サイドキックは、スクワットを実施し、トップポジションにおいて左右方向に蹴る動作を実施するエクササイズです。今回は、サイドキックのやり方およびコツについてご紹介します。
サイドキックとは英語で「side kick」で「横方向に蹴る」ことを意味します。このままだと、単純に横方向に蹴る動作になりますが、正式名称は「サイドキックスクワット」で、スクワットを横方向に蹴る動作と組み合わせながら実施します。
具体的には、スクワットのトップポジション(身体が最も高い位置にある状態)において左右方向のいずれかに蹴り、再びスクワットを実施して左右方向に蹴るという動作を繰り返します。通常のスクワットに対して、左右方向に蹴る動作が入るため、お尻周りの筋肉を鍛えることが期待できます。
大腿四頭筋は、太ももの前面についている筋肉であり、大腿直筋(だいたいちょっきん)、内側広筋(ないそくこうきん)、中間広筋(ちゅうかんこうきん)、外側広筋(がいそくこうきん)から構成されています。中間広筋は深層にあり、大腿直筋がかぶさっています。
大腿直筋は、大腿四頭筋の表層の中央部に相当し、膝関節の伸展、股関節の屈曲に寄与します。大腿直筋が発達していると、大腿四頭筋の凹凸感がはっきりするようになることが期待できます。
外側広筋は、大腿四頭筋の外側に相当し、膝関節の伸展に寄与してます。大腿四頭筋の見た目に対して重要な役割を果たしており、外側広筋を鍛えていると正面から見た時の太ももの太さが際立つことが期待できます。
中間広筋は、大腿四頭筋の深層の中央部に相当し、膝関節の伸展に寄与します。中間広筋は、深層にあるため、外から確認することが難しい部位ですが、下半身を安定化させるためには重要な筋肉です。
内側広筋は、大腿四頭筋の内側に相当し、膝関節の伸展に寄与します。内側広筋を鍛えることで膝の保護や安定性に寄与することが期待できます。
大腿四頭筋は、筋群で比較したとき身体の中で最も大きな筋肉であり、鍛えることで見た目はもちろんですが、効率的に代謝を改善し、ダイエット効果を期待できます。
ハムストリングスとは、太ももの裏側に位置する3つの筋肉(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の総称です。「ハムストリング」と表記される場合もありますが、以上のように3つの筋肉で構成されていることを考慮して、ここでは「ハムストリングス」と呼称します。どちらで呼称しても問題ありません。
ハムストリングスは、太ももの前側にある大腿四頭筋と比較するとサイズは小さくなりますが、それでも筋肉の大きさとしては身体の中でも非常に大きい部類に分類することができます。
大臀筋は、お尻の大部分を占めている筋肉であり、単一の筋肉では身体の中で占める割合が最も大きい筋肉です。
お尻には、大臀筋の他に、中臀筋と小臀筋という筋肉があります。中臀筋はお尻の外側についている筋肉、小臀筋はお尻の中で最もインナー部分に存在する筋肉です。ただ、両者ともに大臀筋と比較すると、筋肉としては小さいため、お尻を効果的に鍛えたいならば大臀筋を鍛えると効率的です。
腸腰筋は、大腰筋、小腰筋、腸骨筋の3つの筋肉を総称した筋肉であり、筋肉の分類としてはインナーマッスルに分類され、上半身と下半身をつなぐ役割をしています。一般的に、腸腰筋はインナーマッスルに分類され、鍛えすぎて見た目が変化することはほぼありません。
内転筋(内転筋群)は、太ももの内側についている筋肉で、恥骨筋(ちこつきん)、大内転筋(だいないてんきん)、小内転筋(しょうないてんきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)、短内転筋(たんないてんきん)、薄筋(はっきん)からなります。
内転筋は、比較的多数の筋肉からなる筋群ですが、それぞれを独立して鍛えるということはほとんどなく、基本的には、内転筋のエクササイズと総称してまとめて鍛えることがほとんどです。
サイドキックで鍛えることができる下半身の筋肉である大腿四頭筋、内転筋、ハムストリングス、大臀筋を合わせると、身体の中でもかなりの割合を占める筋肉です。それに加えて、サイドキックでは、三角筋、脊柱起立筋も鍛えることができます。以上より、サイドキックでは、効率的に代謝の改善を期待できます。
筋肉をつけることで改善できるのは基礎代謝です。体温が1度上昇することで代謝量は13%程度向上すると言われています。サイドキックはダイエットに大変向いているエクササイズといえます。
代謝を改善することで、冷え性やむくみなどの改善にも繋がると期待されます。
ヒップアップをするためには、お尻の筋肉である大臀筋を鍛える方法と、太ももの裏であるハムストリングスを鍛える方法の2つが存在します。ハムストリングスを鍛えることで太ももとお尻の境目をよりはっきりさせることができます。
サイドキックは、大臀筋とハムストリングスの両方を鍛えることができるため、以上の2つのアプローチを単一の種目で実践することができます。
サイドキックでは、大腿四頭筋、内転筋、ハムストリングス、大臀筋と下半身の太もも周りの筋肉を付けることを期待できます。太もも周りの脂肪を燃焼させることが期待でき、太ももの引き締め効果を期待できます。
しかし、サイドキックは初心者の方でも比較的高負荷のエクササイズを行うことができてしまいます。これにより、負荷をかけすぎると筋肉が付きすぎて、太ももが太くなってしまう可能性があります。そのため、太ももの引き締め効果を狙って大腿四頭筋を鍛える際には、重量、回数設定には細心の注意を払いましょう。
前述した通り、サイドキックは体の多くの部位に刺激が入り鍛えることができるので、副次的に様々な効果が期待できます。
例えば、
運動機能の向上
O脚の改善
お腹の引き締め
腰痛や膝痛の予防
などです。
初心者の場合、サイドキックは片側6〜8回(合計12〜16回)を実施します。
サイドキックは、通常のスクワットに対して横方向に蹴る動作があるため、負荷が高まりますが、そこまで劇的に負荷が増大するわけではありません。そのため、一般的なトレーニングで推奨されている回数である片側6〜8回(合計12〜16回)3セットを実施できる重量設定にしましょう。
サイドキックに少し慣れた方の場合、サイドキックは片側6〜8回(合計12〜16回)を実施します。
サイドキックに少し慣れてきたら、回数ではなくセット数を増やします。これは、そもそも、サイドキックがそこまで多くの回数を実施するのに適したエクササイズではないためであることから、回数を増やして負荷を高めるというよりは、セット数を増やして負荷を高めるのがおすすめです。
上級者の場合、サイドキックを、ヒップリフト、スクワット、ランジと組み合わせながら実施します。
具体的には、ヒップリフトと一緒に実施する場合にはヒップリフトをウォーミングアップ種目として、ノーマルスクワット、ランジと一緒に実施する場合にはサイドキックをウォーミングアップ種目として実施します。何れの種目も、12〜15回3セット実施しましょう。
サイドキックの負荷を高める上で、スクワット単体の負荷を高めることも重要ですが、それに加えて「蹴り」の動作でしっかりと負荷を入れることが重要です。
具体的には、蹴りは膝(ひざ)をしっかり上げる方がエクササイズ強度が高いという特徴があります。このことから、サイドキックを実施する際にもしっかりと膝を上げて蹴り上げる必要があります。
理想的には膝が胸くらいまで上がることですが、これはかなり柔軟性が高くないと実施が困難です。そのため、ここまで上げる必要はありませんが、しっかりと膝を上げるために柔軟性に問題があると感じている方は、柔軟運動を実施してからサイドキックを行うようにしましょう。
サイドキックにおいて、蹴った足をしっかりと戻すということは蹴りのエクササイズ強度を高める上で非常に重要です。
「蹴る」動作は、蹴り出しと蹴った足を戻す動作から構成されています。蹴った足をそのまま床に落としても、サイドキックにはなりますが、せっかく蹴った足は戻すことで「蹴る」という動作で完全な負荷を足に与えたいところです。
重力に任せて戻すのではなく、意識的に重力に逆らいながらあえてゆっくり戻すと負荷が上がります。
特に、この「戻す」という動作において、ハムストリングスが大きく関与することから、サイドキックにおいてハムストリングスを集中的に鍛えたいという場合には、この「戻す」動作もしっかりと意識する必要があります。
サイドキックでは、蹴る方向によって太ももに負荷が入るところが異なります。
身体の骨格上、どうしても「身体の真横に蹴る」という動作は難しく、これを避けるために段々と正面に蹴りがちです。
ただ、正面に蹴ってしまうと腸腰筋に対する負荷がどうしても小さくなってしまい、サイドキックのエクササイズ効果が大きく低減してしまいます。そのため、サイドキックを実施する場合には、「真横に蹴る」ことをしっかりと意識するようにしましょう。
多くのメディアでは、サイドキックが分類されるスクワットにおいて、「スクワットを実施する際には膝をつま先よりも前に出さない」ということが指摘されていますが、必ずしも正しくありません。
基本的に身体の構造上、しゃがむと膝がつま先よりも前に出るということは自然の動作であり、これを制限してスクワットを実施すると怪我をする可能性が大です。
このため、サイドキックでは膝がつま先よりも前に出ないということを過度に意識し過ぎないようにしましょう。
サイドキックを実施する上で、怪我をしやすいのが膝に加えて腰です。サイドキックで腰を怪我するメカニズムは、動作途中に上半身を前後に振ることであり、上半身の付け根である腰に負担が集中することで腰を怪我します。そのため、しっかりと上半身を張ることを意識する必要があり、そのためには背中を張ったまま実施する必要があります。
また、サイドキックの場合には、通常のスクワットとは異なり蹴る動作が入ります。この蹴る動作のときに、上半身が動きやすいという問題があります。これを防ぐためには、蹴る動作でも上半身をしっかりと固定する必要があります。
サイドキックに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。
このため、最初は難しいですが、サイドキックで鍛えることができる部位の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中でのそれらの動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
サイドキックに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
サイドキックに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。基本的には、しゃがむときに息を吸い、立ち上がるときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
ヒップリフトは、サイドキックで鍛えることができるハムストリングス、大臀筋を鍛えることができるためです。
ヒップリフトは、サイドキックと同様に大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋を鍛えることができますが、サイドキックよりもエクササイズ強度は低いです。実際に実施する場合には、ヒップリフトをウォーミングアップ種目として実施し、本番種目でサイドキックを実施することでハムストリングス、大臀筋をより効率よく鍛えることを期待できます。
ヒップリフトは、12〜15回を3セット実施します。
ヒップリフトはグルートブリッジをより動的なエクササイズにしたものですが、負荷としてはそこまで高くありません。このため、一般的なトレーニングでの推奨回数である12〜15回を3セット実施することを目標に実施しましょう。
トップポジションで静止して大臀筋の収縮を意識する。
お尻をゆっくり下げる。
お尻を上げる際に息を吐いて、お尻を下げるときに息を吸う。
グルートブリッジの後に実施する。
スクワットは、サイドキックの基本となる種目であるためです。
スクワットは、サイドキックと同様に大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋を鍛えることができ、サイドキックの基本となる種目です。実際に実施する場合には、スクワットをウォーミングアップ種目として実施し、本番種目としてサイドキックを実施することで大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋を効率的に鍛えることを期待できます。
スクワットは、12〜15回を3セット実施します。
スクワットを自重で実施する場合には、そこまで負荷が高くないため、トレーニング初心者の女性の方でもこれ以上の回数を実施できることもあり、比較的余裕のある回数設定になっています。その分、後述するポイント・コツをしっかり意識しながら実施することが重要であり、それを意識できていないと、回数が少ない分だけ負荷が弱くなります。
トップポジションで膝をロックしない(=真っ直ぐにしない)。
身体をゆっくり下げる。
膝がつま先よりも前に出ないということを過度に意識しない。
背中を張ったまま実施する。
初動は臀部から動かすことを意識する。
ランジは、サイドキックで鍛えることができる大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋を鍛えることができるためです。
ランジは、サイドキックと同様に大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋を鍛えることができますが、サイドキックとエクササイズ強度はほぼ同様です。実際に実施する場合には、どちらを先に実施しても問題ありませんが、合わせて実施することで大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋をより効率よく鍛えることを期待できます。
ランジは、まずは、片足10〜12回3セット実施します。
ランジは脚を前、もしくは後ろに出して実施するためバランスを取り難く、これにより、エクササイズ強度は高いものに分類することができます。このため、一般的なトレーニングを実施する上での標準的な回数設定よりもやや少ない回数である10〜12回を3セット実施することを目標に実施しましょう。
上半身の床に対する角度を意識する。
身体を床に対してぎりぎりまで下げる。
脚を大きく出しすぎない。
手は太ももの上に乗せない。
ボトムポジジョンで静止する。
「膝はつま先より前に出さない」を意識しすぎない。
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