タピオカ粉と葛粉の違いをご存知でしょうか。本記事ではタピオカ粉と葛粉の違いを解説します。
タピオカ粉と葛粉はどちらも植物のでん粉を原料に作るでんぷん粉の一種です。それぞれ原料となる植物が異なります。
タピオカ粉の原料はキャッサバの根茎です。
「タピオカでん粉」や「タピオカスターチ」、「マニオカでんぷん」「ユカでんぷん」ともいいます。
キャッサバはトウダイグサ科イモノキ属に分類される芋の一種です。キャッサバには、大きな根を付ける苦味種(にがみしゅ)と、小さく苦味のない甘味種(かんみしゅ)の2つの種類があり、タピオカ粉には甘味種を原料にしています。ナイジェリアやタイ、インドネシア、マレーシア、ブラジルなどが主産地ですが、最近では東南アジアでも生産されています。
ただし、販売されているタピオカ粉の中には原材料名が「酢酸澱粉(さくさんでんぷん)」となっている場合があります。酢酸澱粉は、でんぷんに化学的薬品を加えるなどしてでんぷんの特性を改良した加工デンプンの一種です。食品添加物であるため、食品添加物を避けている方やケミカルアレルギーのある方は購入する際に原材料の確認をしてから購入しましょう。
葛粉の原料はマメ科植物クズの根から得られるでんぷんです。
クズのでんぷんも掘り出すのに手間がかかり高価であるため、近年は甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉、コーンスターチなどが加えられていることが多いです。甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉、コーンスターチのどれもでんぷん粉です。
クズのでんぷん粉に甘藷澱粉などを合わせたものが「葛粉」、クズのでんぷんのみを使用したものが「本葛粉(本葛)」という製品名で販売されています。
甘藷澱粉とは、さつま芋のでんぷんを沈殿させ乾燥させて粉状にしたたものです。「甘藷」はさつま芋の別名です。普段口にしているさつま芋よりも一回り大きく、でんぶんを多く含んでいるさつま芋を原料にしています。
馬鈴薯澱粉とは、じゃが芋のでんぷんを沈殿させ乾燥さて粉状にしたものです。「馬鈴薯」はじゃが芋の別名です。じゃが芋の形が馬の首につける鈴に似ていたため「馬鈴薯」と呼ばれるようになったといわれています。国内で作られる馬鈴薯でん粉は、北海道で生産されたじゃが芋のみを原料として製造されています。
コーンスターチは、トウモロコシのんぷんを乾燥させて粉状にしたものです。コーンスターチに使われるトウモロコシは、一般的によく食されるスイートコーン(甘味種)ではなく、デントコーン(馬歯種)という品種です。
タピオカ粉はキャッサバの根茎のでんぷんだけを抽出し、乾燥させて粉状にします。
ちなみに、キャッサバの根を天日干しや乾燥・加熱して粉状にした「キャッサバ粉」もあります。タピオカ粉と原料は同じですが、タピオカ粉はでんぷんを取り出して乾燥させて粉状にしているという点でキャッサバ粉とは異なります。
葛粉は、クズの根っこの部分を掘り起こし、粉砕して水の中でもみだし根の中に含まれているでんぷんを沈殿させます。その後、水に晒してアク抜きし沈殿させる工程を何度も繰り返しで不純物を取り除き、適当な大きさに砕いて乾燥させるという製造方法で作られています。
上述したように甘藷澱粉など葛粉以外のでんぷん粉を合わせて作られることも多く、配合量はメーカーによって異なります。
タピオカ粉の見た目は真っ白です。しっとりしていて触感は片栗粉に似ています。葛粉のように塊はありません。
葛粉の見た目は、灰色がかった白色です。もともとクズからとれるでんぷんは灰色をしていて、葛粉の割合が多ければ多いほど灰色に近くなります。反対に、葛粉よりも甘藷澱粉などの割合が多いと白色になります。
葛粉は固まりができていて、ザクザクした触感です。
タピオカ粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。
たんぱく質…0.1g
脂質…0.2g
炭水化物…85.3g
鉄…0.3mg
カルシウム…28mg
マグネシウム5mg
タピオカ粉100gのカロリーは346kcalです。
タピオカ粉は、製造過程で原料であるキャッサバのビタミンやミネラルがほどんど流れ出てしまうため栄養素はほとんど残っていませんが、体に悪い成分は含まれていません。
キャッサバには「青酸配糖体(シアン化合物)」という成分が含まれており、猛毒を生む性質があるためタピオカ粉は「毒がある」「体に悪い」といわれることがありますが、日本では適切に処理をし無毒化されたキャッサバのみを輸入しているため安心して口にすることができます。
葛粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。
たんぱく質…0.2g
脂質…0.2g
炭水化物…85.6g
ナトリウム…2mg
カリウム…2mg
カルシウム…18mg
マグネシウム…3mg
リン …12mg
鉄…2.0mg
亜鉛…微量
銅…0.02mg
マンガン…0.02mg
葛粉100gのカロリーは、347kcalです。カロリーはタピオカ粉と大きな差はありません。
葛粉には、タピオカ粉にはない様々な効能があります。例えば、クズにはイソフラボンが多く含まれています。イソフラボンとは大豆胚芽に多く含まれるポリフェノールの一種です。イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、更年期や月経前のつらい症状を和らげたり 肌荒れを改善するなどの美容効果や肩こり改善、イライラを抑えるなど精神を安定させるなどの効果が期待できます。
ただし、葛粉には葛粉以外のてんぷん粉も配合されているので、葛の効能を目的とするのであれば葛粉の配合量が多いものや本葛粉を選びましょう。
タピオカ粉はその名の通り、タピオカの原料として使われます。
タピオカ粉を水で溶いて加熱した後、粒状にして乾燥させたものをお湯で茹でて戻すとタピオカになります。本来のタピオカは乳白色でココナッツミルクなどに入れることが多く、黒砂糖などで着色されるとタピオカドリンクに入っている黒色のタピオカになります。タピオカ粉で作るタピオカはのどごしがよく、ミルクティーなどドリンクに入れることが多いです。
その他、タピオカ粉を使って団子などの和菓子やパンケーキやクレープなどの洋菓子を作ることもできます。
また、料理にとろみをつけたり揚げ物の衣にすることもできます。
葛粉は、葛湯を作るときに使われる事が多いです。
葛湯は、葛粉をお湯で溶いた飲み物です。葛粉を葛湯にすることで、身体を温めることができる他、風邪のひきはじめの症状改善など様々な効果が期待できます。
また、葛餅や水まんじゅう、葛切り、葛焼きなどの和菓子を作ることができます。
葛餅は、くず粉に砂糖と水を加え、加熱してできた透明な餅にきな粉と黒蜜をかけたものです。葛餅に餡(あん)を包むと透明で涼しげな水まんじゅうができます。
葛切りは、くず粉を水で溶かし型に入れてから加熱し後板状に固め、うどんのように細長く切ったものです。蜜をかけてデザートとして食べたり、乾燥させて鍋の具材として食べることができます。
葛焼きは、葛粉と餡(あん)を合わせて練った生地の表面を焼いて仕上げる京都の銘菓です。
その他、タピオカ粉と同様に料理にとろみをつけたり、揚げ物の衣にすることもできます。
タピオカ粉は葛粉で代用することができます。例えば、意外かもしれませんが葛粉でタピオカを作ることも可能です。ただし、原料が異なるため味や風味、食感に違いがでます。
特に葛粉は葛特有の風味があります。葛粉の配合量が多ければ多いほど苦味が出ます。
また、タピオカ粉を葛粉で代用する場合は、量や調整に注意が必要です。一般的には、タピオカ粉を葛粉で代用する場合は、葛粉の量を少なめにすることが推奨されます。また、葛粉は加熱する前に溶かす必要があることにも注意してください。
葛粉はタピオカ粉で代用することができる場合とできない場合があります。例えば、タピオカ粉を使って葛餅などの和菓子を作ることができます。
ただし、上述したように原料が異なるので味や風味、食感に違いがでます。タピオカ粉では葛粉の風味は出せませんし、もちもちとした食感に仕上がります。
葛粉をタピオカ粉で代用するときは、葛粉の量の約2/3程度のタピオカ粉を使用することが一般的です。具体的には、葛粉の分量を0.6〜0.7倍程度のタピオカ粉に置き換えることができます。ただし、料理の特性や好みに応じて微調整する必要がありますので、必要に応じて試行錯誤してください。
一方で、葛湯を作るときの代用にタピオカ粉を使うことはできません。なぜなら、タピオカ粉に薬効がないためです。風邪のときなど薬効目的で葛湯を作りたいときは、タピオカ粉では不可能なので注意しましょう。
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