ファイヤーハイドラントは、四つん這いになった状態で臀部を鍛える種目です。今回は、ファイヤーハイドラントのやり方及びコツについてご紹介します。
ファイヤーハイドラントは英語で「fire hydrant」であり、「消火栓」を意味します。消火栓を考えると寸胴の構造物でありマイナスなイメージがありますが、本種目はそれをあえて「消火栓の様な太くてしっかりしたお尻」と考えることでプラスのイメージを持つ様にした種目名です。つまり、「ファイヤーハイドラント」という名前自体は動作を表しているわけではなく、その種目の目標を意味しています。
以上より「ファイヤーハイドラント」という名前だけ聞くと、非常に難しそうな印象を受けますが、動作自体はそこまで難しくなく、基本的にはそこまで難易度は高くありません。
中臀筋(ちゅうでんきん)は、臀部(でんぶ)を形成する筋肉の一つで、お尻の側面に位置します。
中臀筋は、股関節の外転動作を司ります。脚を浮かせた状態の場合において、脚を横や斜め後ろに動かすことに作用します。以上の股関節の外転動作は、実は歩行の際に、身体を安定させる働きがあります。このため、中臀筋が弱いと身体が横に揺れることで歩行のバランスが崩れ、これを「トレンデンブルグ跛行」と呼びます。身体のバランスが崩れながら歩くと、体幹が左右方向に振られることになり、腰痛の原因になることがあると言われています。
中臀筋は鍛えることで、股関節の可動域を広げたり、横に動く動作をスムーズにしたり、よりスムーズに片足立ちをできるようになることを期待できます。
日常生活を送る分だと、このような動作が必要になることはほとんどありません。一方で、野球や陸上競技などの競技では、このような動作を行うケースがあり、中臀筋を鍛えることで運動パフォーマンスの向上を期待できます。
お尻が垂れ下がった状態とは、お尻の筋肉がお尻全体の重さを支えきれなくなった状態を指します。まずはお尻の下部から垂れ下がり始め、徐々に上部も垂れ下がり、最終的に全体が垂れ下がってしまいます。中臀筋は、お尻の中でもやや上側に位置していることから、鍛えることでお尻の垂れ下がりの一部を改善し、これによりヒップアップ効果を期待できます。
ただし、根本的なヒップアップ効果を期待するならば、中臀筋に加えて、お尻の大部分を占める大臀筋も鍛えることが必要です。
中臀筋は、前述したように、股関節の外転運動を司る筋肉で、歩行する際に身体のバランスを保つ筋肉です。中臀筋が弱いと歩行時の身体のバランスが崩れ、これにより、歩くたびに上半身が左右に振れることになります。上半身は、腰で下半身と接続しているため、身体のバランスが崩れることで身体が左右に振れると腰に負荷がかかる状態になります。歩行は、多くの人が日常的に(しかも、比較的長い時間)実施する動作であることから、身体のバランスが崩れることによる腰への負担は小さくありません。
中臀筋を鍛えて歩行時のバランスを改善することができれば、腰痛の改善及び予防を期待できます。
筋トレ初心者は、ファイヤーハイドラントを10〜12回3セット実施します。
ファイヤーハイドラントは、そこまでエクササイズ強度が高くないため、筋トレ初心者のうちから多くの回数を実施することが期待できます。ただし、筋トレ初心者のうちはフォームを確認するという意味でやや少ない回数を実施するようにしましょう。
ファイヤーハイドラントに少し慣れてきたら、12〜15回3セット実施します。
ファイヤーハイドラントは慣れてくると、中臀筋の発達により安定して実施することを期待できます。そのため、ファイヤーハイドラントに少し慣れてきたら、初心者のときよりも回数をやや増やして、12〜15回3セット実施するようにしましょう。
上級者の場合、ファイヤーハイドラントを実施する際には、その他の中臀筋を鍛える種目と組み合わせて実施します。
上級者がファイヤーハイドラントを実施する場合には、ウォーミングアップ種目として実施します。本番種目として、ワイドスクワット、ヒップスラストなどの重量を扱う種目を実施するのがおすすめです。この場合、ファイヤーハイドラントを12〜15回を実施し、ワイドスクワット、ヒップスラストを10〜12回3セット実施しましょう。
ファイヤーハイドラントは中臀筋に負荷を与えるための種目であり、中臀筋をより伸展させるためには足をしっかり上げる必要があります。
ただし、足をしっかり上げるにはそもそも股関節の柔軟性が必要です。柔軟性が足りない状態で無理に足を上げようとすると股関節を怪我する原因になるため注意が必要です。
また、股関節の外旋動作は、必然的に腰に負担がかかるため、足をしっかり上げるほど腰を痛めるリスクがあることは留意しましょう。
ファイヤーハイドラントでは、足の上げた動作でお尻が上がってしまうと、中臀筋への負荷が抜けてしまうため注意が必要です。
ファイヤーハイドラントでは、足を上げた動作に対する慣性力をお尻でしっかり制御するため中臀筋に負荷を与えることができます。つまり、臀部は常に床に対して並行を意識する必要があり、足を上げた動作に伴って臀部が上がってしまうと中臀筋に対する負荷が低減してしまうため注意が必要です。
ファイヤーハイドラントは、1回1回の動作の負荷は高くありません。それを補うようにして、回数を多くして実施しますが、負荷を高める別の方法としてトレーニングバンドを使うやり方もあります。
トレーニングバンドを使う場合には、基本的には膝上にトレーニングバンドを巻いてファイヤーハイドラントを実施します。トレーニングバンドの選び方ですが、基本的には、やや負荷の低いものを購入するのがおすすめです。負荷が高すぎると、ファイヤーハイドラントの場合には脚を開くことが困難になるためであり、少し負荷が小さいと感じるものを選ぶようにしましょう。
ファイヤーハイドラントに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。
このため、最初は難しいですが、中臀筋の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中での中臀筋の動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
ファイヤーハイドラントに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスーパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
ファイヤーハイドラントに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。呼吸は、筋肉の伸展と収縮を促し、ファイヤーハイドラントでは、脚を下ろすときに息を吸い、脚を上げるときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
クラムシェルは、ファイヤーハイドラントの基本となる種目であるためです。
クラムシェルは横になった状態でファイヤーハイドラントと同様の動作を行うため、ファイヤーハイドラントよりもさらに負荷を低減可能であり、ファイヤーハイドラントの基本種目とも言えます。実際に実施する場合には、クラムシェルを先に実施し、ファイヤーハイドラントを本番種目として実施しましょう。
クラムシェルは、20〜25回を3セットを目安に実施します。
クラムシェルは、単独では非常に負荷の小さいトレーニングです。このため、標準的なエクササイズの回数としては多めの20〜25回を3セットを目安に実施しましょう。
クラムシェルは、前述した通り、太ももと上体の角度によって臀部で刺激が入る部分が異なります。このため、複数の角度で実施しても効果的であり、その場合には3セットのいずれも異なる角度で実施しても良く、また、異なる角度ずつで3セット実施したのを1セットとカウントして3セット実施しても良いです。
複数の脚の角度で実施する。
トレーニングバンドを使う。
サイドプランクは、ファイヤーハイドラントと同様に中臀筋を鍛えることができるためです。
サイドプランクは、体幹及び中臀筋を鍛えるのに有効な種目であり、プランクという名前は付きますが、エクササイズ強度はやや高いです。実際に実施する場合には、ファイヤーハイドラントを先に実施し、サイドプランクを後に実施するようにしましょう。
サイドプランクは、20〜30秒を3セット目標に実施します。
サイドプランクは、自体重を片足、片手で支えるエクササイズであることからエクササイズの強度としてはやや高いです。このため、まずは10秒3セット程度から始めて、最終的には20〜30秒を目安に実施するようにしましょう。負荷が高すぎる場合には片手及び片膝で身体を支えるように実施しても問題ありません。
上半身から下半身までは真っ直ぐ。
できない場合には膝付きで実施する。
身体のコアを意識する。
上半身が腕に覆いかぶさらないようにする。
ワイドスクワットは、ファイヤーハイドラントと同様に中臀筋を鍛えることができるためです。
ワイドスクワットは、中臀筋を始めとして下半身の筋肉を鍛えるのに最適な種目です。中臀筋の他に、大腿四頭筋、大臀筋を稼働させるエクササイズであるためエクササイズ強度はやや高めです。そのため、実際に実施する場合には、ファイヤーハイドラントを先に実施し、本番種目としてワイドスクワットを実施するようにしましょう。
ワイドスクワットは、12〜15回を3セット実施するようにします。
ワイドスクワットは、スクワットに分類されるエクササイズですが、ターゲットとなる脚及び大臀筋が大きいため、そこまで大きい負荷にはなりません。このため、一般的なトレーニングで推奨とされている12〜15回を3セットがおすすめです。
膝をロックしない(=真っ直ぐに伸ばしきらない)。
ボトムポジションを低く設定しすぎない。
しゃがむときはゆっくり、立ち上がるときは素早く実施。
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