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なすの色止め方法。下ごしらえと調理法を紹介

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なすの色止め方法。下ごしらえと調理法を紹介

なすの色が変わってしまって料理の見た目が悪くなってしまった経験がある方は多いのではないでしょうか。本記事ではなすの色止めの方法について詳しく解説します。

なすが色落ちする理由

新鮮ななすの表面は鮮やかな紫色、中はクリーム色をしていますが、色が悪くなってしまうことがあります。
原因は下記の通りです。

ポリフェノールの酸化

なすをカットして調理をしようと思ったら、断面が茶色や黒に変色していた経験がある方も多いのではないでしょうか。これは、なすに含まれているポリフェノールが空気中の酸素に触れて酸化したことが原因です。

ポリフェノールとは植物に含まれている苦味・エグみとなる化合物の総称で、構造によって様々な種類があります。なすに多く含まれているポリフェノールはアントシアニンやクロロゲン酸です。

ポリフェノールは空気中の酸素に触れて酸化すると、変色する性質があります。特になすの実に多く含まれているクロロゲン酸は酸化すると茶色や黒に変色するので、なすをカットしてから時間がたつにつれてどんどん色が悪くなってしまいます。

また、保存方法が悪いことが原因でポリフェノールが酸化してしまって色が悪くなる場合もあります。

色素が落ちる

なすを煮物にしたときに色が落ちて煮汁が黒っぽくなってしまったり、炒めたときに色が悪くなってしまうのはなすの色素が落ちてしまうためです。

なすの表面の鮮やかな紫色はポリフェノールの一種であるアントシアニンによるものです。アントシアニンにも様々な種類があり、なすの場合はナスニンと呼ばれる成分が主な色素になっています。

ナスニンに限らず、ポリフェノールは水溶性です。そのため、茹でたり煮たりするとナスニンが溶け出し色が抜けてしまい、なすの色が悪くなったり煮汁が黒っぽくなります。炒める際も、加熱時に蒸発するなすの水分と一緒にナスニンが抜けてしまうので色が悪くなることがあります。

なすの色止め方法5通り

なすの色が悪くなってしまっても食べることはできますが、料理の見栄えが悪くなってしまいますよね。なすは色止めをすると色鮮やかなまま調理することが可能です。

水・塩水にさらす

なすを水にさらして色止めをする

なすにはアク(苦味・エグみを感じさせ料理の質を落とす成分の総称)があります。

なすのアクとなる成分は主にポリフェノールであるクロロゲン酸とアントシアニンです。たけのこなどのアクとなるシュウ酸とは異なり身体に悪い成分ではないのでアク抜き(水にさらす)は必須ではありません。

しかし、なすの場合は水にさらすことでアク抜きだけではなく、色止めにもなります。色止めを目的とするなら、0.5~1%程度の濃度の食塩水にさらすのが効果的です、

水にさらすとカリウムなどの水溶性の栄養素も同時に流出してしまうので、少しでも栄養を減らしたくない場合は、塩を振ってアク抜きがおすすめです。塩をふってしばらくおいておくとなすの水分が出てきます。出てきた水分にポリフェノールも含まれているので、苦味・エグみを抑え色止めすることが可能です。

隠し包丁をいれる

なすの皮に隠し包丁を入れて色止めをする

2等分にして調理するときなどは、隠し包丁を入れるのも色止めになります。

隠し包丁とは、火を通りやすくしたり味を染み込みやすくするために食材の見えないところに切り込みを入れることをいいます。大根を煮物にするときなどにもよく使われます。

なすの場合は隠し包丁を入れることで、蒸気の通り道ができるので色素となるナスニンが落ちてしまうのを防ぐことができます。また、変色させないためには長時間の加熱もNG。加熱時間を短縮するためにも隠し包丁を入れておくことが大切です。

なすに隠し包丁を入れるときは、皮目に5㎜幅くらいの切れ目を斜めに入れたら、なすの向きを変えてさらに格子状になるように切れ目を入れていくと良いです。特に肉厚な真ん中の部分を中心に隠し包丁を入れます。

酢やレモン汁をかける

酢やレモン汁などの酸性の調味料を使うと鮮やかな色を保つことができます。

例えばなすをを茹でるときは、1カップの水に対して大さじ1程度の酢を入れます。炒めものにする場合は、酢やレモン汁を使って味付けをするのでも良いですし、加熱前に酢やレモン汁を直接かけても良いです。酸っぱくなってしまうのでは?と思う方も多いと思いますが、加熱すれば酸味は飛ぶので大丈夫です。

また、トマトなどの食材と一緒に炒めるのもありです。

ミョウバンを使う

ミョウバンを使うことでも、なすの色落ちを防ぐことができます。

ミョウバンとは、アルミニウムと鉄が硫酸と結合してできた物質です。色は無色または白色で、結晶状や粉末状のものが販売されています。

ミョウバンにはアルミニウムが含まれているため、アルミニウムとナスに含まれているアントシアニンが結合すると、錯塩(塩)が形成されます。錯塩が形成されることで色素となるナスニンが安定するため、色落ちせず鮮やかな色を保つことができます。

また、歯ざわりがよくなる効果があるともいわれています。

油を塗る・油通しする

なすの表面に油を塗ると、表面がコーティングされるのでナスニンが落ちてしまうのを防ぐことができます。特にレンジ調理をするときは、油を使って炒めるわけではないので表面に油を塗っておくと良いです。

加熱調理をするときは油を使うので、それだけでもある程度コーティングされますが、予め表面に油を塗っておいたり油通しをしておくとなお良いです。油通しとは野菜などの具材をさっと油にくぐらせる下処理方法で、中華料理などでよく使われます。なすを油通しするときは、油はねしないようなすの水分をしっかり拭き取ってから行いましょう。

油っぽくなってしまうのが気になる場合は、沸騰したお湯に油大さじ2程度加えて30秒程煮るという方法がおすすめです。大量に油を使うわけではないので油っぽくなってしまう心配がありません。

重曹では色止めできない

なすは重曹を入れた水にさらしても色止めすることはできません。

なすの色素であるナスニン(アントシアニン)は、酸性になると赤紫→赤→黒と変色し、アルカリ性になると青→緑→黄色と変色する性質があります。

そのため、重曹を入れてアルカリ性になった水にさらすとなすは青紫色に変化します。一時的に色鮮やかにはなりますが、ナスニンが安定するわけではないので、茹でたり炒めたりすると色落ちしてしまいます。

ミョウバンと間違えて重曹で色止めができると思っている方も多いようですが、重曹につけてもナスの色止めにはならないので注意しましょう。

なすは調理で色止めもできる

なすの色止め方法はおわかりいただけたでしょうか。続いて、料理別におすすめのなすの色止め方法を紹介します。

焼きなす・煮浸し

焼きなすは、ナスをフライパンやグリルなどで焼くなすを使った定番料理です。

焼きなすを作るときは、まず表面に隠し包丁をいれます。隠し包丁を入れておくことで早く火が通りますし、色落ちするのを防ぐことができます。

また、皮から焼くのもポイントです。実の部分から焼いてしまいがちですが、実の部分を先に焼くとなすから出た水分が水蒸気になったときに表面のナスニンを落としてしまうので色が悪くなります。必ず皮から焼いていくようにしましょう。

煮浸しにする場合は、なすを皮から両面焼いたら、調味料を加えて3分程煮て完成です。

ぬか漬け・浅漬け

ぬか漬けを作るときは、下ごしらえとしてミョウバンをなすにすりこんで置くのがおすすめです。ぬか漬けにする場合は乳酸発酵によってもなすが変色してしまうので、ミョウバンを使っての変色予防がおすすめです。

浅漬にする場合は、ミョウバンと塩、砂糖、鷹の爪などをナスに馴染ませてから水を入れて密閉できる容器に入れます。ミョウバンにはエグみや苦味があるので、気になる場合は酢で代用すると良いです。

油で揚げる

なすは揚げびたしにするなど、一度揚げてから使うことも多いですよね。上述したように、油で揚げること自体が色止めになるものの、ナスニンは高温にも弱いため揚げる際にも注意が必要です。

なすを油で揚げるときは、まず表面に隠し包丁を入れます。特に2等分にして使う場合など大きめにカットして使う場合は火が通るのに時間がかかり、揚げているうちに色落ちしてしまうので、短時間で火を通せるよう必ず隠し包丁を入れましょう。

なすを揚げる際も、皮目から揚げていきます。焼きなすと同様に皮目から揚げていくことで、色落ちを防げます。皮目から揚げたらひっくり返して両面を揚げていきます。両面がカラっと揚がったら、油から取り出します。

油から取り出したあと、そのまま置いておくと予熱でナスニンが溶け出してしまい色が落ちてしまうので、冷気が直接当たらないようキッチンペーパーを被せてから冷蔵庫に入れて冷やすのがおすすめです。揚げた後に一気に冷やすことで鮮やかな紫色をキープすることができます。

味噌汁

なすの味噌汁が黒っぽくなってしまうのが気になるという方も多いのではないでしょうか。

味噌汁に入れるなすの色落ちを防ぐには、アク抜きをするのが良いです。予め水にさらしてアク抜きをしておくと、苦味・エグみも軽減されますし、色が黒くなってしまうのを防げます。

また、沸騰してからなすを入れるのもポイントです。水からゆっくり加熱してしまうと、色素が溶け出して黒っぽくなってしまうのです。そのため、なすを味噌汁にするときは沸騰してからなすを加えて短時間で煮るのがポイントです。なすを加えてしばらく加熱したら、火を止めて味噌を加えます。

一度揚げたなすを加えるのでもOK。油でコーティングされている状態なので、色落ちしません。

なすの下準備

洗う

なすを流水で洗う

なすはじゃがいもなどとは異なり、そこまで泥汚れがついているわけではありませんが、洗う必要があります。野菜には土壌由来の細菌が必ずついているといっても過言ではありません。すべての細菌が食中毒の原因になるわけではありませんが、しっかり洗い流して調理することが大切です。汚れを落とすことは農薬を落とすことにも繋がります。

しかし、ゴシゴシ洗ってしまうと表面に傷がついてしまいます。傷がついてしまうと酸化して色が悪くなってしまうので、優しく洗いましょう。

切り方

なすを綺麗に洗ったら、料理や好みに合わせてカットしていきます。なすの代表的な切り方は下記の通りです。

輪切り

輪切りにしたなす

輪切りは、断面が広いので火が通りやすく一口サイズで食べやすいですし、輪切りであればヘタを切り落として端からカットしていくだけでOKなので、料理初心者の方でも簡単に切ることができます。

輪切りにしたなすは、皮と内側の柔らかな食感の変化を楽しむことができますし、なすのジューシーさを楽しむことができます。炒めものにするときや、パスタの具材として使いたいときなどにおすすめです。

火の通りを重視する場合はうるめにカットし、食べごたえを出したい場合は厚めにカットすると良いでしょう。

輪切りにする手順

①まな板の上になすのヘタの部分を右にして横に置く

②ヘタを切り落とす

③右端から1cm程の幅でカットしていく

半月切り

半月切りにしたなす

半月切りとは、その名の通り半月の形にカットする方法です。

半月切りは一口サイズなので、味噌汁に入れても食べやすいです。また、火の通りが早いので色落ちしてしまうのを防ぐことができます。特に味噌汁の場合は火が通るのに時間がかかってしまうと汁全体が黒っぽくなってしまうので、見た目が気になる方は特に半月切りにしてさっと火を通すのがおすすめです。

煮物にするときは厚め半月切りにすると良いでしょう。また、加熱調理だけではなく、漬物にしたい場合にもおすすめの切り方です。幅広い用途があるので覚えておくと良いでしょう。

半月切りにする手順

①なすのヘタの部分を右にして横に置く

②ヘタを切り落とす

③縦半分にカットする

④切口を下にむけておき、端から一定の幅でカットする

乱切り

乱切りにしたなす

乱切りは、形を揃えないカット方法です。

乱切りにしたなすは、その形状や大きさのバラつきが特徴です。これにより、なすが存在感を持ち、なすの食材としての存在をしっかり楽しむことができます。また、乱切りにすることで表面積が大きくなるため火の通りが早くなりますし、なすの凹凸に調味料やソースなどが絡みつき、風味をしっかりと引き出します。揚げなすや炒めものにするときにおすすめです。

ただし、形は揃えないとはいってもやはり大きさは揃えるのがポイントです。大きさがバラバラになってしまうと加熱ムラができる原因になるので注意しましょう。

乱切りにする手順

①なすのヘタの部分を右にして横に置く

②ヘタを切り落とす

③斜め45℃に包丁を入れてカットする

④なすを手前に90℃回して、切り口をむける

⑤斜めにカットする

⑥④〜⑥を繰り返す