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吉野葛と葛粉の違い。原料・製法・産地・用途を比較

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吉野葛と葛粉の違い。原料・製法・産地・用途を比較

吉野葛と葛粉の違いについて解説します。

吉野葛と葛粉の違い

吉野葛と葛粉は、どちらもマメ科植物クズの根から得られるでんぷんを原料に作るでんぷん粉の一種です。

一般的にスーパーで「葛粉」という商品名で販売されているものは、クズのでんぷんだけではなく、甘藷澱粉(かんしょでんぷん)や馬鈴薯澱粉(ばれいしょでんぷん)、コーンスターチなどが配合されたものです。葛粉のみを使用している場合は「本葛粉(本葛)」といい、製造しているメーカーは様々あります。

一方、吉野葛は奈良県吉野地方産の葛粉のことをいいます。

吉野地方は、冬の寒さが厳しい寒冷な土地であり良質な水があることなど質の良い葛粉の生産に適している地域です。吉野地方の伝統的な製法と質の良さを守るため、奈良県吉野地方またはその近辺で精製された葛粉のみ「吉野葛」または「吉野本葛」と表示することができるよう商標登録をしています。

吉野葛は、一般的にスーパーなどで販売されている葛粉と同じように吉野地方で作られた葛粉に甘藷澱粉などを合わせたものです。吉野地方で作られた葛粉のみを使用しているものは「吉野本葛」といいます。

一般的にスーパーなどで販売されている葛粉と吉野葛を比較すると、吉野葛のほうが質がよくなめらかな口あたりの料理や菓子が作られるため高級料理亭でも使われています。

葛粉とは

葛粉の原料は、マメ科植物クズの根から得られるでんぷんです。

クズのでんぷんは掘り出すのに手間がかかり、高価であるため近年は甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉、コーンスターチなどが加えられているものが「葛粉」という商品名で販売されています。

甘藷澱粉とは、さつま芋のでんぷんを沈殿させ乾燥させて粉状にしたたものです。「甘藷」はさつま芋の別名です。普段口にしているさつま芋よりも一回り大きく、でんぶんを多く含んでいるさつま芋を原料にしています。 

馬鈴薯澱粉とは、じゃが芋のでんぷんを沈殿させ乾燥さて粉状にしたものです。「馬鈴薯」はじゃが芋の別名です。じゃが芋の形が馬の首につける鈴に似ていたため「馬鈴薯」と呼ばれるようになったといわれています。国内で作られる馬鈴薯でん粉は、北海道で生産されたじゃが芋のみを原料として製造されています。

コーンスターチとは、トウモロコシのんぷんを乾燥させて粉状にしたものです。コーンスターチに使われるトウモロコシは、一般的によく食されるスイートコーン(甘味種)ではなく、デントコーン(馬歯種)という品種です。

葛粉の種類

くず粉

葛粉は「くず粉」と表記されることもあります。

「葛餅」と「くず餅」の場合は、「葛餅」はくず粉を使って作る関西の銘菓を指し、「くず餅(久寿餅)」は小麦粉のでんぷんを使って作る関東の銘菓を指すという違いがありますが、「くず粉」と「葛粉」にはこのような違いはありません。

本葛(本葛粉)

本葛(ほんくず)は、クズの根から得られるでんぷんを乾燥させて粉状にしたもののみを使用したでんぷん粉の一種です。

葛粉が甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉、コンスターチなどを合わせているものを指すのに対して、本葛は混じりけのない100%葛粉を指します。「本葛」は「くず粉」の別名ではありません。

クズの根から取れるくず粉の量は7~10%で、100キロの根であれば7〜10kgほどです。そのため本葛は「白い金」ともいわれ、100%くず粉の本葛は1kg7000円と大変高価です。

本葛は葛粉よりもなめらかで口当たりが良く、苦味を伴うのが大きな特徴です。また、葛は漢方「葛根湯(かっこんとう)」にも使われていることからもわかるように薬効があり、イソフラボンなどの栄養素をくず粉よりも多く含んでいます。そのため、葛湯として病人や小児の栄養食に用いる場合には葛粉よりも本葛を使用するのが良いです。

ただし、近年は本葛が50〜70%入れば本葛と表記できるため本葛も甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉、コーンスターチなどが混入した製品があります。本葛を求めている場合は原材料を必ず確認してから購入しましょう。

吉野葛

吉野葛(よしのくず)とは、奈良県吉野地方産の葛粉です。

吉野地方は、冬の寒さが厳しい寒冷な土地であり良質な水があることなど質の良い葛粉の生産に適している地域であり、厳寒期に葛根のでんぷんを冷水に何回も晒していく「吉野ざらし」と呼ばれる伝統の製法によって沈殿させて作られたくず粉は品質が良いことで有名です。吉野地方の伝統的な製法と質の良さを守るため、奈良県吉野地方またはその近辺で精製された本葛または葛のみ「吉野葛」または「吉野本葛」と表示することができるよう商標登録をしています。

吉野葛は、葛粉と同じように吉野地方で作られた葛粉に甘藷澱粉を合わせたものです。原料は葛粉と同じですが、吉野葛のほうが質がよくなめらかな口あたりの料理や和菓子を作ることができます。

吉野本葛は、本葛と同じように吉野地方で作られた葛粉のみを使用した混じり気のないものです。

ちなみに有名な葛粉には奈良県の吉野葛の他にも、福岡県の筑前葛(ちくぜんくず)や、三重県の伊勢葛(いせくず)、福井県の若狭葛(わかさくず)などがあります。