腹直筋上部を鍛えることができるクランチですが、簡単そうに見えて大変奥深いエクササイズです。今回は、クランチのやり方や効果からポイント、おすすめのメニューなどを徹底解説していきます。
クランチは仰向けになり、膝を90度に曲げて足の裏を床につけ、肩甲骨あたりから身体を起こす、腹筋トレーニングの1種目です。
クランチは英語「crunch」が語源で、原義は「押しつぶす」であり、転じて「身体をすぼめる」という意味があります。クランチと名が付く筋トレはどれも身体をすぼめる動作があります。身体をすぼめるとは具体的にいえば上体を起こす運動で、かつ可動域が狭いのが特徴です。
クランチで鍛えられる部位は、腹直筋の上部です。腹筋は、中央の筋肉とサイドの筋肉に分類することができるのですが、クランチで鍛えることができるのは中央の腹筋である腹直筋(の上部)です。シックスパックの上4つができる箇所です。クランチは可動域が小さいため、ターゲットになる部位が限定的なのが特徴です。
クランチはお腹周りを引き締めたい方に特におすすめです。特にお腹の上部です。お腹の上部は下部に比べて脂肪が少ないため、効果が分かりやすいといわれています。
クランチに似たエクササイズにシットアップがあります。シットアップはいわゆる「腹筋」といわれる運動で、学校の体力テストや部活で一度はやったことがある人が多いでしょう。「上体起こし」といわれる場合もあります。
シットアップは上半身全体を持ち上げます。シットアップは上体が床に対して30度程度まで腹筋に負荷が入り続けますが、クランチは15度程度といわれています。
シットアップは可動域が広い分、腹筋だけではなく、腸腰筋(股関節の周り)や、大腿直筋(太ももの前側)も鍛えることができます。
シットアップの難点はフォームが想像以上に難しいことで、9割以上の人が間違って実施しています。シットアップは間違ったフォームで実施すると腰を痛めやすいのも注意が必要です。日本バスケット協会も腹筋運動を非推奨としており、腹筋の難しさが推し量れます。一方、クランチはシットアップほど難度が高くありません。
基本のクランチ(ノーマルクランチ)のやり方・フォームを解説します。
まず、仰向けになった状態で両手を頭の後ろに設定します。脚は閉じた状態で、足の裏を床に付け、膝は90度くらいに設定します。脚を宙に浮かせると負荷が上がります。
クランチは腹筋運動です。腹筋というのは収縮したときに負荷がかかります。両手を頭の後ろに設定することで、上体を起こすときに、肘(ひじ)を絞り込むことが可能(つまり腹筋をさらに収縮させることが可能)で、より効率的です。
シットアップは頭をやや浮かせた状態からスタートすることが多いですが、クランチは可動域を少しでも広く取るために、頭は床につけた状態からスタートすることが多いです。
次に、へそを見るように背中を丸めながら状態を起こします。
クランチで最も重要な要素は、上体を起こしたときに腹筋を収縮させることです。このため、上半身を丸めるように上げることが重要で、目線をへその方にもってくることでより収縮感が強まります。
また、上述した通り、上体を起こしたときに、肘を絞るようにするのも重要です。
元の姿勢に戻るときは、ゆっくりやるのが大切です。重力と反対の方向に身体を動かすことをトレーニング用語で「ネガティブ・ムーブメント」というのですが、このとき重力に抗いゆっくり動くことで負荷が高まります。
元の姿勢に戻るときは、腹筋を緩めるために、肘も元に位置に戻します。
クランチは一般的に腹筋運動と呼ばれるシットアップよりも負荷は小さいですから、回数はやや多めの12〜15回を目安に実施し、それを3セットくり返すのが理想的です。
エクササイズ全般において呼吸は大切ですが、腹筋運動では特に重要です。実際に呼吸(腹式呼吸)をしてみるとわかりますが、息を吐くと腹筋は収縮し、吸うと伸張します。
これを腹筋運動の動作と合わせて行うが大切です。つまり、クランチで上体を起こすときは腹筋が収縮するので息を吐きます。逆に元の姿勢に戻るときは息を吸います。息を吐き切ることでさらに効果が上がります。
クランチは可動域が小さいため、腹筋運動の呼吸法を習得するのに適しているといえます。
上述した通り、クランチでは肘の動きを意識することも大切です。
クランチでは、手を頭の後ろにおいた状態で、肘を締めると腹筋が収縮し、肘を開けると腹筋が伸展しやすくなります。これを前述した呼吸法と組み合わせることで、腹筋の収縮と伸展を最大化します。
トレーニングにおける「ボトムポジション」とは、身体が一番低い状態にあることを指します。多くは筋肉がピンっと張った状態です。反対に「トップポジション」は身体が一番高い状態にあることを指します。その間を「ミッドレンジ」といいます。クランチでは最初の仰向けの状態が「ボトムポジション」で、上体を上げきった状態が「トップポジション」です。
クランチで最も負荷が入るのは、トップポジションで腹筋を収縮させているときです。このクランチのトップポジションは切り返しのポイントでもあり、注意せずにすぐに切り返してしまうと、せっかくの負荷がすぐに抜けてしまいます。トップポジションで少し静止して腹筋に意識を向けることで、効果が上がります。
クランチのオススメメニューとして、クランチとレッグレイズを組み合わせることが挙げられます。
クランチは、前述した通り、基本的には腹直筋上部のエクササイズであるため、腹筋全体を鍛えようとした場合には、十分ではありません。そこで、組み合わせると有効なエクササイズが腹直筋下部を鍛えることができるレッグレイズです。
両者は同じ腹筋のエクササイズであるものの、腹筋を刺激する部分が両者で異なるため、両者を実施する際にインターバルをほとんど設定する必要がなく時短で実施できるのもメリットです。
具体的な実施方法としては、以下です。
クランチ(15回)→レッグレイズ(15回)→クランチ(15回)→レッグレイズ(15回)→クランチ(15回)→レッグレイズ(15回)
これは難度の高いシットアップが入るため、中上級者向けのメニューです。
このメニューのポイントは、難度の高いシットアップを実施する前に、クランチとレッグレイズで予備披露させる点です。それにより、シットアップの効果を上げることができます。
クランチ+レッグレイズの組み合わせとは違い、同じ部位を刺激するエクササイズが含まれるので、このメニューではインターバルが必要です。
具体的な実施方法は、以下です。
クランチ(15回)→レッグレイズ(15回)→シットアップ(15回)→インターバル(1分) →クランチ(15回)→レッグレイズ(15回)→シットアップ(15回)→インターバル(1分)→クランチ(15回)→レッグレイズ(15回)→シットアップ(15回)
ノーマルクランチ以外のクランチのバリエーションを紹介します。
ストレートクランチのターゲット(鍛えられる部位)は、ノーマルクランチと同じ腹直筋の上部です。
ストレートアームアームクランチは、仰向けになった状態で、腕を身体に対して90度の角度となるように前に出します。この状態で腕と平行の方向に目線を設定してクランチを実施します。
ストレートアームクランチは、基本のクランチを実施することが難しい方向けのエクササイズであり、腕を頭の後ろに固定しない分、負荷は小さくなります。
オブリーククランチのターゲットは、同じく腹斜筋になります。
オブリーククランチは、仰向けになった状態で、上半身を左もしくは右にツイストしてセットします。この状態で、上半身と90度の方向に目線をもっていきながらクランチを実施します。脚は真っ直ぐでも、90度に曲げてもどちらでも構いません。
リバースクランチのターゲットは、腹直筋下部と腸腰筋です。
リバースクランチは、仰向けになった状態で膝を90度に曲げます。脚を少し浮かせた状態をボトムポジションとします。息を吐きながら膝が胸に付くように「巻き上げて」いきます。多少腰を浮かして実施しても構いません。
リバースは上半身ではなく下半身を動かすので「リバース(逆)」という名前になっています。リバースクランチは、クランチよりもレッグレイズに近い種目といえます。
ツイストクランチのターゲットは、腹直筋上部と腹斜筋です。
ツイストクランチは、上体を起こす際に、身体をひねります。右肘が左膝に、左肘が右膝に付くように脚も動かします。
脚は常に宙に浮いている状態をキープしましょう。クランチは脚を浮かせないとただのシットアップ(いわゆる腹筋)になってしまいます。
下記で紹介するバイシクルクランチは一般的なエクササイズですが、ツイストクランチはそこまで一般的ではありません。
バイシクルクランチのターゲットは、腹直筋上部、腹直筋下部、腹斜筋です。
バイシクルクランチは、ツイストクランチと非常によく似ていますが、異なるのがテンポです。ツイストクランチが、一回ずつ丁寧に行うのに対して、バイシクルクランチは、テンポ重視で行います。そのため、ツイストクランチの追い込み種目としてバイシクルクランチを実施するというケースが多いです。
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