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ごぼうは水にさらさなくてもOK?水さらしのデメリットを解説

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ごぼうは水にさらさなくてもOK?水さらしのデメリットを解説

ごぼうにはアクがあるため食べるときには水にさらしてアク抜きをする方が多いと思いますが、アク抜きをすることで水溶性の栄養素が流出したり風味が損なわれるなどのデメリットもあります。本記事ではごぼうの栄養や風味を損ねない水さらしの方法や調理法などを解説します。

ごぼうは水にさらさなくてもよい?

アクはあるが有害ではない

ごぼうにはアクがあります。アクとは苦味やエグみ、臭みの原因となり料理の味を落とす成分の総称です。

アクがある野菜はアク抜きをしてから調理をすることが多いですが、ごぼうの場合はアク抜きをせずに食べても問題ありません。なぜなら、ごぼうのアクになる成分はポリフェノールであり人体に有害な物質ではないためです。ポリフェノールは抗酸化作用などむしろ人体にとって良い影響をもたらす成分です。

例えばほうれん草やたけのこのアクになるのはシュウ酸と呼ばれる成分です。シュウ酸は苦味やエグみを感じさせるだけではなく、カルシウムと結合しシュウ酸カルシウムとなり結石の原因になるなど人体に害があるためアク抜きをしてから食べる必要があります。

変色を防ぐために水にさらす

ごぼうのアクとなるポリフェノールは、ごぼうに含まれているポリフェノールオキシターゼやペルオキシダーゼなどの酸化酵素や空気中の酸素によって酸化し赤くなる性質があり、時間がたつと茶色→黒とさらに変色していきます。

ポリフェノールの酸化による変色は腐敗しているわけではないので食べることができますが、料理の見た目が悪くなってしまうため変色を防ぐ目的で、水や酢水にさらしてアク抜きをすることがあります。

栄養・風味が失われるデメリットも

ごぼうのアク抜きには、苦味やエグみを抑えたり変色を防ぐメリットがある一方で、水溶性の栄養素が流出してしまうデメリットがあります。ごぼうに含まれている水溶性の栄養素には、水溶性の食物繊維イヌリンやカリウムなどがあります。

また、アク抜きをすることでごぼうの土臭さが軽減されますが、ごぼうそのものの風味が失われてしまいます。ごぼうの栄養価を下げたくない方や風味を楽しみたい方はアク抜きをせずに食べるのが良いです。上述したようにごぼうのアクは人体に害があるものではないので、アク抜きをせずに食べても大丈夫です。

栄養・風味を損ねない水さらしの方法

水にさらす時間は30秒

栄養や風味を損ねないためには、やはり長くつけすぎないことが大切です。水にさらす時間が長ければ長いほど水溶性の栄養素は流出してしまいますし、風味も落ちてしまいます。下ごしらえとしてごぼうを一晩つけるなどは、避けましょう。

水にさらす時間の目安は、風味を残したい場合は30秒程で大丈夫です。ごぼうの風味や苦味・エグみが気になる場合は5分ほどしっかりとつけておくのが良いです。

米のとぎ汁にさらす

カットしたごぼうを米のとぎ汁につける

米のとぎ汁には、米から出たカルシウムやデンプンが含まれており、ホモゲンチジン酸やシュウ酸といったアクとなる成分を中和する効果があります。また、米のとぎ汁がアクとなる成分を包み、溶出したアクが再び食材の中に戻るのを防ぐ効果があるといわれています。そのため、米のとぎ汁にごぼうをつけるとアクが抜けやすくなり短時間でアク抜きをすることができます。

米のとぎ汁がなければ、生米でも大丈夫です。糠(ぬか)でも同様の効果を得ることができます。

酢水にさらす

カットしたごぼうを酢水にさらす

ごぼうを酢水にさらすことも多いですが、これは変色を防ぐのに効果があるためです。酢水につけたからといって栄養素や風味を守ることに繋がるわけではありませんが、変色を防ぎたい場合は酢水につけると良いでしょう。

ごぼうを変色させる原因であるポリフェノールオキシターゼやペルオキシダーゼなどの酸化酵素は、ごぼうの場合、液体が酸性・中性・アルカリ性のどこに分類されるかを測る尺度pHで表すとpH5のときが最も強く作用し、pH4以下では低下することがわかっています。ちなみに水道水のpHは7です。pHの数値が低くなると酸性、反対に高くなるとアルカリ性になります。

そのため、水に酢を数滴垂らしてpHを下げることで、酸化酵素の活性が低下するともにポリフェノール成分が溶出するため、変色を防ぐことができます。

また、ごぼうがもつフラボノイド色素は酸性で無色になる性質があるため酢水につけることでごぼうを白くする効果があります。

水にさらして保存はあり?

洗いごぼうを長期冷蔵保存なら◎

ごぼうを水にさらす

洗いごぼうは水につけて冷蔵で2週間保存することができます。2日に1回は水を取り替えるようにしましょう。水に浸けておくと空気に触れないので、2週間程度は変色しません。特に切ってしまったごぼうは変色しやすいので水に浸けて保存するのがおすすめです。ポリ袋に入れるだけより長く保存することができます。

すぐ食べるならポリ袋+立てて冷蔵

ごぼうを立てて保存する

保存中も、水にさらしておくと水溶性の栄養素が流れて出てしまうので、早く食べるなら、ポリ袋に入れて立てて保存するのがおすすめです。

野菜は育ったときと同じ状態で保存することで長もちします。ごぼうは土の中で縦に生長します。横に置いてしまうと、縦に伸びようとして余計なストレスがかかり、旨みが減少してしまいますので、立てて保存するのがベストです。

泥付きなら新聞紙に包んで立てて冷蔵

ごぼうを新聞紙に包む

泥付きで販売されているごぼうは、このように丸ごと新聞に包み、ダンボールなどに立てて冷暗所で保存します。新聞紙を包むことで乾燥から守り、かつ湿気を吸ってくれます。

ごぼうは乾燥に弱い野菜です。泥はごぼうを乾燥から守ってくれるため、泥付きの場合はあえて泥を落とさずにそのまま保存したほうが鮮度を保つことができます。

栄養・風味を損ねない調理法

皮を剥かない

ごぼうの皮を包丁の背でこそぎ落とす

根菜は皮を剥いて食べるものが多いですが、ごぼうは皮が薄いため皮ごと食べることができます。ごぼうの皮には抗酸化作用のあるポリフェノールが多く含まれています。また、皮付近にはごぼうのうまみや香りがあるので、剥いてしまうと香りや味が損なわれてしまうのでもったいないです。

特に天ぷらやきんぴらごぼう、たたきごぼう、ごぼうの胡麻和えなどは皮付きのまま調理をしたほうがごぼうの風味が感じられ美味しくなります。

ごぼうは「皮をむく」というよりは、こそげるのが良いです。「こそげる」とは「素材の表面の不要な部分をごく薄くこすり落とす」という意味で、例えば魚の鱗(うろこ)を落とすことをいいます。

ごぼうは包丁の背を使ってこそげることができます。まず、ごぼうを片手で持ったら、包丁の背で表面を薄く削るようにまわしながらこそげていきます。白い部分が少し見える程度にこそげたら、水でさっと洗い、水気を切って完了です。包丁の背ではなく刃を使っても良いです。刃を使うと力を入れることなくこそげることができますが、刃が深く入り厚くむきすぎてしまいやすいので注意しましょう。

クシュクシュにしたアルミホイルでこすったり、スプーンを使ってこそげることもできます。

電子レンジで加熱

カットしたごぼうを電子レンジで加熱する

ごぼうはカットする前に下処理として電子レンジで加熱するのが望ましいといわれています。ポリフェノールを酸化させ変色させる原因となる酸化酵素は熱によって失活することがわかっており、電子レンジで加熱することで水溶性の栄養素を流出させることなく変色を防ぐことができます。また、電子レンジでごぼうを加熱するとごぼうがもつ抗酸化力が約2倍になることもわかっています。

電子レンジで加熱する場合は500Wのレンジで40秒程を目安に加熱してください。

出典:ごぼうの抗酸化成分と加熱による保護(日本調理科学会誌)

カットしたらすぐに加熱する

カットしたごぼうを加熱調理する

そこまで見栄えが気にならないならば、切ってすぐに加熱するのも手です。切ってからすぐに加熱してしまえばアク抜きをしなくても変色する心配がありませんし、風味も残ります。

上述したように水や酢水につけてのアク抜きは栄養素の流出に繋がるため、栄養面を重視するのであればアク抜きをせずに調理をするのが良いです。

生食には新ごぼうがおすすめ

やはり茹でたり加熱したりといった調理で失われてしまう栄養素もあるため、栄養素をしっかりと摂取したいのであれば生食が一番良いでしょう。

生食には新ごぼうがおすすめです。一般的にスーパーなどで販売されているごぼうは、春播き(10月〜11月どり)のもので、晩秋〜冬に旬を迎えます。新ごぼうとは、春播きしたごぼうを冬までまたずに早どりしたごぼうのことで、早く収穫しているぶん肉質がやわらかくアクが少ないため生食にぴったりです。近年ではサラダ用のごぼうの開発が進んでおり、「サラダごぼう」という品種も販売されています。サラダごぼうはアク抜きをしなくても食べやすいため、栄養素をそのまま摂取することができます。

ビタミンCは熱に弱い?

ビタミンCは熱に弱いと言われていますが、ビタミンC自体が熱に弱いわけではありません。ビタミンCには2種類あり、そのうちの1つが熱によって分解反応が加速してしまうためです。

基本的に新鮮な野菜に含まれるのは熱に強いビタミンCであるため、加熱によってビタミンCが大きく損失されることはありません。ただし、茹では注意です。ビタミンCは水溶性であるため、水に漬けていると溶け出してしまいます。茹で時間は短くし、また茹でる場合は汁ごといただけるスープや味噌汁などにするといいでしょう。