強いお酒のウォッカと、お酒を飲む際によく聞くハイボールとの違いは?この記事では、ウォッカとハイボールについてそれぞれ解説します。
「ウォッカ」はロシア発祥の蒸留酒(スピリッツ)の一種で、「ハイボール」はウイスキーを炭酸水で割ったカクテルの名称です。ウォッカ、ハイボールのそれぞれについて詳しく解説します。
ウォッカは、大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥の蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。ウォッカはアルコール度数が40度と高く、氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
ウォッカは製造過程において、白樺の木炭などのフィルターで濾過する工程があり、これによって雑味が取り除かれるため、無味無臭ですっきりとした味わい、まろやかな爽快感が特徴的で、世界4大スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)の中では最も癖のない風味と言われています。
なお、クリアさが特徴的なウォッカですが、香りや味を加えた「フレーバードウォッカ」もあり、世界中で様々な味のウォッカが流通しています。
これらの特徴から、カクテルベースとして使われることが多いものの、ストレートやロックなど、様々な飲み方で嗜まれています。
ハイボールとは、「ウイスキーを炭酸水で割ったカクテル(ウイスキー・ソーダ)」のことです。ただし、時代の変遷とともに、ベースとなるお酒(スピリッツ、リキュールなど)を炭酸水やトニックウォーター、コーラなどの炭酸飲料で割ったカクテルスタイルをハイボールと呼ぶようになりました。よく聞く「チューハイ」も「焼酎ハイボール」の略です。
語源は、いくつかの説がありますが、スコットランドのゴルフ場で当時珍しかったウイスキーのソーダ割りを試している所へ高々と打ち上げられたボールが飛び込んできて、「これがハイボールだ!」と言ったという説が一番有名なようです。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ウォッカ以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ジン、ラム、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
いずれも原材料を発酵・蒸留して造られるという点でウォッカと同じですが、原材料や製造の過程に違いがあります。
ジンは西ヨーロッパで造られた蒸留酒で、元々は薬用酒として造られたお酒です。カクテルベースとしてよく使われる蒸留酒で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。日本でも近年人気が高まっており、CMなどで見かける機会が増えていますよね。
基本的な原料・製法はウォッカとほとんど同じですが、ジンは製造の過程において濾過が行われないことが多く、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスや、ハーブで香りづけするため、独特の風味があります。
ラムはサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒です。甘い香りと味わいが特徴的なお酒で、アルコール度数は40~50度の製品が多くなっています。
飲み方・使い方は多岐にわたり、ストレートやロックで飲んだり、カクテルのベース酒として用いたりする以外にも、ケーキ、タルトなど焼き菓子、紅茶の風味づけにも使用されています。レーズンをラムに漬け込んだ「ラムレーズン」がよく知られていますよね。
テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。味は製造方法によって様々で、まろやかなものから苦みや渋みの強いものまでありますよ。
日本ではバーなどでショットとして嗜まれることが多いほか、カクテルの材料としてよく知られていますが、現地ではストレートで飲まれることが多く、ライムを口へ絞りながら楽しみ、最後にグラスにまぶした食塩を舐めるのが正統な飲み方とされています。
「ハイボール」以外にも様々なカクテルスタイルがあります。代表的なものを紹介します。
「フィズ」は、ソーダ水の炭酸ガスが立てる音が「フィズ」と聞こえることが由来といわれるカクテルスタイルです。
起源...19世紀末のアメリカ
材料...スピリッツ、リキュール等+柑橘系の果汁(レモン、ライム)+砂糖+炭酸水
技法...シェイク・ビルド
グラス...タンブラー
代表的なカクテルに「ジン・フィズ」、「オレンジ・フィズ」、「パイナップル・フィズ」などがあります。
「コリンズ」は、フィズと同じ材料で作るカクテルスタイルですが、フィズよりも使用するグラスが大きく、一杯の量が多いのが特徴です。呼び名はカクテル「トム・コリンズ」を生んだとされるイギリス人のジョン・コリンズに由来します。
起源...19世紀半ばのイギリス
材料...スピリッツ+柑橘系の果汁+砂糖+炭酸水
技法...ビルド・シェイク
グラス...コリンズグラス
代表的なカクテルに「トム・コリンズ」、「ジョン・コリンズ」、「ラム・コリンズ」などがあります。
「リッキー」は、1883年にアメリカのワシントンD.C.にあったレストラン&バー『シューメーカー』で、常連客だったカーネル・ジョー・リッキー氏が考案したことに因んで名付けられたカクテルスタイルです。甘さ控えめでさっぱりと飲みやすいカクテルが多いですよ。
起源:1900年頃のアメリカ
材料:スピリッツ+ライムorレモン+炭酸水
技法:ビルド
グラス:タンブラー
代表的なカクテルに「ジン・リッキー」、「ラム・バック」、「ブランデー・バック」などがあります。
「バック」は、「雄鹿(buck)」を意味するカクテルスタイルで、「キックのある飲み物」という名前の由来通り、レモンの酸味とジンジャーエールのピリッとした味わいが楽しめます。
起源:20世紀初頭のイギリス
材料:スピリッツ+柑橘系の果汁(レモン)+ジンジャエール
技法:ビルド
グラス:タンブラー
代表的なカクテルに「ジン・バック」、「ラム・バック」、「ブランデー・バック」などがあります。
「クーラー」は、その名の通り、清涼感のある味わいで人気のカクテルが多いカクテルスタイルです。
起源:19世紀末のアメリカ
材料:スピリッツ、リキュール等+柑橘系の果汁+ジンジャエール等の炭酸飲料
技法:ビルド・シェイク
グラス:タンブラー
代表的なカクテルに「モスコー・ミュール」、「ボストン・クーラー」、「ワイン・クーラー」などがあります。
「サワー」は、「酸っぱい」を意味するカクテルスタイルです。アメリカでは炭酸水を使いませんが、炭酸水やシャンパンを使う国もあります。
起源:18世紀のイギリス
材料:スピリッツorリキュール等+柑橘系の果汁+砂糖+(卵白)+(炭酸水、シャンパン)
技法:シェイク
グラス:サワーグラス、カクテルグラス、オールドファッションドグラス(ロックグラス)
代表的なカクテルに「ウイスキー・サワー」、「ブランデー・サワー」などがあります。
「スリング」は、ドイツ語のシュリンゲン(schlingen/飲み込む)が名前の由来のカクテルスタイルで、いわゆる「水割り」に近いカクテルです。
起源:19世紀初頭のアメリカ
材料:スピリッツ+水+(甘み(砂糖、シロップ))
技法:ビルド・シェイク
グラス:タンブラー
代表的なカクテルに「ジン・スリング」、「ブランデー・スリング」があります。スリングの名を冠したカクテルでは「シンガポール・スリング」が一番有名ですが、レシピは現代的にアップデートされており、厳密にはスリングスタイルのカクテルではありません。
「ジュレップ」は、ベースとなるお酒とミントの葉、砂糖を使用する、爽やかな香りと甘味が特徴のカクテルスタイルです。ジュレップの語源はペルシャ語の「グルアーブ(gulab/グルはバラ、アーブは水)」と言われており、18世紀にアメリカに渡った際、ジュレップと訛り、現在までこの名称が使われています。
起源:18世紀末のアメリカ
材料:スピリッツ+ミント+砂糖+水または炭酸水
技法:ビルド
グラス:ジュレップカップ
氷:クラッシュアイス
代表的なものでは、バーボンウイスキーをベースにしたカクテル「ミント・ジュレップ」が有名で、アメリカのケンタッキーダービーの公式飲料として世界的に知られています。また、炭酸水を使わないレシピの「モヒート」はジュレップ・スタイルと呼ばれています。
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