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「いんげん」と「ささげ」の違いを徹底比較!実は全く別の野菜だった

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「いんげん」と「ささげ」の違いを徹底比較!実は全く別の野菜だった

全国的にポピュラーないんげんと、あまり馴染みがないささげ。見た目も似ていて、旬の時期も6〜9月でスーパーなどで並ぶタイミングも重なりますが、別の野菜です。

いんげんとささげの違い①分類・原産地



物学上の分類では、いんげん(サヤインゲン)はマメ目マメ科インゲン連インゲン属、ささげはマメ目マメ科インゲン連ササゲ属です。

いんげんは英語で「green bean」「kidney bean」です。ささげは英語で「cowpea」です。

いんげんの原産地は中南米で古くより原住民により栽培されていました。アメリカ大陸に渡ったコロンブスにより、16世紀にスペインとイタリアに伝えられ、17世紀にはヨーロッパ全域で広く栽培・利用されるようになりました。日本へは1654年に中国からの帰化僧である隠元が伝えたとされており、それがインゲンの名前の由来となっています。現在ではマメ科の食用作物の中で最も栽培面積が広いとされます。

ささげの原産地は熱帯アフリカやインド北東部、南アフリカなど諸説あります。古代にインドに渡り、そこから地中海地域を経てヨーロッパへは紀元前3世紀にギリシャに伝わったのが最初とされています。一方、インドから中国を経て日本へ伝わったとされているが詳細はわかっていません。しかし、正倉院文書(758年)や東大寺の寛平年間(889〜898年)の日誌に「大角豆」の記載があります。

ささげという名称の語源には、サヤが上を向いている様子が手を「ささげる」様子に似ている、細い莢を小さな牙に見立てて「細々牙」とした、などの説があります。「大角豆」と漢字で書くのは、ササゲの豆が角ばっていることからといわれています。ちなみに「ささぎ」は北関東や東北ではささげの方言です。

いんげんとささげの違い②品種



世間一般で「いんげん」と呼ばれるもののはサヤインゲンを指します。サヤインゲンはインゲンマメのサヤ用を指します。

インゲンマメとササゲは、どちらにも若いさやを食べるサヤ用と、豆を食べる子実(種実)用があります。サヤ用はさやが柔らかく野菜として用いられ、子実用はさやが硬く種子を煮豆、あんなどの加工原料とします。さらに、それぞれが蔓性(つるがあるという意味)と矮性(小さいという意味)に分けられます。矮性のインゲンマメとササゲにはつるがありません。

サヤ用インゲンマメであるサヤインゲンには「ケンタッキー・ワンダー」「モロッコいんげん」「平ざやいんげん」などの種類があります。ケンタッキー・ワンダーは、日本に馴化したものは「どじょういんげん」「尺五寸」と呼ばれ、つるあり、まるざやの代表的な品種です。スーパーでよく見かけるのはこの品種です。柔らかく独自の香りで味がよいとされます。

ささげには「十六ささげ」「三尺(さんじゃく)ささげ」「金時ささげ」「あきしまささげ」「姫ささげ」「柊野(ひいらぎの)ささげ」などがあります。十六ささげは愛知県特産で長さが20cmにもなり豆の数が16個であることからこのように名付けられました。十六ささげの種子は味が悪いので食用されず、さやを食べます。

いんげんとささげの違い③用途・使い方

サヤ用インゲンマメであるサヤインゲンは緑色を活かして各種の料理に使われます。柔らかく煮崩れしないので煮物はじめ、胡麻和えや揚げ物、炒め物に適しています。また、サヤインゲン自体を味わう料理の他に、色を目的に使われることも多く、スープやシチューなどの青みや五目寿司の彩りとして用いられます。フランス料理ではソテーにして肉料理の付け合せとしてよく使われます。サヤ用ササゲはサヤインゲンと同じ使い方ができます。ただし、サヤ用ササゲはサヤインゲンに比べてやや味が劣ります。サヤ用ササゲは東南アジアでよく食されます。

種実用インゲンマメは、甘納豆やあんなどの和菓子の原料として使われます。特に手亡などの白いんげんは白あんの原料として多用されます。種実用ササゲも同じく甘納豆やあんなどの和菓子の原料として使われる他、吸水による表皮の損傷が小豆(あずき)より少ないので、小豆の代わりに赤飯に使われます(種実用インゲンマメを赤飯に使うことはしません)。種実用ササゲは海外での利用も多く、アフリカではスープに、インドでは煮込み、東南アジアでは煮豆などにして食されます。

いんげんとささげの違い④栄養

いんげんとささげは含まれる栄養素にほどんど違いはありません。ですので、ここではどちらの野菜にも比較的豊富に含まれる栄養素とその効能を解説します。

たんぱく質

タンパク質は炭水化物・脂質と並び三大栄養素と呼ばれています。人間の筋肉や臓器、体内の調整に役立っているホルモンの材料となるだけでなく、エネルギー源にもなっています。主にアミノ酸によって構成されています。さやいんげんには必須アミノ酸9種類がすべて含まれています。

メチオニン:アレルギーを引き起こすヒスタミンの働きを抑えます。セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなど、うつ病を改善させる作用を持つ脳内物質の材料となるため、記憶力の向上や、認知症の予防・改善といった脳の活性のサポートをします。また老化防止、髪の毛の健康(薄毛、抜け毛の予防)にも良いといわれています。過剰摂取は動脈硬化を促進するため注意が必要です。

スレオニン:成長促進、肝臓の脂肪蓄積を抑制する働きがあります。また胃酸分泌のバランス調整により胃炎予防、食欲増進、肌の潤いを保つ天然保湿成分(NMF)にも存在するため美肌にも欠かせないアミノ酸。

バリン:BCAA(分岐鎖アミノ酸)のうちのひとつで、筋肉修復や筋肉合成の働きがあるアミノ酸。また、エラスチンの材料にもなるため、肌のハリを保つ働きがあります。更には肝硬変の症状を緩和させるために用いられることもあります。

トリプトファン:脳に運ばれると、神経伝達物質であるセロトニンをつくる原料になり、ビタミンB6やナイアシン、マグネシウムと一緒に合成されます。セロトニンには寝つきを改善する効果や、興奮を抑えて精神を安定させる働きがあり、不足すると睡眠障害や不安感が現れます。やる気やホルモン調整にかかわるドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質をつくるための「スイッチ」としてチロシンというアミノ酸と一緒に働きます。

フェニルアラニン:チロシンを経て脳内神経伝達物質ドーパミンやノルアドレナリンの材料になります。また紫外線から肌を守る「メラニン」の材料にもなる必須アミノ酸です。

ロイシン:BCAAのうちのひとつで、筋肉疲労や筋肉グリコーゲンの合成の働きがあるアミノ酸。また、肝臓の機能の向上、血糖コントロール、酵素活性の働きもあります。

イソロイシン:BCAAのうちのひとつで、疲労回復や筋肉合成の働きがあるアミノ酸。また、甲状腺ホルモンの分泌も促すため成長促進作用があるといわれています。また興奮系の神経伝達物質の材料となるため、集中力を高めます。また神経の働きをサポートする役割を持つため、脳から出された指令を素早く末端組織に伝達し、判断力や反射速度を上げる働きもあります。さらに糖尿病に効果があることもわかっており、摂取した糖質が吸収された後に筋肉へ取り込まれることを促進することで、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。

リジン(リシン):脂肪をエネルギーに変換することを促進する「カルニチン」の材料になりますので、ダイエットには欠かせないアミノ酸です。また、リジンは糖質をエネルギーに変換することをスムーズにする働きがあるので、集中力向上をサポートします。

ヒスチジン:アレルギーに関わる「ヒスタミン」の材料になります。また幼児が不足すると湿疹ができやすくなります。ヘモグロビンに多く含まれているので、不足すると貧血になる可能性があります。

β-カロテン

いんげんとささげはβ-カロテンが豊富に含まれます。β-カロテン体内でビタミンAに変換されます。青ピーマンと同じくらい含まれており、食べやすさを考えるといんげん・スナップエンドウの方が多く摂取できます。

β-カロテンは、皮膚や喉などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあり、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐ事で免疫力をアップし病気にかかりにくくなります。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング作用があります。亜鉛が補酵素に入ると、β-カロテンがレチナールへ、さらにレチナールにナイアシンが結合することで体内に作用します。

ビタミンAとしての働きを促すにはミネラルの亜鉛、ビタミンB群のナイアシンも必要になります。変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあるため健康に保ちます。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。また皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。β-カロテンは必要量のみビタミンAに変換されるので、過剰症の心配はありません。

ビタミンB1

日本人が不足しがちなビタミンB1がいんげんとささげには含まれています。

ビタミンB1は糖質がエネルギーに変換されるのをサポートする栄養素です。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があるといわれています。

昔、日本人の主食は精白米ではなく玄米で、その玄米にはビタミンB1が含まれていたために、意識していなくても摂取することができました。しかし、昨今ではビタミンB1が豊富に含まれている米ぬかの部分が、精白米にする段階でほとんど取り除かれてしまいます。他にもお菓子やジュースなどの過剰摂取でビタミンB1は不足するとも言われているため、積極的に摂取したい栄養素です。

ビタミンC

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成するのに必要不可欠な栄養素です。身体を作っているたんぱく質の30%がコラーゲンで、細胞と細胞を繋ぐ接着剤のような役割を果たしており、皮膚や血管、筋肉、骨などを丈夫にします。また、ビタミンCはシミのもとになるメラニン色素の生成を抑えたり、肌に弾力やハリをもたらすため、美肌づくりにも重要な栄養素です。

さらに、ビタミンCの抗酸化力はトップクラスですので、細胞を酸化から守り老化や生活習慣病の予防にもなります。白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。
さらには抗ストレスビタミンと言われているように、ストレス時に副腎に働きかけてアドレナリンの分泌を促す作用もあり、ストレスを撃退します。

多くの動物が体内でビタミンCを合成することができますが、人間は合成に必要な酵素がないため食品から摂取するしかありません。ビタミンCは吸収率が高いですが、一定量を超えると吸収されないまま排出されてしまいます。1日100〜200mg程度摂取すると吸収率は80〜90%と高いですが、1g以上摂取すると50%以下に低下します。また喫煙者はビタミンCの消費が激しいので、一般成人の2倍は摂ることをおすすめします。

カリウム

カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など、様々な効果があります。さらに腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保ちます。そのため、高血圧の予防になるミネラルの一つです。また心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあります。

カリウムは水に溶けやすい性質があり、葉菜類は茹でると50%以上が失われてしまうのでスープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしナトリウムを摂りすぎないよう薄味にしましょう。

カルシウム

体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨も新陳代謝を繰り返しており、古い骨を壊しては新しい骨をつくり、なんと1年間で20〜30%が新しい骨に生まれ変わっています。この骨の代謝にカルシウムは深く関わり骨の健康を保っています。そのためカルシウムが不足すると、骨が弱くなり、やがて骨粗鬆症を招きます。ビタミンKがカルシウムの吸収を助けるので、一緒に摂取することで骨粗しょう症の予防も期待できます。

残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉などに広く存在し大切な情報の伝達を行っています。それによって血液中のカルシウム濃度が常に一定に保たれています。機能カルシウムはこの細胞内外の濃度の差を利用して、血液の凝固や酵素の活性化、ホルモンや神経伝達物質の放出をしています。さらには神経の興奮を抑え精神を安定させたり、筋肉を収縮させたりする働きもあり、筋肉のなめらかな動きをサポートしています。そのため、カルシウム不足でこむら返りを起こすことがあります。