葛粉と片栗粉の違い。原料・製法・使い方。代用はできる？

葛粉と片栗粉の違い①原料

葛粉と片栗粉は、どちらも植物から得られるでんぷんを原料に作られるてんぷん粉の一種です。

葛粉

葛粉の原料はマメ科植物クズの根から得られるでんぷんです。

近年は「葛粉」という名称で販売されている商品には、クズのでんぷんだけではなく、甘藷澱粉（かんしょでんぷん）や馬鈴薯澱粉（ばれいしょでんぷん）、コーンスターチなどが加えられていることが多いです。

葛粉以外のでんぷん粉と合わせたものが「葛粉」、クズのでんぷんのみを使用したものが「本葛粉（本葛）」という製品名で販売されています。

片栗粉

片栗粉の原料はじゃがいものでんぷんです。

そのため「馬鈴薯澱粉（ばれいしょでんこ）」ともいわれます。

その昔「カタクリ（片栗）」と呼ばれるユリ科植物の鱗茎（球根）からとれるデンプンを原料にして作られていたので「片栗粉」という名前がついています。しかし、カタクリが減少したため明治以降にジャガイモが大量栽培されるようになると、原材料はじゃがいものでんぷんに切り替わっていきました。

葛粉と片栗粉の違い②製造方法

葛粉

葛粉は、クズの根っこの部分を掘り起こし、粉砕して水の中でもみだし根の中に含まれているでんぷんを沈殿させます。その後、水に晒してアク抜きし沈殿させる工程を何度も繰り返しで不純物を取り除き、適当な大きさに砕いて乾燥させるという製造方法で作られています。

上述したように近年は葛粉以外のでんぷん粉を合わせて作られることも多く、製造メーカーによって配合量はそれぞれ異なります。

片栗粉

片栗粉は、まず原料のじゃがいもを水でよく洗って汚れを落としたあと、洗ったじゃが芋をすりつぶして液体状にし、繊維質や不純物を取り除きます。その後洗浄し（～3回繰り返す）、しばらく寝かせて下に溜まった澱粉（でんぷん）を取り出し乾燥させるという方法で製造されています。

片栗粉も葛粉と同様にでんぷんを取り出すのには手間がかかりますが、原料がじゃがいもであるため比較的製造は簡単であるといえます。

葛粉と片栗粉片栗粉の違い③見た目・触感

葛粉

葛粉の見た目は、灰色がかった白色です。もとのクズからとれるでんぷんは灰色をしていて、葛粉の割合が多ければ多いほど灰色に近くなります。反対に、葛粉よりも甘藷澱粉などの割合が多いと白色になります。

葛粉は大きな固まりができていて、ザクザクした触感です。

片栗粉

片栗粉の見た目は真っ白です。葛粉のように大きな塊などはなく、さらさらしているというよりはしっとりっとしています。

手で触るとギュっとした感触があり、指跡が残ります。

葛粉と片栗粉の違い④栄養素・カロリー

葛粉

葛粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。

• たんぱく質…0.2g

• 脂質…0.2g

• 炭水化物…85.6g

• ナトリウム…2mg

• カリウム…2mg

• カルシウム…18mg

• マグネシウム…3mg

• リン …12mg

• 鉄…2.0mg

• 亜鉛…微量

• 銅…0.02mg

• マンガン…0.02mg

葛粉100gのカロリーは、347kcalです。これは、お茶碗大盛りのご飯（200g）のカロリーよりも高いです。糖質量は炭水化物から食物繊維を引いた値ですが、葛粉に食物繊維はほとんど含まれていないので、葛粉の糖質量は約85gです。これは、うどん1玉（230g）の糖質量の約2倍です。

葛粉には、様々な効能があります。例えば、クズにはイソフラボンが多く含まれています。イソフラボンとは大豆胚芽に多く含まれるポリフェノールの一種です。イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、更年期や月経前のつらい症状を和らげたり 肌荒れを改善するなどの美容効果や肩こり改善、イライラを抑えるなど精神を安定させるなどの効果が期待できます。ただし、葛粉には葛粉以外のでんぷん粉も配合されているので、葛の効能を目的とするのであれば葛粉の配合量が多いものや本葛粉を選びましょう。

片栗粉

片栗粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。

• たんぱく質…0.1g

• 脂質…0.1g

• 炭水化物…81.6g

• ナトリウム…2mg

• カリウム…34mg

• カルシウム…10mg

• マグネシウム…6mg

• リン …40mg

• 鉄…0.6mg

• 亜鉛…微量

• 銅…0.03mg

• マンガン…0mg

片栗粉100gあたりのカロリーは338kcalです。

片栗粉のほうが葛粉と比較してカロリーは低いですが、そこまで大きな差はありません。

また、片栗粉には葛粉とは異なりイソフラボンなどは含まれていません。

葛粉と片栗粉の違い⑤価格

葛粉

葛粉の値段は、葛粉の配合量によって異なりますが、130g180円〜200円程です。葛粉の配合量が多ければ多いほど値段は高くなります。

ちなみに、100%くず粉の本葛粉は1kg7000円と大変高価です。そのため本葛は「白い金」ともいわれています。

片栗粉

片栗粉は200gで120円〜200円程で売られています。スーパーはもちろんのことコンビニでも売られていることが多いので、手軽に購入することができます。

葛粉と片栗粉の違い⑥用途

葛粉

葛湯

葛湯は、葛粉をお湯で溶いた飲み物です。葛粉を葛湯にすることで、身体を温めることができる他、風邪のひきはじめの症状改善など様々な効果が期待できます。

和菓子

葛粉は、葛餅や水まんじゅう、葛切り、葛焼きなどの和菓子を作ることができます。

葛餅は、くず粉に砂糖と水を加え、加熱してできた透明な餅にきな粉と黒蜜をかけたものです。葛餅に餡（あん）を包むと透明で涼しげな水まんじゅうができます。

ちなみに、主に関東で作られるグルテンを分離させた後の浮き粉を発酵させた「くず餅（久寿餅）」と名前が同じであるため混同されやすいですが、葛餅とくず餅は別物です。くず餅の見た目は白く、葛餅よりも固い食感で独特の風味があります。

葛切りは、くず粉を水で溶かし型に入れてから加熱し後板状に固め、うどんのように細長く切ったものです。蜜をかけてデザートとして食べたり、乾燥させて鍋の具材として食べることができます。

葛焼きは、葛粉と餡（あん）を合わせて練った生地の表面を焼いて仕上げる京都の銘菓です。

片栗粉

とろみ付け

片栗粉は料理にとろみを付けるのに使われることが多いです。

片栗粉のとろみは特に粘度が高いのが特徴で、食材に煮汁をよく絡ませるために使われることもあります。また、片栗粉でとろみをつけると料理の温度が下がるのが遅くなるため保温効果があります。

揚げ物の衣

片栗粉は、揚げ物の衣としても使われます。水気が多く、表面が柔らかい鶏肉などの動物性食品を揚げる場合は表面にでんぷん粉である片栗粉をまぶすことで、水分を吸収すると共にうまみ成分の損失を防ぐことができます。

片栗粉を衣に使った唐揚げは、カリっとした歯ごたえがあります。ちなみに片栗粉のみを使って鶏肉を揚げたものは「竜田揚げ」といいます。小麦粉で唐揚げよりも見た目が白っぽくなります。

唐揚げだけではなく、天ぷらの衣としても使うことができます。

お肉を柔らかくする

生姜焼きなどを作るときにお肉に片栗粉をまぶしてから焼くと、お肉が柔らかくなります。でんぷんには高い水分保持力があるため、片栗粉を肉にまぶすことによって焼いたりする過程で肉から水分が蒸発してしまうのを防ぐことができ、しっとりと柔らかく仕上げることができます。また、片栗粉をまぶしておくことで調味料がお肉にうまく絡むようにもなります。

つなぎ

片栗粉は、肉団子を作るときなどのつなぎとしても使うことができます。片栗粉をつなぎとして入れると、お肉をまとめることができるだけではなく、加熱した後もしっかり水分を保持してくれるのでふっくらとした仕上がりになります。

例えば、ハンバーグを作るときのつなぎにはパン粉を使うことが多いですが片栗粉で代用することが可能です。

葛粉と片栗粉はお互いに代用できる？

葛粉は片栗粉で代用できないこともある

水まんじゅうなどの和菓子を作るときに使う葛粉の代用品として、片栗粉を使うことはできます。ただし、葛粉と片栗粉は原料が異なるでんぷん粉なので、全く同じに仕上がるわけではありません。食感などに違いが出ます。葛粉を使うときと片栗粉を使うときとでは、水分量などが異なる場合があるので、注意しましょう。

一方、葛湯を作りたい時に片栗粉で代用することはできません。なぜなら、片栗粉はじゃがいものでんぷんを原料に作るでんぷん粉であり、葛粉のように薬効はないためです。

片栗粉は葛粉で代用できる

片栗粉を葛粉で代用することはできます。例えば、料理にとろみをつけたい場合などです。葛粉にも水を加え加熱するととろみがでる性質があります。ただし、片栗粉ほどしっかりとしたとろみを付けるのは難しいです。また、葛粉の苦味が出ることもあるので注意が必要です。

また、葛粉は揚げ物の衣に使う片栗粉の代用にもなります。片栗粉と同じでんぷん粉の一種なので、薄力粉を衣にしたときとは異なるカリっとした歯ごたえのある衣に仕上げることができます。