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ニンニクに栄養がないと言われる理由とは?栄養を無駄なく摂るコツは?

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ニンニクに栄養がないと言われる理由とは?栄養を無駄なく摂るコツは?

夏バテ防止野菜の代表格であるニンニクですが、単体ではそれほど栄養がないと言われることがあります。ニンニクに実際に不足する栄養素について解説していきます。

にんにくが栄養ないと言われる理由

色が白い

にんにくはほとんどが白色です。色が白いと、なんとなく栄養がないと感じる方が多いかと思います。

一般的に色が濃い野菜の方が栄養価が高いと言えますが、必ずしもそうではありません。すべての栄養素に色素があるわけではありません。

にんんくは淡色野菜です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

淡色野菜は白っぽい野菜であることが多いです。にんにくは確かにβ-カロテンの量は少ないですが、だからといって栄養がないわけではなく、アリシンやカリウムなど豊富に含まれています。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

あまり味がしない

にんにくは風味は豊かですが、生のままだとあまり味がありません。これもにんにくって栄養がなさそうと思われてしまう一因と言えます。

そもそも野菜は品種改良が繰り返され、特有の香りやクセをなくし食べやすくした結果、栄養価が大幅に減少しているのは事実です。例えば、1950年と2005年で比較すると、人参はβ-カロテン(ビタミンA)は8割減、ほうれんの鉄分も8割減、アスパラガスのビタミンB2は半減、キャベツのビタミンCも半減しています。

しかし、味が薄い=栄養がない、とは一概に言えません。無味無臭な栄養素の方が多いです。ピーマンの香り成分であるピラジンや、ゴーヤの苦み成分であるモモルデシンのように強い風味がある栄養素はむしろ稀です。

にんにくに不足する栄養素

今まで説明してきた通り、にんにくは栄養がないというのは間違いですが、にんにくが栄養面で万能とは言えません。実際にはあまり含まれていない栄養素、全く含まれていない栄養素が存在します。

β-カロテン(ビタミンA)

前述した通り、にんにくは淡色野菜なので、β-カロテンがあまり含まれていません。

β-カロテンは体内で必要量だけビタミンAに変換され、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きをします。視力を正常に保つ役目もあります。また、皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。

β-カロテンを特に豊富に含む野菜は人参です。他の野菜と比べると一目瞭然です。

  • 人参…8600μg

  • ほうれん草…4200μg

  • 赤色パプリカ…1100μg

  • かぼちゃ…730μg

  • トマト…540μg

  • ピーマン…400μg

  • にんにく...2μg

ビタミンD

にんにくにはビタミンDが一切含まれていません。にんにくに限らずほとんどの野菜にはビタミンDがありません。

ビタミンDの働きには正常な骨格と歯の発育促進があります。また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きもあります。

ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、干し椎茸、サケ、イワシ、サンマなどが挙げられます。

ビタミンK

にんにくにはビタミンKも含まれていません。

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。ただ、血液は出血している箇所以外(血管内など)は正常に流れていなければなりませんが、ビタミンKは血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけています。

さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。そしてカルシウムの合成に必要なたんぱく質を生み出し、腸内でカルシウムが吸収されるのを助けます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

ビタミンKが豊富な野菜には、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーなどがあります。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

にんにくに豊富に含まれる栄養素・成分

次に、実際ににんにくに豊富に含まれる栄養素・機能性成分を解説していきます。

ビタミンC

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。

その他、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。

ビタミンB1

日本人が不足しがちなビタミンB1が含まれています。

糖質がエネルギーに変わるときには酵素が働きますが、その酵素の働きを促す補酵素の役割を果たすのがビタミンB1です。糖質の分解をサポートし、体を元気にします。

また、糖質は脳や神経系のエネルギー源ですから、イライラを抑える作用もあります。

ビタミンB2

ビタミンB2は動物性食品に多いビタミンですが、植物性食品にもわずかに含まれています。ビタミンB2は脂質とたんぱく質の分解に働き、脂質の代謝を助けます。細胞の再生を助けて成長を促し、健康な肌や髪を作り、目や口などの粘膜を守ります。

ビタミンB2が不足すると、脂質が体内に蓄積されやすくなるため、太りやすくなり、ニキビが増える原因の一つになります。

またビタミンB2は「甲状腺ホルモン」が分泌されることで、体内で働けるようになるため、甲状腺の機能が低下してしまうと、ビタミンB2を補充しても生かしきれないことがあります。

ビタミンB6

ビタミンB6は肉や魚に豊富で、特に生魚に豊富です。野菜の中ではにんにくに多く含まれます。

ビタミンB6はたんぱく質を分解する補酵素としての役割を担います。血液の元となる赤血球や神経伝達物質セロトニンの合成にも働きます。

また、免疫機能を正常に保つ役割も担います。

カリウム

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

その他、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

リン

リンの約80%はカルシウムやマグネシウムと結合して歯や骨の構成成分となっています。体内でビタミンB1やB2と結合して補酵素になり、糖質の代謝促進をします。さらに、エネルギー代謝にも関わり、エネルギー発生やエネルギーの貯蓄に関わっています。さらに筋肉や神経などの機能を正常に保つ効果もあります。

リンとカルシウムは血液中で一定のバランスを保っているため、この2つの成分のバランスがとても大切です。カルシウムとリンの割合は1:1で摂取するのが理想的な比率とされていますが、加工食品や清涼飲料水をよく飲食する人はリンを多く摂取しがちですので、カルシウムもバランスよく摂取するようにしましょう。

アリシン(硫化アリル)

アリシンは匂いや辛味成分の一つで、硫化アリルの仲間です。玉ねぎやにんにくに多く含まれる成分です。

アリシンは糖の代謝を促し、エネルギーを生み出すビタミンB1と結びついてその効果を持続させる働きがあります。また、ビタミンB1と協力して血糖値とコレステロール値の上昇を抑えます。さらに、アリシンには抗酸化作用があるので体内の老化予防が期待できます。

また強い殺菌力による風邪予防や、アリシンの香りによる食欲増進と消化吸収上昇の効果も期待できます。その他にも血液が固まりやすくなるのを防ぐため、血栓ができにくくなります。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

にんにくの効果的な食べ合わせ

ビタミンB1と一緒に食べる

にんにくに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収率を高める特徴があります。ビタミンB1は糖質が効率よくエネルギーに変わるのをサポートするビタミンです。

例えば生姜焼き定食は、ごはん(炭水化物)と豚肉(ビタミンB1)と玉ねぎ(アリシン)が含まれるので、栄養面でも理にかなっていて、最高のスタミナ料理と言えます。

にんにくを栄養面で最も効率的に活かすには、ビタミンB1を含む食品と一緒に摂ることです!にんにくだけを食べても夏バテ防止対策としては不十分と言えます。

しょうがと一緒に

にんにくは生姜と合わせると香りは弱くなりますが、抗酸化作用がアップすると報告されています。中華料理でもにんにくと生姜の組み合わせは多用されます。

炭水化物と一緒に

少量ではありますが、にんにくにもビタミンB1が含まれているので、ごはんなど炭水化物と一緒に食べると、炭水化物が脂肪として蓄積されづらくなります。これは炭水化物がエネルギーになるのをサポートするためです。ガーリックライスなど、まさにですね◎。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス