唐揚げの衣付けには卵を使う必要はあるのでしょうか。この記事は、卵を使って作る唐揚げの特徴や、衣に使える様々な材料などについて解説します。
まず、唐揚げとは何かについて簡単に解説します。
唐揚げとは、食材に小麦粉や片栗粉などを薄くまぶして油で揚げた料理全般を指します。
「唐」は、唐揚げが江戸時代初期に中国から伝来した「普茶料理」が由来であるためとされていますが、普茶料理は精進料理であり、現在の唐揚げとは大きく異なるもので、豆腐を小さく切り、油で揚げ、さらに醤油と酒で煮たものだったと言われています。
鶏肉の唐揚げは日本独特のもので、戦後の食料難に備え養鶏場を多く作るという国の政策の下、鶏肉の美味しい食べ方が色々な形で発展していった中で唐揚げも多く食べられるようになったことから「鶏肉を揚げたもの=唐揚げ」という認識が一般化しました。よく食べられるようになったのもここ30~40年とされています。
近年では唐揚げと言えばもっぱら鶏肉の揚げ物を意味し、他の食材を揚げたものは「タコの唐揚げ」、「ごぼうの唐揚げ」という呼び方をされることが多いです。
出典:唐揚げの歴史(日本唐揚協会)
唐揚げは下味や衣の付け方にこれといった決まりはありませんが、醤油やみりんベースで下味をつけ、片栗粉をまぶして揚げたものを竜田揚げと呼んでいます。
一方で揚げる食材には決まりがなく、鶏肉や鯖の切り身といった動物のお肉や魚の切り身を揚げることが多いです。
唐揚げの基本的な作り方は、一口大にカットした鶏肉に塩や醤油などで下味をつけ、小麦粉や片栗粉を薄くまぶしたら油で揚げて完成です。
鶏肉は鶏もも肉や鶏むね肉が使われることが多いですが、よりヘルシーなささみを使うこともあります。
様々な揚げ物の衣に使われる卵は唐揚げの衣付けに必要なのでしょうか。
唐揚げ作りは鶏肉に臭み消しをして下味をつけてから小麦粉または片栗粉を使って衣付けをすることが多く、卵は基本的に使われていません。ただし、卵を使うレシピもあり、様々なメリットがあります。
衣に卵を使う揚げ物にはコロッケやメンチカツ、チキン南蛮などがあります。とくにチキン南蛮は一番最後に卵を使うので、しっとりとした食感でまろやかな味わいの衣が特徴的です。
他の揚げ物で使う卵はから揚げの基本的なレシピでは使いませんが、衣の材料として使うことでふんわりとした仕上がりになり、味のまろやかさも生まれます。
また、衣がしっかりする分、水分が抜け出しにくくなり、ジューシーに仕上げやすくなるといった効果も期待できます。卵のタンパク質が壁となってお肉の水分が外に出にくくなるので、時間が経ってもジューシーさがキープされやすいです。
なお、衣が付きやすくなって厚みが生まれ、食べ応えのある仕上がりにもなりますが、衣が厚くなる分カロリーや糖質量も増えるので要注意です。
卵を使う場合はよく溶いて使いましょう。よく溶かないと絡まり方にムラが生じてしまい、そのあとにつける小麦粉などがダマになってしまい、衣がしっかりつきません。
唐揚げに使う衣は片栗粉または小麦粉が主流ですが、他にも様々なものが使われています。
小麦粉を衣に使うと比較的しっとりとした仕上がりになりやすく、鶏肉の身の部分の柔らかさやジューシーさが際立つ仕上がりになります。小麦由来の旨味も感じられます。
衣のカリカリ感も捨てがたいという方は片栗粉とブレンドしてみるのもおすすめです。
片栗粉を使う場合、比較的固めでカリカリの衣に仕上がります。見た目も白っぽい仕上がりになり、竜田揚げに似た見た目となります。
片栗粉の衣は冷めてもカリカリなので、お弁当向きとも言えます。また、片栗粉と同じデンプンが原料で、トウモロコシから作られる粒子の細かいコーンスターチを使えばカリカリ感がより強くなります。
下味と衣の両方の役割となる市販の唐揚げ粉を使うこともできます。下ごしらえを簡単に済ますことができ、近年では様々な味わいの製品があってバリエーションも豊かです。
市販の唐揚げ粉にはそのまま鶏肉にまぶすタイプと、水に溶かして使うタイプの製品があります。後者はより鶏肉に絡むのでしっかりした味わいで食べ応えのある仕上がりになりますが、水分が多いために少ない油で揚げると鍋の底にくっつきやすいので要注意です。
天ぷらを揚げるために使う天ぷら粉も唐揚げの衣に使うことが出来ます。天ぷら粉は小麦粉、でん粉、ベーキングパウダー、卵粉(粉末化した卵)などを混ぜて作られているので、天ぷらのようなサクサク触感の衣になります。
何かと余りがちなてんぷら粉を消化する良い機会にもなるのでおすすめです。
小麦粉の代用製品として使われることの多い米粉は、グルテンフリーのから揚げを作りたい方におすすめです。さっくりと軽い食感に仕上がりやすく、冷めても油っぽくなりにくい特徴があります。
ただし、米粉はお米同様に冷めると固くなりやすいです。また、目が細かく衣が薄くつくので、食べ応えを重視する方は片栗粉とブレンドしてみても良いでしょう。
大豆から豆乳を搾った後の絞りかすであるおからを細かくして乾燥させたおからパウダーは、食物繊維が豊富な上にカロリーが低い特徴があります。近年ではスーパーでも豆腐コーナーなどでよく見かけますよね。
おからパウダーは目が粗く、サクサクの衣に仕上がります。ただし、水分量が少ないため少し粉っぽく感じてしまうかもしれません。
サクサクのコーンフレークを砕いて衣としてまぶすのも人気です。クリスピーな食感とコーンフレークの美味しさが加わります。コーンフレークが少し余っている場合に小麦粉などに少し混ぜて使うのもおすすめです。
ただし、コーンフレークはよく砕かないと衣としてくっつきにくく、揚げている最中に剝がれやすいので要注意です。
唐揚げを失敗しにくくする下ごしらえでのポイントについて解説します。
鶏肉の表面には身から出た水分や、加工から時間が経つと出やすいドリップと呼ばれる赤い液体が出て濡れていることがあります。これらの液体はキッチンペーパーでしっかり拭きとってから臭み消しや下味をつける作業をしましょう。
ちなみに、鶏肉は水やお湯で洗うのはNGです。お肉を洗うことでうまみ成分が落ちてしまうことに加え、水っぽくなってしまいます。また、洗う際にキッチンのシンクに雑菌が飛び散ってしまうので、不衛生な状態をそのままにしてしまうと菌が増殖してしまい、とても危険です。お酒や調味料を使った臭み消しの方法がおすすめです。
表面の水分を拭き取らないと水っぽくなってしまい、下味が染み込みにくくなります。また、ドリップは臭みの原因でもあるので、臭み消しの効果が弱くなってしまいます。
鶏肉の余分な皮や脂肪、筋は臭みやしつこさの原因となるので、しっかり取り除きましょう。特に鶏もも肉は脂肪分が多いので劣化が進みやすく、脂肪の塊の部分は臭みの原因となっていることが多いため、切り取ることで臭みを抑えることができます。黄色く変色している部分は必ず取り除きましょう。
ただし、お肉のうまみは脂肪に集中しているため、取り除きすぎると旨味も減ってしまいます。取り除くのは必要最低限にとどめましょう。
唐揚げ用の鶏肉はサイズをそろえてカットしましょう。サイズがバラバラだと火の通りの差もバラバラになってしまい、大きいものは生焼けになりやすく、小さいものは火が通りすぎてかたい仕上がりになってしまいます。
唐揚げはもも肉1枚なら6~8等分くらいにカットすることが多いです。
唐揚げは鶏肉の臭みを取ることで雑味が減り、美味しく仕上げることができます。
臭み消しの一般的な方法は、ボウルなどに入れた鶏肉に塩をふり、軽く揉みます。次に料理酒をふりかけたら、ラップをかけて冷蔵庫で30分〜1時間ほど休ませます。この時、醤油やみりんも少し入れてしっかり下味をつけましょう。生姜やにんにくのすりおろしも入れると臭み消しの効果が高まり、よりコクのある味わいになります。
鶏肉を塩で揉むことで肉の旨みを引き出し、火を通した時に水分が逃げだしにくくなるので、味もしみ込みやすくなります。また、料理酒は鶏肉の臭みを取り除いて香りを良くし、お肉を柔らかくする効果があります。
唐揚げは下味用の調味料に漬け込み、よく揉み込んだら冷蔵庫に入れて寝かせましょう。お肉にしっかり味が染み込み、美味しく仕上がります。
寝かせる時間は5〜10分ほどでも構いませんが、よりしっかり味を染み込ませたい方は1~2時間、または一晩寝かせてみましょう。ただし、寝かせすぎは鶏肉内の雑菌の繁殖による劣化を招くのでほどほどにしましょう。
なお、鶏肉を冷やしておくことで揚げ油との温度差が大きくなり、カラッと仕上がりやすくなります。
唐揚げの衣(小麦粉、片栗粉)は揚げる直前にまぶしましょう。まぶしてから寝かせてしまうと鶏肉から出た水分でべちゃっとした仕上がりになりやすいです。
また、鶏肉の汁気を切ってから衣をまぶしましょう。汁気が残ったままだと衣がダマになりやすく、付き方にも差が出てしまうので、うまく衣が付きません。キッチンペーパーなどで表面をやさしく拭き取るのがおすすめです。
唐揚げを失敗せずに揚げるポイントについて解説します。
唐揚げは少ない油で調理する方法や、フライパンでの揚げ焼きが主流となりつつありますが、たっぷりの油で揚げると鍋の底にくっつく、火の通りが甘く生焼けになるといった失敗が起きにくいです。から揚げやかき揚げなどの大きな揚げ物は揚げ物用の鍋の半分くらいの深さがちょうどよい量とされています。
油をたっぷり使うことで鶏肉を入れた時の温度変化が少なくなり、均一に火を通せます。少ない油に材料をいっぱい入れると、急に温度が下がって火の通りが悪くなり、衣がべちゃっとした仕上がりになる原因となります。
鶏肉を揚げる際の油の温度は160~180℃が基本です。温度が高いと焦げやすく、衣がきつね色になっていても中までしっかり火が通っていないことが多いです。ただし、温度が低いとサクサクに揚がりにくく、揚げる時間が長くなってベチャベチャな仕上がりになってしまいます。
温度の確認は調理用の温度計を使うのが手っ取り早いですが、温度計が無い場合は、菜箸を油に入れてみましょう。細かい泡が箸全体にくっついてくる状態であれば揚げるのにちょうどよい温度(170℃)です。
なお、ポツポツと泡が箸につくくらいなら160℃程度で、少し大きめの泡も箸にくっつくようになれば180℃くらいです。
唐揚げを一度にたくさん揚げてしまうと油の温度が一気に下がってしまい、上手く揚げることができず、仕上がりがイマイチになる原因になります。
鍋の大きさにもよりますが、一般的な20cm程度の揚げ物用の鍋であれば、鍋の半分くらいの5~6個が適量です。
鶏肉を油に入れたら衣が色づくまでは触ってはいけません。触った部分や鍋底にくっついてしまっていた衣が剥がれてしまいます。また、触ることで油の温度も変化してしまい、美味しく仕上がらなくなってしまいます。
鶏肉を鍋に入れてからは、中火のまま2分〜2分半は触らずに揚げましょう。油の表面に近い部分まで色が変わってきたら裏返すタイミングです。鍋の底にくっついていないか心配かもしれませんが、衣が色づく頃にはくっついていた部分もペロッと剥がれるようになります。
唐揚げが中までしっかり火が通った状態になったかは、唐揚げを菜箸で持ち上げたときの振動で分かります。
鶏肉がきつね色になって油の泡や音が細かくなってきたら、菜箸で持ち上げてみましょう。箸を通して油が「ジジジジ…」と細かく沸騰しているような振動が手に伝わってくれば、中心まで火が通っているサインです。
二度揚げはとんかつや唐揚げなど、大きいサイズの揚げ物を作る時に用いられる調理手法の一つです。サイズが大きい揚げ物は、一度揚げただけでは外がサクサクで中まで火が通っている状態にするのが難しいため、二度揚げをします。
揚げ物は長時間揚げてしまうと焦げてしまったり、お肉が固くなってしまったりするので、揚げた後に余熱を利用して中までじっくり火を通しますが、時間の経過とともに水分が外に出るので、衣がしなしなになってしまいがちです。そこで再度短時間だけ揚げる二度揚げをすることで衣の水分を飛ばし、サクサクの状態に戻せます。
二度揚げの手順は下記のとおりです。
鶏肉を裏返して1分ほど経ったら、箸で持ち上げて数秒の間鶏肉を空気に触れさせて油に戻してみましょう。これによって余分な水分が蒸発し、二度揚げするようなサクサク感が得られます。
二度揚げは手間と時間がかかるので、一度揚げるだけで美味しく仕上げたいという方はぜひこの方法を試してみてください。
唐揚げの美味しさをアップさせられるコツを解説します。
唐揚げは鶏もも肉または鶏むね肉で作りますが、それぞれで味わいが異なり、カロリーなどの違いもあります。
鶏もも肉は脂肪が多く、コクがあってジューシーな味わいが楽しめます。ただし、カロリーが高く、脂質も多めなのでダイエット中の方はむね肉を選ぶか、皮の部分を切り取って調理しましょう。また、ジューシーな分、冷めて水分が飛んでもパサパサ感が気になりにくいので、お弁当に入れる唐揚げはもも肉で作るのがおすすめです。
鶏むね肉はもも肉よりも脂肪が少なく赤身部分が多いので、さっぱりとした味わいが楽しめます。カロリーも低く、脂質も少なめなのでヘルシー志向の方はこちらがおすすめです。ただし、さっぱりとした味わいは言い換えるとパサパサとした食感でもあるので、パサパサ感が苦手な方はもも肉を選びましょう。
下味をつける前に鶏肉の皮と赤身にフォークを刺して穴を空けておくことで、加熱によって起こる焼き縮みを穏やかにし、固い食感になるのを抑えることが出来ます。
また、繊維の一部が切れることによってもお肉が柔らかくなる効果も期待でき、穴を空けることで下味が入りやすくもなります。
唐揚げ用の鶏肉の下ごしらえには、鶏むね肉を柔らかくするのによく使われる、砂糖と塩と水を混ぜた「ブライン液」に漬け込む方法が人気です。お肉の筋肉を構成するたんぱく質が塩によって分解され、水分が入り込むことでお肉の保水性が上がってお肉が柔らかくなります。
また、砂糖は水分子と結合しやすく、砂糖水となってお肉の繊維に入り込むことで保水効果が高まり、お肉がジューシーに仕上がります。ブライン液の適度な塩加減はお肉の下味としての役割も果たします。
基本的な作り方は、水200mlに対し、塩と砂糖をそれぞれ10gです。お肉とブライン液を保存袋などに入れ、冷蔵庫で1~2時間漬け込みましょう。じっくり漬け込みたい方は一晩寝かせてみても良いでしょう。
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