この記事では、テキーラの母とも呼ばれるお酒「メスカル」とテキーラの違いを解説します。
メキシコ原産のテキーラは日本でもバーなどでカクテルのベースやショットで飲まれており馴染みのあるお酒ですが、メスカルは聞き馴染みのない方も多いでしょう。
テキーラとメスカルのどちらもアガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られるメキシコ発祥の蒸留酒で、テキーラは、「テキーラ規制委員会」が発足し、テキーラの基準が定められた1994年までは、あくまでもメスカルの一種という位置づけでした。
アガベを原料としたお酒は、アガベの一種であるアガベ・アトロビレンスの搾り汁を発酵させた醸造酒の「プルケ(Pulque)」が西暦200年頃から造られていたと言われています。そして、16世紀にはアメリカ大陸の発見とともに蒸留技術を持ち込んだスペイン人によって「メスカル(Mezcal)」というアガベを原料とするスピリッツが作られており、こちらの方がテキーラよりも古い起源を持ちます。
テキーラの起源は、18世紀半ばのスペイン統治時代のメキシコまでさかのぼります。この頃にメキシコ西部のテキーラ村の近くで起きた山火事で、焦げたアガベから甘いチョコレート色の汁が出ていることに村人が偶然気付き、その後スペイン人がこの汁を発酵させて蒸留してみると美味しいスピリッツが出来上がったため、テキーラ村に蒸留所が建てられたのがテキーラの起源かつ語源とされています。
テキーラは、テキーラベースのカクテル「マルガリータ」の1949年の全米カクテルコンテストでの入選、1957年のラテン・リズムの楽曲「テキーラ」の大ヒットや、1968年のメキシコオリンピックなどで世界中で知られるようになり、現在ではウォッカ、ジン、ラム酒と並び、4大スピリッツとして世界で愛されています。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ジン以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ラム、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
テキーラの原料は認定機関「テキーラ規制委員会」の規則によって厳格に決められています。テキーラの主原料に使用できるのは、テキーラ村を中心とする特定地域で栽培された「アガベ・アスール・テキラーナ(英名:ブルーアガベ)」のみとされています。
100%ブルーアガベから造られるテキーラを「プレミアムテキーラ」、原料の51%以上がブルーアガベで、蜂蜜や砂糖(サトウキビ)などの副原料も使われているテキーラを「ミクストテキーラ(ただのテキーラとも呼ばれる)」と区別しています。市場に流通しているテキーラのほとんどは後者の「ミクストテキーラ」です。
なお、アガベは収穫までに最低でも6年かかることから、テキーラは造るのに手間がかかる貴重なお酒としても知られています。
メスカルもテキーラと同様、1994年に産地や原料などの基準が定められました(そのため、現在アガベから造られるスピリッツは基本的に「アガベ・スピリッツ」と呼ばれています)。
アガベには150〜200の品種がありますが、メスカルはこのうちの約50種類を主原料と定めており、品種の違いなどによる風味の違いを感じることができます。産地もテキーラよりも広い地域が指定されており、メキシコ国内の10州で生産されています。
テキーラは、原料のブルーアガベの大きな球根のような茎の部分(ピニャ)から糖分を抽出したものを発酵・蒸留し、熟成させることで造られています。蒸留の回数は最低2回と定められています。
テキーラは熟成期間や、熟成に使う樽の種類によって5つの種類(ブランコ(Blanco)、ホーベン(Joven)、レポサド(Reposado)、アネホ(Anejo)、エクストラ・アネホ(Extra Anejo))に分けられています。熟成期間が短いものほどすっきりとキレのある味わいと苦みがあり、長いものほどトロっとした甘みや旨味が感じられ、アルコールの苦みも薄くなります。
メスカルの基本的な製法はテキーラとほぼ同様ですが、大きな違いとしては、糖分抽出の際の、テキーラ造りでは蒸気による加熱を行うのに対し、メスカル造りでは直火によって加熱されており、風味に違いが生じています。
また、メスカルは基本的に樽熟成を行われない事が多く、アガベ由来のボタニカルな風味を楽しむのが主流となっています。また、瓶に芋虫が入った製品がありますが、これは計り売りしていたころに生きたままの芋虫を入れ、芋虫が即死することで高い度数を証明したころの名残と言われています。
テキーラは、アガベのフルーティーでフレッシュな香りとともに、甘い香りが混ざり合った濃厚なテイストが特徴ですが、熟成度の具合いによって味や香りが変化します。
熟成期間が短いものほどすっきりとキレのある味わいと苦みがあり、長いものほどトロっとした甘みや旨味が感じられ、アルコールの苦みも薄くなります。
アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。
メスカルはテキーラと似た味わいではありますが、原料のアガベをテキーラのような蒸し焼きではなく直火で焼いているため、テキーラよりもスモーキーな味わいが特徴です。
また、前述の通り樽熟成を行わないため、原料のアガベ由来のスッキリとしたボタニカルな味わいが特徴的です。
メスカルも認定機関によって「35~55度」と度数が定められていますが、テキーラとは異なり、出来上がったものに水を加えることがないため、40〜50度とテキーラよりもやや高めの製品が多くなっています。
日本ではバーなどでショットとして嗜まれることが多いほか、カクテルの材料としてよく知られていますが、現地ではストレートで飲まれることが多く、ライムを口へ絞りながら楽しみ、最後にグラスにまぶした食塩を舐めるのが正統な飲み方とされています。
カクテルでは「マルガリータ」「テキーラ・サンライズ」などが有名で、原料のアガベの甘みはフルーツ系の相性が良いことでも知られています。
メスカルの一大消費国はアメリカですが、アメリカではもっぱらストレートで飲まれており、メスカルはウイスキーやブランデーのように少しずつ味わいながら飲むのが正しい飲み方と言われています。
なお、メスカルをベースとしたカクテルもバーなどで嗜まれています。日本にもメスカルを扱うバーがあるようです。
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