ライ麦粉はライ麦を原料に作られる粉です。本記事ではライ麦粉の原料や製造方法、栄養素、代用品などを詳しく解説します。
ライ麦粉はライ麦を原料に作られる粉で、英語で「rye flour(ライフラワー)」といいます。
ライ麦は、小麦粉の原料である小麦と同じイネ科植物で、ヨーロッパや北アメリカを中心に広く栽培されています。日本では、主に日本海側の風の強い地方や砂丘地域で防風・防砂用植物として畑の周囲で栽培されています。北海道でわずかながら食用のライ麦も栽培されていますが、販売されているライ麦粉の原料のほとんどは外国産です。
ライ麦を構成している組織には外皮(がいひ)・胚芽(はいが)・胚乳(はいにゅう)があります。
ライ麦粉は、ライ麦の外皮を取り除いて粉砕しています。細挽きしたものを「アーレファイン」、中挽きしたものを「アーレミッテル」、粗挽きしたものを「アーレグローブ」といいます。
また、外皮を取り除かずにライ麦をまるごと粉砕したライ麦粉の全粒粉もあります。
まず、グルテンとは弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量で生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。
グルテンは料理を美味しくしますが、アレルギーの原因となる他、消化されにくいという性質があり肥満やむくみの原因になったり、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。そのため近年グルテンを摂取しないグルテンフリーの生活をしている人も多いです。
ライ麦のたんぱく質にはグルテンを形成するグルテニンとグリアジンは含まれておらず水分を加えてもグルテンにはなりません。よって、ライ麦はグルテンフリーであるといえます。
ところが、ライ麦粉にはグリアジンに似た成分「セカリン」が含まれているため、必ずしも小麦アレルギー対策になるとはいえません。小麦アレルギーの方でもライ麦粉は食べることができるという方もいますが、グルテンを形成するたんぱく質と似た成分が含まれるライ麦粉を口にすることでアレルギー反応が起こる可能性は充分にあります。ライ麦を小麦アレルギー対策として使用する場合は注意が必要です。
上述したようにライ麦にはグルテンが含まれていませんが、グリアジンに似た成分「セカリン」が含まれており、生地を伸ばしもっちりとした食感を与えることができるためパンを作ることができます。
ライ麦粉のみで作るとほとんど膨らまず、目が詰まったずっしりと重い硬い食感のパンになります。また、ライ麦粉は小麦粉と比較して水分保持力が高いため翌日でもしっとりとしていて日持ちするという特性があります。
グルテンを含まないライ麦粉はパン生地を膨らませることができない他、小麦粉と比較して強い粘りが出るため生地がとても扱いにくく自宅でライ麦パンを作るのは難度が高いです。
そのため、パンを作るときはライ麦粉のみではなく強力粉(小麦粉)と合わせて作ることが多いです。小麦粉で作るパンのレシピで10~20%程度の小麦をライ麦に置き換えるのがおすすめです。
スーパーなどで販売されているライ麦パンの多くはライ麦粉と強力粉を合わせて作っています。ライ麦粉の比率が高ければ重たい食感になり、ライ麦の比率が低ければ比較的ふわっと軽い食感の生地になります。
ライ麦粉の比率が高い順に、
ロッゲンブロート(ライ麦粉90%以上)
ロッゲンミッシュブロート(ライ麦粉50%〜90%)
ミッシュブロート(ライ麦粉50%)
ヴァイツェンミッシュブロート(ライ麦粉10%〜50%)
ヴァイツェンブロート(ライ麦粉10%未満)
と分類されます。市販のライ麦パンにも食感や味の指標としてライ麦粉の比率が記載されていることがあるので、スーパーなどで購入する際の参考にしてください。
でんぷんには水と一緒に加熱することでアルファー化(粘りがでる)し、もちもちとした食感を出すという性質があるのですが、ライ麦粉にはでんぷん分解酵素であるアミラーゼが多く含まれており、でんぷんのアルファー化を阻害してしまいます。
そのためライ麦粉でパンを作るときは、アミラーゼの働きを抑えることができる発酵種を使って製パンすることが多いです。ライ麦パン=酸味があるというイメージがある方が多いかと思いますが、これは発酵種を使って作られているためです。
発酵種とはパンを作る時に生地を発酵させるために用いる酵母のことで、様々な種類があります。ライ麦粉を使ってパンを作るときにはサワードウと呼ばれる発酵種を使う事が多いです。
サワードウは、ライ麦粉や小麦粉に水を混ぜて数日間かけて作る発酵種です。サワードウを使って作ると、乳酸菌が発酵の過程で生産する乳酸により特有の強い酸味と風味が出ます。
ライ麦粉を使って、クッキーやスコーン、パンケーキなどの焼き菓子を作ることもできます。ライ麦粉を使って作るクッキーやスコーン、パンケーキはライ麦粉の素朴な味わいとザクザクとした食感を楽しむことができます。
ライ麦粉を使って、うどんや蕎麦の麺を作ることもできます。上述したようにライ麦粉にはグルテンが含まれていないため、麺を作るときは中力粉や強力粉を一緒に使います。
ライ麦粉を使うことで、しっかりとしたコシがありライ麦粉の独特の風味が楽しめる麺に仕上がります。
ライ麦粉を唐揚げなどの揚げ物の衣にすることも可能です。
ライ麦粉を揚げ物の衣にするとサクサクとした食感に仕上げることができるだけではなく、小麦粉や片栗粉を衣にするときと比較してカロリーが低くなるためダイエット中の方にもおすすめです。
ライ麦粉100gに含まれている成分は下記の通りです。
たんぱく質…8.5g
脂質…1.6g
炭水化物…75.8g
食物繊維…12.9g
ビタミンE…0.7g
ビタミンB1…0.15g
ビタミンB2…0.07g
ナイアシン…0.9mg
ビタミンB6…0.1mg
葉酸…34μg
パントテン酸…0.63mg
ナトリウム…1mg
カリウム…140mg
カルシウム…25mg
マグネシウム…30mg
りん140mg
鉄…1.5mg
亜鉛…0.11mg
ライ麦粉100gのカロリーは351kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は約62gです。小麦粉と比較してカロリーが低く糖質量も少ない他、食物繊維を多く含みビタミンB群やミネラルなどの栄養素を豊富に含んでいます。
ライ麦粉に多く含まれる食物繊維には、整腸作用があります。腸内の環境を整えることで便秘を解消したり予防に繋がります。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができます。ただし、人によっては反対にお腹の調子が悪くなってしまう人もいるので注意しましょう。
ビタミンB群は、糖質を燃やしてエネルギーに変える働きがあります。特にビタミンB2は、脂質を分解してエネルギーに変換する働きがあり、効率よく摂取することでダイエット効果が期待できます。ビタミンB6は、アミノ酸の分解・吸収をサポートする他、女性ホルモンのバランスを整える作用もあります。
ビタミンEには体内の脂質の酸化を防ぐ働きがあり、動脈硬化やがん、老化などを引き起こす原因になるといわれている「活性酸素」を取り除くことができます。
ミネラルは鉄、カリウム、カルシウムを多く含んでいます。特に鉄は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンとして不可欠な栄養素で、集中力の低下や頭痛、食欲不振、筋力低下や疲労感を防ぐことができます。カリウムには利尿作用があり、むくみを改善する効果も期待できます。
ライ麦粉はGI値も低くく、例えばライ麦粉で作ったパンのGI値は55です。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
GI値が低いライ麦粉は、脂肪として体内に蓄積されにくく食べた後の満腹感が長続きするため、食べる量を抑えることができるといえます(ただし、空腹感には個人差があります)。
ライ麦粉は食物繊維などの栄養素を多く含むことや、GI値が低いという点で小麦粉と比較するとライ麦粉のほうがダイエットには利点があるといえます。
しかし、ライ麦粉もほぼ炭水化物であるため食べすぎると小麦粉と同じように太る原因になります。また、上述したようにスーパーなどで販売されているライ麦粉製品は、強力粉などの小麦粉を一緒に配合していることが多いです。小麦粉が配合されている場合その分カロリーも高くなり糖質量も多くなるので、ダイエット中の方は原料を確認してから購入するようにしましょう。
ライ麦粉を計量スプーン・計量カップで重さを測る目安は下記です。
大さじ1...約8g
小さじ1...約3g
1カップ(200ml)...約119g
ただし、パン作りやお菓子作りの計量は正確さが要求されるので、スケールを使って測るようにしましょう。
ライ麦粉はカルディや製菓材料専門店で購入することができます。製菓材料専門店は、百貨店に入っていることが多いです。カルディでは、400gで260円程で販売されています。
イオンや業務スーパーなどのスーパーでは取り扱いがないことが多いため、近隣にカルディや製菓材料専門店がないという方はAmazonや楽天などのインターネット通販の利用がおすすめです。
販売されているライ麦粉の中には、製パンしやすいように小麦粉が配合されているものもあるので、小麦アレルギーの方は必ず原料を確認してから購入してください。
ライ麦粉の賞味期限は製造メーカーによって異なりますが、だいたい製造日から3ヶ月程です。ただし、記載されているのは未開封の場合や正しく保存できていた場合の賞味期限であるため、開封をしたら1ヶ月を目安に早めに使い切りましょう。
未開封の場合は直射日光の当たる場所や高温多湿の場所を避けた風通しの良い場所で常温保存することができます。開封したら、しっかりと密閉できる容器に移し替えて保存しましょう。
開封をした場合も常温保存することができますが、温度が低い冷蔵庫で保存すると安心です。ただし、匂い移りしてしまいやすいので冷蔵庫に入れる場合もしっかりと密閉できる容器に移しましょう。また、冷蔵庫の開け締めや出し入れによる温度差で結露ができてしまうと水分が入ってしまい劣化してしまう原因になってしまうので注意してください。
冷蔵庫で保管する場合は温度の変化のあるドア付近を避けて、使用する際はすぐに冷蔵庫に戻すなど温度変化がないようにしましょう。
ライ麦粉は劣化すると色がくすんでくることがありますが、カビが生えていたり異臭がするなどの異変がなければ食べても問題はありません。ただし、劣化してしまっているため味は落ちます。美味しく食べるためにも正しい保存方法で保存しておくことが大切です。
全粒粉(ぜんりゅうふん)は、ライ麦粉の代用品になります。
ただし、原料が異なるため食感や風味に違いがあります。全粒粉を使って作るパンは、歯ごたえがあり小麦独自の風味があります。ライ麦粉とは異なりグルテンが含まれていますが、含有量が少ないためふんわりとはせずしっかりとした噛みごたえのある食感になります。ライ麦粉と同じくバゲットやカンパーニュなどのあまり膨らませないハードパンを作るのに適しています。全粒粉を使って、焼き菓子やうどんの麺、パスタを作ったり、揚げ物の衣にすることができます。
全粒粉の原料は小麦です。
全粒粉は、小麦の粒を丸ごと衝撃式挽砕機(高速度製粉)で粉状にしています。衝撃式挽砕機は、高速回転のハンマーで粒子に衝撃を与え粉砕、または数十本のピンを向かい合った2枚の円板表面につけ、高速回転させることで粒を粉砕します。
小麦を丸ごと製粉しているため灰分量が多く、見た目は茶褐色です。比較的粒子が粗いものも含まれ、手触りはザラっとしています。また、小麦特有の風味が強く、ビタミンやミネラルなどの栄養素を多く含んでいるのが大きな特徴です。
グラハム粉はライ麦粉の代用品になります。
ただし、ライ麦粉とは原料が異なるため風味や食感に違いがでます。例えばグラハム粉でパンやクッキーは小麦の風味が強いです。また、粒子が大きいためザクっとした食感になります。
グラハム粉の原料も小麦です。
グラハム粉は、小麦の胚乳部分を製粉したものに、表皮と胚芽を粗挽きしたものを混ぜ合わせています。小麦の表皮・胚芽・胚乳すべてを使っているという点では上記で紹介した全粒粉と同じですが、製法が異なり粒子の大きさも異なります。
グラハム粉も全粒粉と同じく栄養素を多く含み、低カロリー低糖質であるため食感を楽しみ、かつ健康的なことを重視したクラッカーやシリアルを作るときに使われることが多いです。
ふすま粉はライ麦粉の代用品になります。
ただし、ライ麦粉とは原料が異なるため食感などに違いがでます。ライ麦粉と同じくふすま粉にはグルテンが含まれておらず、グルテンを形成する似た成分も含まれていません。そのため、ふすま粉でパンを作る場合は小麦粉の一部をふすま粉にしたり、全粒粉と合わせて使われることが多いです。小麦の香ばしい香りがします。ふすま粉でクッキーなどの焼き菓子や麺、お好み焼きやたこ焼きを作ったり、揚げ物の衣にすることもできます。
ふすま粉は、小麦の表皮を製粉したものです。
小麦をロール粉砕機で粉砕した後、 胚乳(小麦粉)や表皮(ふすま粉)に分けられます。 一般的にふすまは小麦の20%前後発生するといわれています。
ふすま粉は小麦の表皮であるため、ライ麦粉と同じように多くの栄養素を含みます。また、小麦全部を粉状にしている全粒粉や、胚乳のみを粉状にしている小麦粉と比較して、糖質量が少ないという特徴があります。ふすま粉も全粒粉と同じようにパンやお菓子、麺を作るときなどに使われ、特に糖質制限中の方が小麦粉の代用品として使うことが多いです。
小麦粉はライ麦粉の代用品になります。
ただし、原料が異なるため風味や食感に違いがでます。小麦粉を使うと小麦の風味がします。また、グルテンが含まれているため、パンを作るとふんわりと膨らみもちもちとした食感を楽しむことができます。クッキーなどの焼き菓子を作ったり唐揚げなど揚げ物の衣にすることができる他、ホワイトソースを作るときのとろみ付けなどにも利用することができます。
小麦粉は、小麦の胚乳を製粉したものです。
胚芽と外皮を取り除いてから製粉された小麦粉は色が白く、グルテン(麩質)の量によって、薄力粉(はくりきこ)、中力粉(ちゅうりきこ)、強力粉(きょうりきこ)に分けられます。小麦粉の種類は製粉方法ではなく、原料小麦の品種によって決まります。見た目はどれも白い粉で目視では判別できません。
薄力粉は、粒が柔らかい軟質小麦(なんしつこむぎ)から製粉された小麦粉を指します。「粒が柔らかい」=「グルテン量が少ない」ことを意味し、薄力粉はグルテンの含有量が6.5~8%(原料小麦によって違いがあります)と最も少ない小麦粉です。薄力粉を玄米粉の代用品として使いパンやクッキー、スポンジケーキなどのお菓子を作ると、ふんわりとした生地に仕上がり、揚げ物の衣にするとカリッとした歯切れのよい食感に仕上がります。
中力粉は、粒の硬さが中くらいの中間質小麦から製粉された小麦粉を指します。中力粉の中には軟質小麦から作られているものもあります。中力粉はグルテンの含有量は8~9%です。中力粉はほどよく弾力が出るのが特徴で、主にうどんに使われます。そのため、中力粉は「うどん粉」「うどん用粉」「うどん用小麦粉」という名称で売られている場合もあります。中力粉を玄米粉の代用品としてパンやクッキー、スポンジケーキなどのお菓子を作ると、弾力があり噛みごたえのある仕上がりになります。
強力粉は、粒が最も硬い硬質小麦から製粉された小麦粉を指します。強力粉のグルテン含有量は11.5~13.5%です。粘りと弾力が最も強いという特徴があります。強力粉を玄米粉の代用品として使いパンやスポンジケーキを作ると、グルテンの含有量が多いため生地がよく伸びモチモチふわふわの食感になります。クッキーなどの焼き菓子はサクサクの食感に仕上がり、揚げ物の衣にするとカリッとした食感に仕上がります。
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