ほうれん草を調理しようと思ったら変色していたという経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。変色してもそのまま食べて問題はないか、心配になりますよね。今回はほうれん草の変色の原因と、食べても問題ないかどうかを詳しく解説します。
一般的にスーパーで販売されているほうれん草は緑色をしていますが、下記の原因で変色します。
カビ:白・黒
生育不良・劣化:黄色
酸化:黄褐色
ポリフェノール:赤
腐敗:茶色・黒
品種:赤
変色していると腐ってしまったのではないかと驚く方も多いかと思いますが、腐敗のみが変色の原因というわけではありません。ほうれん草の色の変化の原因を知っておくと、食べることができるのかそうでないのか判断しやすくなります。
ほうれん草の葉や茎が白や黒に変色している場合は、カビが生えている可能性があります。
白いふわふわとしたホコリのようなものがついている場合は白カビ、黒く変色している場合は黒カビです。白カビや黒カビは普段ホコリなどと一緒に舞っていて栄養源となるものを見つけると一気に増えていきます。
白カビや黒カビが生えてしまっている場合は残念ですが破棄しましょう。白カビや黒カビやカビ毒を起こし中毒症状が現れる可能性があります。じゃがいもなどの固い野菜の場合は表面だけで中まで侵食していなければ、カビが生えている部分を取り除いて食べることができますが、ほうれん草などの葉物野菜の場合は見えない部分にもすでにカビが侵食している可能性が高いので食べないのが無難です。
出典:かびとかび毒について基礎的な情報(農林水産省)
生育中に葉が黄色くなってしまうのは、肥料不足による窒素不足やリン酸不足、カリウム不足による生育不良が原因であると考えられます。腐敗しているわけではないので食べることができますが、状態の良いほうれん草とは言えません。
ほうれん草に限らず、野菜類などの作物は窒素が不足すると生育不良を起こしてしまいます。そのため、窒素を含む肥料が欠かせません。特に葉を食用とするほうれん草は生長の初期にしっかりと窒素を与えることが大切です。
リン酸は開花や結実を促すために必要になります。リン酸が不足すると下葉から黄色くなる傾向があり、下の葉が黄色く、上葉は緑色で生育が良くない場合はリン酸不足である可能性が高いです。
カリウムは、葉で作られた栄養素を根に送り根の発育を促したり、病気などに対する抵抗力を高める働きがあります。通常は肥料を与えることによりカリウム不足を防ぐことができますが、土壌が砂質である場合は不足することがあり、カリウムが不足することによって葉脈の間の色が黄色くなったり斑点がでます。
また、ほうれん草は酸性土壌に弱いという性質があります。ほうれん草を栽培するときの土壌酸度(ph)は、土壌 pH6.5~7.5が適正であると言われています。酸性土壌で育ってしまうと本葉が2~3枚ほどで生長が止まってしまい、葉が黄色くなります。通常は石灰資材を使って土壌が酸性になることを防ぎますが、家庭菜園などで石灰資材を使っていない場合は、土壌が酸性になってしまっている可能性があります。
葉が緑色の新鮮なほうれん草を購入しても、保存中に黄色く変色してしまうことがあります。保存中のほうれん草が黄色く変色してしまうのは、葉が枯れはじめ痛みはじめています。黄色く変色してきていても、葉が溶け出していたり異臭がするなどの腐敗のサインが見られなければ、腐敗しているわけではないので食べることができます。
黄色く変色しているということは鮮度が落ちて劣化が始まっているということなので、できるだけ早めに食べきるようにしましょう。そのままにしているとだんだんと腐敗がはじまり茶色く変色してしまいます。
ほうれん草の緑色の素はクロロフィルと呼ばれる成分です。クロロフィル酸に触れると分解されて緑色でなくなってしまう性質があります。腐敗が原因で変色しているわけではないので見た目は損なわれますが問題なく食べることができます。
例えばおひたしにするときに使う醤油のほか、味噌や酒などは酸性のものが多いため、ほうれん草が色あせて黄褐色になってしまうことがあります。味噌汁やお吸い物に使うだし汁も酸性なので、汁物にするときもほうれん草をそのまま使うとほうれん草の色が色あせてしまうことがあります。
ほうれん草の根が赤くなっているのを見て「カビが生えている」「腐敗している」と思ったことがある方は多いのではないでしょうか。根の赤みはカビが生えているわけでも腐敗しているわけでもありませんので、食べることができます。
赤く見えるのは、ベタシアニンと呼ばれるピンク色の色素になる成分が含まれているためです。ベタシアニンはポリフェノールの一種で抗酸化作用があり、体に害を及ぼすものではありません。また、ほうれん草の根本にはマンガンや鉄分なども豊富に含まれています。根を切り落として捨ててしまう方も多いと思いますが、捨ててしまうのはもったいないです!
根元には土が溜まりやすくかつそのままだと食感がかたくなってしまうので、十字に切り込みを入れてしっかりと水洗いをしてから調理をして食べると良いです。
ほうれん草が全体的に茶色く変色してしまっている場合は腐敗してしまっています。食べることはできませんので残念ですが破棄しましょう。
ほうれん草は乾燥に弱い食材です。葉の表面の水分が抜けてしなびていきますので、保存時はキッチンペーパーやラップ、保存袋に入れて保存することが大切です。購入した時のビニール袋だけでは乾燥が進んですぐに傷み腐敗してしまいますので、すぐに食べる場合でも、乾燥対策をしっかりしてから保存しておくことが大切です。
また、生育中にかかった病気が進行することによって腐敗してしまうこともあります。ほうれん草の病気には、例えば炭疽病や立枯病などがあります。
炭疽病は、糸状菌(カビ)が原因の病害です。発生が多い時期は晩秋と春で、土壌の過湿や肥料過多なども発病の原因になると言われています。葉と茎の両方に発生し、葉に円形の小斑点が生じます。斑点は次第に大きくなって灰色〜淡黄色に変色し、病状が進行すると腐敗します。
立枯病は、ピシウム菌やリゾクトニア菌などが原因の病害です。梅雨などの高温多湿状態で発生リスクが高まると言われているため、降雨量が多い時に注意が必要です。感染すると、葉が黄色く変色し株部分は茶色く変色します。進行すると茎がくびれたり腐敗していきます。
茎全体が赤い「赤軸ほうれん草」と呼ばれる品種もあります。葉自体は一般的なほうれん草と同じく緑色をしていますが、柄の部分から葉脈までが赤いのが大きな特徴です。
赤軸ほうれん草は、一般的に販売されているほうれん草よりもシュウ酸の含有量が少ないためアク抜きをしなくても食べることができます。
シュウ酸は栄養素というよりも老廃物で、えぐみや苦味を感じさせ料理の味を損ねるいわゆるアク(灰汁)となる成分です。たけのこや里芋などにも含まれていることで知られています。シュウ酸のデメリットは苦味やエグミを感じさせて料理の味を損ねるだけではありません。シュウ酸は大量に摂取することで結石を作る原因になると言われています。シュウ酸は水溶性であるため、一般的なほうれん草は茹でこぼしや水に浸すといった方法でアク抜きをして食べます。
赤軸ほうれん草の場合は、シュウ酸の含有量が少ないためアク抜きをしなくても苦味やエグみを感じにくいですし、アク抜きをすることでビタミンCなどの栄養素も流出してしまい栄養価が下がってしまうためそのまま食べるか軽く水にさらして食べるのがおすすめです。
家庭菜園で生育不良のほうれん草をもらった場合や生育中に病気になってしまったほうれん草の変色は生育環境によるものなので残念ながら防ぐことはできません。
自分で家庭菜園をしていてほうれん草が黄色く変色してきてしまった場合は、肥料を与えることにより改善されることがあります。上述したようにほうれん草は酸性土壌に弱いので、ほうれん草を育てるときは土壌が酸性になっていないか確認をして、肥料を与え生育不良が起こらないように注意しましょう。
加熱したほうれん草が酸化することによって変色してしまうのは、食べる直前に調味料を和えて酸化する原因となる調味料との接触する時間をできるだけ短くすることで防ぐことができます。
また、オキシダーゼと呼ばれる酵素もクロロフィルを分解してほうれん草を変色させる原因となります。この酵素は40℃程の温度で活発になるため、ほうれん草をゆでる時は沸騰したお湯でさっと茹でて、冷水に取ることでオキシダーゼが活発になるのを防ぎ、ほうれん草の発色を良くすることができます。
茹でるときに塩を加えると色素が安定するため、変色を防ぐことができるとも言われています。塩の量の目安はお湯1リットルにつき小さじ1です。
保存中にほうれん草にカビが生えてしまったり、腐敗が進み変色してしまうのは、正しく保存することである程度防ぐことができます。
上述したようにほうれん草は乾燥に弱い野菜ですので、乾燥対策をしっかりして保存しておくことが大切です。下記でほうれん草の正しい保存方法を紹介しますので、参考にしてください。
ほうれん草は常温保存はNGです。ほうれん草を常温で保存することにより、ビタミンCが1日で60%も減ってしまうことも、、、。すぐに使う場合でも、一度冷蔵庫で保存しておくことをおすすめします。
すぐに食べる場合は冷蔵保存がおすすめです。冷蔵したほうれん草は1週間ほど日持ちしますが、できるだけ早く食べるようにしましょう。
ほうれん草は生のまま冷蔵保存するのがおすすめです。
傷んでいる葉があれば取り除き、水を張ったボウルでしっかり洗います。特に根元部分には土が溜まりやすいので、十字に切り込みを入れ振り洗いをします。爪楊枝や竹串などを使って詰まっている土を取り除くのも◎。
水洗いしたほうれん草の水けを、キッチンペーパーなどを使って取ります。水分が残っていると傷みやすくなるので、しっかりと拭き取るようにしてください。
キッチンペーパーでほうれん草を包み、根元を下にしてポリ袋へ。ポリ袋の口を軽く閉じたら、グラスやペットボトルなどに入れて立てて冷蔵庫へ。ドアポケットに立てるのも◎。横にした状態で保存すると、ストレスがかかってしまい鮮度が落ちやすくなってしまいます。
茹でてから冷蔵保存する方法もありますがあまり日持ちしません。4日を目安に食べるようにしましょう。
ほうれん草を冷蔵保存すると、9日間で70%ものビタミンCが失われてしまうというデメリットも。栄養をキープしたいなら冷凍保存がおすすめです。冷凍保存方法は次に詳しく解説します。
長く保存したいなら冷凍保存がおすすめです。1ヶ月程度日持ちします。
一番手軽に冷凍できる方法は、生のまま丸ごと冷凍する方法です。
ほうれん草を水洗いし、キッチンペーパーでしっかり水けを拭き取ってから冷凍用保存袋に入れます。空気を抜いて密封し冷凍庫へ。
生のまま冷凍したほうれん草は、沸騰したお湯で30秒ほど茹で流水にさらし、水けを絞ってから調理に使用します。炒め物や和え物、汁物など幅広い料理に使うことができます。
生のままカットして冷凍する方法も。しっかりと水洗いし水けを取ったほうれん草を食べやすい大きさにカットし、冷凍用保存袋に入れて冷凍室へ。小分けにしてラップに包んでから入れるのもOK。
ほうれん草の葉は、冷凍することでボロボロと砕けやすくなるので注意が必要です。解凍時は、ザルの上に冷凍ほうれん草をのせ、上から熱湯をかけ流水にとり、水けを絞って調理に使用します。
生のまま冷凍する方法は手軽な反面、ほうれん草の色が黒っぽくなったり食感が若干悪くなるというデメリットもあります。見た目や食感を活かしたい場合は、多少手間でも茹でてから冷凍するのがおすすめです。次で詳しくご紹介していきます。
茹でてから冷凍すると、鮮やかな緑色をキープすることができ、火が通っているので調理時間が短く済みます。
しっかりと水洗いしたほうれん草を、かために塩ゆで(水1リットルに対して小さじ1が目安)します。茹ですぎると、解凍後の食感が柔らかくなりすぎてしまうので、さっと茹でる程度でOKです。
茹でたほうれん草を冷水につけ、水けを絞って食べやすい大きさにカットします。小分けにしラップで包み、冷凍用保存袋にまとめて入れ冷凍庫へ。
茹でてから冷凍したほうれん草は、料理に応じて凍ったまま使ったり、自然解凍して使用します。スープや味噌汁などの汁物、炒め物などには凍ったままの状態で入れてOKです。おひたしを作る場合は、前日に冷凍庫に移して自然解凍してから使用しましょう。急いで使用する際は流水解凍を行いましょう。
当たり前ですが、新鮮なほうれん草を購入する方が、長く美味しく保存することが可能です。新鮮なほうれん草には、下記のような特徴があります。
葉先がピンと張っている
葉が濃い緑色
根元が鮮やかなピンク色・赤色
根元がみずみずしい
茎が適度に太く、弾力のあるもの(茎が太すぎるとアクが強い可能性大)
葉脈が左右対称になっている
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