グミの実は、グミ科グミ属の木に実る赤い実です。子供の頃につまんで食べたことがあるという方も多いのではないでしょうか。本記事ではグミの実について詳しく解説します。
グミの実は、グミ科グミ属の木に実る果実です。
グミの実の大きさは品種によって差がありますが、さくらんぼを伸ばしたような楕円形のものが多く、熟すと赤くなるという特徴があります。
漢字では「茱萸」または「胡頽子」と表記し、海外では「silverberry(シルバーベリー)」と呼ばれています。日本では「ごぶいちご」という別名で呼んでいる地域もあるようですが、一般的に「グミの実」と呼ばれることが多いです。
「グミの実」の名前の由来は、実を口に含み皮を出す意味の「含む実(くくむみ)」から「グミ」に変化したという説や、食べると渋みがあるため「えぐみ」から「グミ」になったという説など諸説あります。グミといえばお菓子のグミを想像する方も多いかと思いますが、お菓子のグミが由来で「グミの実」と呼ばれるようになったわけではありません。
グミの木はユーラシアから東南アジアにかけて自生している樹木で、約100種あります。日本でも自然の多い場所で5種ほどが自生し、日本にしかない品種もあります。小さい可愛らしい花を咲かせるため、観賞用として庭木に用いられることも多いです。
グミの実が市場に出回ることはあまりありませんが「小さい頃にグミの実を食べた記憶がある」という方が多いのは、観賞用として育てられていたことが多かったためであると考えられます。
グミの実の中には細長い種子が1粒入っています。実は本当のグミの果実はこの種子の堅い核にあります。
「グミの実」といわれているプニプニした果肉のような部分は、花托(かしょう)という花びらや雌しべ、雌しべなどを支えている部分が肥大したものです。これを「偽果(ぎか)」といいます。例えば、りんごやいちごもグミの実と同じく偽果です。
ちなみに、花びらや雄しべ、雌しべを支えている部分が肥大したのではなく、種子の形成とともに子房が肥大してできた果実を「真果」といいます。例えば、桃やきゅうりトマトなどは真果です。
さくらんぼはバラ科サクラ属サクラ亜属の果樹、実桜類の果実です。
さくらんぼとグミの実はどちらも自家受粉(同一の個体のなかで受粉すること)できない植物で、異なる品種で授精しなければ果実を実らせることはできないという点では共通していますが、別の種類の植物です。
さくらんぼは丸い形をしていますが、グミの実は楕円形なので見た目でも違いは判断しやすいでしょう。
クコの実は、ナス科クコ属に属する植物の果実です。
漢字では「枸杞」と表記し、枸(カラタチ)のようなトゲをもち杞(コリヤナギ)のように枝がしなやかであることに由来して「枸」と「杞」を組み合わせ枸杞(クコ)と名付けられたといわれています。欧米では「ゴジベリー」や「ウルフベリー」と呼ばれることもあります。
クコの実は1cmほどの楕円形の赤い実です。色も形もグミの実と似ていますが、グミの実と比較して若干小さめです。また、クコの実は苦みや渋み、臭みがあるため生で食べられることはあまりありません。
基本的には乾燥させて食べます。これはクコの実の水分を抜くことで甘みを凝縮させほのかに甘酸っぱい味わいになり食べやすくなるためです。
乾燥させたクコの実には「枸杞子(クコシ)」という正式名称があります。例えば杏仁豆腐の上などに乗っているのは枸杞子です。ですが、一般的には乾燥させたものも「クコの実」と呼ばれています。グラノーラに入った乾燥クコの実を見たことある方もいるかもしれません。
お菓子のグミは果汁などをゼラチンで固めたドイツ発祥のお菓子であり、グミの実とは全くの別物です。
お菓子のグミの「グミ」は、グミの実ではなくドイツ語で「ゴム」を意味します。ゴムのようにしっかりとした弾力と噛みごたえがあることに由来していると考えられます。
グミの実の由来をお菓子のグミだと思っていたり、反対にお菓子のグミの由来をグミの実だと思っている方も多いようですが、関連性は全くないといえます。
グミの木には「常緑種(じょうりょくしゅ)」と「落葉種(らくようしゅ)」二種類があります。
常緑種は幹や枝に一年を通じて葉が落ちず、秋や冬になっても葉の色が変わらない植物のことをいいます。反対に落葉種は、秋や冬など特定の季節に葉の色が変わり地面に落ちる植物のことをいいます。
日本で見られる常緑種のグミの木には、ナワシログミがあります。落葉種のグミには、ビックリグミやアキグミ、ナツグミなどがあります。
ナワシログミは常緑種の低木で、苗代を作る時期(5月〜6月)に果実が熟すことから「ナワシログミ」と呼ばれるようになったといわれています。
「トキワグミ」や「タワラグミ」といわれることもあり、盆栽の世界では「カングミ(寒茱萸)」といわれます。
ナワシログミは乾燥や湿気、寒さに強く土壌を選ばずに育てることができるため、海岸の砂防用として植栽される他、公園に植えられていたり庭木として育てられていることが多いです。
ナワシログミの果実の大きさは15mmほどで、ナツグミやアキグミと比較して渋みが少ないです。
ナツグミは落葉種の低木です。5月〜7月の初夏に果実が熟すことから「ナツグミ」といわれるようになりました。
「ホソバナツグミ」ともいいます。
ナツグミは、葉の表面と果実に星状毛(せいじょうもう)といわれる放射状にのびた毛が生えているのが大きな特徴です。白いクリーム色の花を咲かせるため庭木としても人気があります。
ナツグミはナワシログミと同じく直径15mmほどの実がなり、開花した翌年に赤く熟します。ナツグミはグミの実の中でも渋みが強く、熟していても生食には向いていません。
ビックリグミは落葉種の低木で、ナツグミの変種であるトウグミを品種改良して食用・観賞用にしたものです。
ビックリグミの実の大きさは3cmほどと大きいのが特徴で、「大王グミ」ともいわれます。大きな実は甘みがあるため食用にも適しています。
ただし、ビックリグミは自分の花粉のみ、もしくは2本以上あっても同種間では実をつけにくい「自家不結実性」であるため、場合によっては全く実をつけないということもあります。実をつけたい場合はビックリグミの近くに別種のグミを植えるなどの対策が必要です。
アキグミは落葉種の低木で、秋に果実が熟すことから「アキグミ」と呼ばれるようになりました。
作物が育たないような場所でも根がよく発達し育つため、海岸の砂防や風除けとして植栽されることが多く、近年では庭木としても使われることもあります。
アキグミの実の大きさは6~8mm程で、丸い形をしています。
グミの実は、販売用に生産されていないため特に名産地といわれる場所はありません。主に自然の多い場所に自生していたり、家庭で栽培されています。
常緑種のグミの実は比較的温暖な気候の関東よりも西の地域に多く、落葉種のグミの実は耐寒性が高いため日本各地で見ることができます。
収穫の時期は品種によって異なり、ナワシログミは4~5月頃、ナツグミは5~6月頃、ビックリグミは7月頃、アキグミは9~10月頃に赤く実が熟します。
赤く熟したグミの実は、皮ごと食べることができ、熟したグミの実の味は品種によっても異なります。
例えばアキグミやナツグミは甘さと渋さのバランスがよく、ビックリグミは食用・観賞用として品種改良されているため甘みが強く、甘酸っぱい味わいです。
どの品種も果肉がやわらかくとろみがあるのが特徴で、独特の食感を楽しむことができます。
グミの実は「渋くてまずい」と言われることもありますが、これは熟す前のグミの実を食べている可能性が高いです。
グミの実の渋みはポリフェノールによるものです。ポリフェノールとは植物の苦みや渋みとなる化合物の総称で構造の違いによって様々な種類があります。グミの実の苦味となっているのは「タンニン」と呼ばれるポリフェノールの一種です。
タンニンはワインや紅茶にも含まれている成分で、食べても人体に害はありませんが苦味や渋みを強く感じるのでとても美味しいとは思えないでしょう。グミの実は完熟することで渋みがまろやかになり美味しく食べられるようになります。
グミの実は熟したものであれば、いちごやさくらんぼなどの果物と同じように、そのまま食べることができます。果物といえばやはり生食ですよね。
特にビックリグミは、上述したように食用・観賞用として改良されているためナツグミやアキグミと比較して渋みが少なく甘みが強いため生食に向いています。
そのまま食べる場合は、さくらんぼなどの果物を食べるときと同じように軽く水洗いをしてから食べます。渋みが強く食べにくいときは、塩をかけて食べると渋みを感じにくくなります。
グミの実は皮ごと食べることができますが、中に細長い種が入っているので飲み込んでしまわないように注意してください。
ナツグミやアキグミなどは、完熟してもビックリグミと比較して渋みが強いため、生で食べるよりもジャムやお酒に加工するのがおすすめです。
どうしても渋みが気になるというはアク抜きをすると良いです。ビックリグミの渋みの元になっているポリフェノールは水溶性であるため、水につけておくだけで渋みを軽減することができます。水でも効果がありますが、塩水につけておくと、渋みの元になる成分が出てきやすいです。塩水につけたら、流水で洗い流せば塩味がついてしまうこともありません。
ただし、水溶性のポリフェノールがとれるということはグミの実に含まれているその他の水溶性の栄養素も流出してしまうということです。栄養素の流出を最小限に抑えるため長時間つけすぎてしまわないよう注意しましょう。
フルーツと同じようにスコーンやケーキなどのお菓子作りをするときに使うこともできます。例えば、薄力粉や米粉、ベーキングパウダー、塩などを混ぜ合わせた生地にオリーブオイルとグミの実を練り込み、整形して焼くだけで簡単にグミの実を使った焼き菓子ができます。
グミの実を生地に練り込んでスコーンやケーキを作るとほどよい甘酸っぱさがアクセントとなり美味しく食べることができます。グミの実を練り込んで作った焼き菓子にグミの実で作ったジャムをつけて食べるのも良いでしょう。
グミの実を使って自宅で簡単にジャムを作ることができます。沢山グミの実を収穫したときやグミの実が渋くて食べにくいときなどの参考にしてください。
グミの実…800g
砂糖…500g
レモン果汁…適量
渋味が強い場合はヨーグルトにかけて食べるのがおすすめです。ヨーグルトと一緒に食べると、渋みの元になっているタンニンがタンパク質と結合するため、渋味が和らぎ食べやすくなります。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換される成分のうちのひとつで、その中でも最も活性が高くなっています。
β-カロテンには強い抗酸化作用があり、体内に発生した活性酸素を除去します。活性酸素は本来ウイルスと闘うなど健康維持に大切ですが、増えすぎると害を及ぼし、老化の促進などに繋がります。活性酸素はストレスや紫外線、不規則な生活習慣や加工食品、また喫煙などによって増加しすぎると言われています。
ビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあるため健康に保ちます。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。そのため、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぎ感染症を予防する効果が大きく、免疫力を高めます。また皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。
トマトに多く含まれトマトの赤色の成分として知られているリコピンは、トマトのほかにもスイカや金時人参、柿にも含まれている成分で、グミの実にも含まれています。
リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上といわれています。肌や血管の老化を防いだり動脈硬化などを予防する効果が高いことがわかっています。
また熟すにつれてリコピン(と、カロテン)が増加し、緑色素のクロロフィルが消失するため赤色になります。
アントシアニンはポリフェノールの一種で紫色の主成分になっている色素です。
ポリフェノールには抗酸化作用があり、体内の老化予防やアンチエイジングが効果が期待できます。さらにはコレステロール値を下げる働きもあると言われています。
またアントシアニンには、目の網膜にあるロドプシンの再結合の作用があるため、眼精疲労の回復効果もあります。また、肝臓の働きを活性化する効果もあります。
タンニンはポリフェノールの一種で、口の中に入れると強い渋みを感じます。ワインやコーヒーなどにもポリフェノールが豊富ですが、渋みを感じるのはこのためです。
タンニンは肌を引き締める効果があります。これはタンニンにたんぱく質を変性させることで組織や血管を縮める収れん作用を引き起こすためです。肌の開いた毛穴や皮脂腺などを引き締める効果が期待できるため、化粧品などにも配合されています。さらにメラニンを産生する細胞の増殖を抑制するため、皮膚保護作用や美白作用もあります。
また、強い抗酸化力があるため、コレステロールの酸化を防ぎ体内の老化予防などの効果があります。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。栗の食物繊維はほとんどが不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。腸内環境を整えることは痩せやすい身体づくりに大切だといわれています。
水溶性食物繊維は、水に溶けることで食べたものの粘稠性を高めます。それによって食べたものの腸への移動がゆっくりになるため、血糖値の上昇をゆるやかになります。
グミの実には、三大栄養素といわれるたんぱく質・脂質・炭水化物の他に、食物繊維やビタミンAなどのビタミン類、カリウムなどのミネラル類が多く含まれています。また、上述したようにタンニンやアントシアニン(ポリフェノールの一種)が含まれている他、リコピンやβカロテンなども含まれ栄養価の高い食べ物であるといえます。
グミの実100gあたりのカロリーは72kcalで糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は15.2gです。カロリーはそこまで高くないものの、糖質量が多いです。ジャムなどにするとさらに糖質量は高くなるためダイエット中の方は注意しましょう。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
上述したように、グミの実は販売用に生産されていないため一般的にスーパーをはじめ、野菜や果物を多く取り扱う八百屋などでも販売されていません。
これは、グミの実に渋みがあり販売に向いていないからであるといわれています。生食に向いているビックリグミに関しても自家不結実性で実をつけにくいため販売用に大量に生産するのは難しいといった理由が考えられます。
グミの実は旬の時期に道の駅で1パック200円程で販売されていることがありますので、見かけた際はぜひ購入してみてください。
グミの実を手に入れたい場合は家庭で栽培するのが一般的です。
種はホームセンターやAmazonや楽天などのネット通販で購入することができます。グミの木は大きめの鉢で栽培することができ、肥料を与えなくても問題なく育ちます。
青森県にある「森の中の果樹園」や鳥取県にある「大山光華園」など、グミ狩りを体験できる農園もあります。
上述したように熟していないと渋みが強くて食べられないので、真っ赤に熟しているものを選びましょう。
完熟している実は、手で触ると少し柔らかい感触があります。
また、表面がボコボコしていたり形がいびつなグミの実は虫が卵を産み付けている可能性があるので、綺麗な楕円・円形になっているものを選びましょう。
グミの実は乾燥に弱いため密閉できる容器に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。1週間程度保存できますが、鮮度が落ちてしまうためできるだけ早めに食べきるようにしましょう。
ジャムなどに加工して使う予定の場合は冷凍保存しておくことも可能です。その場合は洗った後に軸をとり、トレイなどに並べてそのまま冷凍し、凍ったら密封できる容器に移し替えて保存します。使うときは自然解凍した後加熱調理をしてください。
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