卯の花は大豆から豆腐を製造する際に出る豆乳を絞った残りカスである「おから」の別名です。本記事では卯の花とウツギの関係や用途、栄養素などを詳しく解説します。
「卯の花」は「うのはな」と読みます。
卯の花の原料は大豆です。大豆から豆腐を製造する際に出る豆乳を絞った残りカスが「卯の花」として販売されています。
大豆が原料であるため栄養価が高く、豆腐を一般的に食べるようになった江戸時代にはすでに豆腐屋が無料で庶民に配っていたといわれています。
卯の花は、まず大豆を水洗いして汚れを落とし、水に浸して砕きやすくしたあとに粉砕します。昔は石臼を使用していましたが、現在は「グラインダー」と呼ばれる機械を用いて粉砕するのが一般的です。粉砕した大豆はボイラーで蒸気加熱したあと、再び水に浸してすりつぶし、水を加えて煮つめます。煮詰めたものをこしたものが豆乳となり、にがりなどの凝固剤を加えると豆腐が完成します。卯の花は、その残りカスです。
卯の花は食用となる他、飼料としても利用されます。
卯の花とは「おから」の別名です。よって、卯の花とおからは同じものです。
もともと、お茶を煎じた後の残りカス「茶がら」が語源となり「から」に丁寧語「御(お)」をつけて「おから」と呼ばれていました。しかし、「から」が「からっぽ」を連想させる忌み言葉とされるようになったことから、「卯の花」という別名がつきました。
卯の花とは小さな白い花を一度に咲かせるのが特徴の植物です。おからの見た目が卯の花と似ていたことから、「卯の花」と呼ばれるようになったといわれています。
現在では「卯の花」と「おから」どちらの名前でも呼ばれますが、調理前の生の状態を「おから」、炒り煮にするなど調理したものを「卯の花」と使い分けている人も多いです。
おからには「卯の花」以外にも「大入り(おおいり)」や「雪花菜(きらず)」といった別名があります。
「大入り」は、主に寄席芸人の間で使われていた卯の花の別名です。上述したように「おから」の「から」が客席が空席になることを連想させるため、沢山の客が入ることを意味する「大入り」と呼ぶようになりました。また、「大入り」は卯の花を炒り煮にするという調理法にも由来しているといわれています。
「雪花菜(きらず)」は、主に関西地方や東北地方で使われています。「雪花菜」は卯の花を調理する際に包丁で切る必要がないということからついた別名であるといわれています。
「卯の花」はおからの別名ですが、由来となっている植物の「卯の花」という名前も実は別名です。
植物の「卯の花」の本当の名前は「ウツギ」です。ウツギは漢字で「空木」と表記します。幹や枝の中心が空洞になっているという特徴に由来して空木(ウツギ)と呼ばれるようになったといわれています。
ウツギは5月~7月に開花する植物で、旧暦だと「卯月(うつき)」にあたります。そのため「卯の花」という別名がつきました。
卯の花は煮物や和え物など和食を中心に幅広い用途があります。近年では栄養価が高いだけではなくカロリーが低く糖質量も少ないといったことから、ダイエットメニューとして肉の代用品として使ったりお菓子作りに使われることも多くなりました。
卯の花を使った定番料理といえば煎り煮です。
卯の花の煎り煮は、卯の花と油揚げ、椎茸、にんじんなどの具材を出汁と調味料で炒った後、甘めに煮付けるという調理法で、卯の花の独特の風味を楽しむことができます。「炒り卯の花(いりうのはな)」と呼ばれることもあります。
保存しやすく長持ちするため常備菜としても人気があります。
白和え(しらあえ)は、豆腐に白ゴマなどをすり混ぜて味をつけた物に、にんじんやほうれん草などの野菜やこんにゃくなどの具材を一緒に和えたものです。卯の花の炒煮と見た目が非常に似ているため、混合されることが多いですが、白和えは豆腐をベースに具材を混ぜ合わせるため、卯の花をベースに具材を炒って煮ている卯の花の煎り煮とは別物です。
この白和えに卯の花を加えたり、豆腐の代用品として卯の花で白和えを作ることができます。
鯛の唐蒸し(たいのからむし)は、石川県加賀市でお祝いごとや婚礼時に食べられている郷土料理です。
鯛の唐蒸しは、尾頭つきのタイを背開きにし、人参やごぼう、きくらげなどと炒めて出汁や醤油、砂糖で味付けをして煮た卯の花を詰めて蒸した料理で、二匹のタイを腹合わせにした盛りつけが主流となっています。
鯛を腹開きではなく背開きにして具材をつめているのは、腹開きが「切腹」を連想させるためであり、お腹に卯の花を詰めるのは、子宝に恵まれるようにという願いがこめられているそうです。
卯の花汁(うのはなじる)は、卯の花を入れて作る汁物です。
あさりなど具材は様々ですが、鮭や鰤といった塩蔵魚を使うことが多く、アラの部分などを使ったものが人気です。魚類の他に大根やにんじん、こんにゃくなどの具材も加えて煮えたところに卯の花を加えて酒やみそで味付けをします。卯の花の量が多ければ多いほどどろどろとして、おからの風味が強くなります。
卯の花寿司は、シャリの代わりに酢などで味付けをした卯の花を使った寿司です。一般的な寿司の上に卯の花をふりかけた寿司を「卯の花寿司」とよぶこともあります。
卯の花の見た目がお米に似ていることから、酢飯の代わりに卯の花を使った卯の花寿司が食べられるようになったと言われており、都道府県や地域によって様々な作り方があります。
例えば愛媛県の卯の花寿司は、一般的に食べられている握り寿司のシャリの部分に、酢や砂糖などで味付けをした卯の花を使用し、酢で締めたサバやイワシ、コハダなどのネタを乗せます。
広島県の三次市の卯の花寿司は、塩と酢で締めたアユの腹にから煎りし、みりんや醤油、酢で味付けし、ショウガやニンジン、ゴボウなどの千切りと麻の実を混ぜ込んだ卯の花を詰めたものです。
卯の花飯は、卯の花を出汁、酒、砂糖、塩などで味付けをして炒り煮にしたものに酢を加え、ご飯の上に乗せて刻み生姜を添えた料理です。
その他にも、炒り煮にした卯の花と米を一緒に炊飯器で炊いて炊き込みご飯にしたり、コンソメなどで洋風に味付けをしてピラフにすることもできます。
膾(なます)とは、魚介類や野菜類、果物類を細く切りったものを酢をベースにした調味料で和えた料理のことをいいます。人参や大根などの野菜を使って作られることが多いです。
卯の花膾は、空炒りして水分を飛ばした卯の花と酢じめした鯛やサワラ、ヒラメ、アジ、イワシなどを混ぜて作り、麻の実を炒って混ぜることもあります。
ゼリーフライは埼玉県行田市の郷土料理です。
卯の花に茹でて潰したじゃがいもと炒めたニンジンやネギなどの野菜とよく混ぜ合わせたものを、小判の形に整え、そのまま油で揚げたものです。「ゼリー」という名前がついていますが、お菓子のゼリーとは無関係です。
小判の形して油で揚げたその形が小判に似ていたことから「銭フライ」と呼ばれるようになり、銭フライから「ゼリーフライ」に変化していきました。
卯の花は肉の代用品として使われることも多いです。
例えば、ハンバーグや肉団子、つくねを作るときにひき肉と一緒に卯の花を加えることでかさ増しになるだけではなく、水分を良くするため肉や魚のうまみを吸収してしっとりと仕上げます。肉の量が減る分節約にもなりますし、低カロリー低糖質になるためダイエット中の方にも人気があります。
近年では小麦粉の代用品として、お好み焼きを作ったりクッキーやケーキなどのお菓子を作ることも多いです。
卯の花を使うことにより、小麦粉の量を減らすことができるためカロリーや糖質を抑えることができます。また、小麦粉にはグルテンが含まれていますが、卯の花にはグルテンが含まれていないという利点もあります。グルテンは生地を膨らませるなど料理を美味しくしますが、アレルギーの原因となる他、消化されにくいという性質があり肥満やむくみの原因になったり、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。
卯の花にはグルテンが含まれていないため、小麦粉のみで作ったようにふんわりと膨らみません。また、味もおからの風味がするため小麦粉と同じようにはなりませんが、栄養価が高いため健康的で独特の風味と食感を楽しむことができます。
卯の花100gに含まれている栄養素は下記の通りです。
たんぱく質…6.1g
脂質…3.6g
炭水化物…13.8g
食物繊維…11.5g
ナトリウム…5mg
カリウム…350mg
カルシウム…81mg
マグネシウム…40mg
リン…99mg
鉄…1.3mg
ビタミンE…3.7mg
ビタミンK…8μg
ビタミンB1…0.11mg
ビタミンB2…0.03mg
ナイアシン…1.6mg
ビタミンB6…0.06mg
亜鉛…0.6mg
銅…0.14mg
マンガン…0.4mg
ヨウ素…1μg
セレン…1μg
クロム…1μg
モリブデン…45μg
パントテン酸…0.31mg
卯の花は大豆を原料に作られているため、三大栄養素と呼ばれるたんぱく質・脂質・炭水化物がバランス良く含まれています。また、食物繊維が豊富に含まれており、これは食物繊維が豊富に含まれているといわれているごぼうの約2倍の量です。さらにビタミンEなどのビタミン類や、カルシウムやカリウムなどのミネラル類や大豆に豊富に含まれていることで知られているイソフラボンも含まれています。
卯の花100gあたりのカロリーは88kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は2.3gです。カロリーも低く、糖質量も少ないためダイエット中の方にもおすすめです。ただし、煮物にするなど調理法によってはカロリーや糖質量が多くなることがあるので、注意しましょう。
出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
食物繊維には、整腸作用があります。腸内の環境を整えることで便秘を解消・予防の効果が期待できます。また、食物繊維を摂取することで糖やコレステロールの吸収速度を緩めることができるといわれています。ただし、人によっては反対にお腹の調子が悪くなってしまう人もいるので注意しましょう。
ビタミンEは体内の脂質の酸化を防ぐ働きがあり、動脈硬化や癌、老化などを引き起こす原因になるといわれている「活性酸素」を取り除くことができるといわれています。
ビタミンB群(B1・B6)には、糖質を燃やしてエネルギーに変える働きがあります。ビタミンB6には、アミノ酸の分解・吸収をサポートする他、女性ホルモンのバランスを整えたり皮膚をすこやかに保つのを助けるため美肌効果も期待できます。
カリウムとカルシウム、鉄分、亜鉛は人体に必要なミネラルの一つです。
カリウムは、体内のナトリウムを排出し摂り過ぎた塩分の調整する働きがあり塩分の摂り過ぎによる むくみを解消する効果が期待できます。
カルシウムは健康な骨や歯を保つのに大切な役割を果たしており、骨粗しょう症予防などに効果が期待できます。
鉄分は全身に酸素を運ぶヘモグロビンとして不可欠な栄養素であり、集中力の低下や、頭痛、食欲不振、筋力低下や疲労感、貧血予防に繋がるといわれています。
亜鉛は、主に骨格筋や骨、皮膚、肝臓などにある成分です。亜鉛も必須アミノ酸と同じく体内で作り出すことができないため、食事で摂取する必要があります。亜鉛は、体内にあるビタミンAの代謝を促して抗酸化作用を活性化させる働きがあるため、アンチエイジングや生活習慣病予防の効果が期待できます。
イソフラボンは大豆に多く含まれていることで知られている成分で、ポリフェノールの一種です。
イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、更年期や月経前のつらい症状を和らげたり 肌荒れを改善するなどの美容効果や肩こり改善、イライラを抑えるなど精神を安定させるなどの効果が期待できます。
出典:
卯の花は、豆腐屋さんまたはイオンなどの一般的なスーパーで購入することができます。生の状態の卯の花は豆腐コーナーに並べられていることが多いです。「生おから」という商品名で販売されていることもありますが、上述したように卯の花とおからは同じもなので「生おから」でも問題ありません。
値段はメーカーによって異なりますが、200g160円程です。中には100円以下で販売しているところもあります。
近年では保存性を高めたり、より使いやすくするために乾燥させたタイプや、粉状に細かくしたものが「乾燥おから」や「おからパウダー」という商品名で販売されていることも多いです。
また、お惣菜のコーナーで卯の花を炒り煮にしたものを「卯の花」という商品名で置かれていることがあり、業務スーパーでも予め炒り煮にしたものが「卯の花」として販売されています。
卯の花の賞味期限は、生の状態だと基本的に日持ちしません。冷蔵保存で購入日から2〜3日を目安にできるだけ早めに食べきりましょう。
食べきれない場合は、卯の花を煎って水分を飛ばしてから密閉できる容器に入れて冷蔵すれば1ヶ月ほど保存することが可能です。ひと手間かかりますが、水分を飛ばしてから冷凍するのが長持ちさせるポイントとなります。
卯の花の炒り煮に調理してから冷凍保存しておくと、長持ちするだけではなく取り出して解凍するだけですぐ食べることができて便利なのでおすすめです。
卯の花…150g
にんじん…2cm
油揚げ…1枚
長ねぎ…5cm
水…150ml
和風顆粒だし…小さじ1/2
酒…大さじ1
砂糖…大さじ1と1/2
しょうゆ…大さじ1と1/2
みりん…大さじ1
油またはごま油…適量
にんじんは洗って皮を剥いて千切りにし、長ねぎはみじん切りにしておきます。油揚げは熱湯を回しかけて油抜きし、細切りにしておきます。
紹介した具材の他にも、干ししいたけやこんにゃく、ひじきなどお好みの食材を使って作ることができます。また、あじつけはめんつゆを使ってもOKです。
また、卯の花は乾燥おからやおからパウダーで代用可能です。その場合は、乾燥したおから1:水4の割合で浸して1時間程で生の状態に戻してから使います。水で戻すと約5倍に膨れますので、戻しすぎてしまわないように注意してください。例えば、20gのおからパウダーを水に付けると約100gになります。
卯の花を炒り煮は、様々なアレンジ方法があるので常備菜として作っておくと非常に便利です。
例えば、コロッケやグラン、ハンバーグなどにリメイクすることができます。
コロッケはじゃがいもを茹でてマッシュしたものに、卯の花を混ぜたタネに、衣をつけて揚げます。じゃがいもは糖質量の野菜ですが、卯の花でかさ増しすることができるので糖質量を少なくすることができます。
グラタンは、卯の花にホワイトソース、チーズをかけて焼きます。マカロニを入れて作るよりも低カロリーで糖質量も少ないのでダイエット中の方にもおすすめです。また、グラタンにすることで小さなお子様でも食べやすい味になります。
卯の花を肉の代用品にするのと同じように、卯の花の炒り煮もハンバーグや肉団子を作るときのかさ増しとして使うことができます。ハンバーグや肉団子も小さなお子様が食べやすい料理ですので、卯の花の炒り煮では箸の進みが悪いというときにおすすめです。
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