ハンバーグを作る際、どうしてパン粉を使うのでしょうか。この記事では、ハンバーグのタネにパン粉を入れる理由や、パン粉の使い方などを詳しく解説します。
パン粉には文字通り「つなぎ」としての役割以外にもいろいろな役割があります。
乾燥していて水分量の少ないパン粉は、ハンバーグのタネの中の水分を吸収します。こねてタネをよく混ぜることでタネがまとまりのある仕上がりになり、焼いた際に崩れにくくなります。
また、パン粉の原材料である小麦粉由来の「グルテン」もハンバーグを崩れにくくするつなぎとしての役割に一役買っています。
グルテンは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2つのたんぱく質が水に反応して結合することで形成されます。詳しく説明すると、バネのような細長い形をしたグルテニンが互いに絡み合い、その網目の部分に粒状をしたグリアジンが入り込むことで形成されています。
グルテンは生地に粘りと張力を与えます。そのため、ゆるいハンバーグのタネに小麦粉を加えることで、タネの中の水分に反応して生まれるグルテンが粘りを生み出し、タネがしっかりとまとまるので、崩れにくくなります。
パン粉がタネの水分をしっかり保持し、ハンバーグをふっくらと柔らかく仕上げることができます。また、焼いている際にも肉汁を吸い込むことで肉汁が流れ出しにくくなり、ハンバーグをジューシーに仕上げる効果もあります。
また、水分を吸ったパン粉はとても柔らかい食感になり、お肉だけだと水分が抜けて、元々の食感も相まって固くなりがちなハンバーグの食感を柔らかくもしています。
パン粉はたくさん入れることでタネの水分が少なくなってしまいますが、見合った水分(牛乳など)を足せばタネの固さを調整することができ、かさ増しの効果もあります。
ただし、入れすぎるとハンバーグの美味しさの基本であるお肉の存在感が薄くなってしまうので、入れる量には注意しましょう。
海外では基本的にお肉だけで作られているハンバーグですが、なぜ日本においてパン粉が使われるようになったのでしょうか。
ハンバーグにパン粉を使うようになったのは、元々はかさ増しのためだったようです。お肉は高価なため、パン粉を混ぜることで材料の原価を下げるために使われており、戦前の横浜ホテルニューグランドでは、初代総料理長のサリー・ワイル氏のメニューに数種のハンブルグ風ステーキがあり、レシピにはパン粉が入っていたそうです。
ハンバーグのレシピが1970年代に一般家庭に浸透してからも。高価なお肉の使用量を減らすことのできるパン粉はハンバーグに用いられ、現在でもそのつなぎとしての役割もあって使われ続けています。
出典:ハンバーグの歴史(後編)(一般社団法人 日本洋食協会)
では、海外ではパン粉は使われているのでしょうか。海外ではハンバーグはもっぱらハンバーガーの中身として食べられていますが、日本同様に仕上がりを良くするためのつなぎとして使われたり、かさ増しとして使われたりしています。ただし、基本的にはパン粉は使わないレシピが主流です。
また、ハンバーグの源流であるハンブルク風ステーキが生まれたドイツの家庭では、パン屑の有効活用法として使われることがあるようです。
パン粉の量でハンバーグの固さを調整することができます。
標準的なつなぎの量はひき肉250〜300g(2~3人前)に対し、パン粉:大さじ4、牛乳:大さじ4〜5、卵1個とされています。パン粉と牛乳は同じ量で作られることが多いです。
パン粉と牛乳を少なめにすると固めに、多めにすると柔らかい仕上がりになります。好みに応じて調整してみましょう。
パン粉なしでハンバーグを作る場合、パン粉由来のもっちりとした食感はなくなり、お肉本来の食べ応えのある固さとなります。
ただし、固めのハンバーグが好みという方もおり、あえてパン粉を使用せずにハンバーグを作る方もいます。
パン粉はタネの水分を吸収するため、水分を多く含む生のタマネギや牛乳を使う場合、水分を吸収する材料がないため、タネがゆるくなってしまい、焼いた際に崩れやすくなります。
また、お肉は焼いた際にたんぱく質が収縮して縮んでしまいますが、パン粉を使わない場合、この縮みの幅が大きくなりやすいです。ハンバーグは縮む際に割れてしまうことも多く、割れた個所から肉汁が流れ出てパサパサで固い仕上がりのハンバーグとなってしまいます。
パン粉と同じ役割を持つ代用品もあるので、失敗せずにハンバーグをふっくら仕上げたい方は代用品を使うのがおすすめです。代用品は後述の項目で紹介します。
前述の通り、パン粉はたくさん入れることでかさ増しにもなりますが、パン粉を入れすぎてしまうとパサパサになってしまいます。パン粉をたくさん入れる場合は、牛乳などの水分も併せて足すことをおすすめします。水分を含む野菜やキノコ類を一緒に加えるのもおすすめです。
ただし、こちらもすでに言及している通り、入れすぎるとハンバーグの美味しさの基本であるお肉の存在感が薄くなってしまいます。また、水分を足しすぎるとタネがゆるくなってしまうので注意しましょう。
では、パン粉以外の材料(ひき肉、塩、卵、牛乳)をたくさん入れることでパン粉の代用となるでしょうか。
パン粉以外の材料は吸水性が弱く、食感も異なるため、たくさん入れることで代用とすることはできません。ハンバーグを柔らかくジューシーに仕上げたい場合はパン粉または下記の代用品を使うことをおすすめします。
正しい使い方をすることでハンバーグを美味しく仕上げることができます。
ハンバーグのつなぎに使う乾燥パン粉は、牛乳に漬けておいてからタネに混ぜた方が良いとされています。なぜなら、この作業によってパン粉が水分を含み、しっとりすることでハンバーグがふんわり仕上がるためです。
ただし、現代の乾燥パン粉は昔と比べるとある程度の水分量があるので、漬け込む必要はないという意見もあります。
ちなみに、パン粉は水分量が14%以下のものを「乾燥パン粉」、14%以上のものを「生パン粉」と区別しています。乾燥パン粉は水分量が少なく粒が細かいので、ハンバーグなどのタネに混ぜることで水分をしっかり含んでお肉とよく馴染みやすくなります。一方、生パン粉は粒が粗く、水分量が多いので揚げるとサクサクになるため、揚げ物作りでよく使われています。
なお、生パン粉は水分量を多く含んでおり、元々しっとりしているので基本的に牛乳に漬ける必要はありません。ただし、生パン粉も牛乳に漬けると柔らかくなります。開封してから日数が経っている生パン粉は乾燥が進んでしまっているので、牛乳に漬けた方が良い場合もあります。
ハンバーグのタネをこねる際、具材を全て入れて一気に混ぜるのではなく、まずはよく冷やしたひき肉と塩だけでこねましょう。塩の働きでひき肉から「アクチン」と「ミオシン」というタンパク質が溶け出し、くっつきあって網目状になるため、肉の粘り気が増えて肉同士がくっついた状態になります。これによって焼いたときに肉汁(肉の脂や水分、旨味成分)が出るのを防ぎ、肉汁がハンバーグの中にしっかりと残って、ジューシーな仕上がりになります。
塩の量はひき肉に対して0.8~1%くらいがよいとされており、200gのひき肉に対して1.6~2g(小さじ3分の1程度)となります。塩コショウの場合は少し多めのひき肉に対して1~1.2%が適量となります。
ひき肉と塩だけでこねてある程度粘りが出るまでこねましょう。粘りが出たら卵やパン粉、牛乳などのつなぎ具材を追加してください。
保水力でタネをまとめて崩れにくくし、焼いた際に旨味も保持できる材料を紹介します。
小麦粉をハンバーグのタネに混ぜることで、パンづくりでも使われる「グルテン」によってタネを崩れにくくしてくれます。
グルテンの役割は上記のパン粉の項目で解説した通りで、グルテンは生地に粘りと張力を与えます。そのため、ハンバーグのタネに小麦粉を加えることで、タネの中の水分に反応して生まれるグルテンが粘りを生み出し、タネがしっかりとまとまるので、崩れにくくなります。
お米や米粉、米パン粉を使うことでお米の主成分であるデンプンが水に反応して粘りを生み出し、タネの粘りが増し、ハンバーグが形状を保ちやすくなるほか、焼いた後にはもっちりとした食感に仕上がり、カサ増しにもなります。
炊いてから時間が経ったお米などを再利用することもできます。タネに混ぜる際、温かい場合はよく冷まし、すりつぶしてから混ぜましょう。
ただし、たくさん混ぜた場合、時間が経ってしまうとぼそぼそとした食感になってしまいます。
スープやあんにとろみをつける目的でもよく使用される片栗粉は、水分を加えて加熱すると粘り気が出て、ひき肉を固めてくれる作用があります。片栗粉を使用したハンバーグは、冷めてもモチモチとした食感が残りやすいです。
片栗粉は、水溶きで使うことで牛乳の代用という位置づけで使われることが多いですが、タネを固めて水分を保持する役割もあるので、卵やパン粉の代用としての役割も果たしてくれます。
また、加熱前にハンバーグの外側をコーティングしておくことで、加熱時に中の肉汁を閉じ込められる上に、表面が焦げにくくなって舌触りが良くなり、ソースが絡みやすくもなります。これは小麦粉でも代用できます。
大豆から豆乳を搾った後の絞りかすであるおからは、食物繊維が豊富な上にカロリーが低い特徴があります。ハンバーグのつなぎで使えばカサ増しになり、カロリーオフにもなります。
生おからを使う場合はそのまま混ぜ、乾燥おからの場合は牛乳か水に浸してから使いましょう。生のおからを使用する場合はひき肉の1/3程度が適量で、おからパウダーを使う際にはパン粉と同量程度がおすすめです。
お麩はパン粉と同じ小麦粉から作られた乾物で、パン粉の代わりとしてハンバーグのつなぎにも使うことができます。豆腐と同様にカサ増しやカロリーオフになるのでダイエット中の方にもおすすめです。
タネに加える際は粉々に砕いてから水や牛乳とセットで加えましょう。お麩が水分を吸収して膨らみ、ふっくらしたハンバーグに仕上がります。
ハンバーグを作る際に、パン粉が良く使われますが、パン粉の代わりに砕いてパウダー状にした高野豆腐を使うとハンバーグをよりジューシーに仕上げることができます。
高野豆腐は吸水性が高く、肉汁をしっかり吸収して旨味をたっぷりのハンバーグに仕上がります。また、パン粉の代わりに使うことで糖質カットにもつながるのでおすすめです。使う量は、2人分のハンバーグ(300~400g)につき、高野豆腐8gが適量です。
ハンバーグのタネに長芋のすりおろしを混ぜると、その粘りでふわふわな食感に仕上がります。ひき肉をこねる際にパン粉の代わりにすれば、つなぎの役割も果たすので、卵も不要となります。
入れすぎると水分が多くなってタネが緩くなってしまい、ハンバーグを焼いた時に割れてしまうので、少しずつ加えて調整しましょう。
タネの作り方や焼き方にひと工夫加えることでハンバーグを美味しく仕上げることができます。
ひき肉はこねる直前まで冷蔵庫に入れておきましょう。ハンバーグのタネは温度が上がることでひき肉の脂肪が溶けてタネがゆるくなるほか、焼いた時に肉汁が流れ出て固い仕上がりになってしまいます。
また、タネをこねる際に室温が高いとタネの温度が高くなり、タネがゆるくなってしまうこともあります。夏場は冷房をつけ、冬場は暖房を切ってタネをこねるのがおすすめです。
ハンバーグのタネをこねすぎてしまうと脂が溶けて肉汁が少なくなるので、ハンバーグが固くなってしまいます。ただし、こねることで具材が良く混ざる以外にも、肉の粘り気が増えて肉同士がくっついた状態になり、焼いたときに肉汁が出るのを防ぐ役割もあるのでよくこねるようにしましょう。目安は白っぽくなっていて、粘り気があり、肉を突いてみた時にボウルが浮くくらいです。
ハンバーグをこねる際はこねすぎにも注意ですが、手が温かいと脂肪が溶けやすいため、手を冷やしてからこねると良いでしょう。手ではなくすりこぎ棒や木べら、割り箸などを使っても良いでしょう。こだわる方は牛乳の代わりに氷を使ったり、タネの入ったボウルを氷水の入った大きなボウルで冷やしながらこねたりしているようです。
タネをこね終わった後、寝かせることで水分と油分がなじみ、タネが柔らかくなるだけでなく、お肉が熟成して旨味が増します。ただし、タネを常温で寝かせたり、長時間寝かせたりしてしまうと、雑菌が繁殖する原因となります。冷蔵庫で1~2時間程度寝かせるようにしましょう。また、なるべく空気に触れないようにするため、ラップをかけて寝かせましょう。
なお、空気を抜いて成型した後に寝かせるとひびが入って割れやすくなってしまうので、必ず成型前に寝かせましょう。
タネを混ぜ終わってから空気を抜いて成型しますが、この作業が十分でないとハンバーグが割れやすくなってしまい、割れて肉汁が出て固くなってしまうので要注意です。
ハンバーグの空気を抜く作業はよく「両手でキャッチボールをするようにしながら」と言われます。しかし、この方法ではよくわからないという方も多いでしょう。分かりやすく簡単な方法は、利き手に載せたタネを、利き手ではない方の手を受け皿にして、3~4回軽く打ち付ける方法です。この時、手にサラダ油を薄く塗っておくと、ミンチ内の水分が蒸発するのを防ぎながら成形することができます。
ただし、この作業をやりすぎるとハンバーグが固めの仕上がりになってしまうので要注意です。
ハンバーグのサイズを大きくしてしまうと、焼く前の空気抜きの作業で空気を抜くのが難しくなるほか、火の通りが悪くなり、崩れやすくなってしまいます。真ん中まで火が通りにくく、生焼きになる可能性も高まります。
ハンバーグのサイズは手のひらに収まる程度に収めましょう。厚さは1.5~2cm程度が一般的なサイズです。
ハンバーグの厚い中央部分は火が通りにくいので、生焼けを防ぎ、調理時間を短くするために真ん中をへこませましょう。
ただし、最近はへこませる必要についての議論もあり、へこんだ部分に焼き目がつけられない、蒸し焼きにすれば中までしっかり火が通るといった理由からへこませる必要がないと言われることもあります。典型的なハンバーグのような形ではなく、薄めに作ることでへこませるのを省く方法もあります。
ハンバーグを焼く際、しっかり火を通すために弱火で長時間焼いている方が多いのではないでしょうか。長時間焼くことでハンバーグから肉汁が出すぎてしまい、ハンバーグが固くなってしまいます。
ハンバーグを焼く際は、まずは中火で表面を焼き、裏返したら弱火にし、中までじっくりと火を通しましょう。強火で焼くと焦げやすく、ハンバーグの外側ばかり焼けてしまって中心部は生焼けになってしまうことが多く、野菜に含まれる栄養素が分解されてしまったり、肉汁の水分と一緒に流れ出てしまったりします。基本的に中火以下で調理しましょう。
中火で焼き目を付けてハンバーグをひっくり返した後、フタをして弱火で加熱することで水分の蒸発を防ぎ、蒸し焼きにすることができるので、焼いている面以外にも熱を通すことができ、焼きムラを防ぐとともに、時短調理となります。
フタがない時はアルミホイルをフライパンを覆うサイズに成形して上から被せることで蓋代わりにできます。この時、フライパンが熱いのでフライパンに触ってやけどしないように注意しましょう。
アルミホイルを使って包み焼きにするのもおすすめです。熱がハンバーグに均等に伝わり、焼きムラを防ぐことができます。アルミホイルには遠赤外線効果という食材の内側に熱を伝えやすくする効果もあるので、生焼け防止にぴったりの調理方法です。付け合わせのブロッコリーやニンジンなどの野菜も一緒に包んで焼けば時短調理にもなります。
フタをして蒸し焼きにする際、少量の料理酒(小さじ1~)を加え、弱火で蒸し焼きにすることでハンバーグに旨味を加え、ふっくらと仕上げることができます。
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