強力粉と薄力粉は、どちらも小麦を製粉した小麦粉の一種です。見た目もよく似ていますが、原料となる小麦の種類やグルテンの含有量が異なります。本記事では強力粉と薄力粉の違いについて詳しく解説します。
薄力粉(はくりきこ)と強力粉(きょうりきこ)は、どちらも小麦を製粉した小麦粉の一種です。薄力粉と強力粉は原料に使われている小麦の種類が異なり、グルテンの含有量も異なります。
グルテンとは、弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量によって生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
薄力粉の原料は、粒が柔らかい軟質小麦(なんしつこむぎ)です。軟質小麦は表皮が白いため「白小麦」ともいわれます。米国産のウエスタン・ホワイト・ホイートという品種で作られることが多いです。
「粒が柔らかい」=「グルテン量が少ない」ことを意味し、薄力粉はグルテンの含有量が6.5~8%(原料小麦によって違いがあります)と最も少ない小麦粉です。
グルテン含有量がさらに少ないものを「超薄力粉」ということがありますが、商品名としては使われていません。
「薄力粉」は「薄力小麦粉」といわれる場合もありますが、全く同じものを指し、違いはありません。「薄力小麦粉」を略して生まれたのが「薄力粉」という言葉です。また、強力粉→中力粉ときたら「弱力粉」となりそうですが「薄力粉」といいます。強力粉に対する言葉として「弱力粉」だと印象が悪いので、製粉会社の販売の都合で明治時代末期にこのように名付けられたとされています。
強力粉は、粒が最も硬い硬質小麦(こうしつこむぎ)を原料に作られています。硬質小麦は表皮が赤褐色であるため「赤小麦」ともいわれます。カナダ酸のウエスタン・レッドプリングホイートや米国産のダーク・ノーザン・スプリングホイットという品種で作られることが多いです。
日本産の小麦は欧米産に比べるとグルテンの含有量が少なく、灰分量が多く小麦の風味が強すぎるといった理由から、ほとんどが外国産の小麦を使って作られています。現在では品種改良を重ね日本産の小麦を原料に作られているものもありますが、スーパーなどで販売されている強力粉の多くは外国産の小麦を原料に作られたものです。
強力粉のグルテン含有量は11.5~13.5%と最も多い小麦粉です。
やや硬い硬質小麦を原料に作る「準強力粉(じゅんきょうりきこ)」もあります。準強力粉は強力粉よりもグルテンの含有量が少ないです。
薄力粉と強力粉は見た目がよく似ているため、目視では判別することができません。しかし、感触が異なるので、タッパーなどの容器に移し替えた後に万が一どちらかわからなくなってしまっても、触ればどちらか判断することができます。
薄力粉の原料である軟質小麦の粒は柔らかいため、製粉すると粒子が細かくなります。触るとしっとりとしていて、手でぎゅっと握るとある程度固まります。
強力粉の原料である硬質小麦の粒は硬いため、製粉すると粒子が粗くなります。触るとサラサラとしていて、手でギュッと握っても固まりません。
薄力粉は上述したようにグルテンの含有量が少ないため粘度が低いため、料理をサクサクとした歯切れの良い食感に仕上げるという特徴があり、強力粉はグルテンの含有量が多いため、料理をふんわりもちもちとした食感に仕上げるという特徴があります。それぞれ特徴が異なるので、使用用途に合わせて使い分けます。
薄力粉はクッキーやケーキなどの焼き菓子を作るときに使われることが多いです。薄力粉でクッキーを作るとサクサクとした食感に仕上がります。粒子が細かいので、ケーキを作るとキメが細かくなめらかでふんわりとします。
ただし、薄力粉はダマになりやすいため、焼き菓子を作る際は予めふるいにかけてサラサラの状態にしてから使いましょう。
薄力粉は唐揚げや天ぷらなどの揚げ物の衣にも適しています。薄力粉を揚げ物の衣にすると、カリッとした歯切れのよい食感に仕上がります。ただし、少ないとはいえ薄力粉にもグルテンが含まれているため、混ぜすぎると粘りが出てしまい、薄力粉の良さが損なわれてしまいます。薄力粉で衣を作る際は、混ぜすぎないように注意しましょう。
薄力粉を魚などにまぶしてフライパンで焼いてムニエルを作ることもできます。
薄力粉を使って、料理にとろみをつけることもできます。ただし、片栗粉ほどしっかりとしたとろみをつけることはできません。また、薄力粉でつけるとろみは透明にはならずにごります。クリームシチューを作るときなどに薄力粉でとろみをつけることが多いです。
上述したように薄力粉はダマになりやすいので、とろみをつける際もしっかりと水で溶いてから使いましょう。
グルテンの含有量が最も多い強力粉は、パンやピザを作るときに使われることが多いです。強力粉を使うことでよく膨らみ、もっちりとした弾力のある食感に仕上げることができます。
ちなみに、フランスパンなどあまり膨らませないパンを作るときは、準強力粉を使うことが多いです。そのため、準強力粉は「フランスパン専用粉」という製品名で販売されていることもあります。
強力粉を使ってパスタやニョッキを作ることもできます。
スパゲッティやマカロニなどのパスタはデュラム小麦という、また別の小麦が原料に使われることが多いですが、強力粉で代用することが可能です。デュラム製品のグルテン量は準強力粉と同程度であるため、デュラム製品を使って作るよりも弾力のある仕上がりになります。
ニョッキとは、じゃが芋と小麦粉を原料に作る団子状のパスタです。強力粉を使ってニョッキを作ることでモチモチとした食感を楽しむことができます。
強力粉は粒子が粗くサラサラとしているため、打ち粉として使われることも多いです。
打ち粉とは、お餅をこねたり、そばやうどん、パイなどの生地を作る際に、生地が手や調理器具、作業台につかないように振りかける粉のことです。
例えば、クッキーの生地を伸ばすときに綿棒にまぶして使うことで、綿棒に生地にひっつくことなく伸ばすことができます。
薄力粉と強力粉はどちらも小麦が原料ですが、小麦の種類が異なるため含まれている成分やカロリーに若干違いがあります。
薄力粉(1等粉)100gに含まれる成分は下記の通りです。
水分…14.0g
たんぱく質…8.3g
脂質…1.5g
炭水化物…75.8g
灰分…0.4g
薄力粉100gのカロリーは349kcalで、糖質量は75.4gです。
灰分とは、外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラルや食物繊維のことです。小麦粉は調理過程で加熱されると、たんぱく質や脂質は燃えてなくなってしまうのですが、一部のミネラルや食物繊維が灰として残るため、このように記載されています。
薄力粉・中力粉・強力粉というのはグルテンの含有量による小麦粉の分類方法ですが、灰分の含有量による分類方法も存在します。一般に等級と呼ばれ、灰分値が0.3~0.35%のものは特等粉、0.35~0.45%のものが1等粉、0.45~0.65%のものが2等粉、0.7~1.0%のものが3等粉、1.2~2.0%のものが末粉と5つに分類されます。
灰分の量が多いほどくすんだ色になり、小麦粉の風味が強くなります。灰分が少ないほど色が白く綺麗なので(その分栄養価は少ないのですが...)上位等級になります。例えば強力粉の1等粉は高級食パンに、強力粉の3等粉は通常の食パンに、薄力粉の1等粉は高級ケーキに、3等粉は駄菓子に、などと使い分けされています。
強力粉(1等粉)100gに含まれる成分は下記の通りです。
水分…14.5g
たんぱく質…11.8g
脂質…1.5g
炭水化物…71.7g
灰分0.4g
強力粉100gのカロリーは337kcalで、糖質量は71.3gです。
薄力粉と比較すると、強力粉のほうがカロリーが低く糖質量も少ないことがわかります。しかし、強力粉と薄力粉のどちらもほぼ炭水化物(糖質)であり、ご飯一杯(150g)のカロリーよりも高く糖質量も多いため、太ってしまう原因になるため、食べすぎないように注意しましょう。
薄力粉と強力粉は、どちらも小麦粉であるためお互いに代用することが可能です。ただし、食感が変わってしまうので、「美味しく」作れるかどうかは別問題です。
例えば、本来は薄力粉で作るケーキやクッキーを強力粉で作ると、かなり硬い食感になってしまいます。強力粉で作るクッキーはかなりカチコチです。強力粉でクッキーなどの焼き菓子を作る場合は、片栗粉やコーンスターチなどを混ぜてグルテンの量を減らすと薄力粉で作る食感に近づけることができます。
強力粉を薄力粉の代用品として揚げ物の衣にすることもできます。この場合も衣を厚くしてしまうと硬くなってしまうため、薄くつける必要があります。天ぷらの衣を強力粉にすると、グルテンの量が多いためサクサクにはならずベチャッとした食感になります。この場合もグルテンの量を減らせばいいので、片栗粉やコーンスターチなどを混ぜると良いです。
強力粉を薄力粉の代用品としてとろみをつけると、粘度が高いのでコシのあるとろみになります。そのため、クリームシチューなどにとろみをつける場合は薄力粉、クリームコロッケを作るときに使うホワイトソースにとろみをつける場合は強力粉が適しています。
逆に、薄力粉を強力粉の代用品としてパンやパスタなどを作ると弾力がなく、とても軽い食感になります。また、打ち粉として使うこともできますが、上述したようにしっとりとしていてダマになりやすいため、やはり打ち粉には強力粉が適しています。
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