HIITは、減量のために行うエクササイズの中でも指折りにキツいエクササイズですが、効果は絶大です。今回の記事では、HIITの基礎についてご紹介します。
HIIT(ヒット)とは「High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)」の略で、負荷の高い運動と短い休憩を組み合わせたトレーニング方法のことを指します。
HIITは、厳密には2つに分類され、Sprint Interval Training(スプリント系HIIT。 SIT)と、High-intensity Interval Aerobic Training(有酸素系HIIT。HIAT)があります。
SITは「全力の運動の一定時間の実施→休憩」を繰り返し、運動強度が落ちてきたところで終わりです。
HIATは、元々はJAXAの宇宙飛行士の訓練プログラムとして考案されたエクササイズ方法であり、自転車を用いて行います。自身の最大運動強度に対して「80-85%の強度の運動を3分間実施→50%の強度の運動を2分間実施」というセットを2セット繰り返し、最後は「80-85%の強度の運動を3分間実施することで締める」という、総計13分間のプログラムです。
ただし、実際にはSITとHIATの区分は運動生理学的な側面が強く、一般的にHIITといえばSITのことを指します。
HIITは、一般的に行われているランニングやバイクなどの持続性トレーニング(continuous aerobic training、CAT)とは違うメリット・デメリットがあります。
HIITは、残念ながら、初心者向けのエクササイズではありません。
HIITは「心拍数が(最大心拍数に対して)80〜90%になる運動を実施する」ものであり、これは運動習慣がある人の中でも、特に有酸素運動をしっかり実施している人でないと困難です。
調べると「初心者向けのHIIT」なるものも存在しますが、それらの多くは心拍数が規定の値になるのか怪しいものが多いです。このようなHIITは確かに運動効果はありますが心拍数が上がり切らないため、むしろ後述するHIITの関連トレーニングの一種であるサーキットトレーニングと定義する方が正しいといえます。
そのため、初心者の方は、HIITを実施する前に、まず簡単な有酸素運動から始めて、運動習慣、心肺機能、基礎的な筋肉をつけることが重要です。
HIITの効果の説明の前に、無酸素運動と有酸素運動について解説します。
無酸素運動とは、文字通り酸素を取り込まず瞬間的に強い力を使うことで、筋肉増強や基礎代謝向上が見込めます。筋トレ全般がそれに当たり、筋肉中に蓄えられた糖(グリコーゲン)がエネルギー源として使われます。
有酸素運動とは、酸素をしっかり取り込みながら比較的弱い力で継続的に行います。ウォーキングやサイクリング、水泳などがそれにあたり、エネルギーとして体脂肪が使われます。
ダイエット=脂肪燃焼をするには、有酸素運動を実施する必要があります。ただし、有酸素運動は脂肪が燃焼しやすい状態にするのに20分はかかり、さらに10分以上運動する必要があるので、最低でも一回あたり30分は必要です。
一方、HIITは有酸素運動の半分またはそれ以下の時間で、同程度の脂肪燃焼が見込めます。「本気で」HIITを実施すれば、一回あたり10〜15分が限界です。(上限30分に設定しましょう)
HIITは全力運動と休憩を組み合わせたトレーニング法で、全力運動単体では無酸素運動に近いといえます。
HIITの全力運動はかなり負荷が大きいため、身体が糖を使い切り次に体脂肪をエネルギー源として使います。体脂肪をエネルギー源とするには酸素が不可欠なので、通常の無酸素運動では脂肪燃焼は起きづらいのですが、HIITでは休憩(インターバル)で多くの酸素を体内に取り込むため、脂肪燃焼が可能です。
HIITは無酸素運動と休憩を組み合わせたことで生まれた「超効率的な有酸素運動」といえます。
HIITでは息の上がるトレーニングを短いスパンで繰り返し行うことから心肺機能が鍛えられます。心肺機能が向上すると、日常生活でのちょっとした運動が楽になります。
また、心肺機能が向上すると、HIITの幅も広がりさらに運動効果を向上させることができます。
一般的な無酸素運動(いわゆる筋トレ)では、筋肉を大きくすることはできても、心肺機能の向上は見込めません。
血糖値とは血液中のブドウ糖の量を指します。
HIITは血液や筋肉中に蓄えられた糖をエネルギー源として消費するため、血糖値の低下が期待できます。
HIITでは筋肉量を増やすこともできます。
特定の筋肉の量を増やすなら筋トレ(無酸素運動)がよいのですが、HIITでは上記3つのメリットに加えて、副次的に筋肉量の増加も期待できます。
HIITは実施後も酸素消費量が高い状態が続きます。たくさん酸素を吸うということは、その分脂肪を燃焼していることになります。
2分間程度のHIITで24時間以上代謝が向上したという例もあり、 (通常のランニングなら30分間実施する必要あり)、HIITの効率の高さがうかがえます。
一般的なトレーニングはジムに通い専門器具を使うことが多いですが、HIITは多くの種目が自宅または外でできます。その点もHIITはコスパのよいエクササイズといえます。
HIITは心拍数が最大心拍数に対して80〜90%になる運動を実施します。全速力で走ったときが最大心拍数なので、ほぼその運動強度で、インターバルは存在するものの、10分以上の運動を続けるということは相当にキツいことが想像できます。
そもそも心肺機能はある程度高くないと、実施すること自体が困難です。
HIITは、有酸素運動というよりは無酸素運動に近く瞬発的な力を出して運動するため、どうしても一般的な持続性トレーニングより怪我のリスクが高まります。初心者は十分に注意しましょう。
HIITの基本的なやり方は、大変シンプルで、実施する種目を決めたらインターバルを含めてそれを繰り返すことです。
HIITについて、初心者は基本的には、以下の通りに行うのが一般的とされています。
20〜30秒間の種目の実施→10〜20秒インターバル
これを4-5セット程度、4分弱のエクササイズです。レベルが上がるにつれて、セット数を増やしていったり、種目の運動強度を上げていくことが一般的です。
種目の選び方については、後述のエクササイズメニューを参照していただきたいのですが、「心拍数が上がる種目を選択すること」が大変重要となります。そうしなければ、HIITのメリットを享受することができません。
そのため、エクササイズの強度としては大変高く、毎日HIITを実施することは継続性という観点でオススメできません。理想は、通常の持続性トレーニングを30〜40分毎日行い、週に2〜3回はエクササイズのバリエーションとして(通常の持続性トレーニングの代わりに)HIITを取り入れることがオススメです。
今週は持続性トレーニングを2〜3日、来週はHIITを2〜3日など、週ベースで実施する運動の種目を決めるのもOKです。
HIITの中で最も実施しやすい種目は、ラン(ダッシュ)です。
「20〜30秒で自身の8〜9割位の力でダッシュ→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返すのみです。
本メニューは、ジムに行かずとも屋外で実施可能であり、非常に手軽です。 もちろんジムでも実施可能で、ランニングマシンの運動設定でHIITを実施することができます。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でヒンズースクワット→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
ヒンズースクワットは、通常のスクワットが腕を胸の前、もしくは頭の上で固定して実施するのに対して、腕を振りながら実施するスクワットです。通常のスクワットと比較して有酸素運動に近いスクワットになります。立ち上がったときの腕のポジションは上げたままでも、折りたたんでもOKです。
HIITでは通常のスクワットではなくヒンズースクワットを取り入れるのは、ヒンズースクワットの方がより動的なトレーニングであり心拍数を上げやすいからです。また、ヒンズースクワットは上半身の勢いを使って実施するので、足がきつくなっても続行しやすいメリットもあります。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)で縄跳び→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
理想は、左右の脚で高速でステップをかけたり、二重跳びを行うことですが、難しいという方は通常の縄跳びで縄の回転ピッチを上げたり、通常よりも膝を上げるなどして強度の調整を行いましょう。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でもも上げ→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
もも上げは室内で実施することもできますし、場所をとりません。また、負荷を調整しやすく、初心者でも実施しやすいHIITです。
もも上げで刺激できる腸腰筋は、姿勢改善や腰痛改善、ヒップアップの効果があり、他の種目では鍛えることが難しいためおすすめです。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でニートチェスト→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
ニートゥチェストとは、その名の如く、「knee(膝)」を「to chest(胸へ)」するエクササイズで、膝を胸につけるように動かすエクササイズです。
まず座った状態で、腕を身体の横に配置します。(手のひらを地面に付ける場合と、肘を付ける場合があります。初心者は手のひらでやるとよいでしょう)この状態で床に対して上体の角度を45度から60度位に設定し、膝を真っ直ぐの状態から胸の前に持ってくるという動作です。ボトムポジションでは足を床につけず、トップポジションではしっかりと腹筋の収縮を感じることが重要です。
ニートゥチェストですが、主に下腹部を刺激するエクササイズで、仰向けになった状態から膝(ひざ)を胸につけるように動かして実施します。ピッチを上げることで心拍数を上げることができるため、HIITに有効な種目です。しっかりと顎(あご)を引き、脚を床につけないで実施することで効果を高めることが可能です。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でジャンピングスクワット→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
ジャンピングスクワットは、スクワットでボトムポジションからトップポジションへジャンプをして移行するスクワットです。高くジャンプするほど負荷は高くなりますが、ジャンプした勢いを使ってしゃがみ過ぎると、膝を壊す原因になるので、ボトムポジションは床と腿(もも)が平行になる位に設定しましょう。
ヒンズースクワットと同じく、動的なスクワットであるためHIITとして効果的な種目です。太ももと地面が並行になるか、少し下がる程度で十分です。あまり腰を下げ過ぎると、ジャンプした勢いで膝を痛める可能性があるため注意しましょう。
プランクには様々な種類がありますが、キャタピラプランクもHIIT種目としておすすめです。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でキャタピラプランク→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
キャタピラプランクは、プランクをした状態で、右肘を左膝、左肘と右膝を交互につけるようにして実施するプランクになります。通常のプランクに対して、動的な動作が入り姿勢を維持するのが難しくなるため、エクササイズの難易度は高めです。
静的な運動が多いプランクの中で、キャタピラプランクは動的な運動であり、その分負荷が大きいのが特徴です。そのため、通常は1分程度実施することが望まれるプランクをあえて20-30秒と制限できるHIITで実施することで、しっかりとフォームを保ったまま実施できるというメリットがあります。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でバービージャンプ→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
バーピージャンプは、立った状態から、しゃがみ床に手をつき、その後クランチの状態になります。そしてクランチの状態から足を抱えるように前にもってきて、最後にジャンプします。自宅で実施する際は、最後のジャンプを省いて実施して問題ありません。また、プランクの状態の腰の位置も低い方が強度が高まりますが、プランク姿勢で負荷を加えるエクササイズではないので、そこまで気にする必要ありません。
バービージャンプは非常に負荷の大きい種目です。後半にいくにつれて非常にキツくなります。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)で腕立て伏せ→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
通常の腕立て伏せとは違い、とにかく心拍数を上げるために速く行う必要があります。
ただし、プッシュアップは腕にある程度の筋肉がついていないと実施することが困難であり、プッシュアップで使う腕の筋肉というのは小さい筋肉で直ぐに疲労してしまうことから、上級者向けのHIIT種目です。
「20〜30秒で自身の8〜9割位のテンポ(息が上がるくらい)でバイク→10〜20秒間のインターバル」を4〜5回繰り返します。
自転車でもできないことはありませんが、危険ですので、基本的にはバイクマシンで行う必要があります。
競輪選手を見れば分かる通り、本種目は太ももをかなり発達させる可能性があるため、「太ももを太くしたくない」という方にはおすすめできません。
バイクは、HIITの効果を享受するために最も効果的な種目なので、筋肉質な身体を手に入れたい方には特におすすめです。
タバタ式トレーニングとは、立命館大学の田畑泉先生が考案したトレーニングであり、彼の苗字を取って「タバタ式」と名付けられました。
HIITとタバタ式は混同されやすく、実際に非常に似ているのですが、タバタ式トレーニングの方がトレーニング内容について細かく規定されているのが特徴です。
タバタ式トレーニングでは、「種目の実施時間は20秒→インターバルは10秒」と明確に決まっており、それを「8セット実施し、合計4分間実施」としています。
また、身体の中でどれだけ酸素を消費するかの指標である最大酸素摂取量についても規定があり、170%VO2maxが適当とされています。(この指標ですが、相当キツいです)
そのため、運動中にはVO2maxを測定することで効率よくエクササイズを行うことができ、VO2maxはApple Watchなどのウェアラブル端末で計測可能です。
サーキットトレーニングは、複数の種目をインターバルなしで実施するトレーニング方法です。
例えば、サーキットトレーニングは、プッシュアップ15回→腹筋運動15回→背筋運動15回→スクワット15回→....などを1セットとします。
サーキットトレーニングは、HIITとは違い心拍数の上昇には重きが置かれず、複数の種目を実施し身体の異なる部分を常に刺激することで、各エクササイズのパフォーマンスの低下を防ぎます。
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