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大豆油と米油の違いと調理別の使い分け

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大豆油と米油の違いと調理別の使い分け

大豆油と米油は、どちらも植物油の一種です。植物油には様々な種類がありますが、大豆油と米油の違いは何なのだろうと気になったことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では大豆油と米油の違いについて詳しく解説します。

大豆油と米油の違い①原料

大豆油

大豆油は大豆を原料に作る植物油の一種です。

大豆の種子には18~20%の油分が含まれており、大豆油は種子から油分を抽出して製造されます。日本国内では、大豆油が液状植物油消費量の約4割弱を占めており、これは菜種油の次に多い消費量です。

原料となる大豆の生産量は主にアメリカやブラジル、アルゼンチンの三国です。日本で使われている大豆油の原料の多くはアメリカやブラジルから輸入されたものを使っています。

米油

米油は、米糠(こめぬか)を原料に作る植物油の一種です。

「米糠油(こめぬかゆ・こめぬかあぶら)」ともいわれます。

米糠とは玄米を精白したときに出る果皮や種皮、胚芽などの部分で、大豆と同じく約18%〜20%の油分が含まれています。米油は米糠に含まれている油分を抽出し精製したものです。

米油の原料となる米糠の多くは日本産です。

大豆油と米油の違い②製造方法

大豆油

大豆油の製造方法はメーカーによって異なりますが、大豆の種子から圧搾式製法または抽出法で油を抽出します。

圧搾式製法は、化学溶剤を使わずに圧力だけで油を抽出します。中でも「玉締め圧搾法」と呼ばれる圧搾式製法は、機械でゆっくりと手間をかけ自然に近いかたちで抽出するため栄養価が非常に高くなります。


抽出製法は、ヘキサンなどの溶剤を溶かして油を抽出します。


圧搾式製法では原料残油が10~20%あり、この残りを採油するために抽出法を併用する圧抽法を使うこともあります。例えば菜種油の原料であるアブラナの種子は油分の多いため、圧抽法を使うことが多いです。

古くは玉締め圧搾法を使って製造されていましたが、元々18~20%の油分しか含まれていないということもあり採油効率が悪く、現代では破砕加工した大豆に溶剤ヘキサンを加えて油を抽出する抽出製法で製造されていることが多いです。抽出製法を用いて油脂を溶かしたら、溶剤を蒸留装置で蒸発しやすい性質をもつ溶剤と油分とに分けて、油脂のみを取り出します。これによって油脂を抽出しにくい大豆油でも原料残油1%未満まで油脂を抽出することができます。

大豆から油脂を抽出したら、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質を取り除きます。リン脂質の性状からガム質と呼ばれこの製造工程を「脱ゴム」といいます。さらに、遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。

米油

米油の製造方法もメーカーによって異なりますが、大豆油と同じように原料である米糠から圧搾製法または抽出法で油脂を抽出します。

大豆油と比較して溶剤を使わない圧搾製法で抽出されている製品が多いです。

米油も油脂を抽出したら、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質や遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。

大豆油と米油の違い③特徴

大豆油

大豆油は米油と比較して色が濃く、黄色っぽいです。原料である大豆には独特のクセがありますが、大豆油にはクセがなく、米油やサラダ油など他の植物油にはない旨味とコクがあります。

油脂製品は開封をして空気にふれたり高温で加熱すると空気中の酸素と反応し、酸化してしまい劣化してしまいます。そのため開封後は色がだんだんと濃くなり劣化してしまうことが多いのです。大豆油は酸化しやすいリノール酸を多く含むため、劣化しやすいといえます。

米油

米油は大豆油と比較すると色は薄く、サラサラとしています。

味そのものにクセがなく揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いがありません。特に油を加熱したときの匂いはアクロレインと呼ばれる成分の発生によるものですが、米油は、加熱をしてもアクロレインの発生量が少ないため、揚げ物をしても匂いで油酔いをして食欲が減退してしまうということがありませんし、部屋中に油の匂いが残ってしまうということもありません。

米油はトリエノールなど抗酸化作用がある成分が多く含まれるため、酸化しやすい大豆油とは反対に酸化しにくいという特徴があります。

大豆油と米油の違い④栄養素

大豆油

大豆油100gに含まれる栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…114g

  • ビタミンK…210μg

大豆油には不飽和脂肪酸の一種でオメガ3(n−3)であるALA(αリノレン酸)やオメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸を多く含む他、ビタミンE(α−トコフェノール、β−トコフェノール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール)とビタミンKが含まれています。

特に大豆油はリノール酸の割合が高く「高リノール酸食用油」ともいわれ、血中の悪玉コレステロールを抑制する効果があると言われています。またビタミンEには抗酸化作用があるため、活性酸素の発生を抑制し細胞の酸化を防ぐ効果があり、アンチエイジングの効果も期待できます。

ただし、大豆アレルギーの方はアレルギー症状がでる可能性があるので注意してください。

大豆油100gあたりのカロリーは920Kcal、糖質量は0gです。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

米油

米油100gに含まれる栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…25.5g

  • ビタミンK…36μg

  • カリウム…Trmg

  • カルシウム…Trmg

  • リン…Trmg

  • クロム…1μg

米油には不飽和脂肪酸の一種でオメガ9(n-9)系脂肪酸に属するオレイン酸と、オメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸、ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)、ビタミンKが豊富に含まれている他、こめ油特有の栄養素γ―オリザノール(ガンマオリザノール)も含まれています。

米油特有の栄養成分であるγ―オリザノールはポリフェノールの一種で、抗酸化作用がある他、血行を良くしてコレステロールを低減させる効果が期待できます。また、脳の機能の劣化防止、更年期障害防止に効果があるといわれています。

元々玄米はビタミンB群などのビタミン類、カルシウムなどのミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んでおり、白米より栄養価が高いことで知られています。これは栄養素の多くは糠層(ぬかそう)や胚芽(はいが)に含まれているからです。米油は栄養素を多く含んでいる糠層や胚芽から抽出した油であるため、栄養価が高くなります。

米油100gあたりのカロリーは約921kcal、糖質量は0gです。大豆油のカロリーとほぼ同じです。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

コレステロール

米油100gあたりのコレステロール含有量は0g、大豆油100gあたりのコレステロール含有量は約1mgです。

コレステロールとは、脂質の一種です。コレステロールには善玉コレステロールといわれる「HDLコレステロール」と、悪玉コレステロールのLDLコレステロールとがあります。善玉コレステロールは、臓器で使いきれずに余ったコレステロールを回収し肝臓に戻す働きがあり動脈硬化を予防することができるといわれています。対して悪玉コレステロールは、血管の壁にたまり、動脈硬化を進行させる要因となります。そのため、多量に摂取するのは良くありませんが、体にとって不要な成分というわけではないといえます。

大豆油にはコレステロールが含まれていますが、1mgと微量であるため揚げ物を大量に食べるなど過剰摂取を避ければ問題ないといわれています。

出典:厚生労働省e-ヘルスネット

トランス脂肪酸

米油100gあたりのトランス脂肪酸含有量は0.3g、大豆油100gあたりのトランス脂肪酸含有量は正確な数値は不明ですが、微量であるといわれています。

トランス脂肪酸は脂質の一種である脂肪酸を構成している成分の一つです。トランス脂肪酸は牛肉や羊肉など動物そのものが持っている場合と食品の製造過程で生成する場合があります。植物油は、原料の独特の匂いや不純物を取り除くために、200度以上の高温で処理されます。高温で処理をする際にトランス脂肪酸が生成されます。また、油剤を使う抽出法でトランス脂肪酸が生成されやすいといわれています。

トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させる働きがあるため、大量に摂取することにより動脈硬化などによる心臓病のリスクを高めるといわれ、WHOのトランス脂肪酸の一日の上限値は約2g未満としています。これはトンカツを揚げた場合、約10枚分に相当します。米油と大豆油のどちらも過剰摂取しない限りは問題ないといえますが、油に限らずトランス脂肪酸が含まれている食べ物は沢山あり、知らず知らずのうちに摂取していることもありますので揚げ物を大量に食べるなど過剰摂取は避けたほうが良いでしょう。

出典:農林水産省トランス脂肪酸に関する情報

大豆油と米油の違い⑤販売場所・値段

大豆油

大豆油は菜種油やコーン油などとブレンドした調合油として販売されていることは多いですが、大豆油としてイオンなどの一般的なスーパーで販売されていることはあまりありません

大豆油を購入するのであればAmazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。

値段はメーカーによって異なりますが、味の素が製造・販売している「JOYL 大豆の油 健康プラス」は1Kg658円で購入することができます。

米油

米油はイオンや業務スーパーなど一般的なスーパーで購入することができます。ただし、近年では米油を取り扱う店舗が増えてきているとはいえ、サラダ油などと比較すると必ずあるというわけではありません。店舗に確認してみてください。

近くに購入できる店舗がない場合は、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。

米油の値段はメーカーによっても異なりますが、900gで700〜800円、1kgだと1000円以上で販売されていることが多いです。

上述したように玄米から出る米糠はわずかであり、さらに抽出できる油量も少ないことから大豆油などその他の植物油と比較して値段が高くなります。

大豆油と米油の用途はほぼ同じ

大豆油と米油は、どちらも炒めものをするときや揚げ物をするときの揚げ油として使うことができます。

大豆油はマーガリンやマヨネーズの原料としても使われる

大豆油には、水素添加する性質があるためマーガリンなどの固形油を作ることができます。また、乳化性も高くマヨネーズの原料にも使われます。大豆油は米油と同じように調理に使うことができますが、一般的なスーパーでは販売されていることが少なく、家庭で調理に使うというよりはマーガリンやマヨネーズの原料として使われていることが多いです。

揚げ油には米油がおすすめ

米油には上述したように揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いがなく、酸化しにくい他、サラっとしていてベタベタとしないため揚げ油に適しています。また、米油は揚げ物をする際に気泡ができにくいという特徴があります。この気泡は、加熱することにより食材や衣から水分が蒸発することによってできます。特に油が酸化している場合などは大きな気泡がぶくぶくと出てしまいやすいです。気泡がでていると揚げむらや油っぽさの原因となります。そのため、米油を使うことで揚げむらもなく均一にカラッと揚げることができます。

大豆油を揚げ油として使うと、大豆油特有の旨味が食材にコクを与えることができます。そのため飲食店では天ぷらを作るときの揚げ油として使われていることもあります。ただし、上述したように酸化しやすいため揚げ油として何度も使いたい場合には不向きです。

米油は米との相性が良い

米油は原料が米糠ということもあり、お米との相性が非常に良いです。そのため、ご飯を炊く際に米油を入れて炊飯するという大豆油にはない使い方をすることもできます。米油を入れることで、米粒がコーティングされふっくらと粒感のよいご飯が炊きあがる他、米粒がお釜にこびりついてしまうのを防ぐことができます。また、米油によってお米本来の甘味や旨味を引き出すことができ普段より美味しい白米になります。

大豆油と米油どちらが健康的?

大豆油と米油はどちらも栄養価が高い油脂製品です。

ただし、大豆油の原料となる大豆は海外から輸入されたものを使っていることが多いです。輸入品の場合、遺伝子組み換えによって開発された品種を使って作られているものが多いのですが、輸入品については遺伝子組み換えかどうかの表示義務がないため見分けるのが難しいのが現状です。遺伝子組み換えの食材を避けている方は「国産原料100%」と明記されているものを選ぶと良いでしょう。

また、上述したように大豆油の多くは抽出法によって油を抽出していることが多いです。油溶剤として使われるヘキサンは石油にも含まれている成分であるため「体に悪い」と言われています。商品として販売する際にはもちろん化学溶剤は除かれ安全性をチェックしたものが販売されていますが、心配な方は「圧搾式製法」で抽出しているメーカーの大豆油の購入がおすすめです。

これらの理由から国産の原料を使い油溶剤などを使わずに作られている米油のほうが健康的で安全だといわれることがありますが、大豆油が健康に悪いということはありません。

大豆油と米油はお互いに代用可能

そもそも大豆油よりも米油のほうが一般的に手に入りやすいため米油を大豆油で代用するということはあまりないと思いますが、大豆油が手に入らないときに米油で代用しても何の問題もありません。

どちらも匂いや味にクセがないため味を大きく変えてしまうことはありませんが、原料が異なるため全く同じになるというわけではありません。例えば米油には大豆油特有の旨味がないため、大豆油で揚げたものとは味わいが異なります。反対に米油を大豆油で代用すると、米油のほうが油切れがよいため油っぽく感じることがあります。