子供は成人よりも吸収率が高く、体からの排泄度も低いため注意してください。「無鉛ピータン」も販売されているので、気になる方はそちらがおすすめです。

また、卵製品は卵の殻にサルモネラ菌が付着していることにより起こる食中毒が多く、ピータンの卵を常温において発酵させるという製造方法や匂いから食中毒を懸念する方も多いですが、ピータンはサルモネラ菌が増殖しにくいpH値であるといわれています。さらに、販売しているピータンは品質が保たれており、細菌増殖を抑える対策をきちんと行っているため安全です。

ピータンの作り方

  1. 石灰や木灰、食塩、茶粘度などを十分にこねる。
  2. こねたものを卵の殻に塗る。
  3. 籾殻(もみがら)をまぶす。
  4. つぼなどに入れて、数ヶ月冷暗所に置く。

まず、石灰や木灰、食塩、茶粘度などを十分にこねます。消石灰や炭酸ナトリウム、塩、黄丹粉(一酸化鉛)で作る事も出来ます。こねたものを卵の殻に塗ったら、その上から籾殻をまぶします。籾殻をまぶしたものをつぼなどに入れて2〜3ヶ月程度冷暗所に置き、発酵させたら完成です。

自宅で作ることもできますが、難度は非常に高いです。また、自宅で作ったものに関しては細菌繁殖を抑える対策が不十分になってしまうことが多いので、ピータンは販売されているものを購入するのがおすすめです。

ピータンの食べ方

ピータンは、殻についた粘土やもみがらなどを洗い落としてから殻を剥いてそのまま食べることができ、半分に切ったりくし切りにしてお酒のおつまみとしてクセのある味を楽しむ人が多いです。

アンモニア臭がきついため、一般的にはスライスしてから1時間程度放置して食べます。アンモニアは蒸発しやすい性質があるため、殻をむいて空気にさらしておくと、アンモニア臭がやわらいで食べやすくなります。空気にふれる部分が多いほどアンモニア臭が気にならなくなるので、匂いが苦手で食べられないという方は、輪切りやみじん切りにするのがおすすめです。また、調味料を使用したり他の食材と合わせて煮るなどの調理をすることで、栄養価をアップさせることができるだけではなく独特のクセを程よいアクセントにして美味しく食べることができます。

例えば、中国大陸や日本の中華料理店などでもよくあるのが「ピータン豆腐」です。ピータン豆腐は、お豆腐の上に刻んだピータンを乗せて、しょうゆやごま油、ネギなどの薬味をかけます。中国大陸ではお粥の上に食べやすい大きさに切ったピータンを乗せる「ピータン粥」も人気で、朝ごはんに食べられることも多いです。どちらも家庭で簡単に作ることができます。

台湾では、ひき肉や鶏肉や唐辛子やニラなど野菜と一緒に炒めて調理して食べることも多いです。

ピータン以外のアヒルの卵の食品

鹹蛋(シエンタン)

鹹蛋は、アヒルの卵を塩漬けにしたものです。塩水にアヒルの卵を浸し、かき混ぜながら1ヶ月程度寝かせて作ります。茹でてからお粥などに入れて食べるのが一般的です。また、塩気が強いため調味料として使われることも多いです。

ちなみに、ピータンと同じように鹹蛋も鶏卵など他の卵で作ることもできます。鶏卵で作った鹹蛋は「鹹鶏蛋(シエンジータン)」と呼ばれます。

糟蛋(ソウタン)

糟蛋は、酒粕を主原料としたたれにアヒルの卵を漬け込んだもので、「粕漬け卵」ともいわれます。醗酵した後の風味と、とろっとした深みのある味が特徴です。エビやカニ、シャコなどを酒に漬けて作る名産品が多い中国大陸の浙江省平湖市で作られる食べ物です。

茶蛋(チャーダン)

茶蛋は、あひるの卵をウーロン茶やプーアール茶などのお茶の葉で煮たものです。それぞれの家庭によって作り方は変わりますが、基本的にはアヒルの卵を茹でて固めのゆで卵を作り、卵の殻をひびを入れて味が染み込みやすい状況にして、ウーロン茶またはプーアール茶、紅茶などの茶葉を入れて花胡椒などの香辛料と調味料を加えて煮ます。半日後再び沸騰させ火を止めたら、翌日の朝また沸騰させて、沸騰したら火を止めて冷ますという工程を3日間繰り返します。

中国大陸や台湾ではとても親しまれている食べ物で、街角の屋台やコンビニなどでも販売されています。

目玉焼き

アヒルの卵は鶏卵と同様に目玉焼きにして食べることができます。アヒルの卵で目玉焼きを作ると、鶏卵の目玉焼きよりも大きく、白身少なめでプリっとしていて黄身は濃厚です。

その他にも日本でも馴染み深い卵焼きやオムレツにして食べることもできます。