カリブ海原産のラム酒ととリキュールは何が違うのでしょうか。この記事では、ラム酒とリキュールのそれぞれについて解説します。
ラム酒は「蒸留酒(スピリッツ)」の一種で、リキュールは「混成酒」というお酒の種類です。お酒は大きく「醸造酒」、「蒸留酒(スピリッツ)」、「混成酒(リキュール)」の3種類に分けられます。
醸造酒とは、穀物や果実などの原料を酵母によってアルコール発酵させて造られるお酒で、世界最古のお酒と言われています。
ビール、ワイン、日本酒、紹興酒などが醸造酒に分類されます。
醸造酒のアルコール度数は、原料の糖分がアルコールに変わってしまうと発酵が止まるため、基本的にアルコール度数は20度以下となっています。
蒸留酒とは、醸造酒を加熱して造られるお酒で、スピリッツ(spirits)とも呼ばれます。蒸留によって純度の高いエタノールを生成する製造方法のため、アルコール度数が高いのが特徴です。
蒸留酒には、ブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラなどがあります。
混成酒は、蒸留酒を原料として、薬草や果物で風味をつけたお酒で、再製酒とも呼ばれます。日本で「リキュール」と呼ばれるお酒の多くは混成酒で、日本で一番有名なのは梅酒でしょう。近年では日本酒などの醸造酒をベースとしたリキュールも人気です。
醸造酒や蒸留酒に比べ、色鮮やかで、多種多様な味わいのお酒が多いのが特徴です。
ラム酒はサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ラム酒以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
ラム酒は、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで海賊たちがラム酒を飲んでいたことで人気が急上昇しました。
甘い香りや味わいが特徴ですが、製法でテイストが大きく異なっています。最新技術で蒸留され、熟成期間が短く、濾過されているものは他のスピリッツ(ウォッカなど)に近いすっきりとしたテイストです。伝統的な方法で蒸留され、オークの樽でじっくりと熟成されたものは色も褐色で、味わいもウイスキーやブランデーに近いまろやかなテイストになります。
飲み方・使い方は多岐にわたり、ストレートやロックで飲んだり、カクテルのベースとして用いたりする以外にも、ケーキ、タルトなど焼き菓子、紅茶の風味づけにも使用されています。レーズンをラムに漬け込んだ「ラムレーズン」がよく知られていますよね。
蒸留酒なので高めのアルコール度数となっており、基本的に40~50度のアルコール度数で売られている製品が多くなっていますが、飲む人の好みに合わせて37度前後、75.5度のラム酒も販売されています。
いずれも原材料を発酵・蒸留して造られるという点でラム酒と同じですが、原材料や製造の過程に違いがあります。
ウォッカは、大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥のお酒です。ウォッカは氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
ウォッカは製造過程において、白樺の木炭などのフィルターで濾過する工程があり、これによって雑味が取り除かれるため、無味無臭ですっきりとした味わい、まろやかな爽快感が特徴的で、世界4大スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)の中では最も癖のない風味と言われています。
ジンは西ヨーロッパで造られた蒸留酒で、元々は薬用酒として造られたお酒です。カクテルベースとしてよく使われる蒸留酒で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。日本でも近年人気が高まっており、CMなどで見かける機会が増えていますよね。
基本的な原料・製法はウォッカとほとんど同じですが、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスやハーブで香りづけするため、スパイシーな独特の風味があります。
テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。味は製造方法によって様々で、まろやかなものから苦みや渋みの強いものまでありますよ。
日本ではバーなどでショットとして嗜まれることが多いほか、カクテルの材料としてよく知られていますが、現地ではストレートで飲まれることが多く、ライムを口へ絞りながら楽しみ、最後にグラスにまぶした食塩を舐めるのが正統な飲み方とされています。
有名なリキュールをいくつか紹介します。
梅酒は、ホワイトリカーなどの蒸留酒に梅と砂糖を漬け込んで造られるお酒です。日本では家庭でもよく作られており、甘くて飲みやすいことから人気の高いお酒です。ちなみに日本国内では、家庭で梅酒を作る場合、基本的にアルコール度数20度以上の蒸留酒(ホワイトリカー、ウォッカ、焼酎など)に付け込む必要があり、そのほかのお酒(日本酒、みりんなど)で漬け込むと、「製造行為」とみなされて酒税法違反となるので要注意です。
飲み方は、ロックやストレート、ソーダ割りなど、様々な嗜み方がされています。
「カシス・リキュール」は、その名の通りカシス(和名:クロスグリ)から造られるリキュールで、生産の大半を占めるフランスでは1Lあたり400g以上の糖を含むものだけが「クレーム・ド・カシス」と呼ばれており、一番有名な銘柄が「ルジェ・クレーム・ド・カシス」です。
飲み方は、砂糖を大量に含んでいるためストレートやロックでの飲み方はされず、炭酸水やジュースなどで割って飲むのが一般的です。有名な「カシス・オレンジ」「キール」などのカシス系のカクテルベースとして使用されています。
「カルーア」は、コーヒー豆から造られる「コーヒー・リキュール」の一種で、日本でも有名な銘柄です。カルーアの生産地はメキシコで、焙煎したコーヒー豆とサトウキビの蒸留酒をベースに造られており、芳醇なコーヒーの味わいと、バニラやカラメルの風味も感じられる、コクのある甘みが特徴的です。
飲み方は、カクテルの割材としての使用が多く、その名も冠したカクテル「カルーア・ミルク」をはじめ、ウォッカベースのカクテル「ブラック・ルシアン」などがあります。バニラアイスにかけても美味しいですよ。
「カンパリ」は、鮮やかな赤の見た目が特徴的なイタリア産のリキュールです。製造には60種類以上のハーブやスパイスが使われていると言われており、独特な苦みや甘みを持つ風味が特徴的です。
飲み方は、ソーダやジュースで割って飲むのが一般的で、オレンジジュースで割った「カンパリ・オレンジ」、ソーダ割りの「カンパリ・ソーダ」が有名です。他にも、ジンベースの有名なカクテル「ネグローニ」などに使われています。
「アブサン」は、ニガヨモギなどの薬草から造られる薄い緑色のリキュールで、銘柄の1つである「ぺルノー」という名前で呼ばれることもあります。独特の苦みや香りがあり、好き嫌いの分かれるお酒です。
ニガヨモギに含まれるツヨン(ツジョン)の持つ幻覚などの向精神作用や中毒症状などによって、20世紀には多くの国で禁止・制限が課されていた歴史を持つ、いわくつきのお酒でもあります。ただし現在では、ツヨンの持つ作用ではなく、単なるアルコールの過剰摂取や、安価なアブサンに含まれていた化学物質によるものというのが定説になっており、ツヨンの含有量が一定以下であることを条件にWHO(世界保健機関)が製造を許可しており、世界中で愛好されています。
飲み方は、「アブサンファウンテン」という専用の器具と角砂糖を使用した「ボヘミアンスタイル」という、アブサンの色の変化を楽しむストレートの飲み方が有名ですが、基本的にはカクテルの材料の一部として使われることが多いです。
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