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ニラの食べ過ぎはNG?1日の摂取目安量は?

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ニラの食べ過ぎはNG?1日の摂取目安量は?

日本で古くから食べられている緑黄色野菜のニラですが、食べ過ぎるとリスクがあることはご存知ですか?

ニラが食べ過ぎNGな理由

アリシン

ニラにはアリシンという香気成分が含まれています。アリシンはニンニクやネギにも多く含まれています。

アリシンは殺菌作用が強く、刺激が強いのが特徴です。そのため食べすぎると胃壁や腸内を刺激してしまい、胃痛や下痢などの症状が出る場合があります。胃腸が弱っているときは摂取量を控えた方がいいでしょう。

一般的な対処法は、

  • 白湯など水分を摂って安静にする

  • それでも腹痛が収まらなければ、病院へ

  • ニラを食べる前に乳製品を摂取しておく

です。

水分を摂取して胃の中を薄め、安静にしましょう。それでも腹痛や頭痛などが治らない場合は、アリシンの刺激ではなくアレルギー等の可能性もあるので、医療機関に相談をして治療を受けましょう。

事前に乳製品を摂取しておくことで胃粘膜が保護され、アリシンの吸収を抑えることができると一般的にいわれています。

また、腹痛にならなくとも臭いが強いため、食後の口当たりが悪く、気持ち悪くなることがあります。口臭が気になるということも...。りんごに含まれるリンゴ酸がアリシンを分解する作用があるといわれているため、口臭対策にリンゴジュースがおすすめされます。

参考文献:お茶の水女子大学大学院教授 飯田薫子・関東学院大学准教授 寺本あい 監修(2019)『一生役立つきちんとわかる栄養学』西東社

栄養バランス

ひとつの食材だけを摂取していると栄養が偏ってしまいます。

ニラに不足している栄養素には、例えば、ビタミンB12とビタミンDがあります。ビタミンB1、B2も少なめです。ビタミンB1は糖質がエネルギーに変わるのを助ける大切な栄養素で、不足すると疲労が感じやすくなります。日本人に不足しがちな栄養素として有名です。

ビタミンB12・Dは野菜にはほとんど含まれない栄養素です。ビタミンDは骨の形成を助け、ビタミンB12は赤血球の中のヘモグロビンの生成を助ける働きがあります。

栄養が偏らないよう様々な食材を積極的に摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。

出典:農林水産省|食事バランスガイド

ニラと似たスイセンに注意

「スイセン」というニラに似た植物があります。このスイセンには毒が含まれており、食べると食中毒を引き起こし、下痢や嘔吐などの症状が出ます。

見た目が酷似しているため一見ニラかスイセンどちらか分からないことが多く、2022年4月には、ニラと勘違いしてスイセンを幼稚園の給食に出してしまい、園児が食中毒を起こしてしまう事件もありました。

大きな差は、臭いです。スイセンはちぎって嗅いでもニラ特有の臭いがしません。またニラは平たくやや厚みがありますが、スイセンは中央が浅くくぼんでいます。そしてスイセンには鱗茎(球根)がありますが、ニラにはありません。

出典:東京都健康安全研究センター|ニラとスイセン

食物繊維

特段多いわけではありませんが、ニラには食物繊維が含まれています。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、ニラには両方が含まれています。

不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になります。

水溶性食物繊維は摂りすぎると軟便や下痢に可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまうことになりますので注意しましょう。

どのくらい摂取すると過剰摂取になるかの明確な数値はありませんが、摂取目標量については後述しています。

出典:

薬の飲み合わせ

ニラには比較的多くビタミンKが含まれています。

ビタミンKには、ワルファリン(ワーファリン、クマジンとも言われている)という抗凝血剤(血栓の治療薬)の効果を低下させる可能性があります。

というのも、ワルファリンは血液を固まりにくくし血栓ができるのを防ぐ作用があります。しかしビタミンKは血液が固まるのに必要な成分であるため、効果を下げてしまいます。

薬を服用している場合は、かかりつけ医の指示に従いましょう。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

カリウム

ニラはカリウムが豊富な野菜です。

カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。

塩や醤油、味噌を頻繁に使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

カロリー・糖質

ニラと他の野菜のカロリー・糖質を比較した表

ニラ100gあたりのカロリーは18kcalで糖質は1.3gです。糖質が高い野菜ではないので、食べ過ぎによって太ってしまうという心配はあまりありません。ニラに限らず野菜は基本的にカロリーや糖質が低いのでたくさん食べて太ることはないでしょう。ただ、味付けには注意が必要です。砂糖や油、塩分を多く使って調理するとその分カロリーは上がってしまいます。

ちなみに、ごはん100gあたりカロリー156kcalで糖質35.6gです。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ニラの1日の摂取目安量

テーブルに置かれたニラ

ニラの1日の摂取目安量は明確に定まっていませんが、厚生労働省が発表している野菜の摂取目標量を基準に目安を把握することはできます。

緑黄色野菜を基準にして

大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

ニラは緑黄色野菜に分類されるので、他の緑黄色野菜と合わせて、120g以上を目安にすればよいでしょう。他の緑黄色野菜を食べることを考慮すると、ニラの1日あたりの摂取量は50gあたりが妥当といえます。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

ニラの栄養素

ニラの食べ過ぎはよくありませんが、適量を食べれば素晴らしい効能が期待できます。

アリシン

アリシンは匂いや辛味成分のひとつで、硫化アリルの仲間です。玉ねぎやにんにくに多く含まれる成分です。

アリシンは糖の代謝を促し、エネルギーを生み出すビタミンB1と結びついてその効果を持続させる働きがあります。また、ビタミンB1と協力して血糖値とコレステロール値の上昇を抑え、生活習慣病予防の効果が期待されています。さらに、アリシンには抗酸化作用があるので、その点でも生活習慣病予防に役立つとされています。

また強い殺菌力による風邪予防や、アリシンの香りによる食欲増進と消化吸収上昇の効果も期待できます。その他にも血液が固まりやすくなるのを防ぐため、血栓ができにくくなります。

セレニウム(セレン)

セレニウムはセレンとも呼ばれているミネラルで、肝臓や腎臓に存在しています。セレニウムは、活性酸素を分解する働きのあるグルタチオンペルオキシダーゼという酵素の生成に不可欠です。活性酸素は細胞の老化を進めてしまうため、セレニウムは老化予防に大事な成分です。またセレニウムは酵素の成分として甲状腺ホルモンの代謝やビタミンCの代謝にも関与していおり、健康に不可欠です。基本的にはレバーなどの肉類や魚介など動物性食品に含まれています。

β-カロテン

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。

ビタミンC

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。

そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。

ビタミンE

通常、野菜からはなかなか摂れないと言われているビタミンEが、ニラには含まれています。

ビタミンEは抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。

また副腎や卵巣にも蓄えられる成分で、女性ホルモンや男性ホルモンなどを含むホルモンの代謝にビタミンEは関与しています。性ホルモンの生成や分泌の調整をする脳下垂体に働きかけ生殖機能の維持にも役立ちます。ビタミンEを十分に摂取することで、生理痛や月経前のイライラ、また生理不順などを改善する効果もあります。

ビタミンK

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。

さらに、ビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれるので、ビタミンDと並び健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス